真・恋姫無双紅竜王伝煉獄編E〜凛々しき騎馬武者少女の伝説・合肥の戦い(中)〜 |
「夜が明けるな・・・」
合肥城の中庭で、愛紗は東の空から昇る太陽に向かって目を細めて眩しそうに眺めて呟いた。彼女の後ろに付き従うのは彼女たちの運命を共にする命知らずの精鋭たちだ。
「しかし霞の奴は何をしているんだ。夜明けとともに呉の陣に攻め込む手筈となっていただろう」
「はぁ。それがその・・・」
「昨日は『末期の酒や!』いうて飲みまくって・・・」
見送りに来ていた凪と真桜が気まずそうに説明していると、城の方から『おーい』と呑気な声が聞こえてきた。
「霞!遅いぞ!なにをやって・・・」
愛紗の霞を叱責する声は途中で尻すぼみになった。なぜなら―――
「待たせたなぁ、愛紗」
彼女の瞳が―――
「ほな、狩りにいこか。孫権の首」
戦への高揚と、狂気に輝いていたから。
「さて、今回の作戦を説明するとの」
作戦決行前日、曹真が作戦の細かい事を通達していた。
「霞殿と愛紗殿が夜明けとともに呉の陣に突入し、敵の出鼻をくじく。ここまではよいな?」
一同がうなずくのを確認し、曹真は話を続ける。
「この城の守りの指揮はわしが執る。凪殿と真桜殿は前線で指揮を執ってくだされ。霞殿と愛紗殿の退き際はお任せする」
「ええかお前ら!」
居並ぶ騎兵一千に向けて、霞が檄を飛ばす。彼女の率いる兵たちは皆反董卓連合の頃から付き従っている鍛え抜かれた者たちの中でもさらに選び抜かれた精鋭だ。
「敵は10万こっちは1千・・・大将のウチが言うべき事やないけど、絶望的な状況や」
せやけど、と彼女は自分と同僚が率いる兵たちを見渡して続ける。
「燃えんか?お前ら」
―――オォォォォォォォッ!―――
挑発的な笑みを浮かべた自分たちの大将に、兵たちは雄叫びを挙げる。自分の愛しい兵たちの反応に満足した霞は一歩下がり、代わってもう一方の大将である愛紗が進み出る。
「我らの武、そしてお前たちの勇があれば孫軍10万の兵とて案山子と同じ!この戦に勝利すれば、末代までの栄光となる!」
―――オォォォォォォォォッ!―――
そして、2人の戦乙女が己の矛を振り上げて―――
『総員・・・我に続けぇぇぇぇぇっ!』
「なんだ・・・これは・・・」
これは夢だ、夢でなければならないんだ・・・そんな事を孫権は何度思ったのだろうか。早朝、自分の護衛を兼ねる将軍・甘寧が叫びながら彼女を叩き起こした。
「蓮華様、魏軍の朝駆けです!退避してください!」
自らが信頼する随一の腹心の進言に即座に従った彼女は、同じく馳せ参じた周泰を護衛に戦場を一望できる小高い丘に逃れて戦場を見渡し―――声を、失った。
孫呉を象徴する『紅』の鎧を纏った兵が蹴散らされて逃げまどう。彼らを追い散らすのは蒼い鎧を率いたほんの一握りほどの部隊。報告によれば、張遼と関羽率いる1千の騎馬部隊だそうだ。
「くっ・・・!たかだか1千の部隊に何を怯んでいる!押し囲んで討ち取れ!」
檄を飛ばし、必死で軍を統御しようとする孫権の思いとは裏腹に呉軍は一丸となり、縦横無尽に駆け回る魏軍に陣を切り刻まれていた。
「オラオラオラオラァッ!どうした!呉の兵は腰ぬけばっかしかおらんのか!?」
飛竜偃月刀を振るい、返り血を浴びながら霞は叫ぶ。彼女の挑発に乗せられて一人の将が彼女を討たんと槍を一閃するが―――
「遅いわ、ボケ!」
霞の矛が一閃。敵将の首が跳ね飛ばされ、彼女の肢体に血を浴びせる。
「う・・・うわぁぁぁぁぁ!」
恐慌した敵兵の一人が逃げ出すと、周りの兵も武器を放り出して逃げ出した。
「逃げるな!引き返せ!」
馬上で指揮を執る紫の髪の少女―――甘寧が声を張り上げて兵を留めようとするが、人の恐怖心が上官の命令を優先したようで、止まる兵はほぼ皆無だ。
「くそっ・・・退け!退けー!」
これ以上の戦闘は無理と判断した彼女は、体勢を立て直すべく一時撤退を決意する。甘寧はキッと返り血を浴びる霞を睨んで心に刻む。今日の無様な敗戦を。
(張文遠・・・!今日の借りは必ず返す!)
「なんとまぁ・・・」
城壁の上で防戦指揮を執りつつ戦場を見守っていた曹真は感動と呆れを含んだ感嘆を漏らした。
「さすがはお師匠御自慢の武将たちじゃ。まさに武神という称号が似合う」
今回の戦で呉軍の兵に恐怖心を植え付ける事に成功した、と言っても過言ではあるまい。これで援軍がなくとも防戦がかなり楽になるはずだ。
「よし!凪殿、今から帰ってくるお2人の為に湯を用意せよ!」
「はっ!」
2人を労う用意をするよう凪に命を下し、曹真は門に向かって歩き出した。
凛々しき騎馬武者少女達を迎える為に。
説明 | ||
煉獄編第6話です。 主人公がしばらく出ないですね。どうしましょ・・・ ま、どうにかなりますよね!? |
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コメント | ||
執筆お疲れ様です。まさか、千だけで蹴散らすとは・・・てっきり千で急襲した後、千以外の別働隊や本隊が待てると思ったが・・・まさに、遼来来、そして羽来来(関羽、張遼が来たぞ〜〜〜)ですな。 次作期待(クォーツ) 遼来々!!(トーヤ) |
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