力を合わせて守り抜け! 狙われた天使の涙!
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「ターゲット確認」

 感情のこもらない声で少女がつぶやく。

「美しい〜」

 それとは対照的に、もう1人の少女は感嘆を漏らした。

 真夜中のチェリーヌ学院。その聖堂で、学院の秘宝『天使の涙』を展示した強化ガラスケースの前に二人は立っていた。

 ナインとテスラ、この双子の姉妹は秘密結社『ブラックファンド』の一員であり、コードネームは『ツインファントム』。

「それじゃナッちゃん、危ないからちょっと下がっててくださいね〜」

 テスラの言葉に従い、ナインが一歩下がる。

 それを確認すると、テスラは両手を横に広げ、手のひらを上向きにしてふっと目を閉じた。

 程なく、手の上数cmのところに不安定な光の球が生み出され、何かが弾けるような音を発し始めた。

 テスラが得意とする電撃を使った技、電撃球だ。

「いきますよ〜」

 左右の電撃球が手の平くらいの大きさになったところで、目を開き強化ガラスを見据える。

 2つの電撃球を体の前で一つに合わせ、今まさにケースを壊さんと放とうとした瞬間──

「待ちなさい!」

 聖堂後ろの塀の上、満月を背にした2人の少女。

 青を基調とした、胸元が広めに開いた戦闘服(ユニフォーム)に身をつつむ少女が言葉を繋ぐ。

「愛と勇気の百発百中」

 初めの制止の声とは違う、おっとりとした印象の、しかし芯の通った声。

 それに続いて、赤を基調とした、フリフリつきスカートの戦闘服(ユニフォーム)に身をつつむ少女がテンポ良く言葉を繋いだ。

「みんなの笑顔を取り戻す」

 活発そうな印象の、明るい声。

 そして2人は可愛くポーズを決めながら言い放つ。

「「ツインエンジェルにお任せだよ♪」」

 綺麗にハモった2人の声が聖堂に高らかに響いた。

 赤いユニフォームのレッドエンジェルと、青いユニフォームのブルーエンジェル。

 2人は塀の上から飛び降りる。

「ふ、ふええ〜!」

 レッドエンジェルのスカートが、風の抵抗を受けまくれ上がってしまったのだ。

 下は別にパンツではないが、恥ずかしいものは恥ずかしい。例え誰が見ていなくても。

 つい、スカートを両手で押さえてしまったため隙が生じた。

 その僅かな間をナインは許さない。

「攻撃準備完了」

 言うと同時に背中の剣を抜き、ツインエンジェルへと一直線に向かって行く。

 レッドエンジェルが動けなくとも、ブルーエンジェルは準備万端。

 空中で弓矢を準備しており、着地と同時に体勢を整えると、すぐにナインに狙いを定め、

「参ります――フッ!」

 向かって来るナインに向かって、矢を放つ。

 矢はまるで吸い込まれるようにナインへと一直線に飛んでいく。

 しかし、ナインはスピードを緩めることなく走り続け、勢いそのままに光り輝く矢尻へ向けて、寸分の狂い無く剣を振り抜いた。

「ハアアァァァァ――ハッ!」

 金属と金属のぶつかる鋭い音と共に、ナインの体は後ろへはじかれた。

 遅れること一瞬、乾いた木に何かが刺さる音。矢がブルーエンジェルの足下にあった。

 互角。

 ナインも後ろに吹き飛ばされただけでダメージは無い。

「葵ちゃん! 私が行くっ!」

 足下に矢が刺さったことで、一瞬ひるんだブルーエンジェル。その隙を埋めるように、体勢を整えたレッドエンジェルが走り出す。ナインへの追い打ちだ。

 『葵』とは、ブルーエンジェルに変身する前の少女の名前で、一般人が見ている前でない限りは、ついこちらで呼んでしまう。

「遥さん、危ない!」

 葵がレッドエンジェルに向けて叫ぶ。

 『遥』とは、レッドエンジェルに変身する前の少女の名前で、葵もついこの呼び方がとっさに口に出てしまう。 

「私を忘れていませんか〜?」

 テスラは言いつつ右手に電撃球を出すと、遥に向かって放った。

「消えて下さい! ハァッ!」

 遥が気付いた時には、もう間に合わない。

 当たっちゃう、と遥が恐怖に目を閉じた瞬間、真横で激しい音。

「ふぅ、間に合いました……」

 葵が放った2本目の矢が、正確に電撃球を射抜き、消し去ったのだ。

「葵ちゃん、ありがとう〜」

 一度体勢を立て直すため、遥はバックステップで葵の隣へ戻った。

「なかなか、やりますわね」

 同じく体勢を立て直すツインファントム。

 2組の少女達は、10m程の間を空け対峙した。

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「……どうして邪魔するんですか、あなたたち」

 一瞬の静寂を破り、テスラが口を開いた。

「えっ、ど、どうしてって……私たちはツインエンジェルだからだよ! ねぇ、葵ちゃん」

「ええ、悪いことをする方は許しておけません」

 葵は遥の言葉に的確な補足をしながら、

「それより、あなた方は何故『天使の涙』を狙うのですか?」

 逆に質問を返す。

「それは……力で価値を示すしかお父様に認――」

「企業秘密」

 答えかけたテスラにかぶせるように、ナインが告げる。

「秘密……なのですね」

 言いながら弓を構え直す葵。事情はありそうだが、理由はどうであれ、悪い事を放っておくことは出来ない。

 それを見たテスラ、ナインも戦闘の構えを再び取る。

「話が早くて助かります〜」

 葵の問いに一瞬ひるんだテスラだったが、すっかり元の調子で余裕すらうかがえる。

 戦闘態勢を取った4人。張り詰めた空気。

 いつ2対2の戦いが始まってもおかしくない緊張感。

 しかし、戦闘が始まることはなかった。

 突然、その緊張を破り、なおかつ4人全員の意識を引きつける侵入者が登場したのだ。

 そいつは、ジェット機の噴射音のような爆音と共に姿を現した。

「見つけたぞぉー、ツインエンジェルー!!」

 体長5m程の二足歩行のゴツいロボットが空からやってきて、2組の間に着地した。

 爆音の正体は、そのロボットの背中についたジェット噴射だったのだ。

「なっ、何なにー!? 葵ちゃん!?」

「わ、私にも分かりません」

 ロボットは、アームをツインエンジェルの方へ突きつける。

「ワシはお前らに壊滅させられた『ブラックオークション』の兵器製作長じゃ!」

「ええっ!?」

「何ですって!?」

 遥も葵も驚きの声を上げた。

 それもそのはず、『ブラックオークション』とはツインエンジェルの2人が、数ヶ月前に滅ぼした闇の組織の名前だったからである。

「これはブラックオークション最強のロボじゃ……これがあと少し早く完成しておれば、ブラックオークションは滅ぶことはなかった……」

 しみじみとした口調。ロボットの内部の声をしっかり拾い、内蔵の拡声器で発しているため、その語調までよく分かる。

「イッひひひひひ! しかぁーし!! そんなことはもうどうだって良い、大切なのはこれから、じゃ。なに、簡単なこと。ワシがツインエンジェルを倒し、そこの『天使の涙』を手に入れてしまえばいい。そして――」

 ロボットに表情は無いが、中でニヤリと嫌な笑みを浮かべているのが容易に想像のつく間を空けて、

「『新(ネオ)ブラックオークション』をワシが立ち上げれば良いだけの話じゃ」

 ツインエンジェルは言葉が出ない。

「ちょっと、いいですかぁ〜?」

 ロボットの背後、すっかり置いてけぼりのツインファントム。

 テスラの口から場にそぐわない、物腰の柔らかい口調が発せられた。

「『天使の涙』を持っていくのは私たちですし〜、ツインエンジェルの相手も私たちですよぉ〜」

 言葉を繋ぐ一瞬の間、テスラの語調が変わった。

「ウザイので消えていただけませんかぁ?」

「な、何じゃとぉー?」

 言いながら振り返ったロボット。ツインファントムを見てハッと何かに気付いた。

「お? オオおおお? お前達、知っておるぞぉー! 貴様ら『ブラックファンド』の遊撃隊『ツインファントム』じゃな!? イッひひひ! ついておる、今日は何とついておる日なんじゃ!! ツインエンジェルを倒し、ツインファントムを倒せば、『新ブラックオークション』に敵なしじゃ!」

 イッひひひ、と笑いながらロボットはいきなりツインファントムを叩き潰そうとアームを振り下ろす。

「回避」

 ナインは姉のテスラを素早く導き攻撃をかわした。

 ロボットは空振りした勢いを殺さず、器用に反転すると今度はツインエンジェルにパンチを繰り出した。

「きゃあああ――――!!」

「あ、葵ちゃん!?」

 背後から攻撃しようと弓を構えていた葵は、とっさのことに回避できずパンチを食らってしまった。

 とっさにガードはしたものの、ダメージはしっかりと受けてしまった。

 ロボットは追撃すると思いきや、前足で踏ん張り、逆の足で突然後ろ蹴りを繰り出した。

「――!? クッ!!」

 逆に隙を突いて攻撃を仕掛けようとしていたナインは、突然の攻撃を必死に剣で受けた。

 剣をはじかれ、ナインは壁にぶつかった。鈍い音が聖堂に響く。

「なっ、ナッちゃん!?……許さない」

 テスラは怒りの形相でロボットをにらみつけ、電撃球を出すとロボットへと投げつけた。

 ロボットへ当たった瞬間、激しい閃光と鋭い音が聖堂を包む。

 一瞬の静寂。

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「イッひひひ。――何か、したかのぅ?」

 無傷。ロボットの表面には傷一つついておらず、月明かりに綺麗に輝いていた。

 普段は余裕か怒りしか無いテスラの瞳は見開かれ、驚きと絶望の表情を浮かべていた。

 無力な自分など、あり得ないと言っているかのようにただ立ちつくす。

「エンジェル――――」

 遥の声が突如響き渡る。

 どんな強敵でも恐れず立ち向かう――これが彼女の強さである。

「――――トルネードッ!!」

 高いジャンプに鋭いスピン。

 足技を得意とする遥の最強技『エンジェルトルネード』

 空気摩擦により炎をまとい、ドリルのような蹴りが放たれる。

 ロボットは振り向きざまに片方のアームでガード。

 いとも簡単に防ぎきっただけでなく、ロボットは遥の足を掴み、逆さづりにした。

「イッひひひヒヒひひ!! バカかぁー! 同じ技で、二度もブラックオークションが滅ぼされるものかぁー! アームには特殊な金属を使っておってなぁ。そんな攻撃、痛くもかゆくも無いんじゃよぉー!!」

 言うと同時に遥を掴んだアーム高く振り上げ、地面に投げつけた。

「いやああああああ――――!!」

 激しく地面にたたきつけられる遥。

「は、遥さん!?」

 あわてて駆け寄る葵。

「THE ENDじゃな!」

 ツインエンジェルめがけ、ロボットの足が振り下ろされる。

 ――BOM!!

 ロボットを横から爆発の衝撃が襲い、ダメージは無いが片足で立っていたためバランスが崩れた。

 ロボットはあわてて体制を立て直し、危機一髪、葵と遥は攻撃を免れた。

「ったくー、見てらんないわね!」

 初めに葵と遥が立っていた塀の上、月を背にした小さい影がそこにいた。

 白を基調とした戦闘服(ユニフォーム)に身を包み、頭にはネコミミをつけた少女、ホワイトエンジェルが立っていた。

「く、クルミさん!?」

「……イッタタ……クルミ、ちゃん?」

 やはり2人と同じように葵・遥から変身前の名前で呼ばれたホワイトエンジェル――クルミ。

 さっきまで寝ていたのか、髪の毛に少し寝癖がある。

「チィッ! もう少しじゃったのに!……まぁ、一人増えたところで変わりはせん!」

 再び攻撃を開始しようとしたロボットに向け、クルミは猫の顔をしたボールのような物を投げつけた。

「ふん、こんなもの!」

 ロボットがアームで振り払う。

 エンジェルトルネードを防ぐアームだ、爆弾が間近で爆発したくらいではびくともしない。

 予想通り振り払った瞬間ボールは爆発。しかし先ほどのような衝撃はなく、代わりに聖堂一面が真っ白な煙に包まれた。

 視界を失った白煙の中、クルミは一直線に葵の所へたどり着いた。

 ネコミミセンサーで正確に場所を把握しているためだ。

「もう、私を置いていくなんてどういう事よ! 葵お姉様まで……」

「ぐっすりとお休みでしたから、起こすのもかわいそうだと思いまして」

 そんな状況では無いはずなのに、のほほんとまともに答える葵。

「そっ、それは『エンジェルボム2』が完成したから、つい気が抜けちゃったって言うか……」

「ああー、それで最近クルミちゃん夜更かししてたんだね〜。すごいすごーい!」

 納得し、褒める遥にクルミは顔を赤らめた。

「とっ、とにかく一回逃げるわよ。何よ、あの化け物ロボット。私のエンジェルボムにビクともしなかったじゃない!」

「ええっ? 『エンジェルボム2』なら何とかならないの?」

 遥の発言に葵は苦笑い、クルミはさっきとは別の意味で顔を赤くした。

「この煙幕が『エンジェルボム2』よ!」

「え? じゃあじゃあ、やっぱり私たちってピンチのままって事〜?」

 自分の発明がバカにされているような気がして、クルミの頭に血が上り、

「もおっ、うるさーい! 助けてあげたんだから文句言わないでよね!」

 と、つい大声で叫んでしまった。

「そこじゃったか!」

 まだ煙幕は残っているものの、場所を知ってしまえば狙うのはたやすい。

 ロボットは図体に似合わない俊敏な動きでツインエンジェルの元へやってくる。

 近づいてしまえば、少しずつ薄れてきた煙幕の中、すぐそこで動く物を見分けるくらいのことは出来る。

「やはりワシの勝利じゃなぁ!」

 再びトドメを差さんと、ロボットが足を振り上げる。

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 ――鋭い閃光。

「――フッ」

 白きバラが一輪、今まで傷一つつかなかったロボットのアームに突き刺さっていた。

「そんなバカなぁッ!!」

 ロボットから驚きと怒りの混じった叫び声。

 バラを抜こうともう片方のアームを延ばした途端、バラから再びの鋭い閃光。

 バラは爆発し、風を生み、辺りの煙幕を全て消し去った。

 この爆発によるダメージは無いが、自慢のアームに傷を付けられたことに怒り狂う。

「クウウウウウッ! 誰じゃ、誰じゃぁ!!」

「――乙女達への数々の無礼、見過ごすわけにはいかないな!」

 聖堂の2階部分の手すりの上に、仮面をかぶったキザな男が立っていた。

「ミスティナイト様ぁ〜!!」

 遥が目を輝かせ、男へ熱い視線を送る。

「美しき乙女達よ、君たちなら必ず勝てる! ツインエンジェル、ツインファントム、力を合わせて共闘すればなっ!」

 聖堂の隅でなすすべ無く立っていたテスラと、姉を心配そうに見つめるナイン。

 突然呼ばれた事に驚き、ミスティナイトを睨む。

「共闘はした、ダメだった」

 ポツリとナインが呟く。

「フッ――それは本当に共闘だったのかい? 互いが運良く作った隙を利用して攻撃をしていたに過ぎなかったのではないのか?」

「――!?」

 全員が言葉を失った。

 確かにその通りだったのだ。

 ふと何かに気付いたようにテスラが顔を上げた。

「ワシを無視するなぁ――――ッ!!」

 背中のジェットを噴射し、一瞬にしてミスティナイトの所まで行くロボット。

 ミスティナイトは攻撃を軽やかにかわしながら言葉を続ける。、

「どうやらっ、気づけた、ようだな! それなら、私はもうっ、必要、ないっ。さらばだっ!」

 最後の一言を言うと同時に、再び白いバラを投げる。

 怪盗ミスティナイトの必殺技『一輪の花(ローズニードル)』

 金属にも突き刺さる強度を持ったバラが、ロボットのアームを襲い、2つめの穴が空いた。

「なぜだぁー! 何故刺さるんじゃぁ――――!!」

 ロボット叫ぶと同時にバラは再び爆発、それに紛れてミスティナイトは姿を消した。

「クウウウウ、クッソォー! 何てヤツじゃ! ワシの自信作に傷をつけおって……許さぬ!」

 悔しさをにじませた声で叫び、地団駄を踏むロボット。しかし、すぐにピタッと止まった。

「……イッひひひ。ヤツのせいで目的を忘れるとこじゃったわい。目的は『天使の涙』とお前ら、じゃったな。ヤツへの対策はまた後でロボットに組み込めば良いか」

 ロボットは2階から1階をなめるように見回す。

「ロックオンじゃ」

 ジェットを噴射し、ツインファントムへと突進するロボット。

 倒しやすそうな方から倒す。3人より2人。1対3より1対2。

 それが間違っていなければ、ロボットの勝利だっただろう。

 しかし今は違った。

 ミスティナイトの言葉でみんな気付いていた。

 別々では勝てないこと、力を合わせれば勝てること。

 そう気づき、冷静に考えることが出来るようになったとき、この空間で一番邪魔で一番やっかいなのは誰か?

 それは紛れもなく、ロボットに乗ったブラックオークションの残党だった。

 既に1対5に陥っていることに気づけないロボットの負けは決まっていた。

「エンジェルー、ボム2!!」

 クルミが煙幕を張り、再び時間を稼ぐ。

 ツインエンジェルの3人は、クルミに手を引かれツインファントムの元へ。

「まぁた隠れたなぁ――――! 負け犬どもめ! 逃げるしか能のない女どもめ!!」

 ロボットが挑発してくるが、無視。

 合流した5人は短く作戦を共有した。

「お姉様が考えた作戦よ! ありがたく思いなさい!」

 クルミが我が事のように偉そうに言い、みんな苦笑いと共に聖堂中に散った。

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 煙幕が消えかけてくるタイミングを見計らって、テスラが攻撃開始を告げる。

「覚悟はいいですかぁ〜? うふっ。作戦開始ですぅ〜」

「エンジェル――――アロー!!」

 登場した高台に上っていた葵が光り輝く矢を放つ!

「エンジェル――――ボム、ボム、ボム!」

 クルミが足の速さを活かし、ロボットの足下でチョロチョロ動き、次々に猫顔のボールを放つ!

「ハアアアァァァァァ――ハァッ!!」

 ナインが助走をしっかりした後、飛び込みながら果敢に斬りかかる。

「甘ぁあああい!! 上下の目くらましの後の攻撃なんて、所詮お子様の作戦じゃなあ!!」

 ロボットがナインをなぎ払おうとアームを振り回そうとする。

「今!!」

 ナインが声を合図に遥が飛ぶ。ナインの背中を踏み台にして、更に高く。

 ナインが急に蹴落とされた事により、アームは空振りし、ロボットは体勢を崩した。

「何ぃッ!!」

「うふっ、お小ちゃまみたいにわがまま言って腕を振り回してるのはどちらでしょう?」

 テスラが皮肉を言いながら、みんなの攻撃の間に溜めておいた特大球の電撃球を放つ。

 しかし、それはロボットに向かってではなかった。

「エンジェル――――」

 特大球の電撃球は、遥に向かって飛んでいく。

 遥の『エンジェルトルネード』に特大球の電撃球はぶつかった。

 燃え上がる、ドリルのようなスピンキックに電撃が巻き込まれた。

「――――サンダートルネード!!」

「ぐ、グムウウウウッ!!」

 崩れた体制を犠牲にし、倒れ込みながらも自慢のアームでガードに入ったロボットだったが、『エンジェルサンダートルネード』に太刀打ちはできなかった。

 みるみるうちに装甲にひびが入り、今までの強度がウソのように、壊れ、爆発した。

「なんてすばらしいのかしら〜」

 高みの一番に良い席で、遥の一度限りの必殺技を見ることの出来た葵が、嬉しそうに微笑んでいた。

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「今回はたまたまこうなっちゃいましたけどぉ〜」

「次は、敵」

 そう言って、テスラとナインは去っていった。

「ねえねえ、葵ちゃん、あの二人、悪い人には見えなかったような気がしない?」

「そうですねー、本当は悪い人たちではないのかもしれませんね〜。何か事情もありそうでしたし――」

「ふえ、そうなの?――今度お友達になれないかな〜?」

「んもー、バカね遥、なれるわけ無いでしょ! 葵お姉様に危害を加えるヤツはみんな敵よっ!」

 そんなことを言いながら、3人は『天使の涙』を見つめていた。

 聖堂の後ろから差し込む月光により、繊細な輝きをみせている。

「『天使の涙』守れて良かったね〜♪」

 心底嬉しそうな遥を見て、葵はええ、とほほえむ。

「葵お姉様ー、早く帰りましょー」

「ええ、そうですねー。クルミさんも睡眠不足ですし」

「べっ、別にそんなお小ちゃまみたいな理由じゃないわよ! ただ、あんまりここにいると一般人に見られて正体がばれちゃうかも――あふ」

「あ〜、クルミちゃんあくびしたー、可愛い〜」

「うるさーい! してないわよ! も〜、遥は正体ばれても知らないんだからね!」

 言って恥ずかしさを隠すように聖堂の入り口へ走り出すクルミ。

 仕方ないな、と笑い合いながら、2人も走り出そうとしたとき遥が、あっ、と声を上げた。

「葵ちゃん、聖堂ボロボロだよ〜!」

「――きっと大丈夫ですよ、遥さん」

 理由も何も言わず、でも何かを信じ切った様なわかりきったような、落ち着いた声。

「え? なんでなんでー?」

「ここは聖堂ですから――きっと神様が何とかしてくれます」

 言いながら意味ありげにウインクする葵。

「遥ー、早く来なさいよねー! 葵お姉様もー、早く行きましょー!」

 聖堂の入り口でクルミが2人を呼ぶ。

 どうしようも出来ないし、正体がばれるわけにもいかない、と仕方なしに遥は納得したようで、聖堂の入り口へ走っていった。

 葵もそれに続く。

 しかし、入り口で立ち止まり聖堂の中を振り返った。

「いつもありがとう――ございます」

 そして、聖堂の外へ走っていった。

 満月は傾き、聖堂の壁に隠れてしまい『天使の涙』にも月光が当たらなくなった。

 『天使の涙』の台座が開き、一人の男が姿を現した。

「葵さまぁああぁ! ご立派になられて、爺は、爺はぁあ〜……!」

 神無月家に仕える葵専用の執事――長月の声は誰もいなくなった聖堂をいっぱいに満たすほどにこだました。

説明
快盗天使ツインエンジェルの二次創作小説です。
演出「守り抜け! 狙われた天使の涙!」とは別物の話ですが、ベースにはしています。

バトルをメインに書きたいっ! という思いで作りました。

未熟な点も多いとは思いますが、楽しんでいただけましたら幸いです。
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コメント
ありがとうございます! 「ツインエンジェルへの愛」と「勢い」で書き上げましたので(笑)(種なしよ?かん)
何と言うか。勢いがあって「読まされた」感じです。パワーを感じました。(怪獣バブルン@えもーふとん)
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ct013ta2 ツインエンジェル ツインファントム 天使の涙 怪盗ではなく快盗 ミスティナイトは怪盗 変態仮面普通に活躍 なんすば 

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