涼州戦記 ”天翔る龍騎兵”3章14話
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第3章.過去と未来編 14話  幕間 張譲との因縁

 

戦場を離脱した一刀達は10里程離れた場所で兵の集結を行い、負傷者の応急処置や被害調査も合せて行った。

 

「戦死者千と負傷者千の二千の損害か…」

 

戦死者が千に対して負傷者が千というのは少なすぎると思われるかもしれないが、暫くは軍務に復帰できない重傷者のみの数で一週間以内に復帰できる軽傷者は入れてないからでそれに今回の馬超達の攻撃が相手の射程外からの一方的な騎射だった為殆ど損害がなく唯一損害が出たのが最後の突撃だけだったからである。

 

「悪かったな…あたしが猪突した為にこんなに損害だしちまって」

 

呟きつつふと横を見ると馬超が膝を抱えて盛大に地面にのの字を書いていた。

 

「あー、ああ、いや翠は悪くないぞと言うかよくやったと思うよ?」

 

一刀は陳で程cに、そして先ほど郭嘉より詳細を聞いており、今回馬超が我慢する所は我慢しむやみに猪突することなく十分に考えた上での行動だったことは理解していた。

 

むしろ一刀がこちらに来たばかりの頃の馬超なら初めに分離した段階で猪突猛進していたはずでそれを考えれば格段の成長であると一刀は思っていた。

 

なんとか一刀が励ますものの馬超は落ち込んだままでどうしたものかと考えていると

 

「翠〜、な〜に何時までもうじうじしてるのよ、あんたらしくもない。今回あんたはやれるだけのことやってその上で負けた。素直に相手が一枚上手だったと認めて次を見なさい」

 

姉と慕う孫策の檄にそちらへと顔を向ける馬超だがやがて視線はじと目になる。

 

「励ましてくれるのはいいんだけど…なんで雪姉は一刀に抱きついてるのかな(怒)」

 

「んー?ほら、あたしって激しい戦闘をすると興奮が中々収まらないでしょう?こうしてると落ち着いてくるのよ」

 

「うそだ!全然そんな風には見えないぞ。雪姉離れてよ」

 

「いや〜ん、一刀〜翠がいじめる〜」

 

「まったく、こうならないようにって冥姉に頼んでおいたのに…そういや冥姉は?」

 

「冥琳はお留守番♪」

 

一刀達が孫策を尋ねた目的の1つである周喩の病気についてだが、あの後華陀に診てもらったところやはり不治の病に罹っていた。

 

唯、初期の初期であった為華陀の治療により大事には至らず助かっていた。

 

しかし病み上がりの体で遠征は無理とのことで今回は城にて留守番となったのである。

 

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とそこへ郭嘉がやってくる。

 

「翠殿、一刀殿、離脱した兵の集結は終わりま・し・た…お二方、何を為さっているのですか?一刀殿、死にそうになってますけど」

 

そう、一刀に抱きついた孫策を引き離そうと馬超が引っ張っていたのだが、離されまいとした孫策の手が一刀の首に極まっており一刀は窒息死寸前だった。

 

「あー、死ぬかと思った、お花畑が見えてたぞ」

 

「大丈夫ですか?一刀殿」

 

と郭嘉が竹筒に入った水を差し出してくると一刀はそれを受け取り一口水を飲み大きく息を吐く。

 

「ありがとう、郭嘉さん」

 

「ふふ、稟でいいですよ」

 

「えっ?いいのか」

 

「はい、あなたは私と風の期待に十分に応えてくれました。真名を預けるに値しますよ、風も同じだと思いますけど?」

 

「ははは、わかった、確かに預からせてもらうよ、稟」

 

実は陳に立ち寄った際に既に程cからも真名を預けられていたのだが流石長いこといっしょに旅をした親友、お互いのことがよくわかっているようである。

 

「でも今回間に合ったのは稟達が伝えてくれたアレが大きかったよ」

 

「いえ、アレが功を奏したのも一刀殿のおかげですよ」

 

2人が今言っている「アレ」とは船による兵の大量輸送のことで、偶然にも今回曹操軍も同様の手を使っている。

 

曹操軍の場合、陳留の傍に川がある為、流通経路として船はかなり充実しており問題なかったのだが一刀の場合は少し事情が異なる。

 

一刀自身にこの大陸の地理の知識が余り無かった為、寿春傍を流れている川が陳付近まで行くのかわからなかったことと袁術の悪政?(実際は張勲を除く周りの者達が私服を肥やしていたのだが)により疲弊した寿春でどれだけ船を集められるか余り期待できなかったのである。

 

どうするべきか悩んでいた時に郭嘉より届いた伝言、曰く「寿春傍の川は陳付近まで来ているから移動に船を使うべし、それと袁術が大型船を建造していたという噂あり」がその後の行動を決めた。

 

孫策に寿春とその付近で集められるだけの中型、大型の船を集めるよう依頼すると共に周泰と甘寧に袁術の大型船の捜索を周瑜を通して依頼した。。

 

(水軍と言えば孫呉が有名だがこの時点では袁術より独立して余り経っていない為まだ船は十分にない。それに孫呉の船は長江流域にあり寿春傍を流れている川は異なる流れの為寿春までの移動に時間がかかり今回は却下された)

 

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「それにしても今回はツイてたよ、ほんとに」

 

孫策が集めた船だけでは1万以上の兵員を輸送することは難しかったがそこに周泰と甘寧が袁術の大型船を発見して帰って来た。

 

発見された船はかなりのものでこれにより孫策の遠征軍1万5千を船で運ぶことが可能になった。

 

因みにこの船は後に孫呉水軍の旗艦となるのだが、何はともあれ出航した一刀達は通常より3,4日早く陳に到着した。

 

陳に着いた一刀は馬超が既に出陣したことを知ると孫策の騎馬隊千と共に後を追ったのである。

 

「しかしこれからどうするのですか?」

 

「うーん、援軍も到着したしこちらとしては焦る必要はないんだから守備を固めてどっしりとしてた方がいいと思うんだけど…」

 

と言うものの一刀は難しい顔になる。

 

「?どうしたのですか一刀殿。孫策殿が来てくれたお陰で兵数ではまだ少し劣りますが防御に徹すれば十分時間は稼げます。時間が稼げればその内黄巾党と反乱を片付けた劉備殿達が来てくれるでしょう。そうなれば兵数でもこちらが上になり圧倒的に有利になります」

 

難しい顔のまま郭嘉の話しを聞いていた一刀は郭嘉の方を向く。

 

「確かにそうなんだけど…向こうにとって余り時間がないのと同じように俺達もどうやら余り時間はないようなんだよ」

 

「?それはどういうことですか」

 

「それは陳に帰ってから皆を集めた上で話すよ」

 

郭嘉に向かってそう告げると一刀は未だじゃれている馬超と孫策を宥め、集合し終えた部隊と共に陳へ向けて出発した。

 

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曹操軍監視の為、百騎程残した一刀達は翌日の夕方に陳に到着した。

 

陳に到着した一刀達を程cが嬉しい知らせと共に待っていた。

 

「翠さ〜ん、お兄さ〜ん、稟ちゃ〜んお疲れ様〜。いい知らせですよ〜菖蒲さまが意識を取り戻しました〜」

 

「!風、本当か」

 

「はい〜、お兄さんが連れてきたお医者さんの治療がうまくいったようです〜」

 

その医者とは華佗のことである。

 

本来なら2週間は安静が必要だった一刀は今回の戦いには間に合わなかったはずなのだがどうしても行きたかった為、華佗に頼み込みいっしょに来てもらったのであるがそれが幸いしたというところである。

 

沛や陳の医者では馬騰の意識を回復させることはできなかったのだが、流石神医華佗見事馬騰の意識を回復させることに成功した。

 

「よし!じゃあ皆で菖蒲さんに報告に行こう」

 

そういうと馬岱と呂蒙に後を任せ、馬超達と共に馬騰の部屋へと向かった。

 

部屋に着いた一刀は静かに扉を開け、中の様子を窺う。

 

部屋の中は静かで寝台の方を見ると華陀らしき人物が寝台に横たわる馬騰と思しき人物をなにやら診察しているのが見えた。

 

邪魔をしないようにしようとした一刀達だが4,5人も居ればその気配に気づくもので華陀が振り向く。

 

「ん?一刀じゃないか、無事帰ってきたようだな」

 

気づかれてしまった一刀は頭をぽりぽりと掻きつつ華陀へと歩み寄る。

 

「華陀先生、馬騰を助けていただきありがとうございます」

 

そういうと頭を下げる一刀。

 

「よせやい一刀、華陀でいいと言ったろう。それに医者である俺にとって病人や怪我人がいるなら治すのは当たり前だ」

 

「それでもありがとうです」

 

顔の前で手を振って照れる華陀に一刀は再び頭を下げる。

 

っとそこに馬騰が声をかける。

 

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「一刀君、翠、それに皆、お帰り。よく皆無事に帰ってきたわ」

 

その声に気づいた一刀は馬騰の方を向くがすぐ華陀の方に顔を向ける。

 

「華陀、話してもいいかな?」

 

「少し衰弱しているからな、長くは駄目だぞ」

 

「ん、わかった」

 

馬騰の傍に寄った皆を代表して一刀が口を開く。

 

「菖蒲さん、風から大体は聞いてると思いますが曹操との第一戦。負けました、約2千の損害です」

 

「母様、ごめん。あたしが猪突して損害出してしまった」

 

一刀の報告に続いて馬超がすまなさそうに謝罪する。

 

それを聞いた郭嘉が馬超を庇う。

 

「いえ、翠殿。あれは仕方なかったと思います。そうせざるを得ない状況に追い込まれていましたから、寧ろその状況になることを回避できなかった私の責任です」

 

謝罪する2人に馬騰は軽く首を振り

 

「勝敗は兵家の常よ。この経験を次に生かして2千の命を無駄にしなければいいのよ」

 

とそこへ孫策が口を挟む。

 

「へぇ〜、あの師匠がこんなやさしいこと言うとは思わなかったわ」

 

「相手によるわよ。雪蓮にこんなこと言ったら図に乗ってもっと酷い失敗するでしょうから言わないけど」

 

「酷っ!」

 

あっさりと返り討ちにされ落ち込む孫策に笑いが起こる。

 

「とりあえず私はこんな状態だから後は翠、一刀君に任せるわ。皆2人を助けてあげてね」

 

笑いが収まったところで皆に告げる馬騰に一刀達は頷く。

 

「ところで菖蒲さん、もう1つ報告があります、まだ確定した訳ではありませんがどうやら十常侍の張譲が生きてるようです」

 

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それまで穏やかな顔をしていた馬騰が表情を変える。

 

「一刀君!!それは本当なの?」

 

「ええ、ほぼ確定だと思います。雪蓮襲撃犯を調べたところ張譲の手の者とわかりましたので。唯、今どこにいるかまではまだわかっていません」

 

大きく息を吐きながら静かに馬騰は呟く。

 

「そう、あの裏切り者は生きていたか。あいつがそう簡単に死ぬとは思ってなかったけど、やっぱり生きていたか」

 

その馬騰の独白に戸惑ったように一刀は尋ねる。

 

「菖蒲さん、張譲となにか因縁があるのですか?」

 

一刀の問いにしばらく考えた末、意を決したように馬騰は話し出した。

 

皇帝となった劉宏、後の霊帝は外戚と宦官に専断されている朝廷を皇帝の手に戻す力を得る為、皇帝直属の常備軍を創設することを決め、その任を異母弟にしてもっとも信頼している董和に与えた。

 

極秘の勅命を受けた董和は当時所属していた皇甫嵩軍の仲間達、馬騰、孫堅、呉慶及び元大長秋曹騰の縁で知り合った馬騰の良き喧嘩仲間曹嵩と創設へ向けて邁進して行った。

 

そんなある日、彼らの元に勅使が現れ、勅使は張譲と名乗った。

 

張譲は董和に書簡を渡すと訴えた。

 

「外戚どもが今上帝の廃立を計画しており、それを阻止する為に力を貸してほしい」

 

董和はすぐには信じず書簡を開いたのだが、そこには自分が忠節を尽くす異母兄の字で張譲が言った事と同じ事が書かれており、また、使者の張譲は宦官ではあるが今の腐敗した朝廷を憂い皇帝の力を取り戻すことに協力を申し出た信頼できる人物だとあった。

 

董和は胡散臭さを感じつつも兄の頼みを断ることができず、旗下の部隊を率いて洛陽に赴き外戚と戦い計画を頓挫させる。

 

唯、戦いの後いろいろと調べてみたものの廃立計画があったことを裏付ける証拠は見つからず計画の存在そのものが疑われた。

 

しかし、その後も張譲は権勢を誇っていた曹節、王甫、侯覧ら宦官の悪事の証拠を発見する等功績を挙げていた為、董和はやがて信用するようになっていった。

 

ところが宦官のトップが軒並みいなくなりいつの間にか張譲が中常侍筆頭となると掌を返したのごとく董和達の力を削ぎに掛かる。

 

皇甫嵩は些細な罪で左遷され、董和と馬騰は涼州武威へ、そして孫堅と呉慶は荊州長沙へとばらばらにされた。

 

その上今まで率いていた兵の殆どを取り上げられ常備軍計画は頓挫しかけた。

 

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「でも私達は諦めなかった」

 

皇甫嵩軍は彼の私兵に官軍を組み込んだ形で構成されていたが今回取り上げられたのは官軍で皇甫嵩の私兵は残されていた。

 

その中から5百ずつ分けてもらい(実際はもっと多くの兵士達がついて行きたがったが)それぞれの任地へと向かった。

 

また曹嵩は一旦は実家に帰ったもののその後張譲が始めた売官制を利用し太尉(現在で言えば防衛大臣、国防長官等に相当する役職)となり、皇帝との連絡役や朝廷工作を受け持った。

 

任地に赴いた彼らは反乱鎮圧や異民族の侵略を防いだりしながら徐々に力を取り戻していった。

 

5,6年はその状態が続いただろうか、彼らは豪族達を取りまとめて連合を形成し力を取り戻しつつあった。

 

またその間に董和と馬騰に長子馬超が、孫堅と呉慶に次子孫権そして曹嵩に長子曹操が誕生し忙しくも穏やかな日々を過ごしていた。

 

張譲も何もしなかった訳ではなく本当はあの時点で董和達を抹殺したかったが、それをやれば真っ先に自分が疑われるのは当たり前でまだ朝廷内に敵がいる状況では遠くに飛ばすのが精一杯だったのである。

 

その為張譲はこの5,6年己の権力基盤を確かなものにするべく動き回っていてやっと確固たるものとなろうとしていた。

 

そして張譲は動き出す。

 

この時期、霊帝は折れそうになる心を曹嵩から送られる董和達の状況報告によって辛うじて押し止めていた。

 

それを知った張譲は先ず曹嵩に狙いをつける、皇帝と董和の連絡線を断つことにしたのだ。

 

些細なことで曹嵩を免職に追い込むと謀殺(表には病死と発表)する。

 

連絡を絶たれた霊帝は折れる心を押し止めるのが難しくなっていく。

 

次に張譲は計画の中心人物である董和に狙いをつける。

 

どのような手を使ったのかわからないが五胡を動かし大軍で涼州へ侵功させたのだ。

 

五胡は5万の大軍で侵功してきたのだがなぜか董和の放った斥候はその数を5千と報告してきた。

 

分散して侵功してきた敵の一部を見てそれが全軍だと勘違いしたのか…それとも嘘を報告したのかその時はわからなかった。

 

だが自分の鍛えた部下達を信じている董和は1万を以って迎撃に向かう。

 

広大な平原での野戦、敵の5分の1の味方、勝てる訳がない。

 

その上、こちらの作戦が全てばれているかの如く接敵すると間もなく包囲される。

 

董和達は全滅した。

 

ホウ徳ら数名を残し、五胡の大軍を道連れに。

 

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だが董和達にとって1つだけ幸運があった。

 

この時、馬騰は病に罹って体調を崩していた。

 

敵の倍の兵で迎撃するから大丈夫と判断した董和は馬騰を残すことにした。

 

それゆえ、馬騰は死なずに済んだ、本人にとっては辛い幸運だったが。

 

ホウ徳ら生き残りを回収し回復を待って経緯を調べていたところに洛陽より曹嵩病死の報が届く。

 

それで馬騰は全てを察する。

 

全ては張譲の仕業であると。

 

次は孫堅達と察した馬騰はすぐに注意を喚起する書簡を送ったもののく矢継ぎ早の討伐令で孫堅はあちこちを転戦していた為書簡は届かず連戦の疲労で呉慶が病死し、孫堅も張譲と黄祖の罠にかかり戦死してしまった。

 

それを張譲より聞かされた霊帝は心が折れてしまい、張譲の操り人形となり失意の内に病死した。

 

1人残された馬騰は皆の遺志を継ぐべく涼州軍の再建に奔走し十数年が経ったのだった。

 

そう!張譲は馬騰にとって夫や仲間達の仇なのである。

 

「……という訳よ」

 

というと馬騰は疲れたようで目を閉じる。

 

部屋の中は静まり返っていた。

 

一刀や郭嘉達はもちろんのこと娘である馬超もいつも元気で明るかった母親にそんな過去があり、どんな思いでこの十数年を生きてきたのか想像することもできなかった。

 

孫策はある程度事情は知っていたものの自分の両親の遺志を受け継ぎ孤軍奮闘していた馬騰を思うと声が出なかった。

 

馬騰の様子を見ていた華陀は話しが終わったのを見て馬騰の容態を調べ一刀に告げる。

 

「一刀、今日はここまでにしてくれ。馬騰殿はまだ安静が必要なんだ」

 

「ああ、わかった。皆行こう」

 

そう言い部屋を出て行こうとする一刀に目を開いた馬騰が声をかける。

 

「一刀君、あの子のこと頼むわね」

 

一刀は振り返り笑顔で言う。

 

「わかってますよ。まかせてください!」

 

一刀の元気な承諾の言を聞くと馬騰はまた目を閉じる。

 

うっすらと微笑みながら。

 

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部屋を辞した一刀達は大広間へと続く廊下を歩いていたが、ぽつりと一刀が呟く。

 

「菖蒲さんと張譲にあのような因縁があったとはな…」

 

一刀の呟きを聞いて考え込んでいた様子の郭嘉が一刀に訊ねる。

 

「一刀殿、戦の後に言っていた“時間が余りない”というのは張譲のことを指していたのですか?」

 

「ああ…」

 

一刀は小さく頷くと自分の考えを話し出す。

 

まだ確定してないので馬騰には言わなかったが張譲はおそらく袁紹のところに潜んでいる。

 

今、袁紹のところで起きている内紛は張譲が袁家を乗っ取る為に仕掛けた策略である可能性が高い。

 

袁家のトップが袁紹ならば袁家が財力や兵力を誇っていたとしても余り怖くない。

 

しかし張譲が乗っ取ってトップに立った場合、話しは変わってくる。

 

張譲は馬騰達を相手に謀略戦を仕掛け、そして勝った程の謀略家だ。

 

諸葛亮や鳳統とは言わないまでもある程度の軍略家でもあるだろう。

 

そのような人物が袁家の財力と兵力を手にしたとなるとかなりの脅威となることは当然の帰結だ。

 

それに一刀は張譲の危険性について危惧していた。

 

張譲は自分以外の人間等どうなってもよいと考えている感じがするのだ。

 

董和がいい例だ。

 

五胡をけしかけた上に誤情報を与えて董和の抹殺を確実なものとする。

 

董和達が奮戦し相討ちにもっていけたからよかったものの、もし董和達があっさりと敗れた場合五胡によって涼州はもちろんのこと長安辺りまで蹂躙されていたかもしれないのだ。

 

それを考えればこのような策は採り辛い、いや採れないはず。

 

目的のために手段を選ばず、そして目的以外のところにどのような影響があろうともお構いなしな処に危険性を感じていた。

 

「一刀殿の言うとおりですね。長安は城壁に囲まれていますからなんとかなったかもしれませんが、その他の町や村はかなり悲惨なことになったでしょう」

 

「父様、母様の仇だし、こんな陰険な奴必ず討つわ!」

 

郭嘉は賛意を示し、孫策は憤慨し決意を表明する。

 

「雪姉、抜け駆けはだめだからな。奴は父様の仇でもあるんだ」

 

「お兄さんの言う通りですねー、でもー曹操さんとのことに決着を付けるのが先ですよー」

 

皆が張譲打倒の意思を示す中、程cが冷静に現状の問題を提起する。

 

「うん、風の言う通り。張譲打倒の為、一刻も早く曹操との決着を付けないといけないんだ。よしっ!これからすぐ軍議をやるぞ」

 

そう言うと一刀は会議室へと皆を率いて歩いていった。

 

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<あとがき>

 

どうも、hiroyukiです。

 

今回は話しの容量の割りにかなりかかってしまいました。

 

言い訳をさせてもらいますとどスランプからは脱しつつあったのですが年度末で山のような仕事が………

 

ここ1ヶ月近く部屋には寝る為に戻ってくるような状態でした。

 

合間を見て1行、1行と進めていた為時間がかかってしまった訳です。

 

さて、今回は幕間みたいな感じにして張譲との関わりについて書きました。

 

だからどうだというわけではないんですけど…

 

まあ、史実や演義において馬騰と張譲の接点ってなかったと思いますのでここいらで説明しておいた方がいいかと入れてみました。

 

次回は劉備、桃香の方の話しを少しと馬超、曹操両陣営の決戦へ向けての軍議の様子の予定です…灰汁まで予定ですので違っても石投げないでください。

 

では、あとがきはこのくらいにしてまた次の更新でお会いしましょう。

説明
社会人の皆様はこの年度末をいかがお過ごしでしょうか?
因みに作者は仕事の山に埋没し死に掛けていました(汗)
お待たせしました、余り出来は良くないですが3章14話です。
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コメント
だめぱんだ♪様:現状無理したくてもできそうにないので少しずつやっていきます。(hiroyuki)
待ってました!とても面白い興味深い展開。無理はなされぬ程度に、頑張ってくださいw(だめぱんだ♪)
皆様、暖かい御言葉ありがとうございます。次回の更新も遅くなりそうです。申し訳ありません。(hiroyuki)
お帰りなさい!でも、ご無理をなさらぬように。(tokitoki)
おお、復活なされましたか。あまり無理しないようにご自愛してくだされ(闇羽)
待っておりましたが、あんまり無理なさらぬように^^;(ななや)
おおう、復活なさいましたか。心配してましたよ(yosi)
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