突発的妹祭―バイタルリミット―
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  ―被―

 

「……お兄たそ、もふぁよー」

 意識が微睡を泳いでいる際、そんな戯けた声が何処からともなく聴こえた。幻聴、幻聴だと言い聞かせながら醒めかけていた脳の活動を、再び深い場所に埋没させる。具体的には布団を被り直す。

 可笑しな話なのだが、幻聴が音量を上げてきた。幻属性なのだから、正体がバレタら消えるのが筋だろうに。後、ばふばふ物理攻撃するのもルール違反だと思う。

「もふぁっ!!もふぁっ!!もふぁよーっってばぁーっっっ!!」

 五月の蠅、七月の蝉、クリスマスイブのカップルぐらい煩わしいソイツを、俺は徹底的に無視する。

 ……理由は簡単で、その響きが何だかほら、世界が崩壊する音とか、妹の声とかに似ているからだ。どちらかと言えばより悲惨な後者に。

 ――妹。

 この言葉に解説は要らないだろうけれど、そこはそれ、一応念のためにしておこうと思う。知っている人は読み飛ばして貰って構わない。知っているフリをしてもらってさえ、多分一向に構わない。

 『妹』とはそもそも妹人の音便で、古くは姉の意味も持ち合わせた言葉。

 昨今では何だか血が繋がっていないってのがデフォな兄・姉御前を慕う年下同居人を表す語彙だ。

 そしてこの俺、衣崎南里(きさきみさと)槐(えんじゅ)の、或いはウチのという枕詞を伴うなら、別段何の捻りもなく、血縁関係にある年下の少女を指すそれだった。

 普通の妹で、何故だか天才ってソイツを。

 普通の妹で、何故だか天災ってソイツを。

 示してしまう、悪魔の文言。

 

 固有名称、衣崎南里(きさきみさと)佳代(かよ)

 

 戦場よりも凄惨で、

 超常現象より意味不明。

 密室殺人よりロジカルで、

 アイスクリームよりも、甘い。 

 妹。

 

「……いいよぅ。そんないぢわるするお兄たそなんか要らない。この自爆スウィッチ圧しちゃうんだからっ!!」

 ああ、今日もまた、彼女の声を合図に、抜き打ちカーニヴァルが始まろうとしていた。

説明
(´・ω・){妹に寛容な方のみ御読み下さい。
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妹が居るって死亡フラグだと思うんだ。 序章 活動限界  

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