恋姫無双 3人の誓い 第八話「取り戻すために」
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「・・・何度見ても、壮観だなぁ。」

城壁の下を歩き回るのは、完全武装した兵士達。

束ねられた槍は薪のように積み上げられ、その隣には槍束をふたまわりは小さくした束がさらに大きな束を築いている。

弓兵隊の使う、矢だ。武器に食料、補充の矢玉。薬に防具に調理の鍋まで、戦に使う備品はその幅広さに事欠かない。

そして何よりすごいのが、これらすべてがセットやCGでも、小道具ですらない・・・本物だってことだろう。

 

 

 

 

 

「どうした、そんな間の抜けた顔をして。」

ふいに春蘭から声を掛けられた。

「いや、こんなにたくさんの兵隊さんを見るのって初めてだから。ちょっと感動したというか、驚いたというか・・・」

何百人か、何千人か・・・。ぱっと見で何人いるのかさえ、今の俺の感覚じゃ見当もつかない。

「・・・この程度でか?」

そりゃ春蘭は見慣れてるだろうけどさ・・・。俺達の国じゃ、こんな光景見られないんだよ。」

「やれやれ・・・。今からそのザマでは、いずれ華琳様が一軍の将、一国の主となられたときには、驚いて死んでしまうのではないか?」

「いやいや。さすがにそれまでには慣れるって。」

 

 

 

 

 

「・・・何を無駄話しているの、二人とも。」

「か・・・っ!華琳様・・・!これは、北郷が!」

「うわひどっ!おいこら!先に話掛けてきたのって、春蘭だろ・・・!」

「はぁ・・・春蘭。装備品と兵の確認の最終報告、受けていないわよ。数はちゃんと揃ってるの?」

「は・・・はいっ。全て滞りなく済んでおります!北郷に声を掛けられたため、報告が遅れました!」

また俺のせいにするー!

 

 

 

 

 

「・・・その一刀には、糧食の最終点検の帳簿を受け取ってくるよう、言っておいたはずよね?」

「・・・あ!」

やべ。この光景に気を取られて、すっかり忘れてた!

「すまん!すぐに確認してくる!」

「早くなさい。あなたが遅れることで、全軍の出撃が遅れるわ。」

「・・・北郷。監督官は、今馬具の確認をしているはずだ。そちらに行くといい。」

「ありがと、秋蘭!」

俺は華琳達に謝りながら、監督官のところに向かった。

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馬具が置いてあるのは、武器庫の隣・・・っと。

「・・・あれ?」

今気づいたけど、俺、監督官って人の顔知らないぞ・・・?

「いつまでダラダラやってやがる!馬に蹴られて、山の向こうまで吹き飛ばされてぇのか!」

「は、はいっ!」

出撃前ってことで、どこもピリピリしてる。・・・どうせ聞くんなら、あんまりピリピリしてない人がいいなぁ・・・。

と、ちょうどよくあそこに女の子がいる。ちょっと聞いてみるか。

「あ、ちょっと君!」

 

 

 

 

 

「・・・・・」

「ちょっと、そこの君!」

「・・・・・」

まわりは馬の声やら人の声やらでうるさいしな・・・。

「聞こえてないのかな・・・?おーい!」

「聞こえてるわよ!さっきから何度も何度も何度も何度も・・・一体何のつもり!?」

いや、そこまで何度も聞いた覚えはないぞ。

「聞こえてるんなら返事くらいしてくれよ・・・」

っていうか、この子を相当ピリピリしてるな。声を掛ける相手、間違えただろうか。

 

 

 

 

 

「アンタなんかに用はないもの。で、そんなに呼びつけて、何がしたかったワケ?」

「糧食の再点検の帳簿を受け取りに来たんだけど・・・監督官って人がどこにいるか知らないかな?」

「何でアンタなんかに、そんなこと教えてやらないといけないのよ。」

「・・・何でって。華琳に頼まれたからだけど。」

「な・・・っ!・・・ちょっとなんでアンタみたいなやつが、曹操様の真名を呼んで・・・っ!」

「・・・いや、華琳自身から呼んで良いって言われてるんだけど。」

「信じられない・・・。アンタ、この間曹操様に拾われた、天界から来たとかいう猿でしょ?猿の分際で曹操様の真名を呼ぶなんて・・・ありえないわ・・・」

うきっ!?っておい!・・・初対面の相手にむちゃくちゃ言うなコイツ。

 

 

 

 

 

「で、何?私も暇じゃないんだけど。」

「・・・いや、だから。糧食の帳簿を監督官から受け取ってくるように、華琳に言われたんだってば。」

「・・・曹操様に?それを早く言いなさいよ!」

・・・何度も言ったんだが。根は悪い子じゃ・・・ない・・・んだろうか。

「まぁいいや。どこにいるの?」

「私よ。」

「はいはい。・・・で、どこにいるの?」

「だから私って言ってるの。」

 

 

 

 

 

「へっ?君が?」

「悪い?何か文句ある?私がここで監督官をしていることで、あなたの人生になにか致命的な問題があるわけ?」

「い、いや、別にないけど・・・?」

「・・・ま、あんたの人生なんかどうでもいいけど。」

なんかすごい子だなぁ・・。さすが、この歳で監督官になるだけはある、ってことか。

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「ま、まぁとにかくさ、その点検の帳簿ってのを、もらえないかな?」

「・・・その辺に置いてあるから、勝手に持って行きなさい。草色の表紙が当ててあるわ。」

「・・・あ、そう。」

まぁ、その帳簿はすぐに見つかったんだけど・・・。なんか割り切れないな、この展開。

俺は帳簿を片手に、華琳達のところに急いだ。

 

 

 

 

 

 

「華琳、遅くなった!これ、再点検の帳簿!」

「待ちくたびれたわよ、早く見せなさい。」

草色の表紙が当てられた紙束を渡すと、華琳はすぐにそれを手繰って、確認し始めた。

「・・・・・」

・・・なんかこうやって確かめられてると、テストの採点されてるみたいでドキドキするな。別に俺が書いてきた書類じゃないんだけど。

「・・・・・秋蘭。」

「はっ。」

 

 

 

 

 

「この監督官というのは、一体何者なのかしら?」

「先日、志願してきた新人です。仕事の手際が良かったので、今回の食料調達を任せてみたのですが・・・何か問題でも?」

「ここに呼びなさい。大至急よ。」

「はっ!」

 

 

 

 

 

「・・・遅いわね。」

「遅いですなぁ・・・」

「すぐ戻ってくるって。」

時計がないから分からないけど、雲の動きや荷物の減り具合からして、まだ大した時間は経っていないはずだ。

つか、華琳も相当頭に来てる感じだし・・・。何と言うか、空気が重いというか、痛い。

「華琳様、連れてまいりました。」

 

 

 

 

 

戻ってきた秋蘭に連れられてきたのは、さっきのすごい口調の女の子だった。

「お前が食料の調達を?」

「はい。必要十分な量は、用意したつもりですが・・・。何か問題でもありましたでしょうか?」

「必要十分って・・・どういうことかしら?指定した量の半分しか準備できていないじゃない!」

「・・・へ?なんだそりゃ。」

あれだけ偉そうにしてたから、仕事はきっちりと片付けてるもんだとおもったけど・・・。半分しか準備できてないって、そりゃ、華琳じゃなくても怒るに決まってる。

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「このまま出撃していたら、糧食不足で行き倒れになるところだったわ。そうなったら、あなたはどう責任をとるつもりかしら?」

「いえ。そうはならないはずです。」

「何?・・・どういうこと?」

「理由は二つあります。お聞きいただけますか?」

「説明なさい。納得のいく理由なら、許してあげてもいいでしょう。」

納得いかなかったらどうするんだ、華琳のやつ。変な子ではあるけど、あんまりヒドイ目にあうのはいただけないぞ・・・?

 

 

 

 

 

「・・・ご納得いただけなければ、それは私の不能がいたす所。この場で我が首、刎ねていただいてもけっこうでございます。」

「・・・二言はないぞ。」

「はっ。では、説明させていただきますが・・・・一つ目は、食料が少なければ身軽になり、輸送部隊の進行速度も速まります。よって、討伐にかかる時間は、大幅に短縮できるでしょう。」

そういえばさっき、食料は荷車に積んでたよな。その数が減るなり軽くなるなりすれば、確かに移動速度は上がるだろう。

けど・・・。

 

 

 

 

 

「ん・・・?なぁ、秋蘭?」

「どうした姉者。そんな難しい顔して。」

「行軍速度が上がっても、移動する時間は短くなるだけではないのか?討伐にかかる時間までは半分にならない・・・よな?」

「ならないぞ。」

「良かった。私の頭が悪くなったのかと思ったぞ。」

そう、春蘭の言うとおりだ。移動だけじゃなく戦闘も、休憩の時間も必要だ。そもそも食料がちょっと軽くなった程度で、移動速度だって倍になるワケじゃない。

 

 

 

 

 

「まぁいいわ。最後の理由、言ってみなさい。」

「はっ。二つ目ですが・・・私の提案する作戦を採れば、戦闘時間はさらに短くなるでしょう。よって、この程度の量で十分だと判断いたしました。」

提案する作戦って・・・!

「曹操様!どうかこのじゅんいく(漢字知りませんでした)めを、曹操様を勝利に導く軍師として、階下にお加えくださいませ!」

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「な・・・っ!」

じゅんいくって、曹操の軍師の、あのじゅんいくか!?

「な・・・っ!?」

「何と・・・」

「・・・・・」

「どうか!どうか!曹操様!」

「・・・じゅんいく。あなたの真名は?」

「桂花にございます。」

 

 

 

 

 

「桂花。あなた・・・この曹操を試したわね?」

「はい。」

「な・・・っ!?貴様、何をいけしゃあしゃあと・・・。華琳様!このようば無礼な輩、即刻首を刎ねてしまいましょう!」

「あなたは黙っていなさい!私の運命を決めていいのは、曹操様だけよ!」

「ぐ・・・っ!貴様ぁ・・・!」

桂花の偉そうな態度に、春蘭は懐の刃を抜く。

 

 

 

 

 

「ちょーっと待て待て!落ち着けって、春蘭・・・!」

「ぐぅぅ・・・」

「桂花。軍師としての経験は?」

「はっ。ここに来るまでは、南皮で軍師をしておりました。」

「な、なぁ・・・秋蘭。南皮ってどこだ・・・?」

なんか、華琳は知ってるっぽいけど・・・。

 

 

 

 

 

「南皮は袁紹の本拠地だ。袁紹というのは、華琳様とは昔から腐れ縁でな・・・」

「あ・・・そういうことか。」

袁紹ってのも聞いたことのある名前だ。曹操に夏侯惇、夏侯淵。そしてじゅんいくに袁紹。

なんか、ホントに三国志の世界に来たって感じがしてきたなぁ・・・。

「どうせあれのことだから、軍師の言葉など聞きはしなかったでしょう。それに嫌気がさして、この辺りに流れてきたのかしら?」

「・・・まさか。聞かぬ相手に説くことは、軍師の腕の見せ所。ましてや仕える主が天を取る器であるならば、そのために己が力を振るうこと、何を惜しみ、ためらいましょうや。」

 

 

 

 

 

「・・・ならばその力、私のために振るうことを惜しまないと?」

「人目見た瞬間、私の全てを捧げるお方と確信しました。もしご不要とあらば、このじゅんいく、生きてこの場を去る気はありませぬ。遠慮なく、この場でお切り捨てください!」

「か、華琳・・・」

「春蘭。」

「はっ!」

「お、おい、華琳・・・!」

ホントに斬るつもりかよ・・・!

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「華琳様・・・っ!」

けど、俺や秋蘭の言葉を聞く様子もなく、華琳は春蘭から受け取った大鎌を、ゆっくりとじゅんいくに突きつけた。

「桂花。私がこの世でもっとも腹立たしく思うこと。それは他人に試されるということ。・・・分かっているかしら?」

「はっ。そこをあえて試させてもらいました。」

「そう・・・ならば、こうすることもあなたの手のひらの上という事よね・・・」

「華琳っ!」

そういうなり、華琳は振り上げた刃を一気に振り下ろし・・・!

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

じゅんいくはその場で立ったまま。そして血は、一滴も飛び散ることはなかった。

「・・・寸止めか。」

退いた刃の先に絡んだ淡い色の髪の毛は、じゅんいくの髪だろう。ほんの少しでもじゅんいくが動いていたら、そのまま真っ二つになっていたのだろうか・・・。

「当然でしょう。・・・けれど桂花。もし私が本当に振り下ろしていたら、、どうするつもりだった?」

「それが天命と、受け入れておりました。天を取る器に殺められたのなら、それを誇りこそすれ、恨むことなどございませぬ。」

「・・・嘘は嫌いよ。本当の事を言いなさい。」

「曹操様のご性格からして、試されたなら、必ず試し返すに違いないと思いましたので、避ける気など毛頭ございませんでした。」

 

 

 

 

 

「・・・そう。」

そう小さく呟いた華琳が、じゅんいくに突きつけていた大鎌をゆっくり下ろす。

「・・・ふふっ。あはははははっ!」

「か、華琳様・・・っ!?」

「最高よ、桂花。私を二度も試す度胸とその知謀、気にいったわ。あなたの才、私が天下を取るために存分に使わせてもらう事にする。いいわね?」

「はっ!」

 

 

 

 

 

「ならまず、この討伐を成功させてみせなさい。食料は半分でいいと言ったのだから・・・もし不足したならその失態、身をもって償ってもらうわよ?」

「御意!」

こうして俺達は、新しい仲間を加え、盗賊討伐に向かうこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※どうもお米です。なんだか桂花ってデレるとものすごいこよになるんだろうなぁ〜って、最近思ってしまいます。でも、桂花はデレないほうが似合ってるよ!次回も続きです。それではご感想ご指摘お待ちしています。それでは失礼します〜。

説明
第八話となります。今回はあの猫耳軍師が登場します。猫耳軍師は俺の嫁!ではないので、どうぞ持ってってください。
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コメント
>茶々さんコメント&ご指摘ありがとうございます!こんなに間違えると、自分の目は節穴かと思わざるえない・・・。(お米)
更新お疲れ様です。 *報告:P3 空気が思い→重い、ですね?(茶々)
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