暁の護衛二階堂麗華アナザーストーリー ?第七話:二階堂麗華? |
杏子が持ってきた缶詰の残りを食べながら、海斗はずっと本を読んでいた。
昨夜ツキに会ってから、少し自分という人間が見えてきた。
オレを、殺す。
そう。
これをこれから生きる糧にしようと思った。
当然、オレを殺すというのはただの比喩に過ぎず、正確には自己を壊すといったところだ。
自己分析とでもいうのだろうか、オレは今まで自分で自分のことを表す言葉を並べるとしたら、
『冷たい』
『リアリスト』
『気まま』
『無気力』
だと思っていた。
候補として『悪』も上がったが、それは違った。
実際に悪いことをしているとは思ったが、それでもオレは命が大切だ。
悪の定義には人それぞれあるにしろ、オレの中では自己の命を粗末に扱う人間は絶定的な悪だ。
まあ悪は置いておくにしても、ともかくオレはどこか人間性が欠落した人間だとずっと思い込んでいた。
だが、実際にそうではない。
否、ないらしい。
神崎のじじいも口にしていたが、オレはまだ『人』の枠の中に収まっていて、今回のツキとの一件はオレ自身に納得の行く形で『人』の難しさが体感できた。
何人も人を殺めた。
盗みだってある。
まだ幼い、歳の変わらない少女ーーーツキだって襲った。
それでもオレは、結局のところ『人』なんだ。
現在、特に何か目的があるわけでも理想像が持っているわけでもない。
『生』にしがみつく人間的本能は別にして、オレは自分自身に興味がなさすぎた。
ならばただ自己否定して自分自身に嫌悪するより、もう少し自分を知る必要がある。
仮にそれこそが妄想だとして、オレが確固たる『悪』だとオレの中で定義できたのなら、それなら悪のまま胸を張って生きていけばいい。
それはそれで面白そうだし、少なくとも今みたいな宙ぶらりんな状態よりはマシだ。
そのために必要なのは、三つ。
知識と、
概念と、
そして経験。
幸い本を読むのは大好きで、それでいて本を考えながら読むのもまた本を面白くする材料だ。
本なんて立ち読みで十分だしコストがかかるわけでもない。よって知識の条件はクリア。
そこから得た知識を活用し、自分に何が必要なのか選別。それを朝霧海斗の軸にしていけばいい。
経験に関しては実戦的な要素は当分はおあずけだが、焦ることはない。
時間はたっぷりある。
そう、
海「たっぷりとな」
この空間に似つかくない金庫を一瞥し、視線を本へ戻した。
新しい本が欲しい。
いや、これから長期でここの生活を考えるとすると購入はよくない。
やはり町に出てずっと立ち読みする方が経済的にも優しい。
海斗は目的地を決めながら禁止区域を歩いていた。
一応あのおバカメイドが偶然を装ってオレを監視している可能性もある。
尤も、あいつには麗華に伝えるなと言っただけで、もしかすると今後も何かしらコンタクトを取ってくるかもしれない。
根拠も理由も見当がつかないが、元々ツキの思考が全く分からないので可能性の一つとしては考えておいても悪くないだろう。
どちらにせよ二階堂家が関与しないような隣町の書店の方がいい。
規模を比べると若干劣るもの......
海「ん?」
やや前方、数人の男達が何かを囲んでいた。
しゃがみ込んだり笑っているところを見ると、獲物......それも物資ではなく人間を囲んでいる。
ここの住人は以外にも、メリット無しで人を襲う習慣はあまりない。
簡単に敵を増やすと、自分達の首を絞めることになるからだ。
......まあ禁止区域の入口ではそんなルールも分からない輩もいるか。
男達の様子からすると、女を取り合っているのだろう。
何でまた禁止区域の入口付近で......待て。
悪い予感が頭を過ぎる。
それは数ヶ月前に暴行された、神崎萌だ。
このハイエナどもがどれほど腕が立つかは知らないが、複数人がいる時点で素人が禁止区域に潜入するのは無理。
これは外から人間が入って来たことを前提としてた仮説だが、状況を見ても可能性が一番高いだろう。
数は五人。
小説や漫画の世界なら一対五でも大した力差は生まれないが、現実ではそう上手くいかない。
向こうの人間なら神崎のじじいを除き、武術の達人と名乗る人間やプロ格闘家でも厳しいし、可能性があるのは軍人や自衛隊クラスの訓練を受けた人間で、それも相当上位の人間のみ。
神崎は多少腕は立つものの、当然その位置にはいない。
周囲に人影は無い様子から、ここに足を運んだのが向側の人間とすれば一人。
それもハイエナの表情を見るからに対象は食料を持った男ではなく、極上の女。
ならばその卑しい表情にも説明がつく。
大体、全ての仮説の条件をクリアした。
海「......ち」
薫はまったく何をやってるんだ。
前回動機を聞く機会が無かったが、こういう物好きな女に釘を刺し損ねたのを多少なりにも悔やんだ。
海斗は群れまで走っていくと、被害者を確認した。
海「......」
神崎だと、思った。
海「......」
可能性の一つ、仮説、『たられば』にも思い浮かばなかった人物。
海「......」
声が出ない。
時間が、止まる。
『どうして』と頭の中で、ただそれだけが反響する。
怒りの炎を纏う、強い眼をした赤髪のツインテールの少女が男に乗られていた。
まだ洋服は着けていたものの、顔には叩かれた後があり、それでも彼女は強く自分の相手を睨む。
絶対に屈しない強さを持つ、オレの元プリンシバル。
海「......」
それは、二階堂麗華だった。
ーーーーーー第七話:二階堂麗華_end
次→第八話:朝霧海斗_4/14うp
おまけ
そろそろ最終回の予定だけど、この後どうしようかな?って正直迷ってます。
一応新作が出る前に全部書きたいってのが本音だけど、一応ゴールみたいなのを構成に二つ作っているわけさ。
一個はまあ前回のファンディスクで「杏子ルートを充実するのもいいけど、麗華ルートもこんぐらい補足でほしいな?」って感じなルート。まあ分かりやすく言うと第一話の後書きにも書いた問題点を埋めるシナリオだね。
○問題点
・麗華が海斗を好きという理由に、まさかのオムニバス!!!
・佐竹のキャラ崩壊!!
・ボディーガードを辞めるという超展開!
・↑の原因である中傷の伏線回収がされていない!
・『宝』と親父に対してあまりにも後付けな感じがした!
・海斗が何で麗華が好きなのかあまり判らない
なのでこれを埋めたら終わり、ってのが一つ目のシナリオ。目算すると12話ぐらいで終わるのかな(後五話ぐらいか)
そんでもう一つ......ってか、最終話をもじって少し長めに書くシナリオがあるんだけど、とりあえずこっちは封印しようと思う(まだ書いてもないが)
まあ週一うpの今のペースを二倍にすればなんとかこっちは間に合うんで、ちょっと駆け足でうpしていきたいと思います。
でもまあ当初はツキルートも書くぜ! みたいなこと言ったけど、正直あんまり数字も伸びないからどうしようかな?って迷ってます。
もちろんこの作品はきちんと完結させるんで、そこは大丈夫です。
あんまりこのSS自体伸びないみたいだし、一旦全部書き終えて要望があればその時に書かせて貰います。
いや、作者が忙しいとかそういうのを抜きにして、ちょっと他に書きたいものが幾つかあるんですよ。
まず『青少年育成条例改正法案』についても色々意見を並べて少しでも色々な人に目についてほしいし、暁の護衛だけじゃなく他のギャルゲのSSも色々書いていきたいな?って思うから、ね。
ギャルゲなら多分『車輪の国、向日葵の少女』か『この青空に約束をーー』のどっちかで、アニメなら多分コードギアスかな。
まあ今回はこの辺りで。
冒頭に『おまけ』ってあったら見ないで本編だけ見てくれても全然大丈夫なんでお願いします(今更だな)
一応この時点で十話まではできているので次回はうpに遅れることはない。キリっ!
次→第八話:朝霧海斗_4/14うp
説明 | ||
理想像を描くのもいいが、自分を知らないで語ってはいけない。 次へ→第八話『朝霧海斗』:http://www.tinami.com/view/136297 前へ→第六話『絶対的矛盾』:http://www.tinami.com/view/134172 最初→第一話『たられば』:http://www.tinami.com/view/130120 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
10940 | 10546 | 6 |
タグ | ||
暁の護衛 暁の護衛SS しゃんぐりら 朝霧海斗 二階堂麗華 ツキ 佐竹 杏子 南条薫 二次創作 | ||
朝霞 アドミさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |