アクセル全開! 真・恋姫†無双  第9話
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アクセル全開! 真・恋姫†無双  第9話  哀しき戦い

 

 

劉備軍を退けてから数週間が経とうとしていた。

一刀の体は元の状態に戻り、一刀と美沙緒の記憶は半分近く戻っていた。

 

「『ヴァリュザ・ガード』。『アルハイム』」

「『アルハイム』ってあたし達が戦ってた組織の名前だよね?」

「ああ。そして『ヴァリュザ・ガード』はその『アルハイム』最強の拳士だ。

そして俺達『ムーン・ロック』隊が『アルハイム』の本拠地に潜入の際にあいつに遭遇して部隊は半数がやられて、俺達もやられかけてたな……」

「そこまでは何とか思い出したけど……」

「『ムーン・ロック』が何で潜入してたかだ。俺が切り込み隊長だって事は思い出したが……」

「う〜ん」

「後は『幻影体』ってことだ」

「幽霊とは違うみたいだけど……」

「分からねえな〜」

 

二人が考えているとどこからか良い匂いがしてきた。

 

「中庭だな」

「行こう♪」

「そうだな。これ以上考えてもただ腹が減るだけだからな」

 

二人は中庭に行ってみると流琉が料理を作って、季衣が喜んで食べようとしていた。

 

「良い匂いしてるじゃないか。これが!」

「あ、兄様!」

「本当に良い匂いね」

 

そこに華琳と秋蘭もやって来た。

 

「華琳様! 秋蘭様!」

「あれ? 秋蘭さん?」

 

美沙緒が秋蘭がいることに驚く。

 

「どうした。そんな、物の怪でも見るように」

「そう言うわけじゃないんだけど……」

「美沙緒の方が物の怪だよな♪」

「もう、一刀ってば!」

 

美沙緒が怒る。

 

「悪い悪い。でもよ、秋蘭、凪と沙和を連れて馬騰って奴のところに行ったんじゃないのか?」

「馬騰のところに? …ああ、あれは姉者だぞ」

「あれ春蘭か」

「ええー! 春蘭さんに交渉って出来るの〜!?」

 

一刀は平然としているが、美沙緒がものすごく心配そうに言う。

 

「出来るも何も、馬騰はれっきとした漢の将軍よ。その使者には同格の漢の将軍が行くのが礼儀と言うものでしょう?」

「それに、具体的な交渉は風が行うから大丈夫だ」

「なら安心だね」

「しかし……秋蘭、お前は将軍じゃないのか?」

「魏の中では将軍だがな……」

 

秋蘭は少し意味深な発言をする。

 

「魏の中では?」

「都から見れば、ここにいる大半は華琳様の私的な部下と言う扱いなのだ。私にも宮中の地位が無いわけではないが、使者として馬騰と交渉できるほどではない」

「なるほどね〜」

「私達の中で馬騰と交渉できるほどの官位を持っているのは、私と春蘭だけよ。まあ他にいるとしたら月と恋ね。その基準だけで見れば、秋蘭も流琉もさして立場は変わらないわ」

「……ふへっ!?」

 

華琳の言葉に流琉が驚く。

 

「で、でも秋蘭様はボク達より偉いですよね?」

「華琳様の下では、一応な」

「劉備のところだと地位があるのは公孫賛くらいね。張飛も諸葛亮も劉備の私兵扱いね」

「なんだ。ちびっ子もボク達と一緒なんですね」

「多分ね。それより、食べるなら早く食べましょう。せっかくの料理が冷めてしまうわ」

「だな」

 

実は美沙緒はヴァリュザに殴られた影響のせいか、一刀がアクセルに変身しなくても物を持てるようになったのだ。(ただし美沙緒から触れることはできるが、まだ美沙緒には誰も触れれない)

そのお陰でお腹は減ってもいないのにご飯は食べたりするわ、風呂も入るわの生活を送っている。

もっとも物を持てるようになったので、一刀と一緒に書類仕事を少ししたりする苦労は味わっている。

皆がご飯を食べ終わると……。

 

「あ、華琳様なのー!」

 

そこに沙和、凪が帰って来た。

 

「あら、沙和に凪じゃない」

「ただいま戻りました。隊長と美沙緒さんは……またサボリですか?」

「サボリたい年頃なんだよな〜これが」

「まあ本当は資料整理してただけなんだけどね」

 

そうこうしていると春蘭も帰って来た。

 

「華琳様。ただいま戻りました」

「ご苦労さま。結果は……芳しくなかったようね」

「……申し訳ありません。詳しくは風の報告書を見ていただければと思いますが、馬騰は天子の臣であり、魏の旗の下にはけっして降らんと」

「構わないわ。あれほどの将、倒すのは惜しいと思っていたけれど……代わりに剣を交える楽しみが出来たと言うことね」

「相変わらず物騒だな。華琳は……」

「しかし、私は言うのもなんですが……討伐ならまだしも、交渉ごとは秋蘭に行かせた方が良かったのではないでしょうか?」

(……分かってなかったのか……)

 

一刀は呆れてため息みたいなものがついた。

それから少しして軍議が開かれ、西涼軍は騎馬隊が主な戦力であるとして、騎馬隊対策を今まで以上にしようとした。

稟は涼州を攻める理由を華琳に聞いた。今は孫策や劉備も力を蓄えていると報告があったからだ。

華琳は西方の奇襲を厄介と考えており、また最後の相手は劉備か孫策になるとして、その妨げになる戦力には今のうちに退場してもらおうと言う魂胆なのだ。

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それから数日後、華琳は軍を涼州へと進めていた。

 

「なあ、稟」

「何ですか?」

「涼州ってどんな所なんだ?」

「そうですね…実力のある多くの諸侯が緩やかな共闘体制を取っている…そんな所です」

「反董卓連合みたいなのもの?」

「涼州には五胡と言う分かりやすい敵がいますからねー。反董卓連合よりは、はるかに統制の取れた集まりですよー」

「五胡か……」

「天の国の歴史には五胡の存在はありませんか?」

「どことなく聞いたことあるが、覚えてない」

「あたしも……」

「涼州の軍は五胡と戦っているため戦慣れしてます。大兵力の激突よりも、少数での奇襲や神出鬼没の遊撃が中心になって来るでしょう」

「まるで俺達『ムーン・ロック』のような戦い方をする連中だな」

「『ムーン・ロック』?」

「うん? ああ、そうか。思い出したぞ。『ムーン・ロック』は裏工作とか、少数での奇襲をよくする部隊だ! 元々少数だったし……」

「あのそれって……」

「お兄さん達が天の国にいた時のことですか?」

「うん! ありがとう、稟さん!」

「おかげでまた記憶が少しだけだが戻ったぜ。相手が奇襲部隊なら元奇襲部隊の俺や美沙緒の見せどころなんだな。これが!」

 

一刀と美沙緒がどんな奇襲攻撃を仕掛けようとかと考えていると……。

 

「前の方が騒がしいな」

「隊長! 何こんなとこで油売ってんねん!」

 

真桜が一刀達のところにやって来た。

 

「どうしたの?」

「奇襲や、奇襲! 涼州連合の連中、いきなり攻撃しかけて来てん! ホンマに馬ばっかりやで!」

「面白くねえ奇襲だな」

「『ムーン・ロック』って裏工作を含めた奇襲が多かったもんね」

「敵の旗は? 馬騰の本隊ですかー?」

「旗が無いから分からへん。とにかく急いでや」

「分かった」

「アクセル!」

 

一刀がアクセルドライバーを付け、アクセルメモリを持つ。

 

「変身!」

「アクセル!」

 

一刀はアクセルに変身。

 

「一刀殿、美沙緒殿、お気をつけて!」

「ああ。さぁって振り切るぜ!」

 

一刀と美沙緒が真桜と共に前に行く!

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その頃、前では崖のところで涼州軍が奇襲をかけてきたため、霞がなんとか踏ん張っていた。

 

「霞、無事か!?」

 

霞のところに春蘭が来る。

 

「何とかな。…感謝しぃや? ウチが先頭やなかったら、グズグズになっとったトコやで!」

「助かった! 帰ったら酒でもおごってやろう!」

「あったり前や。一番エエ酒、アホほど注文させてもらうからな! 行くで!」

「命は投げ捨てるもんじゃねえんだな。これが」

 

そこに一刀もようやく到着する。

 

「一刀!」

「ここは俺に任せな」

 

一刀がエンジンメモリをエンジンブレードに差し込む。

 

「エンジン!」

「さあて、電撃をくらいな」

「エレクトリック」

 

一刀がエンジンブレードから流れる電気を地面に当てる。するとその電気は地面を伝って行き、目の前にいる涼州軍の騎馬隊に命中。

馬は電気に痺れてしまい、倒れたりして、その上に乗っていた兵達も倒れてしまう。

 

「よろしく!」

「突撃!」

 

一刀が春蘭達に任せて、涼州軍は敗走する。

 

「深追いはするな! 陣形を整えることを優先せよ! 別の襲撃が来るやもしれん。警戒を怠るな!」

「……なるほど。確かに今までの戦い方が通用する相手ではなさそうね」

「相手の詳細は不明ですが、馬騰の本隊では無いようですね。当分はこの手の小さな衝突が続くのではないかと思われます」

「敵の規模は大したことが無くても、襲撃が続くと言うのは厳しいわね」

「御意」

「ふむ……ともかく、見晴らしのいいところに陣を張って、警戒を厳重にするしかないか……」

「情報収集も継続させます。まずは敵の戦い方に慣れることから始めなければ」

「でしょうね。国を出た途端にこれでは、先が思いやられるわ」

「………あ、そうだ!」

「一刀、どうしたの?」

「なに、あいつらが奇襲ならこちらも奇襲。それもとびっきりの奇襲。俺達『ムーン・ロック』お得意の裏工作でもしてやろうと思ってな……」

「何か良い案でも思いついたようね」

「ああ、華琳。少し耳貸してくれ」

 

一刀が華琳と美沙緒にだけこっそり教える。

 

「なるほど。それは良い考えね。さすがは元裏工作部隊の隊長ね」

「稟のおかげで思いついたようなもんだけどな。これが」

「秋蘭。至急、使いを出しなさい」

「御意」

 

それから数日、涼州軍はほぼ毎日のように夜襲をかけてきた。

皆がその夜襲のせいで寝不足の状態であった。

とは言っても何故か一刀と美沙緒はよく眠っていた。

理由を一刀達に聞くと……。

 

「『ムーン・ロック』は完全に自分の命が危ない時以外はよく眠るように特訓してたんだよな。これが」

「それにあたし達結構寝ることも好きだったしね♪」

 

何ともまあ単純な理由であった。

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とある日の朝。

 

「華琳様、昼過ぎには涼州に入ります」

 

秋蘭があることを華琳に報告していた。

 

「そう。これで、全行程の半分ほどかしら……」

「半分は過ぎたかと思いますが…いよいよ、ここからが敵の本拠地です。攻撃はより激しくなるかと」

「そうね……。兵の疲労も酷いと聞いていいるし、少しはあれの効果が出ればいいのだけれど」

「今のところ、敵の攻撃が緩んだようには思えませんね……」

「まあ、上手くいけば儲けものよ。計画は、効果が無かったことを前提に進めるように」

「御意」

「まあ上手くいくと俺は思うんだけどな……。さてと……それじゃあ……」

 

一刀は華琳達のところを離れ、陣のところに行き、凪を起こそうとするが……。

 

「………」

「起きねえな」

「無理してたんだね」

「ああ、凪ならよう寝とるで。声掛けんといて」

 

そこに霞が来た。

 

「そうだな……」

「すいませんっ! 寝坊しましたーーーーっ!」

 

今度は勢いよく季衣がやって来た。

 

「……っ! 夜襲かっ! はあああああっ!」

「落ちつけ! 凪! ぐおおおおおおああああああ!!」

 

凪の氣弾を受け止めるために一刀が前に出て凪の氣弾を自分の体で受け止めた。

 

「てぇい!」

「……ぐっ」

 

霞が無理矢理、凪を気絶させた。

 

「いてて……」

「大丈夫? 一刀」

「大丈夫だ。あんなのヴァリュザの攻撃と比べたら何とも……。しかし容赦ないな。霞」

「仕方ないやろ。ウチも寝るから、凪が起きたらちゃんと寝直すように言うといて」

「ああ。霞も……ゆっくり休んでね!」

「おやすみなさーい!」

「ほななー」

 

そして霞は自分の天幕に向かった。

 

「今日は季衣ちゃんか…」

「そうだね。よろしくね、兄ちゃん! 姉ちゃん!」

 

そしてその日の晩、夜襲は無かった。

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それからまた数日後…。

一刀と美沙緒は霞、稟、流琉、季衣と一緒に華琳の指示で涼州の街に来ていた。

 

「へぇ…涼州ってちゃんと街もあるんだね」

「何だと思っていたのですか?」

「すごい田舎」

「美沙緒……」

「いくらなんでもヒドイで」

「そう言えばよく考えたら月の両親って涼州に居たんだったな」

「てことは……月ちゃんにとってはここって故郷なのかな?」

「それだったら少し悪いことしたか……」

 

一刀が少しばかり罪悪感に襲われる。

 

「せやけど、これもこの世界じゃ良くあることや」

「……そうだな」

「二人とも、あんまりキョロキョロしない」

 

美沙緒が季衣と流琉を注意する。

 

「この二人を連れてきたの、失敗だったのでは?」

「そう言うな。息抜きになるだろってのは華琳の考えだ。しかし補給物資を渡す相手って誰だ?」

「ああ、あそこに」

 

稟が指を刺す方向には……。

 

「こっちよ」

 

見た事ある顔がいた。

その見た事ある顔とは詠であった。

そして詠に連れられてあるところへと来た。その場所とは丁度張三姉妹がライブを行っていた会場であった。

 

「ああ。あいつら補給物資の事も担当していたのか」

「正確にはボクと月だけどね」

「しかし悪いな、月。折角両親がいるってのに、こんなことさせちまって……」

「いいんです。一応、お父さんとお母さんと会えましたから……」

「そっか……」

 

一刀は少しばかり心が晴れた気がした。

一刀は張三姉妹のライブの盛り上がりを見る。

そのライブには季衣や流琉とそんなに変わらない女の子も混ざっていた。

実はその女の子は涼州軍の将の一人の馬岱であったが、一刀は知らなかった。

 

「ほあー!」

「ほああー!」

「で、二人も盛り上がってるね」

 

季衣と流琉もノリノリであった。

 

「それだけ娯楽に飢えとったっちゅう事やろ」

「……ふぅ。しかし俺が考えた作戦は成功してたようだな」

「伊達に黄巾の乱の原動力となったわけではありませんね。彼女達の歌、あの年頃の男達には効果絶大なようです」

「これも立派な裏工作……なんだよな。これが」

「しかし良く思いつきましたね」

「稟が『ムーン・ロック』がどういう部隊かを思い出させてくれたおかげなんだよな。これが」

「ありがとう、稟さん」

「いえ……」

「しかしこれ俺達のところでもやって士気高揚にならないか?」

「なるほど。考えておきましょう」

 

それからしばらくして一刀達は陣に戻り、華琳達に成果を報告した。

 

「さっきから外が騒がしいのは何なの?」

「いやな。兵達の士気高揚のために天和達を連れて来たんだけどさ……」

「ひょっとして悪かった?」

「……効果は?」

「抜群なんだな。これが!」

「なら、あの騒ぎが終わったら、一気に攻め込んでしまいましょう。士気は高いうちの方が良いし、彼女達が我々の陣に入ったのを見られていたら、この手はもう使えないわ」

「御意」

「ああ」

 

そして華琳達は騒ぎが終わった後、一気に涼州軍の陣へと攻めて行った!

その華琳達の侵攻を知った馬超達は迎え撃ちに行った!

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「前方に敵影! 旗印は……馬!」

「よし! 敵の動きに応じて陣形を展開!」

「動きは間違いなく騎馬での戦い方で来るはずや。いつもの調子と思うとったら、痛い目に合うで」

「なーに、エレクトリックで痺れさせてやるさ」

「あまりその手は……」

「じゃあスチームで目くらましだな。何かあったら美沙緒に直接突撃してもらうし……」

「でも大丈夫なの?」

「この前のヴァリュザのことだろ? あいつの鎧が特殊なだけだ。あいつの攻撃以外で美沙緒が攻撃を受けることはねえよ」

「え、ええっと、あのぉ〜……」

 

一刀に連れて来られていた天和達は少し戸惑う。

 

「あのー。なんか私達、すっごく場違いみたいな気がするんですけどー」

「悪いけれど、あの連中を相手に安全な所はここしかないの。戦が終わったら、護衛を付けて城まで送ってあげるから……少しの間、我慢なさい」

「別に、街に戻してくれればいいんだけど……」

「それは危険よ」

 

詠が地和達の意見に反対する。

 

「なんでー?」

「もし一刀達と一緒にこの陣地に入るのを誰かに見られていたら、私達が魏の関係者だったことがばれてしまっているもの」

 

人和が詠のフォローをする。

 

「その通り。安全になったら、またこちらに来る機会もあるでしょう」

「そっか……。ここの人達、ノリが良くて楽しかったんだけどなー」

「入場料を羊で払おうとするのは参ったけれどね」

「ごめんなさい」

「いや、月ちゃんが謝るところじゃないよ」

 

何故か謝る月に美沙緒がツッコム。

 

「華琳様。陣の展開、終わりました。敵陣からも将が出てきていますが……」

「なら私も行きましょう」

 

そして華琳はその将のところに行った。

 

「馬騰は?」

 

そこにいたのは馬騰ではなく、別の女性であった。

 

「あたしは馬超! 馬騰の名代として、この軍の指揮を執る者だ!」

「ああ、そう。馬超ね。そう言えば連合の時にも見た顔ね……」

「な……何だその反応はっ! もっとこう、あるだろうが! この侵略者め!」

「名将と名高い馬騰と相見えるのを楽しみにしてきたのだもの。その代わりがあなたでは……ねぇ」

「くっそぉぉぉぉ! その余裕面、後で泣きっ面に変えてやるからな! この野郎っ!」

 

そして馬超は下がっていった。

 

「……私は野郎ではないわよ。失礼ね」

 

華琳も下がった。

 

「随分早かったですね」

「噂通り、馬騰は体調が悪いようね。相手は錦馬超だったわ。あまり舌戦は得意ではないようだけれど」

「舌戦はともかく、戦働きに関しては五胡にも一目置かれる勇将よ」

「お気を付けを……」

 

詠と人和が華琳に忠告する。

 

「分かっているわ。早速来たわね…真桜の仕込みはどうなっている?」

「真桜から連絡ありました。完了だそうです!」

「よし! ならば総員戦闘配置につきなさい! この苛立ちだらけの涼州の戦に、さっさと終止符を打つわよ! 全軍!」

「とっつげきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

地和が突撃命令を出す。

 

「お前が言うなってんだな! これが!」

 

魏軍が涼州軍と激突する。

一刀もアクセルに変身して、エンジンブレードのエンジンメモリをフルに使って戦う。

そして戦いの中馬超達は地面のぬかるみにはまる。

 

「な……なんでこのあたりで地面がこんな……っ! 溝やぬかるみがあるなんて、聞いてないぞっ!」

「わかんないよっ! 雨も降って無いのに……!」

 

それは一刀と真桜の工作であった。

エンジンブレードのスチームで土をぬかるみにしたり、真桜の螺旋槍で溝を作ってそれを真桜が隠していたのだ。

そして馬超と馬岱の相手を春蘭と霞に任せ、一刀達本隊は実は城の制圧に向かっていたのだ。

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「日が暮れる前に陥落したな……」

 

一刀達は馬騰の居る城に辿り着き、日が暮れる前に城を落としたのだ。

 

「どうやら馬超の隊が本隊だったようね。まさか、ここまで城の守りが手薄とは……」

「まあ『ムーン・ロック』はこう言う奇襲も得意なんだよな。これが……」

「ねえ、一刀」

「何だ?」

「あのヴァリュザって奴と戦う前も同じようなこと無かったっけ?」

「……」

 

一刀と美沙緒が一生懸命にその事を思い出そうとする。

 

「そう言えばあいつのアルハイムの本隊を俺達とは別の部隊が戦って、俺達『ムーン・ロック』があいつらの本拠地に潜入したんだよな」

「それで潜入した矢先にヴァリュザがいた……」

「そうだ。それだ。やっと思い出せたぜ」

「でも何でそんな作戦を取ったんだっけ?」

「さあ?」

「非戦闘員には手を出すな! 一箇所に集めて、絶対にこちらから危害を加えるんじゃないぞ!」

 

一刀と美沙緒が記憶を取り戻そうとしていく中、凪達は懸命に城にいる人間の処遇をしていた。

 

「でぇえええええい!」

「まだ兵がいたか……」

「あちょおおお!」

 

美沙緒と凪の蹴りがその兵士に直撃する。

 

「ご無事ですか? 華琳様」

「ええ。平気よ」

「しかし剣を持っていたのにあえて格闘で来たか」

「五胡の使う格闘技の一つです。組み合いに持ち込まれては、私でも勝てる自信はありません」

「でゃああああああ!!」

 

まだ居た涼州兵が華琳を襲う!

距離的に凪のフォローは間に合わないが……。

 

「あえて組み合うんだな。これが!」

 

一刀は既に変身を解いていた状態にも関わらず、兵士に飛びつき、組み合いになったのだ。

 

「隊長!」

「大丈夫だよ」

 

凪が心配する中、美沙緒が心配しなくても良いと言う。

 

「一刀、生身でも結構強いよ」

「そいぇっ!」

 

そして組み合いの結果、一刀の勝利であった。

 

「俺は素手同士ならヴァリュザ以外には負ける気はないっての!」

「後は馬騰だけか……」

「華琳様、馬騰が見つかったという報告が……」

 

そこに秋蘭が来る。

 

「そう、案内なさい」

「………は」

 

そして馬騰の居る部屋に華琳達は行ったが、そこで見たものは……。

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「………」

「……毒をあおったようです」

「………そう」

「…………」

 

一刀と美沙緒は部屋に入っていないが秋蘭がやってきた時の表情と今の部屋の静けさでどんな状態かは察していた。

 

「一刀」

「行くぞ……美沙緒」

 

一刀は帽子を被っていないが、帽子を深くかぶるような手を頭に付け、美沙緒と共にその場を去った。

 

「秋蘭。ここに人が立ち入ることを禁じなさい。破った者がいれば、例え一刀でも斬り捨てて。死して馬騰になお辱めを与えることは…この曹孟徳が許さない」

「……御意」

「それから、女官がいれば何人か呼んで来て。馬騰の亡骸は、この地の流儀で丁重に弔わせなさい」

「承知いたしました」

 

秋蘭が部屋を去る。

 

「どうしてよ……。私は、あなたと相見えるのを楽しみにしていたのよ……? 馬寿成……!」

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「……そうか。自害したのか」

 

馬騰の自害は馬超達の耳にも入った。

 

「姉様……これからどうするの?」

「たんぽぽ。お前は皆を連れて、南へ行け」

「南へ…?」

「益州には劉備がいる。悪い奴じゃないから、理由を話せばお前くらいなら面倒を見てくれるはずだ。あたしの名を出せば、たぶん大丈夫だと思う」

「たんぽぽはって……姉様は?」

「あたしは城に戻る」

「そんな! だって、城には曹操が!」

「ここまでされて黙っていられるか! あたしは馬超だ! 馬騰の子、馬孟起だ! 親が死に、城を奪われて……黙っているような女じゃないって事、あいつらに教えてやる!」

「それはやめて置きなさい」

「それは今でなくてもいいことだ」

 

そこに謎の女性と……ヴァリュザがやって来る。

 

「……誰だっ!」

「ああ、そう言えば…。会うのは初めてだったかしら。錦馬超」

「曹操の刺客か?」

「だとしたら?」

 

ヴァリュザは拳を構える。

 

「ヴァリュザさん、そう言う冗談はおやめ下さい」

「……」

「曹操の刺客じゃないってことか……」

「私は黄漢升。こちらの方は……」

「ヴァリュザ・ガード」

「我が主、劉備の指示であなた達を手助けに来たのだけれど…ごめんなさい、ひとあし遅かったようね」

「黄漢升…長沙の黄忠か? そう言えば、母様に聞いたことが……」

「ええ。私の夫が以前、馬騰殿に助けられたことがあったの。だから、遠征軍に志願したのだけれど……」

「私はついで……いや、黄忠の護衛だ」

「そうか……ありがとう。なら、頼みがある」

「聞こえていたわ。馬岱ちゃんね?」

「お姉様……」

「あなたはどうするつもり?」

「あたしはもう一度、曹操に決戦を挑む」

「さっきも言ったが、それは今でなくてもよい」

「どういうことだ?」

「どうせこのまま行っても犬死にだ」

「それに私達はもしあなた達が敗れていた場合、生き残っていた涼州兵の身柄を引き取ることが任務なのです」

「……っ!」

「それは劉備達の配下になれ……そう言うことか!」

「最低でも私はあの劉備の配下になったつもりはない」

「どういうことだ?」

「私は劉備の天下を見たいだけで一緒にいるだけだ。その気になれば私はいつでも抜けることは出来る」

「……それはともかく、我が主はあなた達涼州兵を客人として迎える気があると言う事よ。臣下ではなく、対等な同盟の相手としてね。

そして私達と共に、曹操と戦って欲しい」

「話に乗るかどうかはお前達次第だ」

「涼州を取り返す、手伝いをしてくれるってことか?」

「ええ。ただし、涼州を取り返した後は、私達と同盟を組んで、良好な関係を築いて欲しい。それが劉備の望みよ」

「姉様……」

「劉備なら言いそうなことだな…分かった。それまでこの力、あんた達に預けさせてもらう」

「………」

「ならば案内しましょう。私達の国、蜀へ……」

 

そして馬超達は蜀へと向かった。

 

(まだ時期は早い。決戦はまだ後だな)

 

そう考えるヴァリュザであった。

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設定(追加修正)

 

 

ムーン・ロック

 

 

裏工作や奇襲を得意としていた部隊で一刀と美沙緒が所属していた。

ちなみにメンバーの数は少なく少数精鋭の部隊であった。

一刀達がこの世界に来る前にヴァリュザにより半数以上が倒されてしまっていて、現時点での生き残りは不明。(一刀と美沙緒は除く)

 

 

おまけ

 

 

作者「第9話なんだな。これが!」

一刀「西涼の戦いか…。確かに仮面ライダーの時は無かったな」

作者「まあ余裕とかが出来たら魏編の時版にしてもいいんだよな」

一刀「確かまだアギトは無いんだよな」

作者「ああ、ブレイドとカブトだな。まあカブトがある時点で馬より早いんだけどな」

一刀「鬼だな」

作者「一応だが、このアクセルの次に連載しようかと言うものは思いついたんだが…」

一刀「どうした?」

作者「本格的にリアルの事に手をかけないといけないから、今度こそ更新停止した方がいい感じなんだよな」

一刀「大変だな」

作者「まあここを覗くだけなら毎日するだろうけど、それも本当はいけないんだが…」

一刀「まあ待ってくれる人はいるだろう」

作者「ああ。そんなに待たせる気はないけど、さすがに今回のリアル事情は今まで以上のものだからな……。とりあえずの目標は今週中か来週の頭にこの連載物を終わらせる」

一刀「おいおい!」

作者「それでは!」

説明
この作品では一刀の態度や口調が原作と違うことをご了承してください。
また本作の一刀の設定のため、一刀のパートナーとなるオリジナルキャラクターがいます。
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コメント
実は美沙緒はヴァルザに殴られた影響のせいか←ヴァリュザ(トウガ・S・ローゼン)
カズトさんに同感ですね・・・・ところで、ここのアクセルはバイクフォームにはならないのですか?(峠崎丈二)
命は投げ捨てるもの(ヒトヤ)
更新おつですwそれにしても更新速度はやいですねww(スーシャン)
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