恋姫無双 〜天帝の花〜 2話 |
―――それは、懐かしい夢。
ここは、とある城の国の一室。窓から差し込む陽気な光は、部屋全体を癒すような
感じがした。部屋の中心に置いてある机を挟むように栄花と雪蓮が座っていた。
「ねぇ、栄花退屈じゃない?」
「………」
「なんか暑いなぁ〜なんて」
「………」
先程から、この繰り返しであった。勉強が終わってしまった雪蓮は暇を持て余して
栄花の部屋に来たのだが部屋の主は、お茶の一つも出すどころかこちらの言葉にさえ
反応してくれない始末。
「もぅ!」
バチン! と景気がいい音が鳴り響いた。
さすがに、無視されることに我慢の限界が来たのか容赦なしに叩いてしまった。
「なんだよ、雪蓮!
用があるなら話しかけるようにいっているじゃないか。」
「話しかけて無視しているのはそっちでしょ! ここのところ勉強ばっかりじゃ
ない。 す、少しぐらい私と遊んでくれたっていいじゃない。せっかく、勇気だしたのにぃ……」
盛大に椅子から転げ落ちた栄花は、頬を摩りながら抗議し雪蓮は俯きながら今までのことに
ついて話した。若干、頬に赤味を帯びていたのは気のせいだろうか。
「最後のほうが、小さくてよく聞こえなかったけど僕が悪かったみたいだね。ごめんね。
それで、雪蓮は何のようなの?」
「そうよ! 栄花はこの後の午後とか暇かな? ここのところ部屋に篭りきっていて外に出て
いないでしょ? 気分転換の一つとして私ともしよかっ―――」
「ありがとう、雪蓮。心配してくれなくても平気だよ、これから冥林の付き添いで本を買いに
行く約束があるんだ。だから――」
バチン!!!!!
先程の数倍にもなる、音が部屋に鳴り響いた。そこには、ぴくりとも動かない栄花と背中に
白い虎が浮かび上がりそうな立っている雪蓮だった。
とある森の中。周りの草木は太陽の光を浴び、耳を澄ませば風に揺られ小鳥の囀りや
葉音が流れ込んでくる。そんな陽気の中、一人は悠々と馬に跨り林道を進んで行き、相方は
気を失っているため、縄で縛られている状態でもう一方の馬に括り付けられていた。
「もぅ、なんだってこいつは、こんなにも鈍いのかしら」
雪蓮は、気絶している栄花の顔を見つめながらこれまでの彼に対して行っていた事が
頭の中で廻るように流れていた。
「栄花、お腹すいてない? お昼ごはん作ったんだけど…」
「あれ? 雪蓮、厨房のほうにいたんだ。一緒にご飯を食べに
誘おうと思ったんだけど部屋にいなかったから冥林と済ませちゃった
んだけど」
その時の、手作りお弁当は食べてもらえなかったけれども夜、冷めているお弁当
を食べていたのも覚えている。それと、なぜだが分からないが冥林が視界から逃れ
ようと栄花の後ろに隠れようとしているところも覚えている。
「栄花、飲み比べしましょ! 私が勝ったら一つだけなんでも願い事を聞きなさい」
「いいね。負けないよ 僕が勝ったら冥林と一緒に勉強だからね」
結果は惨敗。お酒の飲み比べで負けると思ってなかった雪蓮は、翌日の塞ぎ込みようは
酷かった。罰として冥林との勉強会で怯えていた彼女だったが冥林は終止笑顔だったことが
雪蓮は不思議で仕方なかった。後に判明したことだが、栄花に酒瓶を渡していたのは冥林だった。
少し目を瞑れば数え切れない苦き思い出を噛み締めながら、林道を進んでいけば目的の場所で
ある小さな湖に到着した。ここは、雪蓮のお気に入りの一つである。水面は透いており、不明だが
魚や蟹などいった生物が住んでいる。
「それにしても、本当におきないわね。」
城を出発してから、目的地に着くまで栄花は起きることはなかった。
栄花―――母様に連れられてきた、一人の少年。虚ろな目をしていて、私達が何を話しても反応して
くれなかったけど母様の言葉だけには、反応していた。最初はいけ好かない男が来たと思ったいた。
だけど、朝は鍛錬・昼は勉強とし、夜になると一人で素振りをしている知ったときは、少しは骨が
あるやつだと思ったのかもしれない。それから、一年近く過ぎた日に彼のほうから話しかけられた
時は驚きを隠せなかった。嬉しく思う反面、怖かった。
顔は笑っていたけども、目は笑っていなかったから。でも、その笑顔は他人から見たらとても
優しい顔だったに違いない。現に今も、栄花は優しくしてくれるのだから。
でも私は、あの時の彼の目を忘れることはないだろう。だって、あれは―――
「やめておきましょう。せっかくの時間がもったいないわ。」
この先、わたし達は戦うことになると思う。望まない戦いだとしても、でも今のこの時間を
大切にしよう。それが、私の望みなのだから。
「おや、栄花よ。お目覚めですかな?」
「………」
最近、誰かに寝顔を見られるというのが当たり前になってきた気がします。
まぁ、男に顔を見られるよりかは、ましですけどね。
「趙雲さん、わたしには無防備な寝顔を見られて喜ぶ趣味はありませんけど」
「わたしも他人の顔を覗きこむ趣味は持ち合わせておらん。」
趙雲さん、矛盾していますよ。それに、なぜお酒を飲んでいるんでしょうか。
深く考えないようにしておきましょう、こんなことで精神的疲労をためたくはありませんからね。
「凛さんと風さんの姿が見当たりませんけど?」
「稟と風は、公孫讃殿の人柄について聞き込みにいったよ。」
戯志才さん、いやこれは偽名でしたね。本当の名は、郭嘉という名前でした。
なんでも彼女は鼻血を異様に出す体質をもっている方のようで相談をされたところ、華陀という
医者の方と旅をしたこともあったので、完治?とはいえませんけど、それなりの効果があったみたいで
『あなたは私の、恩人です!』という形で、よっぽど困っていたみたいで目を輝かせながら、真名を
受け取ってくれと言われたわけです。
「なるほど、人柄だけではなく外れたところも、というわけですか」
「ほぉ、察しがいいな。大通りは、なんの問題もないが少し路地裏を覗いてみれば、何とやらだ。」
「稟さんと風さんだけで、大丈夫ですかね?」
「わたしも付き合うといったのだが、彼女達が心配ないといったのだ。 平気であろう。」
稟さんと風さんを信頼、いや信用しているんですね。私も彼女達と旅を続けて短いわけですが、それ
なりに分かっているつもりです。例えるなら、凛さんと風さんは、二人で一人という事だと思います。
一つの答えを十として考えれば、風さんが一を出し凛さんが九をという形ですね。
そのことについては、軍師としての立場で考えですけどね。もし、片方がいなくなってしまうと、
どうなってしまうのか楽しみでは、ありますね。
「それで、栄花はどうするのだ?」
「とりあえず、彼女達が帰ってくるのを待ちましょうか。まだ、義勇兵の募集をしているみたいなので
ゆっくりとしましょう。」
趙雲さんも賛成ですか。彼女も面白い方ですからね、趙雲さんは否定するかもしれませんが彼女ほど
理に適った人間はいませんから。そういえば、ここまで長く誰かと旅をしたのもはじめてかもしれません
………こういった、日常も楽しむのも悪くありませんね。
それから、凛と風と合流した彼達は公孫讃のところに赴くのであった。
「栄花よ、今回の試験でお前の武をみせてもらうぞ。」
「だから、趙雲さん。あなたが、思っているほどの者ではありませんよ。
いい加減その目をやめてください。」
「ふむ、すまんな。これも性分な故仕方なかろう。」
「趙雲さんのいいたいことも、わかりますが仲間の時は楽しくやりましょうよ。」
全くこの人はそこまでして私と戦いたいのですか、別に私は構わないのですが彼女の気分が悪くなるのは
避けたいですからね。それに、こんな時代です。そんなに、急がなくても―――
「なるほど。その言い方では、早々遠くなさそうだな。」
「どうでしょう。明日のことなんて私には分かりませんからね。」
その通りです、早々遠くありませんよ。私とあなたとでは、思想が違いますからね。それに、あなたは
義人で私は偽善者です。思想も立場も違うのに、こうやって一緒にいるほうが私自身不思議ですよ。
そこへ―――
「遅れてすまん、彼が今回の試験官だ。私の軍の中では、一番腕利きだ。
何合打ち合えるかによって判断する。 いいな?」
「ふふ、公孫讃殿は人を見る目がないようですな」
「わたしもそれで構いませんよ。」
「やけに余裕そうだな。うちのなかでは、一番だといったはずなんだけどな。
よし、どれほどの者か私も気になるし。試験を始めよう。」
おや?趙雲さんに、何のお咎めもないのですか。侮辱されたのに、それを受け入れる心広さが
あるのかそれとも私達が打ち合えないと思っているのでしょうか。
後者だとしたら、随分と舐められてますね。どちらにしても、彼女は見る目がありませんね。
太守というのが、精一杯というわけですか。超雲さんもやる気のようですし、観客として楽しませて
もらいましょう。
「では、わたしが先にやらせてもらう。反論はあるか? 栄花よ。」
「いや、別にありませんよ。先でも後でもやることには変わりませんからね。」
「張り合いがない男だな。では、行ってくるとしよう。」
「がんばってね、超雲さん。応援しているよ。」
「心にもないことを。」
おや、正解ですよ。私にそんなモノなんてありませんからね。
「では、はじめ!」
公孫讃の掛け声と共に、両者が駆け出す。
男は間合いにはいったと、思った瞬間に横に一閃しようとするが―――
「甘い!」
その言葉が耳に入った瞬間、目の前には彼女の槍の切っ先が迫っていた。受け止める
ことができないと思い、転がるように回避し体勢を整えようとし、顔を上げた時目の前
には、彼女の槍が迫っていた。
あまりにもあっけない、一幕だった。だが、それほどまでに力量の差があると考えれ
ば容易なことだろう。
「そこまで!」
驚きを隠せない公孫讃だったが、試合の終わりを告げる声が上がった。
「きれいだな」
趙雲の槍捌きを見て、その一言だけだった。
賊に襲われたときもそうだったが、とにかく無駄がない。
彼女から繰り出される、赤い切っ先は最短をもって敵に牙を持つ。
それは、まさに芸術。
自分と相手の技量を見極め、一番攻めやすい手段を選ぶ。それが彼女の
戦い方だ。一対一の白兵戦でこの事が実践されてしまっては、彼には勝機などなかった。
「どうだったかな? 栄花よ」
「きれいだったよ、趙雲さん」
試すような趙雲の言い方に対して栄花は、笑みを浮かべただその一言だけだった。
「おや、随分とあっさりしているのだな。もう少し驚いても良いのではないか?」
「これでも、驚いているんですよ。あんなことを出来るのは趙雲さんだけですよ」
「どういうことだ?」
「あれほどまでに、自分を抑えることはできませんよ」
その言葉は自分自身にかそれとも彼女にか、その言葉に趙雲は答えることはできなかった。
だが、栄花を見つめるその目は、ひどく悲しそうだった。
それから、栄花の試合相手は公孫讃となった。なんでも武人として、黙っていられなかった
らしい。ちなみに、周りにいた観客達を引っ込めたのは、栄花の提案だった。
栄花と公孫讃の試合は一方的だった。
公孫讃の上段から振り下ろされる、攻撃に対して栄花は避ける。
また、下段からの切り上げに対しても紙一重で避けきる。
その光景に対して星は―――
「やはり、お主は食えん。」
それから、数十合にも及び
額に僅かではあるが、汗が滲んできている公孫讃に対して明らかに涼しい
顔をしている栄花。この両者の顔を窺うだけで、どちらが優位に立っている
ことがわかる。
「それに、あの動きは」
公孫讃と戦っている栄花の動きは、趙雲だった。
彼女は、対抗策として自分の動きをその試合に投影していた。
「栄花よ、本当に私を飽きさせないな。」
足捌き、呼吸、どれをとっても私自身だ。こんなことは、ありえない
ことである。仮に同じ門の出身者で星と同等の能力が持っていた者がい
るとしよう、しかし、星になることはできない。
そうであろう、だってその者は、趙雲ではないのだから。
しかし栄花はそれをやってのける。まるでもう一人の自分がいるみたいだと。
気がつけば、終わりの時期は近づいていた。
横からの一閃、そして迫る槍の切っ先、それを避ける公孫讃、目の前で
止まる紅き槍。
一連の動きは、先ほどの試合の再現だった。
そして、こちらを振り向き嫌らしい笑みを浮かべる栄花。
「ますます、お主に興味をもったぞ。 栄花よ」
ぽつり、と呟く趙雲の声は風にさらわれ流されていった。
あとがき
えっと、まず大変遅れて申し訳ありませんでした。
一応会話や流れといった部分は、連合までできているんですが……妄想を文に起こすのは
難しすぎますね。それと、遅れてしまった原因ですが引越しの作業とかしていたら懐かしの
ゲームがでてきてしまい、ついやってしまいました。
こんな作者で申し訳ないです。次回の更新日は、土・日どちらかに上げます。用事が入ってしまったら
月曜日になります。
もし、楽しみにしてくださっている読者様がいてくださったら幸いです。
ちなみに、やっていたゲームの一つはゼロの使い○シリーズですね。未だにコンプしていな
い状態なのでやりながら執筆をしている感じです。ちなみに、ちゃんと全部初回版です。
ゲームを買ったことに後悔はしていないんですが、翌日の日に買ったお店にいってみると
売値が2500円!と書いてあったのでショックだったことを覚えています。
ちなみに作者が好きなのは、夢魔と春風のゲームですね。小悪魔もいいんですが、戦闘システム
が遅すぎてあぁーという形です。
なんか終わりそうもないどうでもいいことを長々と書いてしまってすみません。
それでは、コメント返しのほうします。
Daisuke_Aurora_0810様
感想ありがとうございます。作者も書いている途中、これは勘違いされる方もいるのではと
思ってしながらも投下してしまったのでお許しください。
truth様
修正・感想ありがとうございます。誤字が当たり前の作者を助けていただき、感謝しております。
栄花で書いてしまうと、どうもあのような感じになってしまい作者は困っております。
イメージでは、一匹狼という事だったんですけどもなにがおきたんだろう。
読んで下さっている皆様、支援されている皆様にも感謝しております。応援されていると思うから
こそ人はやれるんだ、という事を最近になって気付き始めています。
それでは、またの機会にお会いいたしましょう。
説明 | ||
大変遅くなりました。 もし、待っていてくれた読者様がいてくれたら幸いです。 駄文ですが、それでもよろしい方はどうぞ。 4/15 14時51分 修正 |
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総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
3827 | 3191 | 28 |
コメント | ||
過去の体験が元で心を無くして模倣…どこかで見た設定ですね。(PON) truth様:コメント&ご指摘ありがとうございます。こんなにも間違っていると本当にどうしようもないですよね……性格がまさに関係しているんですよ、本当に鋭いですね。模倣という最強能力をできれば弱体できるようにがんばりたいと思います。(夜星) |
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