真なる世界へ 第2話 |
真なる世界へ 第2話
「・・・・くはぁ」
完成した防壁を見上げる。
下手な鉄より、岩で積み上げた方が頑丈だと考えた俺は、門の上から岩を張り付け、再び板で覆った。
こうすると門は重くなり、開けづらくなるが、門の根本にテコの原理でうまく開くように工夫したので短所はなくなった。
そして仮に門を打ち破られた場合として、すぐそばに馬防柵を用意した。
これなら突っ込んできた兵や馬に対して足止めになる。
ここまで作れば長い間保つだろう。
長老が言ったとおり、この村は作物などが豊富で材料は十分に足りた。おかげで短時間でできた。
「おお・・・こりゃすげぇーなぁ」
手伝ってくれた大工さんも誇らしげに言う。
「・・・油断は禁物ですよ?」
「はっはは!!わかってらぁ!!」
ばしばしと背中をたたかれる・・・少しいたい。
「もう終わったのですか・・・?」
皆と完成した防壁を見上げていたら長老がやってきた。
勿論、ぴったりと添うようにクゥ(そう呼ぶことにした)が居た。
クゥは俺を見つけると、とことこやってきて腰にしがみついた。
・・・・随分と懐かれたものだなぁ。
俺はクゥの頭を撫でながら
「お身体は大丈夫なんで?」
「はい、御遣い様が手伝ってくださったおかげで大分」
そういってほほ笑む長老の言葉に嘘は感じられない。
本当のようだ。
・・・・さて。
「長老」
「・・・・・・・」
「俺は、俺の役割を果たす為・・・そろそろ出発したいとおもいます」
「そうか・・・旅立ちは何時に?」
「半刻程」
「急じゃの」
「・・・・・・」
「・・・・名残惜しいが・・・・仕方がないの」
そういって寂しそうに長老は溜息をついた。
「・・・支度があるので、これで」
そう言って俺は長老の家へと向かう。
長老の家にお世話になっている身だ、少しはきれいにしておかないと罰が当たりそうだった。
「・・・・・」
「・・・どうする?御遣い様はお前を置いてくかもしれんぞ?」
「・・・・(ふるふる)」
「兄か父か・・・その判断はお前に任せる。 行け」
「・・・・(こくん)」
「・・・・・儂も年をとったかのぅ・・・
いやいや、まだまだ若い者には負けてられんの・・・ほっほっほ」
「外套と・・・・あと水・・・干し肉・・・・よし」
最後のチェックを終え、最後に立てかけてある刀を手に取る。
神星刀・・・・か。
少し感慨深くなったがさっさと切り捨て、腰に添える。
「・・・」
荷物をしょい込み、周りを見渡す。
数か月の間だったが、こっちに来て初めての気持ちだった。名残惜しい・・・哀愁?
わからないけど・・・すこし寂しい気持ちになった。
でも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
振り切るように部屋を出る。
・・・その後、この寂しさがなんだかわかった。
「・・・・・なんだかなぁ」
村を出て溜息をつく。
どうやらあの寂しさは一種の・・・・・。
そう、父親が嫁にいく娘を見送る気分というのか。そんな気持ちが俺の心にあった。
おそらくクゥの存在だろうか。
ここに来て一番ともに過ごした時間が多かったのはクゥだろう。
同じ時間を過ごしているうちにある一種の気持ちが浮かぶ。
『クゥを連れて行ってはいけない』
・・・俺の本来の役目は、再構築された世界に平和をもたらすこと。
偽善者と周りから指摘されようが俺の意志は固い。
俺が天の御遣いとしてここに降り立ったのならば必然的にこの身を戦いに投じることになる。
そうなるとクゥも乱世に巻き込まれる形となってしまう。
大事に思うが故に俺はクゥを連れていくことはできなかった。
もし、クゥが死んだりしたら・・・。
そう思うと背筋が凍る。考えたくもない未来だった。
「・・・・はぁ」
「・・・・(くいっくいっ)」
「・・・・・・」
「・・・(むー)」
ぽかっ
「あたっ、だれ・・・・・・だ・・・・・・・」
「・・・・(むー)」
頭に衝撃が来た。誰かに殴られたのか。振り向けばよく知る姿。
「クゥ!?」
「・・・(こくん)」
クゥは俺と同じ格好で、赤色の馬を連れていた。
「お前なにしに・・・・!?」
「・・・・・・・・・・(ぎゅっ)」
クゥは外套の裾を強く握った。
「・・・・・はぁ」
初めの頃のクゥは臆病というか・・・・控え目だったのだが。
誰に似たのか、頑固者になったなぁ。
「しょうがないなぁ・・・」
「・・・っ!」
頭を撫でながら、我ながら甘いと思った。
だが考えれば簡単なことだ。クゥは俺が守ればいい。命をかけて。
ならば離れる必要はない。 まぁ・・・それに俺の寂しさも紛れるがな。
「よしよし」
「・・・・・(ぽー)」
とりあえず、クゥの頭をなでまくることにした。
「で、コレは?」
「・・・・?」
「馬はいい・・・この旗はなんだ?」
クゥの背中に貼りついていた牙門旗よりも小さめの旗に目をやる。
旗の中央には大きく丸の書かれていて、中には「十」の文字。そして丸の外一面は黒で塗りつぶされていた。
「ん・・・と。めじるし・・・・」
「・・・目印?」
「・・・(こくん)」
・・・・まぁいいか。かさ張らないし。
「ん。蒼・・・・」
「蒼・・・?」
クゥは馬の首筋を叩いた。・・・あぁ、馬の名前か。
「肌の色は朱なのに蒼か?」
「・・・(こくん)」
「・・・・そっか。よろしくな、蒼」
首筋の部分を撫でると蒼が顔をすりよせて来た。よろしく、という意味なんだろう。
「んじゃ、行くか」
「・・・(こくん)」
クゥを蒼に乗せ、俺たちは再び歩き出した。
「・・・・・あれま」
ビンゴとしか言いようがない。
「・・・・?」
「あー・・・いや、なんだ。こんなにも早く目的地に着くとは思っていなかったからな」
ここは洛陽。董卓軍が一番の拠点とする都だ。
月たち・・・・元気かな?
「・・・・(むー)」
「あたっ・・・・どうしたんだクゥ?」
「・・・・(ぷいっ)」
なんなんだ・・・?いったい。
クゥはどうして不機嫌になったんだ? ・・・・わからん。
「とりあえず、行くか」
「・・・・(ぷい!)」
蒼の手綱を引きながら洛陽へ入る。
・・・相変わらずクゥの機嫌は直らないままだった。
洛陽に入ると同時に食事を取ることにした。 ・・・・クゥの機嫌取りも含めてだが。
近くの店に入り、ラーメンを頼んだ。
待っている間、とりあえず膨れているクゥで遊ぶことにした。
膨らんだ頬を突いてやると俺の指を押し返そうとより一層膨らませる。
おーおー。柔らかいなぁ、子供の頬は。
と、ふいに噂話が流れ込んできた。
「――――」
はぁ!?
思わず叫びたくなるのを心の中で我慢する。
暫く耳に傾けていた話の内容はこうだ。
――旅人曰く、管賂の占いどおり、輝く衣を纏いし天の御遣いが現れ、近場の村を救った、と。
――商人曰く、天の御遣いは「十」の牙門旗を一人掲げ、1000人を相手にした、と。
――町人曰く、神の力を使って奇跡を起こした、と。
なんだか色々言われている・・・・。
そもそも俺は1000人なんて相手にした覚えはないぞ?
一騎当千って・・・・。一騎当千に相当する力はあるとしても俺自身にはないぞ・・・。
しかも神の力って・・・・神星刀の力なんて精々家の修理にしかつかってないし。
・・・・ん?
『十の牙門旗』?
ばっとクゥの方を振り向くとにこにこと笑っていた。
・・・・長老の仕業か。
俺が牙門旗をもらったのは少し前。
そして流れる噂・・・。総合的にみると俺が黄巾党からあの村を守った直後に流したと思われる。
加えて俺はあそこ以外の場所では戦っていない。そうなると自然とあの村の住人と限定されるであろう。
つまり俺は長老の手のひらで踊らされていたのか・・・。
なんか悔しいなー・・・。
長老的には俺をこの乱世にもたらす存在として広く広めたにすぎないのだが、本人である俺にとっては正直恥ずかしい。
・・・・まぁ外見は外套で覆ってあるから見つかる心配はないがな。
うむぅ。ここのラーメン美味いな。 また機会があれば来るかな。
飯を食べ終わった俺たちは想定される未来のため、情報収集を開始した。
詰所からはじまり町の人たちと、様々。内容はもちろん洛陽の政治について。
前回と同様ならば民は善政という筈。
まぁ・・・結局は同じだったが。
月を慕う人は多い。だが、その一方で月の身を案じる者もいた。
聞けば最近月の様子がおかしい、と。
今回は白い奴等はいないだろうが・・・心配だ。
「・・・・よし、夜動くか・・・・。クゥはどうする?」
隣を歩くクゥに聞く。
「・・・・(ぎゅっ)」
言わずもがな。ついて行くらしい。
「ならそれまで小休憩だ」
「・・・・(こくん)」
情報収集の間、比較的安い宿屋をとり、そこで夜まで寝ることにした。
説明 | ||
結構更新に時間が空きすぎました・・・; その事を反省として踏まえ、もう少し短くして更新しましょう;; そんなコトで第2話です。 相変わらず短いのが自分のスキルのなさに痛感します……。 未だに結末をどうするか分からない迷走状態ですが、最後まで楽しめたら幸いです。 |
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コメント | ||
多く語るとネタバレになりますが・・・; "とりあえずない"という事にしておきます。物語が進めば・・・。(AKNESS) ヤベェ面白いwwそういえば恋姫達は記憶が有るの?(空良) これからどうなるのかが凄く楽しみでっす!!(pandora) これから、どこに行くのか楽しみです!(スーシャン) |
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