真恋姫無双 究極医術  五斗米道ォォォォォッ!! (特別編)                                    『朧の影と怪獣大血戦』
[全13ページ]
-1ページ-

<真恋姫無双

 

 

     究極医術 五斗米道ォォォォォッ!! >

 

 

 

 

 

          <はじめに>

                

               このテの話は……深く考えると損をします。

 

                 さあ、こころの準備はいいでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

                

 

-2ページ-

 

 

 

<究極医術 五斗米道ォォォォォッ!!> 

 

 

 

「ぁぅぁぅ・・・詠お姉さんにはだまされたのですよぅ」

白糸から編まれた刺繍がほどこされたゴスロリ風の衣装を身にまとった幼女と言える幼さが残る少女は

ため息をつき、椅子に深く腰掛け足をぶらつかせていた。

以前、詠との賭けで話題にでたお兄様と一緒に住める屋敷を貰える話があった。

しかし、この賭けは身の丈70cmにも満たない幼女、朧の策謀により別の計画の為に利用され、

それから暫くして、相国である月に今上陛下からこの度の戦勝祝いとして様々な金銀財宝や称号が下賜された。

そしてその恩恵により月に付き添った者達にも恩賞が与えられることとなった。

本来一番の功労者である朧とその兄である一影にも今上陛下から直々の恩賞が与えられるはずであったが、諸般の事情によりそれは出来ないことから下位の功労となり、陛下の臣である董相国からの恩賞として成都に程近い避暑地にある邑の屋敷だけが下賜されることとなった。

 

当初、一影は興味なく辞退しようとしたが、朧はお兄様と一緒に住める屋敷という言葉に敏感に察知し一影の不平を華麗に無視して、銀盆を持った待中からその目録を謹んで受領をした。

一影は憮然としていたが、朧はその目録を胸に抱き小躍りするように喜んだ。

しかし、一影は月から数段下がった場所に佇んでいた詠が何故か必死に笑いを堪えようと一生懸命だったのに一抹の懸念を感じていた。

 

短い休暇をもらい、この小旅行の為に揃えた動きやすい青の衣装とそれに合わせ幅広の白い帽子をつけ着飾った朧とそれとは対象的に何時もと同じ服装をしている一影は、下賜された屋敷で休暇を過ごす為に騎乗の人となって一路目的地に向かった。

 

 

                      邑

 

この文字から連想すると周囲を低い土壁で囲まれ、みすぼらしい家々が立ち並ぶ程度のものだろうと誰もが思っていた。しかし朧にとっては『お兄様と一緒に住める屋敷』ということの方が重要で、その邑がどのような邑などには興味はなかった。

 

しかし、避暑地にある邑に到着し朧達は仰天した。

岩を砕き整然と舗装された石畳の街路や景観を考えて同じ色に統一した洒落た町並み

これをを見て今が乱世であることを忘れさせるような邑に幼女はいたく喜び、朧を抱えていた一影は感嘆の声をあげあたりを見回していた。

邑の入り口では、邑人達が総出で朧達の訪問を歓迎すべく垂れ幕まで作って出迎え、邑人の案内で邑の中央に新築された豪勢な屋敷に二人は喜び勇んで門をくぐり大広間に入った。

 

そして、二人は大広間の壁に掛けられていた垂れ幕を見て絶句した

 

              「熱烈歓迎!!臨時州牧御一行様」

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

 

 

そして現在、民からの嘆願、駐留部隊の再編成、予想生産高の見積もり等、詠により客分から正式な臣下する為に既成事実をつくるべく山のように用意されていた仕事を黙々とこなさないといけない状況に一影と朧はさらされていた。

「朧、詠のヤツいくら新統治体制の実験だからとわざわざご丁寧に臨時州牧府まで設けるんだ」

「あぅあぅ、お兄様不平不満を言っていないで、その書簡に目を通したなら署名してください。それとこの木簡にも……」

 

このとき、一影は静かにと言って口元に指を立て、耳を澄ました。

外の向こうから喧騒な音が聞こえてきた。

「朧、近くで……争っている声が聞こえる……見てくる」

そう言って一影は、壁に掛けかけていた野太刀を握り颯爽と出ていった。

「あぅ〜、お兄様そう言って逃げないください。朧も一緒にまいります」

 

 

 

 

 

カンカン

警鐘を鳴らす音

業火に見舞われる家々

絶叫しながら逃げ惑う人々

そして、咆哮を上げながら外壁を破壊するモノ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                「暴れパンダ様だ――」

 

 

 

肩にひっかけただけの羽織を、ゆるい風に揺らしながら歩き、一影の襟元で白絹のマフラーが戦火により緩やかに輝いていた。

一影の感情を移さない深い瞳はその光景に釘付けにされ、硬い声で左腕で強く抱きかかえている朧に質問をした。

「……朧、この世界のパンダは人を襲うのか、それと何故パンダが出ただけで家が燃えるんだ」

「あぅあぅ、お兄様は時々おバカになるのですょ 朧は悲しいです〜」

そう言って朧は一影に聞こえるように肩から吊るしたウサギのポシェツトに入れてあった愛読書を朗読した。

 

 

 

「……その昔、漢王朝の高祖 劉邦がまだ漢中王の頃、狩りをしていたら劉邦は馬から落馬しおむすびのように風の谷をころげ落ちていった。もはや絶体絶命、誰もがそう思った。その時、一匹の野生のパンダがワイルドに現れ転がる劉邦の命を救った。それ以来劉邦はいたく感激をして民に言ったそうな

 

               『パンダを殺すヤツは人にあらず』

 

以来、この地域では士農工商より上位にパンダがあり、下々から『パンダ様』と畏敬の念で言われるようになった。

なお、西方の拳闘士 三月呂口(ミッキー・ローク)が使った『必殺の猫パンチと』とは、パンダ(熊猫)の強力な攻撃からきた言葉であることは言うまでも無いであろう……」

                     洛陽民明書房(コンパクト版)「仰天☆野生のパンダは肉食だZE!」

 

 

 

 

 

 

 

 

-4ページ-

 

 

 

一影は笑うでもなく、いつもと変わらぬ声、いつもと変わらぬ虚無の瞳で

咆哮を上げ、口から火を出すパンダを見ていた。

「百歩、いや百万歩譲ってパンダがエライとしよう。しかし、オレにはこの無法を見逃せん」

そう言って、朧を優しく降ろし野太刀を抜いてパンダに詰め寄った。

その異様な刀身は漆黒に彩られ、一切の光を反射せず、

これを見るものはあたかも魂を吸い寄せられるような感覚を感じたであろう。

一影は野太刀の刀身の重さと遠心力により、パンダを一撃で袈裟斬りにすべく上段に構えた。

「お兄様、いけません。パンダを殺したら末代まで……」

野太刀を構えたまま横目で、遠くの方であぅあぅ言っている朧を安心させるつもりか

一影は朧の言葉を笑った。

敵兵から魔王と恐れられるオレが、祟などを恐れるとでも思うのか

 

確かに朧はお兄様が勇猛果敢な人であることは知っている。

しかし、お兄様は大変な誤解をしている。

あぁぁこれは、たとえお兄様でも……

 

 

意を決して朧は一影に聞こえるよう口に手を当てて言った。

「……違います。全国の子供達から不幸の手紙が着るのです。それもカミソリ付きで」

 

 

数瞬の時間をかけて、一影は何かを、色々と、考えていた。

そして出した結論は、野太刀を鞘に戻し素手でパンダに突撃していった。

自分の力を積み上げるのではなく、相手の力を封じ込める戦い方

……と言うより、もはやヤケクソの戦い方

 

 

人ではない存在である一影と絶対人ではない存在であるパンダ

 

両者は共に咆哮し、一影が強力な重い蹴りを繰り出すとパンダはその足を掴み投げ飛ばし、パンダが

必殺のパンダクローをくり出すと一影はそれを両腕でガードし、その隙をついてパンダの腹に骨をも砕く硬い拳の一撃を与える。しかし次の瞬間、パンダの足払いにより一影はもんどりを打って地面に転がされる。そしてパンダから次の攻撃がくる前に、一影は全身のバネを使い体勢を立て直す。

そうこうして両者は、間合いを取りなおすようにそれぞれ離れた。

 

「……くっ、天下無双の呂奉先や魏武の大剣等名だたる武将を相手に引けを取らなかったオレがこんなにも苦戦するとは……それもパンダに」

一影の服は無残にも引きちぎられ、そこから露出している身体のいたるところに出来た切り傷や頬から薄っすらと血が滲み出ているのにも気にせず左手一本で構え、猫足で擦り寄っていった。

一影は頬から垂れる血を右手で拭い、親指についた血を舐めた。

お互い人の外を外れたもの同士

一影は目を細めた。

 

好敵手

この言葉に一影の精神は高揚し、戦いの歓喜に身を寄せていた。

 

 

 

 

-5ページ-

 

 

 

だが、一影の宿命の戦いをよそに、涙目になって事態を見ていた朧は張り裂けんばかりの声で言った。

「お兄様、野生パンダを甘く見てはいけないのです。ましてやここのパンダは未確認生物 『野人』と日夜縄張り争いをしていることから武芸百般に通じ、白兵戦などもっての他です」

 

先ほどまで猫足でパンダににじり寄っていた一影の動きが止まった。

そして、しばし一影は微動だすることはなかった。

誰が見ても一影は何か物凄―い葛藤をしている様子が窺えた。

 

あぁぁ、一人対一人ならお兄様は絶対無敵なことは朧は知っています。

しかしそれはあくまで人の枠での話、これが人外ならお兄様は……

 

このとき、一影の身に何かが起きた。一影はその場にうずくまり、

それを目の当たりにした朧は、思考は中断し慌て悲痛な叫びを上げた。

一影はその場で、動かない右足を擦っていた。

「ふくらはぎに激痛が……ちっ、準備体操をしなかったばっかりに、足にこむら返しがおきたか」

 

このような好機をパンダは逃すはずかなく、どっから取り出した多機能炊飯ジャーを高々と上げた。

炊飯ジャーによる魔王封じ

幾多の魔王達を封じたとされる失われた技を野生のパンダが体得していたとは

恐るべし野生の知恵

炊飯ジャーのゴハンがふっくら炊ける銅製内釜が青白い閃光が出し始めた。

 

一影は口から垂れた血をそのままにパンダを睨みつけた。

ああ、魔王としての人生もこれで終わりか……それもよかろう……

一影は自傷気味に笑いながら、段々と光が強くなる炊飯ジャーを見た。

もはやこれまでか

朧すまん。明日から魔王から大魔王と言うようにするよ……

 

 

 

 

-6ページ-

 

 

 

そのとき、一陣の強風が周囲を襲った。

「オレは病人を見捨てにはしておられない。助太刀いたす」

何時の間にか一影の前に革のズボンをはいた赤毛の男が仁王立ちしていた。

そして、男の手には異様に長い鉄鍼が握られていた。

 

「ハァァァァァ、オレの小宇宙(コスモ)よ。燃焼しろ。 五斗米道 奥義 『四大死神』」

 

赤毛の男は気合とともに何も無い空中に一鍼、地面に一鍼を刺した。

それと同時に突然強風が吹き出しパンダの視界を邪魔した。

パンダはその風に耐えるべく身をかがめた。

だがパンダが身をかがめたのを見計らうように大地は揺れ、地割れがパンダの足元に亀裂が伸びていった。

足場を崩したパンダは悲痛な鳴き声を上げながら地の底に飲み込まれていった。

 

一影の横には何時の間にか少女が一影の身体にできた裂傷に薬を塗っていた。

「お前らは、一体……そして、先ほどの技は」

「私は桜、お話はあと、今はあなたの治療が先決です」

強風のせいで勢いよく轟々と燃える家を背に、赤毛の男は一影に近づいてきた。

「俺の名は華佗、五斗米道の華佗だ」

 

五斗米道 奥義 『四大死神』

道教の教えに人体中には「小宇宙」と呼ばれる体内の宇宙的エネルギーが存在する。

これを燃焼させて繰り出す治療方法では、天に鍼を刺せば空を引き裂き、地に鍼を刺せば大地を割るほどの威力を誇る。そしてこれはもっぽら治療を邪魔をする四大死神(地震・雷・火事・親父)を黙らす為に編み出された五斗米道広域治療術。だが本来の目的とは裏腹に、患者の家族からもっぱら追っかけられる場合に使用されるようになってしまった……

 

説明している華佗に妹弟子の桜は耳打ちをした。

 

(華佗師兄ーパンダの食べていた竹の子を奪って逃げてきましたけどアレしつこかったですねー)

 

(ああ、邑に逃げれば追っかけてこないと思ったが……これは邑人達にはナイショだぞ)

 

華佗と桜は小声で話しているところに、一人の幼女が駆け寄ってきた。

「おっ、お兄様」

朧は泣きしゃくりながら駆け寄り、一影の首に抱きついてきた。

 

「……どうやら助かったようだな礼を言う華佗殿。それとただいま、朧心配をかけてごめん」

「ごめんじゃありません……一体、朧が、朧が……どれだけ心配したと……」

一影は朧の髪にそっと優しく唇を押し付けた。

「ぁぅぁぅぁぅ……お、おお、お兄様、い、いま、な、なな、何を、こ、公衆の面前で……」

朧があぅあぅと言い出した。

普段朧が一影の頬に唇を押し付けているが、これが逆になると朧は相変わらず、訳の解らない反応をしていた。この不可思議な朧の一連の行動を観察した結果、一影は泣く朧を黙らすにはこれが有効と考えるようになった。

 

 

 

 

-7ページ-

 

 

 

「ところで朧、オレはこの恩人たちに名乗ってもいいのか」

一影は真名しか持って居ない身ゆえ、名乗りあげを朧に禁じられている。

その為、ことあるごとに一影は朧の判断を窺っていた。

「あっ、申し遅れました私は司馬仲達と申します。

 お兄様は真名しかお持ちで無いので名乗りを御容赦下さい」

「そうゆう理由で、オレが一影だと名乗れないんだ」

華佗と桜は今自分で名乗ったんやんけとツッコミを入れたい気持ちになった。

しかし、一応それは彼の真名だそうだから聞かなかったことにした。

 

「それにしても黒衣にして黒髪黒瞳、白襟巻き……先週街で聞いた御仁の特徴と同じだな」

華佗はウンウンと頷きながら一人納得していた。

それを見て不思議に思った桜は華佗師兄に街で聞いた話とはと尋ねた。

「うむ。先週街の薬商人から聞いた話で、遥か遠く洛陽で官軍とそれに反対する賊軍である連合軍の戦の話だが……」

 

虎牢関の話だ。

一影と朧は自分達の身分が明るみにでると面倒なことになると考え目配せをした。

二人の様子を気にもせず、華佗は妹弟子の桜に話をしていた。

 

なんでも、大名門袁家から曹家、公孫家等、大小の武家や有力者達が、洛陽の兵の五倍以上の大群で襲来したそうだ。本来なら漢王朝側の董相国が率いる官軍は敗退するのは自明だったが、一人の男によりその戦局は大きく変わった。

賊軍はあの手この手で舌戦・一騎打ち・集団戦闘等で戦を仕掛けたがことごとくその男によって撃退された。なにより、その男の率いる軍団は鳥のように素早く、虎のように獰猛な集団で敵兵から恐れられていた。そして何時しか敵兵からその男のことを畏敬の念を込めてこう言うようになったそうだ。

 

 

 

 

-8ページ-

 

 

 

 

「その名を『裸王』と……」

 

「……違う。『魔王』だ」

 

一影は凍りつくような声で即座に訂正をした。これを聞いて朧はあぅ〜とため息をついた。

 

朧は華佗達が田舎者で都会の話に疎くてと一影に謝っているのを横で聞きながら想像していた。

東西南北、地平線にまで広がる幾多の雑兵

哄笑を挙げながら右手に方天画戟を持ち

左手に敵将の首を握り跳躍する

そして、全裸の一影

 

肉・体・美

 

やっ、山が動いたとざわめく雑兵

 

 絶叫する一影

        らーおーうー

 

……それも、ちょっといいかも……

朧はさっと頬を朱に染め、ぱくぱくとさせながら一影を見て、恥かしさのあまり一影の肩に額を押し当て赤面した顔を隠した。

 

「……故に『魔王』と呼んで貰って構わない。 と言うかそう呼べ」

 

一影のドスの効いた冷徹な宣言に、華佗と桜は正座をして首が折れるかのように頷いていた。

いつも無表情で怒ることは基本的にはなく、いつもは相手に関心をしめさず。そしてつまらない物を見るような目をむけ人とは関わろうとしないお兄様がこのときばかりは珍しく怒っていた。

お兄様の意外な一面を見た朧はあることに気がつき、また華佗達を正座してお説教をしている一影に言った。

 

「お兄様、華佗様は五斗米道という究極医術を学んでいらっしゃるなら、お兄様の病を治して貰えるのでは」

 

 

 

 

-9ページ-

 

 

 

「オレは眠らないんだ」

 

一影の病

これは他の人、ましてや敵の間者等に聞かれてはならない一影と朧二人だけの秘密。

その為、このような大道で気楽に話せる内容ではないことから州牧府の奥まった一室に華佗達を招いた。

 

人の道をはずれたモノとの死力をつくした壮絶なる戦いで受けた傷を治療された一影は、自分の話なのに感情もなくただ淡々と華佗達に己の症状を説明していた。

一影は華佗達に一振りの野太刀を見せ、いつもとかわらない抑揚のない声で語った。

「天はオレにこの武を与えてくれた。だが心の安息までは与えてくれなかった。そう、その場にはオレの愛用の『ヒヨコの刺繍付きマクラ』がなかった……

オレはすぐ、街の寝具屋に特注をしたが、どれもオレに安息を与えてくれるものはなかった」

 

ヒヨコの刺繍付きマクラ(いとーよーかどー特別ご奉仕価格5980円)

低反発クッションを主体として、更に肩こりによく効く磁石が付いてアナタの安眠をお約束します。

 

一影はいつも通りの感情の篭らないお声で話を続けた。

「その為、オレはこの世界にきてから眠らなく、軍議でウトウトした時に適当に言ったことがかってに策として採用されたり、また、眠くてアタマが冴えないときに部下の幽から『魔王サマ、敵将の首取ってきましたぁ』と命令した覚えがないこと等が度々あるんだ……」

 

一影の苦悩を聞いて朧は兄を哀れんだ。

お兄様の苦しむ原因が、朧には何となく、解っておりました。

でも、それが何故なのか……そこが良く判らないのです。

朧はあまりにも切なく、悲しいです……

ヒヨコの刺繍付きマクラ……そこまで重要なのでしょうか。

 

「マクラが変わると眠れない人がいるからな、適度な運動をしたら疲れて眠れるんじゃないか」

華佗の提案を聴いて一影はため息を吐き、首を左右に振った

天下の武将を相手に生死を別ける一騎打ちをしたり、数万の雑兵の群れに単身乗り込み切り刻んできたが俺を眠りに導くような戦いではなかった。

「ではでは、桜は難しいことを考えると眠くなりますが、まぉーサマはどうなんですか」

 

 

予想どおりの桜の言葉に、一影は口元を歪ませる。

「朱里と桂花といった謀士達の裏をかく方法を考えたり、十万の兵が一斉に倒すような策を色々と考え、宮中での咄嗟の論戦を繰り広げたが、どれもオレを満足するようなものではなかった」

 

華佗は腕を組み唸りながら考えていた。この魔王様には体質的に鍼や灸は効きそうに無いことが窺えた。この眠らないようになってしまった原因は極度のストレスからくるものとわかるが、そのストレスを取り除かない限り安眠することはできないようだ。

 

 

 

 

-10ページ-

 

 

 

その時、華佗の脳裏に五斗米道天師のお言葉が閃いた。

 

 

     『乙女の膝枕じゃー 漢のロマンじゃー これで萌えない漢は、男ではない!!!』

 

 

「ならこの方法ならどうだ」

華佗の提案に一影は無表情であったが朧は赤面した。

 

「ぁぅぁぅ・・・ずるいのです、お兄様は、こんなことをしろなんて・・・」

言うまでも無く、一影には何がずるいのかわからない。

しかし、華佗の提案により朧の膝枕で眠ることとなった。

朧の腕に力がこもり、耳まで真っ赤になりながら、心臓が早鐘のように鳴っているのは直ぐに気が付いたが、その原因に一影は思い至る事も無く・・・

一影の感情を移さない深い瞳が、朧の澄んだ真紅の瞳を捕らえ、真直ぐにその奥底までをも読み取る。

「重いか朧、朧の膝はちょうどいい高さだ」

「ぁぅぁぅ・・・そんなに褒められると、恥ずかしいのですよぅ」

 

一影は頭の向きを変えるべく動いた。

お兄様・・・だめです。

朧は、お兄様が抱きしめてくれないと寝れないです。

それを膝枕なんて、せめて抱きマクラにしてくれないと、だめなんです。

そんな、満足そうな目で・・・ああ、朧を見ちゃ・・・嫌です

 

 

その光景を見ていた華佗は口に手を当て、何かを考えぶつぶつ言っていた。

 

兄妹愛……

 

医者と患者……

 

慈愛……

 

「そうか、わかったぞ。俺に足りないものが。桜すぐに山に戻るぞ」

「エッ、華佗師兄、ってちょっと待ってください〜」

 

そう言って、華佗と桜は朧達を置いて部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

-11ページ-

 

 

 

「なんだったのでしょうか」

 

朧は膝に乗っかっている一影の頭を優しく撫でながら当然現れ、当然去っていった華佗達を見送った。

「朧、連中は去ったか」

華佗達の助言にしたがって一影は朧の膝枕で寝たが、やはり眠れなかった。

そして、先ほどの華佗達の喧騒で頭が冴えたことから一影は起きることにした。

体中が軽い。一影は身体に巻かれた包帯をとり傷口をみた。

「凄い薬だ。先ほどの切り傷はもうカサブタになっている。しかし…あの連中は……」

 

一影は今だ寝台に座って呆けている朧を見た。

「お兄様、お兄様はご存知なのでしょうか、成都の地域ではあのような者達が跋扈しているのでしょうか」

一影は替えの衣服に着替え身支度をしながら朧の質問に鋼の声が返ってきた。

「知らんし、知りたくも無い。ただ言えることはここは人外魔境であることは確かだ……」

 

人の外である存在であるお兄様ですらこのように言うのなら統治するのは難しいかも……

朧は軍師の顔となって、今回の収穫を検討してこれからどう動くかその小さな頭で次の一手を考えていた。

「それと、朧」

一影の言葉に現実に引き戻された朧は首を傾げて見た。

お兄様なら、この毒水や猛獣等が跋扈する人外魔境の地を合理的に統治する良策があるのかと朧は期待した。しかし身支度を終えた鋼の声は朧の期待するものではなかった。

「朧は、少し健康の為に太ったほうが良い。太ももがゴツゴツして痛い」

朧はあぅ〜と肩を落とし言った。

 

 

 

 

 

-12ページ-

 

 

 

同時刻、ある場所にて

一人の男が小さく盛り上がった塚の上に座り込んでいた。

時折、吹く風に流れ地の底からうめき声が聞こえたきた。

その悶絶する呻きは、夜光により反射する化学繊維の服を着た男の足元から聞こえていた。

男が座っていたのは土の塚ではなく、眩い光を反射する男により倒された人で築き上げられたものであった。

男は夜空を見上げた。

眼鏡ごしから見る夜空は、男のいた世界の夜空とは違った。

深遠の闇のなかで大きく煌く月と幾多の星が地平線まで広がっていた。

 

「……なんや、星の動きが変わったわ」

 

この世界に導いた左慈という輩を一撃で倒し、男はこの世界の真理を聞き出していた。

男は不敵に笑みを浮かべた。

男にとってこれから始まるであろう究極と至高の戦いなど児戯に等しいものであった。

男のもつ天の神技こそ究極にして至高!!

それを立証すべく、これから始まるであろう戦いの歓喜に男は高揚していた。

そして人塚から飛び降り、一路究極と至高が激突するであろう成都の方角に向かって行った。

 

 

 

     

 

 

 

 

次回に続く・・・多分

 

 

 

 

-13ページ-

 

 

 

 

 (あとがき)

 

 

 

 

 

       はじめまして、この度は 真恋姫無双 究極医術  五斗米道ォォォォォッ!! 

 

       (特別編)をご覧になって頂きましてありがとうございました。

 

       今回のお話は、悲恋姫の作家Night様のオリキャラである一影君と朧ちゃん

       をお借りして話の構成を致しました。

       悲恋姫はかなり人気がある作品ですので、出来る限り原作に近い作風で書いた

       り、地文から想定してこれを面白く表現を替えたりなどをしております。

 

        一応この一影と戦う生き物ですが、五斗米道では死者すら生き返らせる

       チートを超えた超人(非常識)の集まりですので、一影君は最強チート状態で

       これらのキャラと対等レベルに設定されております。

       

       

       最後まで、本編を読んで頂きまして大変ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

 

 

 

 

       最後まで、本編を読んで頂きまして大変ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

 

 

  

 

 

説明
本編とも外伝とも関係ない 『華佗√』 です。
五斗米道を取り巻く暑苦しい漢たちの戦いです。

今回、悲恋姫の作家Night様からオリキャラ使用許可等の承諾を頂きました。
その為、今回のお話が『あのキャラ』がゲストとしてでます。
一応お借りしたキャラですので出来るだけNight様の作風に合わせております。
その為、今までの書き方が違います。

どなたかお一人でも抱腹絶頂したと思っていただけたら僥倖です

それでは宜しければお読みください。
2010/3/27 読みにくい文章を書き換えました。

前作;http://www.tinami.com/view/128532
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
2569 2348 18
コメント
>りばーす様コメントありがとうございます。『天孫降臨』と言って出現するヤツはラスボスです。(thule)
>四方多撲様コメントありがとうございます。ウワサは伝言ゲームのようにどこかでちがってくるのでしょうか〜(thule)
>BookWarm様コメントありがとうございます。そのように笑って頂きましてありがとうございます。(thule)
>ねこじゃらし様コメントありがとうございます。一応できるだけNight様の作風に合わせてお笑い要素を入魂しました。(thule)
>SHUN様コメントありがとうございます。不思議時空に引きずりこまれると誰もが妖しくなります。(thule)
及川ーー?!及川ーーー!!(りばーす)
個人的過去最高作!w ラオウの件は吹きましたわww(四方多撲)
鼻水吹いたのはリアルで初めてかもしれない…あかんてwwwこれは卑怯やてwww(ねこじゃらし)
あえて何も言いませんが…影よお前はいつから変態という名の紳士になったのだ…苦笑と爆笑を足して九倍にしたような笑いが…(SHUN)
>jackry様コメントありがとうございます。お笑いして頂けてなによりです。(thule)
>Night様コメントありがとうございます。またオリキャラ使用ありがとうございました。一応研究しましたが原作に近かったでしょうか?(thule)
お疲れ様です。『裸王』でやられて吹きました、それまでは何とか耐えていられたのに・・・そんな手で来るとは。(Night)
タグ
三国志 真恋姫無双 恋姫無双 華佗  一影 

Thyleさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com