双天演義 〜真・恋姫†無双〜 序の章
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 蒼天、雲に蔽われ日翳る時、

 

 神仙、世儚む。

 

 蒼天、暗雲に蔽われ雨振りし時、

 

 神仙、蒼天割し流星呼び込まん。

 

 そは天の意思なり。

 

 そは導きの光なり。

 

 ごく最近流れ出した占い師の言葉らしい。

 

 正直これがオレの立場を保障してくれているからなんとも言えないけど、ぶっちゃけオレがこの言葉だけを聴いたら新手の新興宗教?幸せにしてくれる壷でも売りに来たのか!と110番に電話するところだ。

 言葉だけを聞いたならな……。

 

「ええと……この文はここで返り点があって…………漢文もっと勉強しときゃよかった……」

 

 現実は小説より奇なりとは良く言ったもんだと今更ながらに思う。よくテレビで九死に一生スペシャルとか見たときにもそう思うけど、実際に体験したくはなかった。まぁこんな例を言ったからといってオレが死にそうな目にあったとか言う話ではないんだけどな。あ、でもこれからのことを考えるとその可能性は限りなく高いのか……。

 

「どうだ?勉強は捗っているか?」

 

 筆の尻を咥えてピコピコと動かしていたら扉を開けて、白字に金の縁取り刺繍に赤色をアクセントにした服を着たポニーテールの女性が入ってくる。あ、ちょっと目が釣りあがってきた・・・・・・まずいところを見られたかも?

 

「ずいぶんと余裕があるようだな。その調子ならいろいろ手伝ってもらえそうだ」

 

 うん、怒り漫符だっけ?あれが見えるようだ。笑顔なのにものすっごい怖い。ねー綺麗な顔が台無しですよー、そんな怖い顔せんとー笑ってわらっ……あー……もう笑顔か、笑顔が怖いときどんな言葉をかければいいんだろう……?ってかだんだん肩が震えてきたよ!まずい、まずいよ、何か言い訳せねば!

 

「あー、うん……えっとな、これはだ」

 

「ハァ……どうせわからないところが多すぎて飽きてきたんだろ?昔、似たような状況を体験しているから予想がつくさ」

 

 あは……あははは……ため息ついて肩落としちゃったよ。その人相手に苦労したんだね、きっと。そしてオレをその人と同類と思ったんだね、コンチクショウ。合ってるから何も言えないけど……。

 

「で、どこがわからないんだ?口語調のものはわかりやすいと思うが、文語調のものは少々難解だからな」

 

 彼女、公孫伯珪はオレが座っている席の隣に立って、文字の勉強に使っていた報告書や本に目を向ける。

 

 そう……未だに信じられないが彼女はかの三国志に登場する公孫賛、字は伯珪なのである。言ってる自分も馬鹿らしい。オレの知ってる歴史では公孫賛は男だ!おっさんだ!イナゴだ!ってイナゴはゲーム?だったかの話か。あー公孫一族揃えた飛射5連携強かったなぁ……って話がそれた。断じて若くて可愛いポニーテールの女の子では断じてない。重要なので断じては2回言った!

 

 しかしこの世界では公孫賛は女性だし、他にもたくさんの女性が世に出ている。

 

 オレがいた世界よりこっちのほうが断然進歩が速いんではなかろうか?男社会であったはずの三国志、女性はたぶん子孫を増やす道具くらいにしか思われてなかったんじゃなかろうか?女性信仰、マリア主義だったか?そこらもあるにはあっただろうが、それでも女性が重要な位置に席を置いた例は少ないはずだ。皇后になったとかだれそれの嫁になったとかで、社会的政治的に活躍できる場所にいることはなかったと思う。皇后、皇太后とかが政治に口をだして混乱させたとかいう話はあったはずだけどな。

 

 省みてこの世界。公孫賛のように政治的なポジションに女性が就いている。それも結構な数がいるらしい。ということは社会に女性が出て、それなりの地位を築いているということになる。単純に考えても労働力が増える。需要が多種にわたってくるようにそれを作り出す創造性もあがる。そうなればここにあるあの鏡なんてこの時代にあるのが信じられる……というか信じないといけないんだろうな。眼鏡もあるみたいだし……文官の人がちんまい鼻眼鏡かけてたしね……。

 

 何が言いたいかというとここはオレがいた世界につながる世界じゃないってこと。タイムスリップにプラスして異世界移動もしていますってね……。

 

「おい、聴いてるのか?折角手伝ってやっているというのに」

 

 考え事をしていたら伯珪さんの顔がすぐ横に!近い、近いよ、伯珪さん。

 

「ん?どうした?顔が少し赤くなってるけど……」

 

 オレが免疫なさ過ぎるのか、それとも伯珪さんが警戒しなさすぎるのか、どっちなんだろうね。

 

「あのさ、一応オレと伯珪さんは男と女、赤の他人なわけさ。そこのとこわかってる?」

 

 うん、わかってる。こういう事言うとどういう事になるかなんてわかってるけど、オレの精神安定上言っておいたほうが今後安全なのさ。

 

 あ、どんどん伯珪さんの顔が赤くなって……なんか頭から湯気出そうな感じだね。

 

「ば……ば……ば、ばば……」

 

「ばば?」

 

「バッカ野郎ぉぉぉぉぉぉおおおお」

 

 一瞬のうちに踏み込まれた右足は床を震わし反動を膝に伝える。伝わった反動を殺さずに膝を回転させることでその勢いに捻りの動きを加え、その捻りは腰を同方向に回転させることによりさらに強さを増していく。捻り威力を増した反動は肩の回転で腕の振りを速くするとともに回転する威力も強化する。肩から肘に至った反動は再び肘の回転に勢いを増し、手首へと伝わる。このときにはゆるく握ったこぶしがオレの右頬のそばにあった。インパクトの瞬間に拳を硬く握り手首を回転させる。

 うん、実に綺麗な右ストレート……。

 吹き飛び、意識を失いながらもなぜかオレはそんな感想を抱いていた。

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「はっはっはっはっは。晴信殿も存外無茶な言をなさる。伯珪殿の拳、さぞ効いたことでしょうな」

 

 井戸水で冷やした布を殴られた頬に当てて冷やすオレの前で、青い髪をショートボブにして振袖のミニスカ着物みたいな白い服を着ている女性、趙子龍がお腹を抑えて笑っている。

 うん、阿斗ちゃん抱えて一騎駆けしたあの趙子龍も女性なんだ。胸元がざっくりと開いて谷間が見える服装の美人さんです。しかもミニスカでニーソ、絶対領域も含めて目のやり場に困ります。

 

「くくく。顔を真っ赤に染めて、気絶していた晴信殿を揺さぶって“死ぬな!おい、起きろぉぉぉ!”と大変でしたぞ」

 

 オレを笑っているのか、伯珪さんを笑っているのかわかりませんよ、子龍さん。もちろん両方だろうけどね。でもそんなに伯珪さん、慌ててくれたのか、結構うれしいね。美人に心配されるなんて今まで生きててなかったものな。

 

「笑い事じゃないよ、まったく。その子龍さんの格好も含めて皆警戒心なさすぎだね」

 

 目に涙まで溜めて笑われてはいい気分ではない。憮然として目のやり場に困る服装も含めて言ってみる。あ、しまったかも……子龍さんの眼がキラリと光っちゃったよ。

 

「ほほぅ、私のこの格好が警戒心がないと?」

 

 そうそうそうやって腕を使って寄せて上げると、より開いた胸元が強調されて眼福、眼福って……。

 

「まてぇぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

「おおっと、いきなり奇声をあげるものではないぞ、晴信殿」

 

 心の中で終わらすはずのノリツッコミのツッコミ部分だけ口にしてしまったらしい。子龍さんが眼をまん丸にして驚いている。

 

「からかうのはやめてくれよ。子龍さんみたいな美人に迫られたら我慢できなくなるよ」

 

「ふむ。それでは気をつけよう。しかし……晴信殿もこれくらいで動揺しているようでは精進が必要なのだと思いますぞ」

 

 まじめな顔で肯いてくれたと思ったら“ニヤリ”という言葉が合いそうな笑みを口に浮かべてやっぱりからかってくれますか。子龍さんとはまだ短い付き合いだが、こうやってからかわれること数知れず。君主で上司にあたる伯珪さんもよくからかっているからこういう人なんだろう。

 

 そしてこの子龍さんと付き合う上で重要なのがこういう誘いにのってはいけないということだ。きっとル○ンダイブで子龍さんに飛び掛ったが最後、きっと生きているのを諦めたくなるような目に会うに決まっている。うん、そうだそうに決まっている。決してオレがヘタレなんじゃない、オレの生存本能が訴えているんだ。

 

「晴信殿。ひとつ聞きたいことがあるのだが良いか?」

 

 いろいろと心の中で言い訳を言っていると、子龍さんがからかうときと違う鍛錬などをしているときの顔つきになっていた。普段の気安さが消え、やっぱりこの女性が趙子龍なんだと納得できるほどの圧迫感をその瞳に感じる。小説や漫画などの表現を利用するなら眼に稲妻が走り、自分より大きな子龍さんに見下ろされているような気分になる。

 

「晴信殿が着ていたあの白い服だが……あれは本当に晴信殿のものか?」

 

「確かにオレが通っていた学校、聖フランチェスカ学院の制服でオレが来ていた服だよ。……なんでそんなことを?」

 

 子龍さんの視線はまだきつい。オレが嘘を言っていないか真偽を確かめようと圧力をかけてくる。なぜそんなことをするのかわからないがいたずら、からかいは好きだけど曲がったことが大嫌いな彼女のことだ、なにかしら彼女なりの理由があるんだろう。だからオレは彼女がいくら眼に力を籠め見てこようと、自信を持って言うしかなかった。

 

「ふむ……。嘘はついていないみたいですな。ではさてはて……私が以前、陳留近郊にて見かけた御仁も同じ服を着ていたのだが……」

 

 ジッと彼女の視線の圧力に耐えていたら、納得してくれたのかフッと視線はおろか周囲の圧迫感も消えうせる。ついでに大きく感じていた子龍さんも普通の大きさに感じられるようになった。

 

「同じ服?」

 

 彼女の言葉に気になる部分を見つけ聞き返す。聖フランチェスカの制服がここに何着もあるはずはない。あるとしたらここにある一着と……。

 

「うむ、ここに来る前に連れと旅をしているときに会ってな、どこぞの貴族の子弟と思い、ちょうど陳留の刺史殿が兵を近くに出していたので任せてしまったのだが……」

 

 この言葉だけでは情報として不足していて本当に同じ服だったのかわからないし、もし同じ服だったとしたら誰なのかもわからない。だけれどもオレは一人の人物を想像できた。それゆえオレは子龍さんにその想像した人物の特徴を言い確かめる。

 

「うむ……私も一時の邂逅故良くは覚えていないのですが、確かにそのような外見だったと思いますな」

 

 これでオレは確信する。そうか……あいつもいるのかと……。

 

説明
 無謀にも連載物にチャレンジしてみます。不定期更新となると思いますが、完結を目指してがんばりたいと思います。

 何番煎じかわからないオリ主介入物です。序章だけですのでキャラはそんなに出てきませんがオリキャラ数名考えております。

 タイトルは仮称です。良いタイトルが浮かんだら変更する可能性が高いです。
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コメント
Night様コメントありがとうございます。真紅とは武田の赤備えですね。前に出すとは思えませんけど、戦装束だすなら真紅にしたいですね(^^(Chilly)
ミスター加藤様コメントありがとうございます。たしかに翠が入ってしまったかも……(Chilly)
お疲れ様です。晴信君の戦装束はやはり真紅になるのでしょうか・・・などとくだらない事を考えつつ、次回に期待しております(Night)
気になるひき方ですね。ハムが一瞬馬超に見えたような・・・(ミスター加藤)
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