魏√アフター 想いが集う世界――第二章――第零話
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 一刀が行方不明になってから、華琳達三人と、雪蓮と冥琳は一刀の行方をずっと捜していた。

 だが、一向に朗報が五人に届く事はなかった。

 

「そう……。一刀はまだ見つからないのね?」

「はい、華琳様……一刀が生きているのかどうかすら、分からず。その足取りは、洛陽の関所から途絶えたままです」

「生きてるなら生きてるで、便りの一つでも寄越せばいいんだ!」

「確かにその通りだが、姉者。一つ忘れていないか? 北家は謀反人として、朝廷に名を連ねているんだぞ?」

「わ、忘れてなんかいないぞ! もちろん、覚えていたとも!」

「なら、一刀が我々に連絡を取れない事も分かっているな?」

「お、おう……?」

 

 春蘭は秋蘭の言葉に、どもりながら返す。

 それを見ながら、秋蘭は笑みを浮かべて「慌てる姉者も可愛いな」と呟く。

 二人のやりとりを見ていた華琳は、少し救われた気持ちでいた。

 

 北家が謀反人として断罪された。そして一刀が行方不明という報せが届いた時、一番取り乱したのが春蘭だったからだ。

 秋蘭が止めるのも聞かず、春蘭は洛陽に行こうとしていた。

 そんな春蘭を華琳が怒鳴り、一刀を信じる事が出来ないのかと一喝して踏み止まらせた。

 実際、春蘭が洛陽に行って一刀の事を聞き回っていたら、知り合いという事で捕らえられていたかもしれない。

それを考えた華琳は、焦る気持ちを隠しながら春蘭を止めた。

 

 春蘭を止めてから、華琳はあらゆる場所に人を派遣し、一刀の足取りを追わせていた。

 名目上は、謀反人の息子の探索。実情は一刀の保護である。

 華琳の父である曹嵩は、親友の二人を助ける事が出来なかった事を悔やみ、政務から退いていた。

 だが、父の後釜で高官になるのを華琳は許さず、自分の力で陳留の刺史となっていた。

 

「仕方ないわね。一刀の事は一先ず置いておきましょ。――奪われてしまった遺産を、取り戻しに行くわよ!」

「は! 総員騎乗!」

 

 どうやってかは知らないが、書庫から貴重な物が盗まれてしまった。

 その盗人を追う準備をしていた華琳の下に、一刀の捜索を任せている一人が戻り、その報告を聞いた秋蘭が華琳に伝えていたのだ。

 一先ず一刀の事は置いておくと言った華琳だったが、心の内で一刀の事を考えていた。

 

(バカ……一体、どこにいるのよ。生きてるなら、早く私に会いにきなさいよ)

 

 

 場所は陳留から建業に移り、雪蓮と冥琳も報告を聞いていた。

 

「そう。一刀はまだ見つからないの……」

「雪蓮、落ち込んでいても仕方ないぞ」

「分かってるわよ。でも、生きているって信じているけど、これだけ探して見つからないとね……」

「曹操も探しているそうだが、何一つ情報がないようだ。まったく……どこにいるのだか」

 

 冥琳の呟きと同時に、二人は重々しいため息を吐く。それが二人の心情を表していた。

 一刀を探して、既に四年の歳月が流れていた。

 この四年間の間に華琳は地位を築き、自分達の生まれ育った地は他者の物になっている。それに一刀の事が重なり、ため息として出てしまっていた。

 少しずつ取り戻す為の準備は進めているが、様々な要因が重なり、取り戻すのにまだ時間が必要だった。

 雪蓮と冥琳は、一刀を探したいという逸る気持ちを抑えて、孫呉の地を取り戻す為の準備を進めていた。

 

(許婚を放って置くなんて、酷いわよ一刀。早く帰ってきなさいよね)

 

 

 麗羽も探そうと考えたのだが、出来ないでいた。

 父が死ぬ間際に、民の事を考えるならば、探してはならないと言った為だった。

 遺言が無くても、麗羽には探す事は出来なかっただろうが。

 北家没落と父の死によって麗羽は無気力になり、民の事を考える事も、政務の事を考える事も出来ない様になっていたのだから――。

 

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 華琳達が悪党討伐に出る三ヶ月前。

 深い山にある小屋の中で、二人の男が会話をしていた。

 一人は白い髭を顎に生やす老人。もう一人は、外套を着た一刀だった。

 

「行くのか?」

「はい。そろそろ行こうと思います」

 

 一刀の言葉を聞き、老人は深い皺を眉間に寄せながら問いかける。

 

「……復讐を忘れる事は出来んのか?」

「家族は復讐を忘れろと言うでしょうね。それに彼女達も……。ですが、俺がもう一度彼女達と会う為には、国を変えないと無理でしょうから」

「それはそうじゃろうがな。しかし曹操という者ならば、お主を匿えるのではないかの?」

「陳留の刺史になっている彼女には、会えませんよ。迷惑を掛けるだけですからね」

「そうか……(乙女心が分からん奴じゃの)」

 

 老人が頷いたのを見てから、外套を着た青年は静かに立ち上がり、老人に一礼して小屋を出て行った。

 

「復讐は何も生まんというのに……。峰よ、お主の弟子が道を踏み外さねばいいがの……」

 

 一人で静かに呟いた老人の言葉は、誰に聞かれる事なく空に解けていった。

 

 小屋を出た青年は、小屋の横にある小さな岩に手を合わせていた。

 

「雲耀、行って来るよ。峰さんの仇が討てるかは分からないけど、待ってて欲しい。俺に出来る限りの事はするつもりだからさ。

 父上、母上、峰さん。無実の罪で討たれた皆の仇は、俺が取るよ」

 

 言い終わると同時に一刀は立ち上がり、山を降りて行く。その胸に、復讐の炎を抱きながら。

 だが一刀の心は、完全には復讐に染まっていなかった。

 雪蓮、冥琳、春蘭、秋蘭。そして、華琳に会いたい。声が聞きたい。また皆で笑いあいたい。

 そういう気持ちが消える事は、一度もなかったのである。

 

 

 復讐の刃を携え、一人の青年が時代の渦へと足を踏み入れる。

 運命の歯車は軋みを挙げながら、回り続ける。

 乙女達の想いは、復讐の炎を消す事が出来るのであろうか。

 

 

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あとがきという何か。

 

投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません。

二章に入ると恋姫の皆様が登場してくるので、口調をもう一度調べていたもので。

それでも不安が残っているので、今後、口調が違うなどがありましたら、こっそり教えてもらえると嬉しいです。

 

皆様のおかげで、お気に入りが200名様を突破しました。初めに見た時は、自分の目を疑ってしまいました。ですが、これだけの方に楽しんでもらえてると思うと、頑張ろうという気持ちになりますので、本当に感謝しております。

これからも、宜しくお願いします。

 

※コメントの返信になります※

村主様:これからのヒロイン達の心情をうまく表せたらいいなと思っています^^ 第二章も、楽しんで頂けたらと思います。

 

Ocean様:師匠は、火事場の力を発揮したからですね。一刀の始まりは復讐ですが……。今後を楽しみにして頂けると嬉しいです^^

 

jackry様:これからも、一刀には精一杯頑張ってもらいますよ。色々な意味で……(ぁ

 

対神様:表舞台に出すまで少しかかりますが、戻った後を楽しみにして頂ければと思います。峰の仁王立ちに感動してもらい、本当に嬉しいです。

 

aoirann様:峰が、忠義を貫き通せたのは、皆様のおかげですよ^^

 

gmail様:私も愛紗や星は好きですよ。ただ、桃香はそこまで……(ぁ なので、蜀の立ち居地を少し決めかねているのが現状ですね。第二章が始まりますので、今後も楽しんで頂けたらと思います。

 

Raftclans様:十常侍には、私も書いていて腹が立っていました。再会まで、もう暫くお待ち下さい。麗羽はこうなるんじゃないかなと、本編をやっていて思ったので、現状はこうなっております。

 

RIZE様:闇には堕ちませんよ!? 鬼畜王にも……あれ、種馬って、ある意味鬼畜なのかな……。

 

hokuhin様:今後も、一刀を見守ってくださると嬉しいです^^

 

2828様:体中に傷を負いながらも、火事場の力で頑張ってもらいましたので^^

 

かもくん様:峰をかっこよく見せれたのなら、何よりです^^

 

サイト様:一応、一刀の精神面は強化されてます。主に峰のスパルタと、華琳達によって。ただ、理不尽な事に対して、心に余裕がないのが現状ですね。

 

kuzu様:一刀の生き様を見守って頂けると嬉しい限りです^^

 

ねんど様:名作と言って頂き、本当にありがとうございます。今後も、ご期待に副える様に頑張ります。

 

雪蓮の虜様:桃香や愛紗と一緒に……? それは思いつきませんでした! 彼女達とは今後会う予定ではありますが、一緒に旅をする事はないです。申し訳ありません。

 

 

それでは皆様。今後とも、宜しくお願いします。

説明
少し間が空いてしまい、申し訳ありません。
今回は第二章のプロローグだけですが、近日中に壱話を挙げる事が出来ると思います。

それでは、第二章、始まります。
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コメント
tyomeko様:初コメントありがとうございます。本編の一刀のよさを生かしながら、うまく出来たらいいなと思っています。これからも宜しくお願いします^^(夢幻)
村主様:復讐鬼にはなりませんよ。というか、書けませんw 所属先に関しては、自分が一番好きな√基準になると思います(夢幻)
初めて感想を書かせて頂きます。本編の一刀とはまた一味違う作品ですね。これからの更新を楽しみに待ってます(tyomeko)
完全な暗黒復讐鬼・・・にならずにほっとしましたwこれからの所属先・・・2箇所浮かびましたがさてどちらに行くやらw(村主7)
サイト様:それは作品が変わってしまいますよ!? それに、バイザーはないので、バンダナですかね?あれ、別の外史で見た様な……(夢幻)
km様:それは……華琳が一刀の頸を刎ねるって事ですか?それでしたら、ちょっと……(夢幻)
雪蓮の虜様:続きを楽しみにしていただき、ありがとうございます。これからも頑張らせて頂きます!(夢幻)
Ocean様:あー……うー……そうですね!(ぇ(夢幻)
jackry様:そうですね。前向きというか、根底にあるものは忘れていない。という感じでしょうか?(夢幻)
これでバイザーを付ければ一刀版プリンス・オブ・ダークネスの完成だなw(サイト)
狂った一刀を華琳が・・・を見てみたかった・・・w(km)
続きが気になります!がんばってください!!!(雪蓮の虜)
最初は復讐からですか。となると、一刀は偽名でも使うのかな? 顔は割れてなかったから、偽名を使えばほぼ判らないはず(Ocean)
よーぜふ様:ダークサイドの一刀も見てみたいとは思いますが、この話の一刀はダークサイドに足を踏み入れないので、ご安心下さい^^(夢幻)
hokuhin様:大丈夫ですよ。一刀は明るさがあってこその一刀だと思っていますので、暗くはなりませんので^^(夢幻)
美道様:楽しみにして頂けると、本当に嬉しいです(夢幻)
一瞬復讐鬼にでもなるのかと思いましたが…朴念仁なところはのこってるようで ダークサイドな世界にならないことを祈ります(よーぜふ)
復讐を誓う一刀か・・・ あまり性格が暗くならないで欲しいなぁ(hokuhin)
これからこの物語がどう進んで逝くのかが楽しみですね〜(笑)(美道)
かもくん様:気になってもらえたのでしたら、何よりです(ぇ これからも宜しくお願いします。(夢幻)
MATSU様:一刀が所属する陣営は決まってますよ。まあ、皆様の予想通りだとは思いますが^^;(夢幻)
更新乙 また気になる終わり方しやがってww次もみます!!(かもくん)
更新乙です。復讐ですか・・・一刀狂わなければいいんですけど・・・。一刀は最終的に何所の陣営になるのやら。いやはや、想像力をかき立てられますね。(MATSU)
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真・恋姫無双

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