恋姫異聞録30 武王編−演−
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劉備を待つ、己の喉下を晒し、喰らいついて来いと

 

天に求められているのは己の道であると示すために

 

 

曹操様は桂花、風、詠、真桜、一馬、俺を連れて許昌へと戻って来た

他の皆は北へ、東へ、西へと散らばり各所で討伐や統治活動を行っている

戻ってきた俺達がまずした事は蜀へ斥候を送り、劉備達の動きを探ること

そして袁術と張勲の処置だ、二人の処置については玉座の間で軍議の際、曹操様の一言

 

「昭に任せるわ」

 

で俺に一任されることになった、とりあえずはこの二人は家で住まわせ

これからの動向を決めるといったところだ、涼風と袁術が喧嘩せねばいいが

 

「桂花、劉備達の動きはどうだ?」

 

「今のところは何も、とにかく私達がする事は決まっているわ。いつ襲い掛かってきてもいいように

軍備を整えておくのと、早く秋蘭たちが統治を済ませることよ」

 

動きはまだないか、桂花の言う通りいつでも動ける準備をしては置かなければ

秋蘭達の統治はそう早く終わるものではない、もし救援を呼ぶにしてもある程度日数はかかってしまう

 

「落ち着きなさい、今はただあの子が食いついてくるのを待つだけよ。一体どんな変わり方をしたのかしら」

 

曹操様の言葉に俺は少し、いや少しではない大きな胸のざわめきを感じた

なんだろう、きっと曹操様の思うような変化ではない、そんな気がしてならないのだ

 

「曹操様、私はこれで先に失礼いたします。」

 

「ええ、兵の準備をしておいて頂戴」

 

玉座の間を後にし、月と詠の元へと向かう。これから戦になる可能性が高いのならば孤児院や診療所は

一番に避難をさせなければ、子供や怪我人、病人の避難を優先にしておかねば

 

孤児院に着くと詠と月が子供達を相手に遊戯をしていた、院の中に入ると子供達が

少し怯えた表情で詠と月の後ろに隠れてしまう、何時もは寄ってくるのにどうしたことだろう

 

「どうしたの?アンタ顔が強張ってるわよ」

 

「え?そうなのか?どうりで」

 

詠の言葉に自分の顔をなでおろす、どうやら俺はこれから起こる戦いを想像し

人々が傷つくことが頭を過ぎり顔が強張ってしまっていたようだ、子供達に悪いことをした

 

「昭さん、近くに戦が始まるのですね」

 

「ああ、警備隊にも言っておくが子供達の避難を最優先にする」

 

「はい、後は診療所ですね?」

 

俺は頷くと月の眼は強い意思がこもる。月も随分と変わった、とても強く頼もしくなった

これなら子供達や診療所の皆を任せてもまったく問題はないだろう

 

「戦が始まるのか?」

 

「華佗、どうしてここに?ちょうど良かった、診療所にもいこうと思っていたんだ」

 

「子供達の定期健診だ、月に頼まれていてな」

 

定期健診とは、月は本当にしっかりしたな、そんなところまで考えているなんて

孤児院の聖女とはよく言ったものだ

 

「次の戦は俺も軍医として行こう、話は程cから聞いている。随分と無茶な戦をするのだろう?」

 

風から聞いた?手回しがいいな、いや、風ほどの軍師が華佗に声をかけるほどなのだ

おそらくそれほど厳しい戦いになると予想をすでに立てているのだろう

 

「ああ助かるよ、華佗がいれば命を落とすものも随分と減るだろうしな」

 

「僕も今回はアンタの側を離れないわよ。僕には今の劉備がまったく読めない、聞いていた感じとは変わってしまった

様だし、用心に越した事はないわ」

 

「ありがとう、月、悪いが詠を借りるよ」

 

「はい、詠ちゃんなら必ず昭さんを、皆を生きてこの地に戻すことが出来ますから」

 

詠は「当然よ!」と胸を張る、頼もしい限りだ。しばらくはこのまま静観だ、早く秋蘭たちが

戻ってきてくれれば安心なんだが

 

「お兄さん、劉備さんたちは早いうちに動きますよ。秋蘭ちゃんたちが戻ってくる前に、必ずです」

 

「風、来ていたのか」

 

「はいー、おそらく劉備さんは華琳様の望まれるような変化では無いと風は感じます」

 

風もか、だが俺達に出来る事はただ決戦を待ち、雌雄を決するだけだ

曹操様がそれを望まれている以上それに従うだけ、ならば俺たちに今出来ることを全力でするだけだな

 

「今は俺たちに出来ることを精一杯やろう、おそらく戦となれば近くの空城に兵を移すだろう」

 

「そうですねー、ですが一応避難経路の確認や訓練はしておいた方が良いと思われますよ」

 

「はい、詠ちゃん、戦が始まるまではしばらく手伝ってもらっていいかな?」

 

「もちろんよ、いざとなったら月もちゃんと避難しなきゃだめよ?」

 

子供達や診療所の人たちは月に任せておけば大丈夫だろう、後は華佗を兵舎に連れて行って

衛生兵との打ち合わせをしておくか、いざというとき連携がものを言う

それと一馬にあのことを教えておこう、何があるか解らない、ならば俺に出来る全てで事に当たるのみだ

 

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それから数日後、秋蘭たちが各地の統治が終わったとの報告が入った。戻ってくる、これで劉備達と互角以上に戦える

そう思った矢先に劉備たちが潁川に進軍してきたとの報が入り、俺たちは緊急の軍議となった

 

「やはり来たわね、潁川の空城に兵を移す。桂花」

 

「は、準備はすでに整っております」

 

「劉備達の編成は?」

 

「主力の将と呂布が来ているようです」

 

「呂布だとっ!」

 

俺は気が付いたら声を上げていた、呂布が来るなんてどうやって引き入れた?

いや、それよりもこの時を狙ったのか?秋蘭たちはこれで俺たちと合流するのが遅れる

俺達を撃破した後、王を失った秋蘭達を即潰すつもりか、秋蘭たちを待つのも良いかもしれないが

曹操様はそれを良しとしないだろう、御自分の領土が民が侵されるの放って置けない方だ、そして迎え撃つことこそ武王

 

「一馬、もしものときは頼む」

 

「・・・・・はい、兄者」

 

一馬は複雑な表情を浮かべるがしっかりと頷き俺の眼を見る

俺は一馬の頭をガシガシと撫でると、笑顔を向けた。頼むぞ義弟よ

 

「これより劉備を撃ち滅ぼし、私の覇道が天に求められていることを証明する」

 

「「御意」」

 

「昭、貴方にも出てもらうわよ。後方で十分、私のことをよく見ていなさい」

 

「御意」

 

勿論です、貴方を覇王としての道を行く貴方をどこまでも見ていきます

 

 

 

俺達は劉備が潁川の国境を超えた直後に潁川の空城へと入ることが出来た

ここで兵数に圧倒的な差のある劉備たちを打ち倒せば曹操様の名は大陸中に

響くだろう、それこそ武王としてだ、だが負ければ暗愚な王として罵られるのみ

 

「来たわね」

 

「ええ、劉旗に呂旗も見えます」

 

「さぁ、貴方がどのように変わったのか私に見せて見なさい、私はそれを超えてみせる」

 

この兵数差で篭城を選ばず迎え撃つか、我が王はなんと無茶をされるのか

劉備達は俺達の居る城へと進軍してきた、劉備たちも民の居る町での戦闘は避けてくれたか

 

曹操様は兵を城から出し、劉備たちが見える位置に兵を止めるとを迎え撃つ態勢を整えた

 

「詠、陣形は?」

 

「陣形は鶴翼の陣を敷くらしいわ、華琳が中央に、僕達と真桜は後方援護、左翼に一馬、右翼に桂花と風よ」

 

詠は「敵の陣形に気をつけて」と付け加えた。良く見れば特殊な形をしている、始めて見る形だ

鶴翼の陣の中央が鋒矢の陣をかたどっている、先頭には関羽、その後ろに呂布

突破力と防御両方を備え、形は正に鶴、二人の将が鶴の首と嘴といったところか

 

「じゃあ行って来るわ」

 

そういうと護衛も着けず一人馬を走らせ前へ出る、劉備と舌戦をするつもりだろう

何故か胸騒ぎがする、劉備も一人で出てきたようだし、心配は無いと思うが

 

「良く来たわね、劉備」

 

「・・・・・・曹操さん、やめませんかこんな戦い」

 

「面白いことを言うわね、確かに貴方の方が兵力は勝っている。それに貴方のことだから

力で統治をすることを嫌っているのでしょう?」

 

「・・・・・・」

 

「呂布が貴方の所に居るとは少し驚いたけど、きっと貴方の理想の片手間で澄むような条件で共闘をしているのでしょう?」

 

「・・・・・・曹操さんが強いのは、曹操さんに力があるのはお兄さんが居るからです」

 

「・・・何を言ってるの?」

 

「天の御使いであるお兄さんが曹操さんの下に居るから皆がついていく、お兄さんさえ手に入れば私の理想はかなう」

 

「・・・・・・貴方、本気で言ってるの?」

 

「私は負けません、この戦に勝ってお兄さんを天の御使いを手に入れる」

 

「・・・私の見込み違いだったようね、貴方とはもう話す事はないわ」

 

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帰ってきた・・・何があった?あのように怒りを露にする曹操様を久しぶりに見た

劉備との会話で何があった?曹操様に問わねば

 

「昭の部隊は弓で敵の突撃を迎え撃つ、第一射が終わったら後方に下がり全体の把握

一馬は敵、鋒矢の陣を横から突き崩し騎馬の脚でかき回しなさい、桂花は一馬と呼応して更に

敵陣を混乱させる。風は昭の伝令を下にそのつど全体の隊を修正」

 

「「御意」」

 

一気に指示を出すとすぐさま曹操様は馬を走らせ中軍と姿を消してしまう

くっ!しまった、軍が動き出す。曹操様の所へ行っている余裕は無い

 

「くそっ!夏候昭隊一斉射撃っ!構え・・・・・・」

 

敵軍が迫ってくる、引き付けろ、焦るな、射撃は一瞬の判断が命だ、一射で突撃力を削り取るっ!

 

「昭っ!まだなのっ?恋達は早いわよっ!」

 

「あせるな・・・・・・1・・・・・・2・・・・・・」

 

「くっ!昭っ!」

 

「3っ!今だっ!撃てええええええええっ!!!」

 

号令とともに一斉に矢が放たれた、十分に引き付けられ矢の全てが撃ち漏らす事無く

敵前曲に吸い込まれていく、弓を受けた兵達は倒れ後続を巻き込み突進力を失っていく

 

「夏候昭隊後方へ下がるぞっ!味方前曲の突進を妨げるなよっ!」

 

「左右に兵を分けて下がるわ、右翼は僕に着いて来なさい」

 

後方へ下がり全体の把握だ、動きを見て風に報告、隙を見て敵本陣に奇襲をかける

 

「曹操様っ!」

 

前曲との入れ替わりに曹操様と眼が合った、なんて怒りの色をしているんだ

劉備に何があった?いやそれよりも曹操様が危ないっ!怒りで心を染めては命を落とす

 

「ちょっと、どこに行くのよっ!」

 

「詠っ!曹操様がっ!」

 

「何があったか知らないけど今は駄目よっ!アンタが居なくなったら全体の把握なんて誰もできないでしょう!」

 

なんてことだっ!せめて春蘭か秋蘭が居れば曹操様を止められるのに

いや、今は冷静になれ、全体を見て曹操様を救わなければ

俺は頭を振って心を落ち着ける、そして詠を見て

 

「詠、望遠鏡をくれ」

 

「はい、大丈夫よ。華琳はそんな簡単に死んだりしないわ」

 

ありがとう詠、俺は心の中で呟き頷くと全体を見回す。

・・・・・・そうか、あの形は突進力がある鋒矢の陣の弱点、横撃を呂布の力で補っている

それどころか入り込めば外側の羽に食われる、一度一馬を退かせないと駄目だ

 

「伝令っ一馬に一度退き敵の羽に当たれと伝えてくれ、風にも伝令、鶴の首に手を出すな

出すならば矢で首を狩れと」

 

「やっぱり恋は厄介ね、あの強さは味方なら頼もしいけど」

 

まったくだ、あの陣は呂布の力を軸に防御も攻撃も行うようだ、しかも前曲にはあの関羽が居る

敵の士気は十分に高いと言っていいだろう、正面から曹操様と当たってしまうかっ

 

「ちょっと昭あれっ!」

 

詠の言葉で右翼を、風の方を見ると鶴の首に凄まじい射撃を放ち続けている

 

「みなさーん、隊を3つに分けそれで1つの隊、入れ替わりながら矢を放ち続けますよー

撃ち終わったら隊の前に回ってくださいねー」

 

あれは車撃ちか!しかも前進じゃなく後ろに退きながら撃つなんて器用なことをする

さすがは風だ、あれなら呂布に一定の距離を保ちながら矢を射掛けることが出来る

俺達の軍師はなんと頼もしいことか、これならば勝てるかもしれない

 

そんな俺の幻想を打ち砕いたのは左右の羽、超雲と張飛の猛攻

見る間に一馬の部隊を張飛がその長い蛇矛で馬ごとなぎ払っていく

右翼の桂花の部隊も超雲の槍に削り取られていく、呂布に気を取られているうちに

凄まじい勢いで兵達が撃ち滅ぼされていった

 

「何だこの戦は!劉備は力による統治を、武王に成り代わろうとしているのか?」

 

「武力で無理やりこっちの部隊を削っていく、これじゃあ兵力差のある僕達は一気に潰されるわ」

 

なんてことだ、劉備が変わったのは徳の王としてではなく武王に成り代わり覇道を進むということかっ!

 

 

説明
武王編−演−

やはり長くなるので3分割させていただきます^^;

次回は武王編−舞−です

応援や支援してくださる方いつもありがとうございます><
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コメント
桃香が狂った(斑鳩弍號)
alice.q様メッセージありがとうございます^^予想外と言う言葉はとても私に取って嬉しいことです><次回も頑張ります(絶影)
COMBAT02 様メッセージありがとうございます^^言われるとおり劉備であって劉備ではありませんwこんなのはらしくありませんw(絶影)
toki 様メッセージありがとうございます^^変節ですよねこれは完全にw(絶影)
BookWarm メッセージありがとうございます^^様鋭い突っ込みどうもです><確かにそう思われますよね!誰も進言せんのかよと! (絶影)
鐵 恭哉 様メッセージありがとうございます^^その通りです><劉備は徳の王です!私もそう思いながら書いてましたw(絶影)
tomasu 様メッセージありがとうございます^^何時も鋭い考察恐れ入ります><理由は次で解明されると思います^^旨く表現できればいいのですが・・・・・(絶影)
リョウ様メッセージありがとうございます^^暴走してますねー皆いろんな意味で暴走してますw次の展開が読めないようにしているんですがなかなか難しいものですね><(絶影)
aoirann 様メッセージありがとうございます^^予想外の展開との御言葉嬉しく思っております><予想外というのは私にとって凄くウマーなかんじですw(絶影)
GLIDE様メッセージありがとうございます^^確かに周りが見えてませんねぇwKYな感じになってますw(絶影)
田仁志様メッセージありがとうございます^^そうです変化しましたが・・・次をお楽しみに!といったところですw(絶影)
仁徳無き劉備は劉備に非ず、と思ってしまいました。(鐵 恭哉)
桃香の変貌には驚きました。21話の最後において桃香が自分の真名を受け取るのを断った昭くんにたいして「あきらめません」といっていましたが、まさかこのような思考にいたるとは、仁徳としての問題もありますが、それ以前に周りの人間は桃香の変化を止めれなかったんでしょうかね?なにはともあれ歩王編−舞−期待してます。(tomasu)
更新お疲れ様です。って桃香暴走しちゃった???私的には癇癪にしk(同じ)でもこの戦いだけは華琳も暴走しかけてたし昭も以下同文…先が楽しみでなりません。(リョウ)
更新お疲れ様です。劉備の予想外すぎる変心に驚かされました。次回の更新も楽しみに待ってます。(alice.q)
劉備様はもう・・・仁徳の王ではなくなってしまうのか・・・・・。劉備であって、劉備ではない!!(COMBAT02)
更新お疲れ様です。やはり劉備は変節したのか。(tokitoki)
おお、予想外の展開!!(aoirann)
桃香回り見えてねぇw次回昭の実力が明らかに?ww(GLIDE)
おお!!21での事でこう変わってしまったんですね!!(ペンギン)
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