恋姫無双 3人の誓い 第十話「宝と仲間」
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盗賊団の砦は、山の影に隠れるようにひっそりと建てられていた。許緒と出会った場所からそんなに離れてなかったけど・・・こんな分かりにくい所じゃ、よっぽどうまく探さないと見つからなかったに違いない。

「こんな所にあったんだ・・・」

今はもちろん、近づくとすぐに見つかってしまうから、砦はまだ豆粒ほどの大きさに見える場所にいる。

「許緒、この辺りに他の盗賊団はいるの?」

「いえ。この辺りにはあいつらしかいませんから、曹操様が探してる盗賊団っていうのも、あいつらだと思います。」

許緒は華琳にそう伝えると、次に、華琳は今の現状を秋蘭達に聞いた。

 

 

 

 

 

「敵の数は把握できている?」

「はい。およそ三千との報告がありました。」

「もっとも連連中は、集まってるだけの烏合の衆、統率のなく、訓練もされておりませんゆえ・・・我々の敵ではありません。」

だが兵法の基本では、兵数が多い方が有利なのは普通。自分達の兵数は千と少しだけ・・・相手は三倍近くあるのだから、何らかの策を用意しないと苦戦は必死だ。

「けれど、策はあるのでしょう?糧食の件、忘れてはいないわよ。」

 

 

 

 

 

 

「無論です。兵を損なわず、より戦闘時間を短縮させるための策、すでに私の胸の内に。」

「説明なさい。」

「まず曹操様は少数の兵を率い、砦の正面に展開してください。その間に夏侯惇、夏侯淵の両名は、残りに兵を率いて後方の崖に待機。そして、本隊が銅鑼を鳴らし、盛大に攻撃の準備を匂わせれば、その誘いに乗った敵は必ずや外に出て行くでしょう。その後は曹操様は兵を退き、十分に砦から離れたところで________________。」

と桂花が続きを言おうとした時・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・ちょっと待て!それは何か?華琳様に囮をしろと、そういうわけか!」

春蘭がこの作戦に否を出した。

「何か問題が?」

「大ありだ!華琳様にそんな危険なことをさせるわけにはいかん!」

「なら、あなたには他に何か有効な作戦があるとでもいうの?」

桂花がそう春蘭に問い返すと・・・。

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「烏合の衆なら、正面から叩き潰せばよかろう!」

・・・春蘭の発言に周りに空気が360度変わった。

「・・・・・」

「・・・・・」

春蘭の思わぬ作戦に周りは呆れ果てていた

「・・・いや、春蘭。それはさすが・・・」

「・・・はぁ。油断したところに伏兵が現れれば、相手は大きく混乱するわ。混乱した烏合の衆はより倒しやすくなる。・・・曹操様の貴重な時間と、もっと貴重な兵の損失を最小限にするなら、一番の良策だと思うのだけれど?」

「な、なら、その誘いに乗らなければ?」

「・・・ふっ。」

あ、なんか鼻で笑ったぞ、こいつ。

 

 

 

 

 

「な、なんだ!その馬鹿にしたような・・・っ!」

「曹操様。相手は志を持たず、盗賊に身をやつすような単純な連中です。間違いなく、夏侯惇殿よりも容易く挑発に乗ってくるものかと・・・」

「・・・な、ななな・・・なんだとぉー!」

桂花の説明に腹が立った春蘭は、思わず剣の抜きそうになったが・・・。

「はいどうどう。春蘭、あなたの負けよ。」

まるで馬をなだめるように、春蘭を落ち着かせる。

 

 

 

 

 

「か、華琳さまぁ・・・」

「・・・とはいえ、春蘭の心配ももっともよ。次善の策はあるのでしょうね?」

「はい。この近辺で拠点になりそうな城の見取り図は、すでに揃えてあります。・・・万が一誘いに乗らなかった場合は、城を内から攻め落とします。」

あの短時間でいつそんな準備を・・・と思ったけど、今回の食料補給役を任されていた時から桂花の計画は始まってたんだろう。用意周到というか、何というか・・・。

 

 

 

 

 

「分かったわ。なら、この策でいきましょう。」

「華琳様っ!」

春蘭が心配そうに声を張り上げるが、

「これだけ勝てる要素の揃った戦いに、囮一つもできないようでは・・・この先の覇道など、とても歩めないでしょうよ。」

「な、ならば・・・せめて、華琳様の護衛として、本隊に許緒を付けさせてもらう!それもダメか?」

春蘭の提案に桂花は・・・。

「許緒は貴重な戦力よ。伏兵の戦力が下がるのは好ましくはないのだけれど・・・」

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「私が許緒のぶんまで暴れれば、戦力は同じだ!それで文句はなかろう!」

な、なんちゅー大雑把な戦力計算なんだ・・・。

「・・・分かったわよ。なら、囮部隊は曹操様と私、許緒。伏兵は夏侯惇、夏侯淵、これでよろしいでしょうか、曹操様?」

「それで行きましょう。一刀は私は側にいなさい。」

「分かった。」

「な・・・っ!」

 

 

 

 

 

「北郷!貴様、華琳様に何かあったらただじゃおかないからな!盾になってでもお守りするのだぞ!」

「分かってるってば。その為の華琳の側・・・ってことだろうし?」

「ふふっ・・・どうかしらね。」

小さく笑った華琳が、

「では作戦を開始する!各員持ち場につけ!」

力強い声で兵達に指示を出していった。

 

 

 

 

 

 

 

春蘭達の隊が離れていく。これで、こちらの手勢は本当に数えるほど。

華琳と桂花は自信たっぷりだったけど、本当に大丈夫なのか・・・?この人数で・・・。

「あ、兄ちゃん。どうしたの?」

「ん?・・・ああ、許緒ちゃんか。」

後ろから許緒が、俺に話しかけてきた。

「季衣でいいよー。春蘭様も秋蘭様も、真名で呼んで良いって言ってくれたし。」

「そうなの?・・・そっか。そういえば、こっちで華琳の護衛をすることになったんだっけ?季衣。」

「うん。たいやく、なんだってさ。うぅ、なんだ、緊張してきちゃった・・・」

 

 

 

 

 

「だよなぁ・・・」

「あれ?兄ちゃんも緊張してるの?」

「そりゃまぁ・・・実を言うと、今日が初陣ってやつなんだよね、俺。」

きっと沢山、人が死ぬんだろう。さっき季衣達が戦ってところじゃ、敵の盗賊は逃げた後で、けが人はほとんど見なかったけど・・・。

正直なところ追撃したくなかったのは、そういう光景を見たくなかった、ってのもあるわけで。

 

 

 

 

 

「へぇぇ・・・。まぁ、兄ちゃん、そんなに強くなさそうだもんねー」

「・・・応っ。全然強くないぞ。・・・季衣になんて絶対敵わないって自信がある。」

なんか自分で言って、悲しくなってきた・・・。俺って情けねぇ。

「あははっ、そうなんだ?・・・でも、あの砦を探してくれたの、兄ちゃんなんでしょ?」

「んー・・・まぁ一応。」

「なら、兄ちゃんも出来ることはちゃんとやってるから・・・それで良いんじゃないかなぁ?」

「良いのかな?・・・まぁ俺にはそれくらいしか出来ないんだけどね。」

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「んー・・・決めた!兄ちゃんも曹操様も、みーんなボクが守ったあげるよ!」

「季衣が?」

「うん!大陸の王ってよく分かんないけど・・・曹操様がボク達の街も、陳留みたいに平和な街にしてくれるんだったら、それってきっと良いことなんだよね?」

「ああ。・・・そうだな。」

なんだ。分かってないって言う割りに、ちゃんと分かってるじゃないか。この子・・・。

ニコニコと笑っている季衣は、どこから見ても普通の女の子で・・・とても鉄球を振り回す三国志の英雄には見えないわけで・・・。

 

 

 

 

 

「こらっ、そこの二人ー!遊んでないで早く来なさいよ!作戦が始められないでしょう!」

「おう、すぐ行く!・・・んじゃ行くぞ、季衣。」

「うんっ!」

俺は桂花に注意されながら、敵の砦に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

戦いの野に、激しい銅鑼の音が響き渡る。

「・・・・・」

響き渡る・・・。

「・・・・・」

響き・・・。

「・・・・・」

うおおおおおおおおおおおっ!

・・・響き渡る銅鑼の音は、こちらの軍のもの。でも響き渡る咆哮は、城門を開けて飛び出してきた盗賊団のもの。

 

 

 

 

 

「・・・桂花。これも作戦の内かしら?」

「いえ・・・これはさすがに想定外でした・・・」

「連中、今の銅鑼の音を出撃の合図と勘違いしているのかしら?」

「はぁ。どうやら、そのようで・・・」

まさかこんな馬鹿なことって、ありえるんだな・・・。

「曹操様!兄ちゃん!敵の軍勢、突っ込んできたよっ!」

おお・・・。少人数のこっちに比べて、相手の人数はハンパなく多い。

ってこれって、まさか相手の全軍とか言わないよな・・・!?

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「ふむ・・・まあいいわ。多少のズレはあったけれど、こちらは予定通りするまで。総員!敵の攻撃は適当にいなして、後退するわよ!」

作戦通り、俺たちは後退を始めた。

 

 

 

 

「報告!曹操様の本隊、後退してきました!」

「やけに早いな・・・。ま、まさか・・・華琳様の御身に何か・・・!?」

「心配しすぎだ、姉者。隊列は崩れていないし、相手が血気に逸ったか、作戦が予想以上に上手くいったか・・・そういう所だろう。」

「そ、そうか・・・ならば総員、突撃準備!」

春蘭の号令により、兵士達は一斉に刃を抜く。

 

 

 

 

「ふむ・・・そろそろ頃合いかな。」

「まだだ、横殴りでは混乱の度合いが薄くなる。」

秋蘭は、突撃したくてウズウズしている春蘭を抑えている。

「ま、まだか・・・?」

「まだだ。」

まだ抑える。

「もういいだろう!もう!」

「まだだと言っているに・・・少し落ち着け姉者。」

 

 

 

 

 

そろそろ我慢の限界が近くなってきた春蘭。

「だが、こうも無防備にされているとだな、思い切り殴りつけたくなる衝動が・・・」

「気持ちは分かるがな・・・」

その時、敵の殿が突出してる様子が見えた。

「敵の殿だぞ!もういいな!」

「うむ、遠慮なく行ってくれ。」

秋蘭の許しも得たことで、活き活きとした顔で春蘭は突撃の用意をする。

 

 

 

 

「では、夏侯淵隊、撃ち方用意!」

「よぅし!総員突撃用意!相手の混乱に呑みこまれるな!平時の訓練を思い出せ!混乱は相手に与えるだけにせよ!」

「敵中央に向け、一斉射撃!撃てぃっ!」

秋蘭の号令により、弓隊の矢が一斉に放たれる。

「統率のない暴徒の群れなど、触れる端から叩き潰せ!総員、突撃ぃぃぃぃぃっ!」

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「後方崖から夏侯惇様の旗と、矢の雨を確認!奇襲、成功です!」

「さすが秋蘭。上手くやってくれたわね。」

「春蘭様は?」

「敵の横腹辺りで突撃したくてたまらなくなっているところを、夏侯淵に抑えられていたんじゃない?」

「・・・俺もそう思う。」

だってあの春蘭のことだからなぁ・・・。きっとウズウズしてたんだろう。

 

 

 

 

 

「・・・別にアンタと意見が合っても、嬉しくも何ともないんだけど。」

「いやまあ、いいけどさ・・・」

こいつの口の悪さは何とかならないのか・・・?

「さて、おしゃべりはそこまでになさい。この隙を突いて、一気に畳みかけるわよ。」

「はっ!」

「季衣。あなたの武勇、期待させてもらうわね。」

「分っかりましたー♪」

「一刀は期待していないから、私の隣で大人しくしてなさい。」

「・・・お心遣い、ありがと。」

 

 

 

 

 

正直、今の段階でかなり震えが来ていたりする。ここからが本番だってのに・・・な。

「総員反転!数に頼りの盗人どもに、本物の戦が何たるか、骨の髄まで叩き込んでやりなさい!・・・総員、突撃っ!」

「うおおおおおおおおおおおおおっ!」

大地に兵士達の雄たけびが響き渡る。

 

 

 

 

 

盗賊団は春蘭達の奇襲により、かなり混乱している様子だ。その中には恐怖で、逃げ出しそうな者もいる。

「逃げる者は逃げ道を無理に塞ぐな!後方から追撃を掛ける、放っておけ!」

「・・・それ、もっとタチ悪くないか?」

「正面からヘタに受け止めて、噛み付かれるよりはマシでしょう?」

「まあ、そりゃそうだけど・・・」

「華琳様、ご無事でしたか。」

後ろから、秋蘭が一仕事終え、本隊と合流してきたみたいだ。

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「ご苦労様、秋蘭。見事な働きだったわ。」

「あれ?春蘭は?」

「どうせ追撃したいだろうから、季衣と夏侯惇と追撃に行くよう、指示しておいたわ。」

「・・・見事なもんだな・」

初陣にしてすでに春蘭の性格を見抜いてやがる。性格はともかくとして、人使いの上手いやつっているもんだなぁ。

 

 

 

 

「・・・何か、私に対して無礼なこと考えていたでしょう?」

「別に。」

口に出したら多分、絞め殺されそうだからな。くわばらくわばら・・・。

「桂花も見事な作戦だったわ。負傷者も殆どいないようだし、上出来よ。」

「あ・・・ありがとうございます!」

「それと・・・一刀。」

「え?俺?」

 

 

 

 

 

「良く逃げなかったわね。関心したわ。」

「いや・・・逃げたかったし、全然戦っていないけどな。」

正直、今だって血の匂いで吐きそうだ。よく馬の背中にしがみついてられるもんだと思うよ。

「戦の働きなんか最初から期待していないわよ。初陣でその気持ちを御することが出来ただけで、大したもんだわ。」

「・・・ありがと。」

やれやれ。褒められてんだか・・・いないんだか・・・か・・・。

俺は馬から滑り落ちるように、倒れていった。

 

 

 

 

 

「ち、ちょっと、一刀っ!?」

「やれやれ・・・。緊張の糸が切れたようですな。」

「もういっそ、このまま捨てていったらどうですかっ!?」

しかし、華琳達は、俺を再び馬に乗せて歩き出した。

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          ・・・・・・・・・・

 

 

「やっと気がついたか。」

目が覚めたのは、ゆらゆら揺れる馬の上。掛けられたのは、秋蘭の穏やかな声だ。

「・・・砦は?」

「とっくに落としたぞ。その間、貴様はずっと眠りこけていたがな。」

「役立たずもここに極まれりね・・・」

ちょっと・・・マジすか。

 

 

 

 

「・・・どれだけ寝てたの、俺?」

「聞きたい?」

「・・・聞きたくない。」

向こうに見える山影は、出発の時に見た、華琳の城の近くにある山影のような。・・・俺が気絶してたのって、一日や二日ってレベルじゃないな、こりゃ。

「・・・それでさ。一つ聞きたいんだけど・・・」

「あ、強引に話変えた!」

 

 

 

 

 

「いや。目が覚めたんだし、この縄、解いてくれないかな・・・って思ってな。」

そう、俺は馬の上にいるわけだけど・・・。縄でグルグル巻きされた挙げ句、鞍の後ろにひょいと乗っけられているわけで・・・。

「どうせ馬に乗れる体力なんか戻っていないのでしょう?ついでだから、そのまま帰ったらどう?」

ひでぇ。それって俺、文字通りのお荷物扱いって事ですか。

「良く分かっているじゃない。」

・・・人の考えまで読むなよ。

 

 

 

 

 

「でも、みんな無事で良かったよ。」

「ふんっ。あの程度で死ぬような軟弱者、我が軍にいるわけがなかろう。」

「気絶して荷物扱いされてるヤツはいるけどねー。」

「まだ言うかこのネコミミ頭巾め。」

「ふんだ。荷物みたいに積まれてるヤツに何言われたって、怖くも何ともないわよ。」

くそっ・・・ああ言えば、こう言う・・・。

「ふふっ。今回は一刀の負けね。」

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「ただ、心残りなのは・・・華琳様が気に掛けておられた古書が見つからなかったことだな。」

「太平なんとか・・・だっけ?見つからなかったの?」

俺が最初にここに来た時に、華琳達が探していた本のことだ。俺はその時に、ついでに見つかったようなものだ。

「太平要術よ。・・・無知な盗賊に薪にでもされたか、落城のときに燃え落ちたか。・・・まあ、代わりに桂花と季衣という得難い宝が手に入ったのだから、良しとしましょう。」

「・・・そっか。季衣、華琳の所に残るんだ。」

 

 

 

 

「うん!それにボク達の村も、曹操様が治めてくれることになったんだ。だから今度はボクが、曹操様を守るんだよ。」

「それに季衣には、今回の武功をもって華琳様の親衛隊を任せることになった。」

「そうなんだ。・・・よかったな、季衣。」

「これからもよろしくね、兄ちゃん!」

「おうっ!」

これで荷物扱いされてなかったら、もっと格好良く兄ちゃんって呼ばれたんだろうな!

 

 

 

 

「さて、後は桂花のことだけれど・・・」

そうか。出発直前に言い切った、食料半分の件もあったんだっけ・・・。

「桂花。最初にした約束、覚えているわよね?」

「・・・はい。」

「城を目の前にして言うのも何だけれど、私・・・とてもお腹が空いているの。分かる?」

「・・・はい。」

「え?ってことは?」

糧食が足りなかったってこと?

 

 

 

 

「半分は、北郷の予想通りだ。」

「半分は・・・って?」

「話せば長くなるのだがな・・・」

・・・結論から言えば、桂花は華琳との賭けに負けた。糧食は昨日の晩で尽きて、ここにいる誰もが朝食を食べてない・・・らしい。

ただ、それはこちらの被害が少なすぎて、兵が予想以上に残ったことと・・・。

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「ですが、曹操様!一つだけ言わせて頂ければ、それはこの季衣が・・・」

「にゃ?」

「そうだよ、華琳。それはどう考えたって不可抗力だろ・・・」

「不可抗力や予測できない事態が起きるのが、戦場の常よ。それを言い訳にするのは、適切な予想ができない、無能者のすることだと思うのだけれど?」

「そ、それはそうですが・・・」

「・・・けど、糧食を人の十倍は食べる味方がいきなり加わるってのは、いくらなんでも常人の予想は超えてると思うぞ。」

 

 

 

 

 

そう。季衣は小学3,4年生みたいな小ささで、俺達の十倍以上の糧食を平らげたらしい。まあ、あれだけのパワーの源になるって考えれば、妥当な計算なんだろうけど・・・。

一食あたりの小さな誤差も、回を重ねれば無視できなくなる数字になってくるわけで・・・。

その誤差が桂花の予想を超えていたのが、不幸なことに城に帰り着く直前、昨夜の出来事だったそうだ。

「え?えっと・・・ボク、何か悪いこと、した?」

「いや、季衣は別に悪くない。気にするな。」

 

 

 

 

 

 

「なぁ、華琳。今回の遠征が大成功したのは、桂花のおかげなんだし・・・あの約束は・・・」

「どんな約束でも、反故にすることは私の信用に関わることだわ。少なくとも、無かったことにする事だけは出来ないわね。」

確かに約束を破るのは悪いことだけど、いくらなんでも・・・。

「・・・分かりました。最後の糧食の管理ができなかったのは、私の不始末。首を刎ねるなり、思うままにしてきださいませ。・・・ですが!せめて・・・最後は、夏侯惇などではなく、曹操様の手で・・・!」

「・・・むぅ。」

桂花のトゲのある言い方に少し不満の春蘭。

 

 

 

 

 

「とは言え、今回の遠征の功績を無視できないのもまた事実。・・・いいわ、死刑は減刑して、おしおきだけで許してあげる。」

「曹操様・・・っ!」

「それから、季衣と共に、私を華琳と呼ぶことを許しましょう。より一層、奮起するよるように。」

「あ・・・ありがとうございます!華琳様っ!」

「ふふっ。なら、桂花は城に戻ったら私の部屋に来なさい。たっぷり・・・可愛がってあげる。」

「はい・・・っ!」

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「・・・むぅ。」

「・・・いいなぁ。」

「え、な、なに・・・?」

春蘭はともかくとして、あの秋蘭が悔しそうな顔をするなんて珍しいぞ?

「にゃ・・・?」

季衣も全然分かっていないようだ。

 

 

 

 

「ふんっ。北郷は知らなくても良い事だ!」

「なんだそりゃ。教えてくれよ。」

一体、華琳の部屋で何が行われるんだ・・・?

「それより兄ちゃん。ボク、お腹空いたよー。何か食べに行くよぉ。」

「そうだな。片づけが終わったら、みんなで何か食べに行こうか。」

「やったぁ!それじゃ、早く帰りましょうっ!」

「ははは。こらこら、縄を引っ張るな、季衣。」

この状態でその縄が解けたら、落ちちゃうじゃないか。いくらなんでもこの高さで頭から落ちたら、さすがの俺でも助からないぜ、ははは。

 

 

 

 

 

「ほら、春蘭様も早く早くー!」

「分かったというに、ほら、秋蘭も行くぞ!」

「うむ。」

季衣に急かされて、春蘭達も馬を急がせた。そして俺たちは盗賊討伐の大仕事を終えて、城へと帰っていった。新しい仲間の、二人も・・・。

「あ、解けちゃった。」

・・・アッーーーーーーーーーーーー!

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一刀達が帰っている頃、薄暗い一室では一人の黒装束が、水晶を見つめていた。水晶に映るのは一刀の姿。

「あら、可愛い坊やじゃない。ふふっ。」

そこには、艶かしい笑みを浮かべる女性_____________紅泉(こうせん)がいた。

「これで、王湾の報告の子を含めると、二人目・・・。もう一人は、私達の手中のある。」

次に水晶に映し出されたのは、牢屋のような所で拘束されている飛鳥がいた。何らかの術で眠らされていて、ぐったりしている。

「このことを環様に伝え、さっそく行動を始めないとね。」

 

 

 

 

紅泉は今までの黒装束達同様、霧のように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※どうもお米です。今回は長めに書いてみましたよ!そして新キャラも登場!次回に関しましては、この黒装束の人達の話と呉の話になります。お楽しみに〜。ご指摘ご感想お待ちしています。それでは失礼します〜。

説明
今回で二桁の十話目となりました!今後ともよろしくお願いします!今回は少し戦闘シーンがあったりします。けど、大丈夫かなぁ〜・・・。
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コメント
>茶々さんコメント有り難うございます!桂花のあのくだりは、一刀を冷たくけなしてると解釈していただければ良いと思います。けど、自分自身、少し甘めだったかな〜?と思っております。(お米)
ついに黒幕が動き出しますか……盛り上がってきそうですね。 *報告:P6 桂花「…別にアンタと意見が〜」のくだりなんですが、桂花の性格だと(自己解釈ですが)ツンデレのツンではなくツンツンのツンで罵倒が飛びそうな気がします。桂花→一刀は十割ツンですから。(茶々)
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