暁の護衛二階堂麗華アナザーストーリー ?第二話:ボディーガード?
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その後オレは特別禁止区域の昔住んでいたアパートに戻った。

海「......やっぱり、こんな場所でも懐かしいな」

十数年いたアパートに戻ってきた。

それだけ。

向こうの世界に行ったきっかけは、親父が昔ボディーガードをしていたからだ。

あの親父がやっていた仕事。

それが何なのか知りたくて、向こうの世界を覗いたのが始まりだ。

上流家庭で高級品に囲まれた何不自由ない制限された生活。

人間でないとまで言われた進入自体制限のかけられた禁止区域。

オレ自身、正直どっちでもいい。

このまま禁止区域で昔のように暮らしてもいいし、向こうの世界でひっそりと生活してもいいと思う。

双方に利点はある。

こちらは制限という制限が皆無。よって気が楽になる。

何をしても咎められることはないし、ある種の自由だ。

それに比べて、向こうの世界では仕事がある。

学業とも言うが、他の人のために時間を割くというのは正直あまり好きではない。

もちろん、それがオレにとって有益な時間ならば別だが。

ただ、それに見合った金が手に入る。

金があれば三食飯にありつけるし、生活も保証されている。

加えて本だって買える。

海「......」

どちらにせよ、二階堂には戻らない。

あそこはいかに自分が汚れているかが浮き彫りになってしまう。

何でもない家族の日常がトラウマになるほどの光。

幼少時、それがトラウマになりオレは禁止区域に逃げてきた。

結果的に向こうの生活に溶け込むことになると、その事実さえ忘れるほどの心地良い高潔さ、光だ。

オレもその世界にいるだけで自分が綺麗な存在だと勘違いしていた。

そう、勘違いだ。

非日常を日常と認識するうちに、比べる対象がいつのまにか向こうの世界になる。

オレの物差しに禁止区域の尺度にズレが生じる。

最終的には、完全に向こうの世界の住人になれると錯覚を起こした。

 

ただ、メッキが剥がれた

 

『朝霧海斗は人殺し』

海「くく...」

二階堂に用意してもらった部屋とは明らかに違う腐敗した臭い。

別に部屋の中に腐った死体が転がっていたり、ゴミが腐敗しているわけじゃない。

ただ純粋に、臭い。

向こうの世界の人間曰く人が生きて行けない環境。

そんな場所で十数年生き抜いたオレはうっすら微笑む。

所詮、オレは人殺しだ。

 

それで、何が悪い?

 

弱ければ、犯され、殺され、売られ、人間は一定の銭に変わるだけだ。

嫌なら強くなればいい。

強くなり、弱者を犯し、殺し、売ってお金に換えればいい。

それが嫌だとか綺麗事を口にする人間はそもそも『こっちの世界』にはいない。

そんな茶番を口にするのは決まって向こうの世界だ。

それは何故か?

簡単だ。

ここにいる連中はその過酷さを実体験で判っているからだ。

当然オレも最初から強者の立ち位置にいたわけではないので、幼少期など幼い頃は『弱者の悪』を身体と記憶に刻まれ、理解した。

向こうにいる連中は決して気付けない、気付かない。

ここは向こうとは別世界でいて、同じ人間ですらない。

 

そう、そんな輝かしい世界にいるアイツがーーー

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海斗は立ち上がると、財布の中身を確認してアパートを出た。

どうも一人の時間が長くなると変なことを考えてしまう。

自分の無力さから『たられば』の妄想。

そんなことを考えたって何にもならない。

大体、こういう思考になるのはやることがないからだ。

人に強要されるのは嫌だが、明確な目標が無いというのも困る。

幼少期は、ただ生きていけばよかった。

ボディーガードを始めてからは、日常で充実感が得られたのでそれだけでよかった。

 

これからは、どうなんだろう?

 

欲しいなら、行動しなければ手に入らない。

それは知っている。

オレは、麗華が欲しいんだ。

だが、麗華はオレごときが手にしていい女じゃない。

それも、知っている。

それでも結局考えてしまう。

ジレンマ。

 

恋......というか、ある種の哲学だな。

 

海斗は心の中で自嘲しながら、街の本屋に行くことにした。

とりあえず、持っている金で古本屋に突っ込むことにしよう。

そうすればしばらくはアイツのことを考えなくて済むだろう。

 

まだしばらく向こうとは距離がある、禁止区域のちょうど中核辺りだ。

人混みがあった。

見るからに、弱い獲物を皆で頂く光景だ。

ハイエナの数は十数人いるなら獲物は恐らく向こうの世界の住人だと思われる。

 

......そういえば、まだ向こうの世界の人間はここを救うなんて口にしてるんだろうか?

 

正直、思うところはある。

ただ、政治なんて全く判らない。

 

単純に「救う」なんて言っても、それがただのお花畑の戯言なのか、それとも同情から選挙に勝つための票集めなのか、本で一般的な知識は集めたつもりだが、政治というのはやはり判らない。

恐らく、結局どうなろうと最終的に和解はない。

向こうとこっちは完全に別世界であり、そもそも俺たちは人間ではないのだから。

同じ人間でないなら、きっといつまでも手を差し伸べることはないだろう。

 

それはこの獲物を襲うハイエナ達にも同じことが言える。

後々の事を考えれば獲物を頂くべきなのだが、まだ向こうの感覚が取れないので率先して奪うつもりもない。

尤も、助けにいくほどお人好しでもない。

 

そう。

見知らぬ他人なんて、簡単に助ける方がおかしい。

向こうの世界なら、まだ判る。

麗華を衝動的に救った理由も、今ならなんとなく理解できる。

向こうの世界では、誘拐というのは非日常だからだ。

そんな光景を、朝霧海斗も非日常と認識したから。

多分、それが一番近い理由だろう。

麗華という人間を知っている今ならともかく、初対面で誘拐から助けるなんて我ながらどうかしていると思う。

だから少なくとも、禁止区域における暴行を助けるには理由がない。

海「おい」

身体が、反応した。

周囲のヤツらはオレの声に反応するやつと、そうでないやつがいた。

ただ、それでも誰か一人が朝霧と呟くとハイエナは足早に去っていった。

オレが判るということは、それなりに悪さを繰り返している人間ということだ。

海「......」

自分が、判らなかった。

麗華がこんなところにいるわけないし、仮にこいつらから獲物を奪ったところでオレは今向こうの人間なんかに興味がない。加えて、ボディーガード精神なんて持ち合わせているつもりもないし、仮にあったとしても禁止区域にまで適応させるつもりはない。

視線を投げる。

そこには女が二人いた。

一人は俯せになって気を失っていたため表情は判らないが、麗華じゃない。

......あたりまえだろ。

どこかで期待と不安を感じていたオレは小さくため息を吐いた。

もう一人の女は暴行を受けた痣だらけの顔だ。

ただ、それでも眼力は凄まじい。

悔しそうに腕を押さえながら鋭い目付きでオレを睨み付け......

 

海「は?」

薫「え?」

 

そこには、一年以上同じ部屋で暮らしていた元ルームメイトの顔があった。

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薫「な、なんで海斗がここに......」

海「......いや、それは、って、薫こそ何でここに...」

......本当に、酷い顔だった。

全身殴打され、青くなった肌は男女に関係なく本当に痛々しい。

それが女性ならなおさらだ。

加えて、数カ所刃物で切り刻まれたような跡もある。

海「......」

理由は分からないが、状況はある程度把握できた。

恐らくそこで眠っているのは神崎が禁止区域に紛れ込み、ここの連中に襲われたのを薫が守っていたのだろう。

 

薫「海斗、キミは...」

海「話しは後だ。とりあえず神崎とお前を病院に連れて行く」

薫「......」

海「薫?」

薫は顔伏せると、悔しそうに歯を軋ませた。

薫「............すまない」

意地でも涙を見せまいと、更に深く顔を伏せた。

薫「すまない......すまない!」

海「......」

入学してから、ボディーガードという職業が分からなかった。

『人の命を守るための職業』

『命に代えてもプリンシバルを守る』

『襲撃された時はどうやって守り抜くか』

オレにはそんなの綺麗事、もとい、詭弁だと思っていた。

だってそうだろう。人を殺したこともない人間が、人に殺されることを想定して仕事をこなす。これはあまりにも理論から外れていないだろうか?

薫「すまない!」

全身ボロボロで、まともに立てないようになりながら、それでいて護衛の対象である神崎には外傷はない。

数に囲まれ、助けもない絶望的な状況でもなおプリンシバルを守るという一心を貫き、敵に対して人の心を浸食するほどの鋭い眼光。

海「......」

なんとなく、分かった。

ボディーガード。

細かい表現や、説明はまだできない。

ボディーガードの存在意義やスキルなんて全然知らない。

 

ただ、こいつは間違いなく本物のボディーガードだ。

 

オレは何も言わずに、意識を失っている神崎に手を伸ばした。

外傷は薫ほど酷くなく、恐らく背後から頭部を強打されて気を失ったのだろう。

目立つ傷は特になく、強いて言えばコブができているぐらいだ。

薫「私は......私は神崎様のボディーガードでありながら!」

神崎を肩に担ぐと、薫に手を差し出した。

海「歩けるか?」

薫「私は、神崎様のボディーガードでありながら! ......くっ! やはり、私は、わたしなんかじゃボディーガードに......っ!」

薫の首を強打すると、意識の失った薫を反対側の肩で担いだ。

 

その先はタブーだ。

 

プリンシバルである神崎に対しても。

薫自身に対しても。

ボディーガードという職業を放棄したオレに対しても。

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佃「もしや、お主朝霧と言うのか?」

海「ああ?」

佃「いや、気を悪くさせたなら謝る。お主は萌の恩人じゃからの」

海「......」

佃「ワシは神崎佃五郎。萌はワシの孫じゃ」

 

二人を街まで運んだ後は、スムーズだった。

捜索隊とで言うような部隊が町中にいて、今目の前にいるじいさんも必死に神崎を捜していた。

それから二人は病院に運ばれ、じいさんが礼をしたいと言って家に招待されたのだ。

 

海「で、礼がしたいというから来たのに、金持ちの礼がお茶一杯かよ」

佃「うるさい! これは高級な葉っぱを使ったありがたーいお茶なんだぞ!」

どうみても分からない。二階堂でもそうだったが、ある一定以上になるとどうも値段と品質が一定しているとは思えない。

海「そ、そうなのか?」

佃「ウソじゃ。そこのスーパーで売ってる68円の緑茶じゃ」

海「帰る」

佃「ままま、待て! ほら、高級なありがーい茶菓子もやろう!」

......このじじい、頭沸いてんのか?

佃「ほら、わしってセクシーでビューティフルだからそういう茶目っ気を出さんと......」

縦ロールと見た映画の小説......著者なんだったけ?

佃「無言で出て行かんでくれ!」

足にしがみついてきやがった。

海「てめぇは何がしたいんだよ!?」

面倒くさいので、一つ舌打ちをしてからどさっと畳に尻餅をついた。

海「......それで、何であんな場所に大切な孫を生かせたんだ?」

あんな学校にいるお嬢様が目的もなく禁止区域にいるなんて、どうかしている。

佃「......やはり、特別禁止区域か」

海「ああ。やっぱり知らなかったのか」

佃五郎は無言で顔をしかめた。

海「あそこにいるのは人間じゃない。大方正義感を持ったお嬢様が慈悲か興味心で足を運んだだろうが、ちゃんと釘を刺しておくんだな」

佃「......」

佃五郎はうっすらと目を細める。

佃「お主は......そこの住人じゃないのか?」

海「そうだ。オレも人間じゃない」

佃「主は人間じゃぞ」

海「比喩に決まってんだろ。魚類だったらビックリするぜ」

佃五郎は思うところがあるのか、目を完全に閉じた。

佃「なぜ、助けた?」

海「ああ?」

佃「お主は萌の恩人じゃ。それこそ本当は感謝しても感謝しきれん。じゃが......人間でないお主が、なぜこっちの住人を助けた?」

海「......」

それはオレが聞きたい。

獲物が欲しいから?

通行の邪魔だから?

こっちの世界で物事を見てしまったから?

そんなものは結局後付けだろう。

 

多分、麗華と重ねてーーー

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麗華だと思ったから。

海「......」

違う。

麗華じゃない、とその前にちゃんと状況判断できていたはずだ。

それなのに、結局オレは助けた。

オレは、一体......。

佃「主は、人間......」

海「違う」

それは、違う。

この法の世界がオレに適応されるとすれば、朝霧海斗は死刑。どんなにうまく弁護士がやりくりしても良くて終身刑は免れない。

海「正直に言うと、薫も神崎も顔見知りだ」

佃「なんと!」

それも後付けだ。だが、後付けだとしても顔見知りが襲われていれば、助けるというのは話しに筋が通るだろう。

佃「さてはお主、憐桜学園の......」

 

そう......そうだ。

一つ忘れていた。

 

じじいが何かぼそぼそと喋っているのを遮る。

海「じじい」

佃「このワシに向かってじじいとはなんじゃ!」

海「頼みがある」

佃「......」

オレの迫力に負けたのか、神崎のじいさんは黙った。

海「薫について聞いてくれ」

佃「......」

じじいは答えない。

海「オレは元憐桜学園のボディーガードだ。色々な勉強や、実技をこなして、それでいて精神論なんかを叩き込まれてきた。当然、それにそぐわない人間もいっぱい見てきた」

続ける。

海「正直、オレは劣等生だ。成績とか実技の結果とか数字でもそうだが、結局のところオレはボディーガードの本質や意義が何一つ分からなかった」

神崎のじじいは一語一句聞き逃さぬよう真剣な顔つきだった。

海「薫の雇用者ならあいつの秘密も分かるだろ。だから敢えて言う」

一呼吸置く。

 

海「あいつはボディーガードだ」

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その後どうなったかは分からない。

オレがお願いしたのは二つ。

一つは薫がボディーガードであるというのを訴えたかった。

神崎のじじいが今回の件をどう思っているかは知らない。

仮にも、プリンシバルの行動を制限できなかった責任は免れないだろう。

もちろん、それが原因で解雇になったとしても自業自得だ。

ただ、それでもあいつはボディーガードだった。

オレはそれが伝えられれば満足だ。

二つ目のお願いは、オレが二人を助けたという事実を伏せてくれということだ。

 

『アンタに助けられなくても、私は一人で逃げ出せたわ!』

 

アイツは、人に借りを作るのが嫌だった。

その気持ちは、共感できるし大切にしてあげたい。

 

今後アイツがオレのことを思い出さないためにも、朝霧海斗という人間を記憶残さない方がいい。

 

海「......と、過ぎた」

考えながら歩いたせいで、目的の古本屋を過ぎてしまった。

まずは安い本から順番に買って、それから好きな作者のコーナーでも物色しようか。

自然と笑みがこぼれたとき、

 

薫「海斗!!」

海「......!」

名前を呼ばれ、声の元に振り返る。

薫「海斗!」

ゆっくりと歩み寄ってくる薫。

海「......」

じじい、早速約束破りやがって。

海「どうしてここが分かった?」

薫「佃五郎様が、古本屋に向かったと言っていたから、慌てて、走ってきた」

まだ眠っていなければならない身体を鞭打って走るなんて、正気じゃない。

海「......!」

靴の底見ると、薄いプラスチックみたいな変な機械がセロハンテープで貼られていた。

海「くそじじいめ!」

真っ二つに折ってやる!

薫「海斗」

海「......」

接点でいえば、一番遠いはずの薫とこうして会うんだから偶然というのは恐ろしい。

薫「ありがとう」

海「......」

薫は時折苦痛で顔を歪ませながらも無理に笑みを作る。

薫「私じゃ、神崎様を助けられなかった」

海「逃げるのか?」

予感がした。

薫は寂しそうに微笑むと小さく深呼吸をした

薫「元々女の私が......」

海「逃げるのか?」

薫は動かない。

海「身体的特徴や、自分の弱点を出して諦める理由を作るのか?」

薫「......まいったな。君は相変わらず言うことが辛い」

海「おどけで世間話に持っていけると思うな」

薫「......」

海「それで、一度失敗したらもう逃げるのか?」

薫は一度身体を曲げると、大きな声で笑い出した。

薫「はははははは! 君は本当に厳しいな!」

笑いすぎて涙を流したのか、目元にこする。

薫「君は昔からそうだ。他の生徒から離れて迷惑をかけて困らせて」

文句だけじゃねぇか。

薫「だけど.......助けてくれる」

海「......」

薫はゆっくりと言葉を紡ぐ。

薫「学園を辞めてどうなったか心配してたけど、変わらないで、強い」

......変わらない、か。

最近会った人間はみんな変わったと口にしたが、そうも見えるんだな。

海「ならお前も変わらなければいい」

その言葉に、薫は影を落とす。

薫「私はーーー」

海「私は必ず、ボディーガードにならなければならない」

薫は目を丸くした。

海「だろ?」

薫「......く、くくく、あははははははははははははは!」

薫は再び大きな笑い声をあげた。

薫「あははははははははははははははははは!」

お腹の底から出す豪快な笑い声は、普段学園生活で見ている薫とはかけ離れている。

薫「なるほど! 君は記憶力がいいじゃないか!」

心底おかしそうに声をあげる。

海「友達の名台詞を忘れられるかよ」

最後に、薫は一度だけ悲しい顔を浮かべて、しかしそれでも言い切った。

薫「そうだ。友人だ」

まだ切り傷が絶えない身体をしゃきっとして、南条薫は言い放つ。

薫「私は必ず、ボディーガードにならなければならない」

 

オレの友達は、めちゃくちゃかっこよかった。

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それから二人で公園に寄った。

薫「君とこうやって二人で会話するのも、随分久しぶりだな」

海「学園で毎日喋ってたじゃねぇか」

缶ジュースを受け取ると、すぐに口を付けた。

薫「そうだな。本当に、そうだ」

海「おいおい、大丈夫か。頭でも打ったんじゃねぇか?」

薫「打ったよ」

だろうな、と言ってニヤリと笑って見せた。

薫「君は、これからどうするんだい?」

流石に学園を辞めただけじゃなく、二階堂家を出たことも知っているか。

海「ロックに目覚めたんだ。とりあえず全国ストリートライブをやってこようと思う」

薫「......そうか」

疲れてきたのか、いつもの面倒見の良さがない。

薫「向こうに、行くのか?」

海「昔みたいに締め上げておっぱい揉むぞてめぇ」

薫「なっ!?」

しまった......素でツキに対しての喋りをしてしまった。

海「まぁ、正直まだ決まってない」

薫「そうか......」

二人はただ何をするでもなく、公園のブランコをこいでいた。

薫「なぁ......聞いてもいいか?」

海「何をだ?」

薫「答えたくないなら答えなくてもいいが、正直答えて欲しい」

どっちだよ。

薫「......海斗は何でボディーガードを辞めたんだ?」

海「......」

薫「麗華お嬢様と喧嘩をしたわけでもないだろ。やっぱり学校での嫌がらせが原因なのか?」

......数時間前に泣きべそかいてた奴が、もう相談に乗ろうってか。

海「本当にお前は面倒見がいいな」

薫「当然だ。元ルームメイトなんだから」

海「......」

薫「いや......友達だから、か」

本当に、良い奴だ。

海「......麗華は元気か?」

薫「麗華お嬢様はお前が辞めてからずっと不機嫌だぞ。学校もちょくちょく休むようにもなったし」

海「まぁ慣れるだろ」

薫「慣れ...慣れるって」

日常が非日常になっただけだ。いずれそれが日常になる。

海「神崎は大丈夫か?」

薫「神崎様は頭部を怪我していらっしゃる。後遺症はないが......」

海「しばらくコブはできるぐらいか」

薫「......ああ」

海「あいつ、常識がなさ過ぎるからちゃんとお前が支えてやらないと」

薫「ああ」

海「禁止区域の立ち入りも、禁止区域の人間との接触も禁じろよ」

薫「ああ」

やっぱり、楽しかった。

ここは、人間が温かい

向こうでは味わったことのない温かさ。

海「それじゃ、お別れだ」

立ち上がる。

それにつられて薫も立ち上がった。

薫「ああ」

くく、カッコ悪。こいつ泣いてやがる。

ボロボロと大粒の涙を流しながら、薫は笑った。

薫「海斗、ボディーガードが簡単に涙を見せるなんて情けないぞ」

てめーが言うな。

やっぱり、この世界は温かすぎる。

海「もう会うことはない。ただ、それでもオレはお前を友達だと思っている」

薫「ああ!」

歩き出す。

当然、振り返ったりなんてしない。

あいつはきっと酷い顔で、それでも真っ直ぐな姿勢でオレに笑いかけてるからーーー

 

 

 

 

ーーーーーー第二話:ボディーガード_end

 

次→第三話:妄想と推測と...

URL:http://www.tinami.com/view/131455

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ーーおまけ1(後書き)ーー

今回からようやくSSっぽくオリジナルな展開に持ってきました!

ってか、SSっぽくってどういう意味?

SSで調べても、なんかサイドストーリーとかセカンドストーリーとかショートとかとか色んな意味があるんですけど。

......へへへ、細けぇことはいいんだお!

 

冒頭、『十五年以上いたアパートに戻り』とか正確な明記にしたかったんだけど、時間軸はやっぱり曖昧の方がいいね。後から「いや、違うじゃん! ここは○○してから数年経って??」みたいに言われるとどうもアレだし、正直同じギャルゲを2週目するってのはけっこーしんどいんで(田中ロミオは別格)適当にぼかした表現にしてみました。

ってか、他にも問題あるしね。「このゲームの登場人物は、みーんな18歳以上だからねっ!」みたいなやつとか。

 

tinamiだけにちなみに、地の文は読み手を不快にさせる可能性が大きいので、あまりオススメしません(キリ

いや、頑張ってるんすよ?

こういう場所を設けるからには、敬語を使おうと頑張ってるんすけど、ビジネス検定3級も落ちるダメダメ社会人なんで、その辺りは暖かく見守ってくださいね......。

 

このSS書く前に、登場人物の候補がいたら言って?みたいに書き込んだんすよ(←敬語のつもり

そしたらコメントの内容が、

・ツキルートをお願いします(poyyさん)

・杏子が欲しいです!!(スギサキさん)

・薫だろ!!(北斗七星さん)

の三つだったんで、それに答える様にちょろっと企画考えてたんですよ。

うん、企画作ったんです、よ、

......うん。いつまで待っても妙が出てこないんでね、うん。

最終コメントから3,4日が経過しても、まさか妙が出てこないんですよ。

......おかしいですよね?

おかしいですね?

おかしいよな!

しゃんぐりらの公式ホームページ見ても「人気投票一位? 妙だろjk」とか思ってて、出てくるのがツキじゃないすか?

.......ああちくしょう!

ツキは良いキャラだよ!

認めてやるよ!

だが、だが妙と比べて......むきょおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

......冷静になれ自分。こういうキャラに対しての発言は、仲間と同時にアンチを生み出してしまう。

大丈夫だ。まだ2話目だ。まだ八方美人を演じられる。

 

でもこの暁の護衛はキャラクターによっていらないキャラとかいないから結構好きですね。

たまに有名なゲームなんかでも、面白いんだけど「こいつが出てくるだけでシャットダウンしたくなる」とかありますよね? ありませんね。自分だけですね、失礼しました。

 

うん。今回の話しを振り返って思うのは多分、北都七星さんが薫のリクエストが無かったら書かなかったな?とか思います。多分じゃねーや。ぜってー薫は書かねーや。

だって薫は次回作のヒロインだぜ!?

これはもうある意味メインディッシュで下手したら原作レイプになるっしょ!

まぁ今のところ書いててけっこうノレるんで書き手としてはめちゃくちゃたのしーっすよ。

 

執筆たのCーーーーーーーー!!!

 

く、くくく句読点を打つと、、、、せ、せせせせ性的に、こ、こここ興奮するのさ.............!

......ごめん、ウソ。

 

これがギャルゲなら薫が「いや、友達だからか......」でBGMが段々と小さくなり、画面を白にフェードアウト。そんで女顔(重要)の薫が涙をボロボロ流すCGをドアップで挿入。表情は泣きながらも力強い笑顔を作っている。そんで無音のまま、「ああ」の台詞でBGMボリューム強めを挿入。この場合、BGMは涙を誘うピアノやオルゴールじゃなく、ギターとかロック系の少し強めのほうが、ボディーガードに歩んでいくという雰囲気を表現できるはず。後は自動送り。

予算があるならプラスCG一枚追加......ってところかな?

 

更新が早まったのですが、次回は3/21の午前21:00時にアップ予定です。

以上、現場からでした!

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ーーおまけ2(暁の護衛1の冒頭失敗文)ーー

 

二階堂家を出て三日が経った。

少し手持ちがあったので、適当に食事をして、その辺りで眠る。日中は本屋で適当に小説を立ち読みしていた。

 

こんな堕落した生活をしていて、初めに誰に出会うのか。

正直楽しみにしていた。

杏子に会ったならば、もしあいつさえ良ければ向こうに一緒に戻ってもいい。

麗華に会ったなら、少し話しをしてもいい。

決して麗華が嫌いなわけでなく、麗華を嫉妬してしまうから。それでいて麗華のボディーガードとしてオレが存続していると二階堂に迷惑がかかるから。

それならば、もし、もしも麗華と偶然会えたならばーーー

 

くだらない、期待。

最近変な小説を読みすぎたと思いながらも、期待を最近目を付けている寝床に向かう。

ツ「えー、こちらセクターZ。脱獄者を発見」

海「......」

ツ「犬みたいな汚い目で視姦されてます。本当に汚いです」

海「......」

さぁ、オレは一体一番初めに誰と出会ーーー

ツ「待つのだ」

オレは一体一番初めに誰と出会うのか? それは風に聞いてみないと判らない詩人、朝霧海斗。

ツ「犬は海斗と違って可愛い目をしてるです」

海「てめーが自分が言ったんだろ!」

ツ「キャー、犯されるー(棒読み)」

相変わらず気配の薄さは一級品だぜ。

ツ「それで、二階堂を出て行ってこんなところで何してるか?」

海「オレがいなくなって寂しいのか?」

ツ「べ、別にアンタなんかいなくなってせーせーするわ!」

海「それ誰の台詞だよ」

ツ「宮川様」

海「尊かよ!?」

想像してから後悔した。

ツ「......それで、もう帰ってこないのか?」

海「二階堂に飽きた」

ツ「......」

海「なんでそこで頬を赤らめるんだ!」

ツ「まぁ、別に私は朝霧海斗はいらないからいいんですけど。汚れるし」

一言多いヤツだ。

ツ「ただ......元気が、無くなってた」

海「......」

ツ「私の海斗に会いたいって」

......私の、海斗。

どこまで上から目線なんだよ。

ツ「宮川様」

海「尊はもういいから!」

 

 

......ツキはまた別で書こう。

ってかギャグやるならせめてフォントサイズの変更ぐらいはしたいぜ......。

キャラ別に会話を分かりやすくするなら色を使いたい......。

いや、その前にせめて中央揃えぐらいは欲しいピヨ......。

ああうるせぇ!

そうさ!

オレに文の表現力がないから視覚的要素が欲しいだけさ!(←謎の逆ギレ)

 

こほん。

ツキのSSは麗華ルート終わったら書く予定はあるんですが、どういう内容がいいかリクエストあれば考慮します。

あくまで、考慮です。

無理な設定来たらシカトするかツッコミ入れるんでお願いします。

 

○良い例

『ツキルートをSSで作成してほしいです』

『ファンディスク後のツキと海斗の生活がみたいです』

 

●悪い例

『ツキを使ってドラクエみたいなファンタジー書けよクソライター』

『ツキがプロ野球の監督になった! はい続き書け!』

『ツキが倉屋敷に誘拐されて亜希子さんの実験台に!? 次回:赤髪の刺客、その名もロボ!』

 

え?と、今後の流れです。

暁の護衛:麗華ルートのSSを書く→暁の護衛:ツキを素材にしたSSを書く→その間に、他のギャルゲで自分がプレイしたことあるギャルゲが......

やった、あった!→それを書いてみよう!

あるけど、しかし→ライターの難易度によっては無理

(中澤工、田中ロミオ(山田一)、Key、TYPE-MOON以外の作品なら大体OK!! 原作より面白くないと確定しているSSなんて嫌だ!)

んなもんねーよ →他の暁の護衛で引っ張るか、オリジナルでも書こうかな......。

 

まぁ今はツキルートに関して何かリクエストがあれば是非お願いしまーす。

他にも青少年育成条例改正案とかニュースちっくなこともあったらなるべく書いていきたいです。

じゃ?ね?

 

 

説明
ボディーガードなんて稼ぎがいい楽な仕事だと思っていた、いや思っている。それはオレがボディーガードじゃないからだ。
次へ→第三話『妄想と推測と...』:http://www.tinami.com/view/131455
最初→第一話『たられば』:http://www.tinami.com/view/130120
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