真・恋姫 頑張れ?昭さん!37 |
馬超がそう高々と言い放った。
要はこの場で一騎討ちしやがれ!って事だろう。
「どうした、あたしが怖いのか?」
挑発されるまでもない、此方の答えはYESだ。
大将としてのメンツもあるし、何よりもここでのらなければ士気が大きく落ちるだろう。
俺はジェスチャーでその問に答える。
抜刀し、片腕を突き出して指をクイッと動かす。
─かかってきな─
といった意味のジェスチャーだ。
俺の意思を察した馬超が一気に駆け出す。
騎乗戦なので、一瞬で詰める事はできないがそれでも馬超の馬捌きは大したもんだ。
「よっしゃいくぞッ!」
馬を巧みに操り、此方に槍での攻撃を繰り出してくる。
馬超の武器はリーチの長い槍、対する此方はいつもの小太刀だ。
ただでさえ間合いの問題があるというのに、馬上でこの差はかなり痛い。
2合、3合と相手の攻撃を捌いていくうちに見る見ると差が出始める。
それも二桁にたどり着こうとする頃に、情勢は大きく動き出した。
「──ッ」
?昭が勝負に出ようと、身を乗り出したところを馬超の槍で狙い撃ちされてしまった。
幸い、距離を詰めていたので刃の部分で切られることは無かったが
それでも横薙ぎの攻撃をモロに食らったので落馬は避けられなかった。
「へっ、あたしの勝ち……」
緊張を解き、そう言いかけたところで馬超が何かに気がついた。
?昭が落馬したのは故意に行われたものであり、それは一騎討ちを有利にするためであった。
自らの意思で行ったので、きちんと受身をとっており、ダメージは軽いものであった。
が、ただ馬から降りただけでは相手も下馬するとは限らない。
相手が馬から降りたくなるような"何か"をしなければならないだろう。
「へぇ、何で落馬してまで地上戦に持ち込もうとするのかは知らないが…お前にとっては
そっちのほうが戦いやすいからだろ?」
埃を叩いていた?昭にそう言い放つ馬超。
「だけどあたしは騎馬戦のほうが得意なんでな、悪いがこのまま潰させてもらうぜッ!」
そう言い放ち、即座に馬を駆る馬超。
馬超の馬はいわゆる名馬であり、馬力などは他の馬とは比べ物にならない。
人間程度ならば轢き殺すことくらいは造作もないだろう。
?昭は馬超が此方に向かって駆け出すと同時に行動をとる。
懐からナイフを数本、馬超の馬に目掛けて投げつける。
「──ッお前…」
そうだ、馬超の馬は名馬──この世に二頭といない最高の血統。
そして涼州出身で、幼い頃から馬と供に生活している馬超ならば、自分の相棒と言える
馬を危険な目に合わせてまで勝ちに行こうとはしないだろう。
ま、別に馬に構わず突出してきても俺が投げたナイフで馬は絶命してくれるだろう。
無理矢理にでも地上で戦ってもらわなければ、此方の勝ちは薄い。
自分の馬に向かって飛来してきたナイフを槍で弾き飛ばした後、一度止まる馬超。
俺はすかさず、騎馬で来るのは危険だぞ、といった事を相手に伝える。
先ほど投げたナイフを、数十本ほど手にとってジャラジャラと音を立てて馬超に見せ付ける。
「小賢しいな…。だけど地上だろうが何だろうが、負ける気はしねえぜッ!」
馬から降りて、正眼に槍を構える馬超。
此方も手に持っていたナイフを元あった場所にしまう。これで交渉成立だ。
俺からすれば状況はイーブン、地上ならば他にも戦いの余地はあるからな。
もうそろそろこのローブみたいな羽織物は必要ないな、というか戦いの邪魔になる。
俺は全身黒一色に染めてくれた羽織物をバッと脱ぎ捨てる。
これが本体のハンサム顔ーッとかネタを言ってみたいが、そうも言えない状況だ。
色々と制限される物がなくなったので、少しは戦いやすくなったところか。
「ようやく正体を現しやがったな!」
とか言われてしまいました。
俺は某ロールプレイングゲームの魔王なんかじゃあないので正体も糞もない!
「俺の名は?昭!字は伯道だ!」
そう高々と名乗りをあげると、周りの兵士がワァッと大歓声を上げた。
おお、俺ってば人気者…というより兵士達はこの一騎討ちの行方のほうが気になっているようだ。
「あたしの名は馬超、字は猛起だ!」
互いに名乗りをあげると、辺りは殺陣のワンシーンのように一瞬にして静まる。
此処から見える範囲では戦闘が中断されているようだ。
「いくぜ!ここでお前を討ち取って形勢逆転だ!」
馬超が槍を構え、間合いを詰める。
十字槍のような槍なので、リーチが長い上に刃の部分に武器を絡めとられそうになる。
「ハァァッ!」
ガキィッと小太刀と馬超の武器がぶつかり合う。
そのまま何度か同じ事を繰り返す。二合、三合と繰り返す間に相手を観察する。
単純なパワーのぶつかり合いでは此方のほうが上…だが武器のリーチ等をみると此方が不利になる。
「うらぁッ!!」
馬超が放った突きを小太刀で弾こうとしたところで、俺の武器は空を切る。
どうやらフェイントのようで、突きと見せかけての攻撃だった。
「ぐッ…」
槍の柄による攻撃をモロに食らい、一瞬怯む。
流石は馬超、五虎将軍の1人である事だけはある。
一撃が速く、それでいて重いので避けきるのが難しい。
あまり不利な状況が続くと兵が動揺してしまうので、できれば一気に決めてしまいたいところだ。
そう考えていると、この場に意外な人物がやってくるのであった。
─時は少し遡り、羊?視点─
「羊?様っ!」
弩部隊の指揮を執っている羊?の下に、兵が1人やってくる。
「どうしたっすか?」
火急の用件…というか、どこか突破でもされてしまったのだろうか。
「敵の大将、馬超が自ら単騎で突出してきました!
此方の本陣付近にまで斬り込んできたのですが、どうやら現在?昭様と一騎討ちをしているようでして…」
それを聴いた瞬間に、羊?がすぐさま行動にでる。
「なんですとっ!?…すぐに駆けつけるっす!」
と言うと同時に、ダッと走り出す羊?。
「あ、羊?様!弩の指揮は──」
「そんなもんお前に任せるっす!今は御大将を守るのが先っす!」
?昭の事を御大将と呼ぶまでになった羊?、物凄い速さでこの場を後にしたのだ。
残された伝令はただただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
馬超との一騎討ちの最中、意外な人物が俺の下にやってきた。
「?昭様ァァァッ!!!!」
ダダダッと猛ダッシュでやってくるのは羊?であった。
何故こんなところにやってきたのだろうか…
「ご無事ッすか!?敵はあの女っすね、容赦はしないっすよ!?」
一瞬でやってきて、一瞬で抜刀して俺と同じ位置に立つ羊?。
「あー、駆けつけてきたのは嬉しいけど一応一騎討ちだからね」
俺は羊?を回れ右させ、背中を押して安全地帯まで押してあげる。
その光景を見てボーッとしていた馬超が口を開く。
「……も、もう良いか?」
恐らく待っていてくれたのだろう、恐ろしい強さを持っているがやはり根は良い人なのだ。
「いや、もう少し待ってくれ」
俺は馬超からもう少し時間を貰う事にした。
参戦させるのはまずいが、荷物持ち程度にはなるだろう。
俺は上半身に見につけている物を全て取っ払う。
当然服も全て脱いだ。
「なにしてるんっすか?昭様!そういうのはもっと雰囲気のあるとこで……かふぅッ!?」
羊?が突然訳のわからない事を言い出したので、その頭の上に拳骨を落とした。
「一騎討ちが終わるまで預かっていてくれ、戦いの邪魔だ」
俺は見につけていた携帯武器や、鎧、服を全て羊?に預ける。
一騎討ちを一気に決めたいので、防御よりも速さ、そしてガードより回避を選ぶ。
「うぅ…解かったっす!我が家の家宝にするっすよ!」
「いやいや、あげないから!全部俺んだから!」
こんな状況でも明るい羊?は天然なのか、それとも場を明るくさせようとあえてやっているのか。
そんな考えが頭に浮かんだが、今は目の前の敵に集中だ。
「待たせたな、馬超」
「ようやく本気出すのか?…わざわざ鎧を脱いで身軽になったみたいだが…」
そう言いながら槍を正眼に構える馬超。
「それでも得物は、あたしのほうが何倍も有利だぜッ!」
そしてそのまま一気に斬りかかって来る。
馬超の槍、?昭の小太刀。どちらが有利かはもう説明するまでもない。
確かに俺のほうが不利だが…何も武器は小太刀だけじゃあない。
母から授かったこの体、全てが俺の武器だ!
「なッ──」
と格好良い事を言ったつもりだが、要は相手の武器を掴んでしまおうという魂胆だ。
腕力だけならば、呂布以外にならば負ける気はまったくしない。
…と言いたいところだが、超本気を出した夏候惇(華琳成分過多)と張?さん(怒り状態)には勝てる気がしない。
「そしてこのまま──ッ!!」
馬超の武器を奪取しようと、思い切り引っ張ったのだが馬超も負けじと踏ん張っている。
馬超は俺の思っていたよりもずっと力持ちのようだ。
引いてダメなら押してみな、と何度かフェイントをかけて引っ張ってみたがそれでも奪取できない。
それならば此方にも考えがある
「せぇいッ!!」
バキィッと馬超の武器が真ん中辺りから真っ二つに割れた。
馬超の手が離れる気配がなかったので、掴んでいた武器を破壊する事にした。
普通ならばここで大抵の人は戦意を失うのだが…
「ちッ……うらぁッ!!」
馬超はまだまだ戦意があるようで、半分になった槍の柄の部分で攻撃を仕掛けてくる。
此方も同じく、半分になった槍の刃の部分で迎撃する。
激しい打ち合いが何度も続き、互いの持っている武器に限界が近づいてくる。
打ち合った回数は二桁も半分が過ぎ、両者から疲労の色が浮かび始める。
馬超が持っている部分は、柄の部分なので武器としてバランスが良いのだが
?昭の持っている部分は刃のある部分だ。
武器としてバランスが悪く、重心が刃のほうにあるので扱いにくい。
ほんの少し扱う分には然程気にならないが、長時間の打ち合いとなれば確実に?昭の体力を削っていくのだ。
「はぁっ…はぁ……。へへ、そろそろ決着が着きそうだな」
馬超が息を切らしながらそう呟く。
「はっ…久しぶりに武器を扱った気分だぜ……」
俺のほうも体力的には限界が近い。
長時間武器を扱った戦闘は何だかんだで久しぶりだ。
どうせならばもう少しマシな武器でやりたかったが、そうも言ってられない。
再び真っ二つに割れた槍を互いに分かちあったもので、激しい攻防が続く。
二桁もそろそろ終わりに近づき、三桁に突入しようとした時に事態に動きが出た。
「良くやったわ、?昭。武器を収めなさい」
この場には絶対にありえない、自分の主の声が聞こえてきた。
戦いに集中しすぎて幻聴が聞こえたのかと一瞬思ったが、周りの様子を見る限りそうでもなさそうだ。
「か、華琳さん…呉に遠征していたんじゃあ…」
俺は胸中に思った素直な疑問を口にする。
「呉のほうは大勢が決したから霞に後を任せてあるわ。それに、やられっぱなしじゃあ気が済まないでしょう?」
呉との国境争い…確か合肥での争いだったそうだから…なるほど、霞──張遼が守備に就いたのなら納得がいく。
曹操がそう言ったところで、辺りを見回してみると自陣のほうには援軍であろう軍隊が勢ぞろいしていた。
この地に連れてきた面子は、夏候姉妹に荀ケ、張?さんなどなど、主力メンバーだ。
「──さて、馬超。次は私達と遊んでくれないかしら?」
曹操がそう言い放ち、魏の主力が前に出る。
「ふん、あんたには荷が重すぎだったのかしらね」
荀ケがそう俺に告げるが、きっと愛情の裏返しだろう。そうだと信じたい!
「まったくだ、?昭。もっと攻めるべきだ!攻撃は最大の防御と言うだろう?」
次は夏候惇がそう言ってくる。
このおバカさんがこんな言葉を知っているなんて…お父さん感激!
「何言ってんですか、しっかりと守りきれ……」
こいつらは一体何を言ってやがるんだ?何だかんだでしっかりと守りきってただろ?
と伝えようとして言葉が止まった。
「?昭…まさか気がついてなかったのか?」
張?さんが俺にそう告げると、俺の脳に改めて事態を再認識させる。
前線に敷いていた馬防柵は崩壊しており、目の前には涼州軍の騎馬隊が勢ぞろい。
こちらの弩部隊は後退しており、誰がどうみても押されている状況になっていた。
一体いつの間に…そう思っているうちに、ある人物が脳裏を過ぎる。
「…羊?」
「あいあいさー!」
元気良く返事をする羊?だが、何故だか額に汗が滲んでいる。
俺は羊?に対する疑問を全てぶつける事にした。
「改めて聞くが、何故ここにいるんだ?」
「それは?昭様を助けるためっす!」
「…弩部隊の指揮はどうしたんだ」
「……部下に任せたっす!」
「それは当然、将軍格の人間だよな?」
「…えっと、それは……」
まさかとは思うが、ただの一兵卒に指揮を任せたんじゃあないだろうな…
普通に副将にでも指示を出せばこんなに崩壊することはないだろう。
「ところで?昭」
俺が羊?に質問攻めをしている最中、夏候淵が声をかけてきた。
「何故鎧を身に付けておらんのだ?」
…まあ、戦場で上半身裸なら素直にそう思うだろう。
「一騎討ちしてたんですがね、途中で煩わしくなったので部下に預けました」
「…その部下とはあれの事か?」
夏候淵が指をさしたところを見ると、先ほど問い詰めていたはずの羊?と張?さんがじゃれ合っていた。
じゃれ合っているというよりかは、何やら闘争をしているようだが…
「何故貴様がそれを持っている!寄越せっ!
「何すかあんた!これは我が家の家宝っすよ!?誰にも渡さないっす!」
「勝手に家宝にすんじゃあねえ!返せ、っていうか勝手に着るんじゃねえ!」
俺が預けたはずの服を抱え込んでいるかと思ったらいつの間にか着込んでいた羊?。
しかし、サイズが合わないのでぶかぶかだ。
それを引っ手繰ろうと張?さんが引っ張っているので大変だ。のびるからやめて!
張?さんを落ち着かせ、羊?に拳骨をプレゼントしてようやく服を奪還する。
「うう…愛が痛いっす…」
「やれやれ、ったくろくな事を……あれ?」
「どうしたっすか?」
羊?から全て奪い返したはずなんだが、どうにも足りない。
何が足りないかって、それはもう大事な大事な手甲が見当たらない。
「じ、自分じゃないっす!隠し持ったりなんかしないっすよ!」
怪しい。この上なく怪しいが、嘘をついているようにも見えない。
では一体誰が…と思って辺りを見渡すと口笛を吹きながらそっぽを向いている人物がいる。
「…流那さん、俺の手甲知らないですか?」
「さぁ、知らんな。さて、さっさと涼州軍を撃退しなければな」
「・・・」
これは後で問いただす必要がありそうだ。
張?さんの言ってる事も一理あるので、今は問いただせる状況じゃあなさそうだ。
目の前には涼州軍が展開しており、対する此方も魏の本隊を引き連れてきている。
「ちょっとあんた達!緊張感が足りないんじゃないの!?」
荀ケが声を荒げてそう言い放つ。
「ああ、桂花様がお怒りだぞ!」
「おお、これは恐ろしい」
俺と夏候惇はすぐさま余所余所しい態度で真面目モードになる。最も、ふざけてたのは俺だけっぽいが。
因みに俺と夏候惇は対荀ケ協定を結んでいる。
大したもんじゃないが、いつも言い負かされている夏候惇があまりにも不憫なのでたまに手助けしているうちに
いつの間にかこんな協定まで作ってしまっていた。
「くっ、馬鹿にされてる気がするわ…。というか春蘭、あんたは関係ないでしょ!」
「すまんな桂花、私と?昭は契りを結んだ仲、許せ…」
「な、なんですと!?昭様は既に奥方が…」
「いやいやいや、そういう意味じゃないから!」
戦場の真っ只中だというのに、何だか楽しい雑談が始まってしまっていた。
しかし、その空気もすぐに切り替わる。
「あなた達、そこまでにしておきなさい」
曹操が静かにそう呟くと、皆が一斉に静まる。
前方を見てみると、馬超の姿は既になく、代わりに馬超より一回り小さな女の子が先頭に立っていた。
曹操の事だ、あえて馬超を見逃したのだろうか。
あの疲労ではすぐに戦闘に出ることは不可能、武器も破損してしまっているので今回はもう出てこれないだろう。
そして目の前で涼州軍を率いているのは恐らく馬岱か、性に"馬"がつく誰かだろう。
「?昭、貴方は天幕で休んでなさい。」
曹操がそう俺に告げる。
「なに、まだまだ戦えますよ」
「ふふ、やせ我慢は体に悪いわよ?」
さすがは曹操というべきか、察しが良いというか何と言うか。
確かに今の俺は動悸が激しいのを抑え、平然を保っているよう見せかけていた。
だが体は正直というか、汗なんかはしっかりと流れ出ていたので誤魔化しきれない。
「なんだ、気付いてたんですか」
「む、まさかそれで隠していたつもりか?」
「やれやれ、相変わらず無茶しようとするな」
「休めるうちに休んでおきなさい。近いうちにまた扱き使ってあげるわ」
色々な人にそう突っ込まれたので、お言葉に甘える事にする。
「それでは、お言葉に甘える事にしますよ。……っと羊?」
別れ際に、ちょいちょいっと羊?を呼び出す。
耳元でとある重要事項を伝える。
「今回の捕虜の件は内密にな。あの三人娘にも俺の言伝として伝えておいてくれ」
俺が耳元でそう伝えると、了解の意を示すかと思いきや
「えっ、夜伽っすか!?」
羊?がワザとらしく大声でそう言い放つと、何名かピクッと反応する。
すかさず俺は羊?に拳骨をお見舞いする。
「ああ…愛が…愛が痛いっす……」
「じゃ、頼んだぞ」
一体いつの間にこんなキャラになったんだ…口調の変化は性格にも影響するのだろうか。
こうして俺は魏軍のスター将軍達に後を任せて1人天幕で休養をとる事になったのだ。
さて、まずは結果から伝える事にしよう。
結果的にいえば魏軍の大勝利に収まり、涼州は魏軍が平定した。
馬超などの生き残った将兵は劉備軍の下に降ったとか何とか。
因みにまだ蜀軍ではなく、劉備軍のままだ。
魏軍、呉軍と続いて最後は蜀軍と来るのかと思ったが、まだ劉備が自らを王と名乗り出ていないようだ。
そういえば演義でも、王を名乗るきっかけになったのが漢中を治めた事だ。
確か劉備達にとっての偉人がどうので漢中王と名乗ったのだ。
だが、現在漢中は魏軍の統治下にあるのだ。
そして劉備軍は現在、南蛮を攻略中とある。
劉備軍の拠点は成都であり、漢中からは距離的には近い位置にある。
途中、難攻不落といわれる砦をいくつか攻略しなければならないのが難点だが…
涼州の次は一体どこを攻めるのか…、漢中を此方が治めているという事は定軍山何かはないのか?
…ま、ないほうが良いっちゃあ良い戦いか。
「私達は先に漢中に軍を進めるわ。桂花達は涼州の戦後処理をお願いするわ」
「御意!」
という事で、涼州の次は劉備軍という事になった。
そのため、成都攻略のための拠点となる漢中へと先行することになった。
そのメンバーには、俺と曹操の2人だけで、後から張?さん等が追って到着するそうだ。
何やら曹操が、涼州軍迎撃について詳しく説明してもらいたい、という事だ。
これはマズイ、もしかしたらバレているのだろうか。…ま、隠し続ける気はないので頃合をみて話すつもりはあったので正直それほど気にしてはいない。
漢中を守備しているのは孟達という武将だ。
割と最近仕官した中年武将なのだが、能力的には中々のものだったそうなのでこの地を任されているそうだ。
俺と曹操が漢中に入城すると、手厚く迎えられた。
「曹操様、よくぞ御出でになられました。ささ、此方へどうぞ」
孟達がそう言うと、城の中へと案内される。中では既に宴の席が用意されていた。
時間的には既に夜なので、飲んだ後はすぐに眠ることになるだろう。
「?昭、今夜はゆっくり休みなさい」
割と強行軍だったので、俺にそう告げる曹操。
「近いうちに涼州での戦時報告を聞かせてもらうわよ」
「そうですね…」
宴の席では、こういった仕事関係の話し何かが多く続いた。
他にも弩についてや、その指揮などなど。
通常の弩よりも改造をして威力を高めたのだが、その代わりに装填時間などが大きく増した。
だが、それを補うよう布陣させたので実戦ではそれが苦にはならなかった。
等など、いわゆる仕事話しという奴だ。
他には人間関係など、特に恋話という奴か?
正直、同性愛者である曹操には無縁な話なんじゃないかと思う。
…いや、だからこそ興味が湧く話題なんだろう。
久しぶりに曹操と長い間話をした気がする。
たまにはこういった宴なんかも良いものだ。
慣れ親しんだ人が1人ってのは寂しいものだったが、今度は大勢でやれれば良いと思った。
「明日、…そうね、流那は明日の夜くらいにはこっちに来ると思うわ」
宴が終わると、軽い連絡事項が伝えられてそのまま解散だ。
何だか時間に縛られてる気分になったが、たまには悪くない。
自由奔放が続いていたので、規律を守るといったのは久しぶりだ。
こうして漢中での1日はあっという間に過ぎるのであった。
…裏で糸が引かれている事に気がつかずに。
翌日、目が覚めると既に華琳こと、曹操が広間にいた。
入るなり遅い、といわれたのだが時間の指定なんかあったっけか。
今日は1日フリーだと思っていたので、割と遅めに起きたのだが、どうやら俺の勘違いのようだった。
「…あの、華琳さん。今日は一体…」
「あら、私の買い物に付き合ってくれるんではなくて?」
「荷物持ち、ですか?」
「それ以外に何を期待してるのかしら」
やれやれ、こんな優秀な部下を荷物持ちだなんて…
と自分の心の中で呟いてみたが、まったくと言って良いほど優秀な点が見つからなかった。
そうだな、たまには荷物持ちも…。と、心の中で涙するのであった。
SIDE・孟達
「北門と西門、南門の警備を強化しろ。東門には工作を仕掛けておけ」
「御意」
孟達がそう指示を飛ばすと、彼の腹心である部下がすぐに行動を始める。
「宴席の建物に燃えやすい物…そうだな、藁でも積んでおけ。いつでも焼討ちできる準備を怠るなよ?」
「はっ!」
もう1人の腹心であろう兵も、それに答えてすぐに行動を開始する。
「ふっ…これで曹操の小娘も終わりだな。護衛の男が少々厄介だが、対策ならいくらでもある。」
彼は大国の主、曹操の首を持ってどこか適当な国に降る魂胆だろう。
現在、魏が兵力、国力など全てにおいて郡を抜いている。
その王を討ち取ったとあれば、彼の名は恐らく歴史に残るだろう。
孟達のとある計画が密かに進められている事を曹操は知らない。
SIDE・OUT
ああー重い!というかバランス悪っ!どんだけ積めば気が済むんだ!
といわんばかりに購入した物品が積まれている。
当然それを持つのは俺だ。
「もう少しいけると思ったのだけれど…。ま、今日はこのくらいで許してあげるわ」
こんな事言ってきたので俺も反論を試みる
「あー下着が重い…、下着さえなければもう少し持てそうなんだけどなあ」
俺がそう呟くと、曹操がキッと睨んできた。
その表情からは、照れているのか怒っているのか見当もつかない。
「…そ、そう。そんなに持てるのなら次回は楽しみにしているわよ」
「えっ、また行くんですか?」
「嫌なのかしら?」
「…いえ、滅相もない…」
こんなやり取りをしている間に、目的地に到着した。
目的地といっても、城です。ええ。
城内に入ると、孟達が何やら用件があるとかでそのまま面会した。
「曹操様、夜分遅く申し訳ありません」
「構わないわ、続けて」
形式上の言葉を連ねる孟達。
俺からすれば煩わしい事この上ないが、この時代ではそれが普通なので仕方ない。
「このような物を入手しましたので、曹操様にお見せしようと」
そういって差し出したのは何やら紙切れ。
それを見た曹操が驚きの声をあげる。
「これは益州の…。これをどこで?」
「はい、私の知人が益州出身でしてその友人に頼み書かせたものです。」
孟達が曹操に渡した紙切れには、此方から成都にかけての地図に加え、
どこに何があるか、この地点は危険などなど詳しいことが書かれていた。
「へぇ、こんなところに桟道が…。?昭」
「はい」
「今日はもう休みなさい。私は今からやる事ができたから」
「えーと、荷物のほうはどうします?」
「置いておいて構わないわ。後で侍女に運ばせるわ」
そう言うなり、曹操は小走りで部屋に戻っていった。
残された俺と孟達。
俺も荷物を置いてさっさと寝るとするか…と思ったところで声をかけられる。
「?昭様、簡単な宴席を用意しているのでどうですか?」
孟達にそう言われ、そういえばまだ食事をとっていなかった事に気がつく。
俺は少し考えて了解した。
決め手となったのは腹の虫、麻婆があるということだ!
俺は孟達が開いた宴席に参加し、久しぶりの麻婆を堪能した。
普通の人が作るのと、流琉さんが作るのとじゃあさすがに差が出るが、それでも美味いものは美味かった。
こうして俺は今日一日を終え、久しぶりに快適な睡眠をとれると思った。
時期的には冬寄りなので、夜は冷える。
…はずなのだが、何故か辺りの温度が急上昇している。
それに、とても息苦しく感じる。
一体何が起きたのだろうか、眠い目を擦って起き上がると…
「くっ…こ、これは…」
暑さの原因は部屋が燃えている事で、息苦しさは煙のせいだった。
どうやら孟達の仕業のようだ、というか俺にはそれしか考えられなかった。
咄嗟に立ち上がろうとするが、転んでしまう。
くそっ、酒のせいか少しクラクラするし頭痛もする…
何とか立ち上がり、窓を蹴破って脱出する。
武器や荷物を纏める暇なんかない。小太刀などの大事なものは常に携帯しているので失うことはなかったが。
俺が外に脱出すると、その音を聞きつけた兵士がすぐに駆けつける。
「敵将だ!まだ生き残っているぞ!!」
味方かと一瞬思ってしまったが、こんな状況で味方の兵士が生存しているとは考えられない。
敵兵が槍を突き出して俺の命を奪おうとする。
だが、いくら酔いが残っているとはいえこの程度でやられるほど腐っちゃあいない。
俺は敵兵の突きを避け、相手の武器を奪取する。
そしてその武器を乱暴に振り回して道を切り開く。
「邪魔だッ!道を空けろ!」
そう叫びながら槍を振り回して敵を叩き殺していく。
目的地は、とりあえず曹操と合流することだ。
生きていてもらわなければ困る、もしも死んでしまっては魏が崩壊してしまう可能性もある。
何十人目かを叩き殺したところで、武器が壊れてしまった。
「ちっ…ナマクラが」
事態が事態なので、俺は悪態をつく。しかし、そうしたところで状況は良い方向に変わってはくれない。
そうやって暫く移動して曹操らしき人物を見つけることに成功した。
「?昭!…良かった、無事だったようね」
そう言いながら愛武器の鎌で敵兵の命を狩っていく曹操。
「ああ、何とか…。ここから一番近い門は──」
「東門ね。というよりかはそこに行かざるをえないわ。」
「何故ですか?」
「今日の買い物の時、やたら警備兵が多く出回っていたわ。それも北や南など、東門を除いた全ての門にね」
「…と、いうことは相手の罠の可能性が高いってことか」
「そうね。けれど、このままここにいてもただ死を待つだけになるでしょう」
そういって兵士の首を飛ばす曹操。
確かに敵兵がわらわらと現れているこの場所でちんたらしている場合でもない。
俺達はすぐに東門へと向かう。
東門に行くにつれて敵兵が少なくなっていくのが解かる。
やはり東門には何か罠が敷かれているのだろう。
「ここが東門ね」
「ああ、ちょっと待ってください」
俺はそう言って弓を取り出す。
警備兵が数名いたので、それらを全て弓で射殺す。
「貴方、弓も凄いのね。…秋蘭と競わせてみるのも面白そうね」
こんな時に何を言い出すのやら…、というか夏候淵と競って勝てる気がしない。
「そんな事より、早く行きましょう」
一応城下街などもあるので、漢中丸ごと焼討ちはなさそうだが…それでも警戒するに越した事は無い。
「ええ、そうね」
城門の上には数十名の兵士がいた。
その中には孟達も思われる人物もいるようだ。
「よし、曹操が東門を通過するところで縄を切るんだ。生き埋めにして上手く捕縛するんだ。最悪、殺してしまったも構わん」
「御意!」
曹操と供に漢中を脱出するために東門へと到着した俺達。
いくらそこに敵兵が見えないからといっても油断はできない。
一応その場その場で最善を尽くそう。
「華琳さん、恐らく東門自体に罠が仕掛けられていると思われます。なので、そうですね…
一気に駆け抜ける、ってのはどうです?」
「そうね…単純だけど、効果はありそうね。というよりかは、それしか方法はなさそうだけれど」
そう言って後ろを見る曹操。
それに習って同じく後ろを見ると、何やら近くで喧騒が聞こえる。恐らく敵兵だろう。
もたもたしていたら見つかってしまうので、急いで行動に移す事にした。
東門を猛ダッシュで通過する俺と曹操。
「この分だと罠はなさそうね」
「そうみたいですね…、ただ東門を抜けた先に敵がいる可能性もありえますね」
その場合は覚悟を決めるか、涼州からやってくる救援を望んで奮戦するかのどちらかだ。
そうこう話していると、何やらゴロゴロと言った感じの岩同士がぶつかるような音が聞こえてくる。
「──上よっ!」
そう言って上を見ると、東門自体が崩れかかっているのが解かる。
敵は俺達を生き埋めにするつもりか、まさか門ごと崩しにかかってくるとはな…
崩れかかってる東門を見てか、思わず立ち止まってしまった曹操。
しかし、それが最悪の事態に繋がってしまうので俺は声を荒げる。
「立ち止まるな、走れッ!!」
俺は走り続けていたので、曹操との間に若干の距離が出来てしまった。
俺の地点をあと少しいけば、崩れ落ちても被害を受けない地点なのでそこにたどり着けば良いのだが…
「くそっ、間に合わないか…」
俺は覚悟を決め、両の腕に力を込める。
東門が崩れ落ちる轟音と供に、小さな歓声が聞こえてくる。
恐らく曹操を討ち取ったと勘違いして喜んでいる敵兵だろう。
「か、?昭…」
俺は崩れ落ちてくる岩石の一角を支えている状態だ。
そのおかげか、ただ崩れ落ちてくる形が良かったのかは知らないが、そこから数メートルにかけて道ができている。
丁度東門を抜けられる距離であった。
「……長くは持たない、早く脱出してくれ…」
額に岩が直撃したのか、パックリと割れて流血してしまっている。
その血が目に入って視界が悪い。
「けれど、それじゃあ貴方が……」
意外にも逃げる事を躊躇している曹操。俺の中でも本当に意外であった。
「…この分じゃあ、生き残っている兵士はいないだろう。…涼州からやってくる部隊と上手く合流できれば助かるさ…」
「くっ…私がもっとしっかりしていれば、こんな事には…」
「…何、華琳はこんなところで死ぬようなタマじゃあないだろ?」
俺がそう言うと、曹操…いや、華琳は静かに立ち上がった。
「…さっ、早く行ってくれ…そろそろ限界だっ……」
「必ず助けに戻るわ。…だからそれまでの間、死んでしまってはダメよ。これは私からの命令です」
最後にそう言い放って駆け出す華琳。
言葉が少し濁っていた気がするが、あの華琳の泣く姿は想像できるもんじゃあないのできっと気のせいだろう。
「…ふっ、柄にもなかったかな……」
最後にそう呟き、支えていた岩山からゆっくりと手を離す。
最後に耳に残ったのは岩が崩れ落ちる音のみであった。
うわあ、これ漢中の降りいらないよね
でも一応某武将の背景と合わせて書いてるからいらないわけでもないんだけど…
キャラ崩壊が否めない!そして何か露骨すぎる気がした。
うーん、疲れてて書き溜めしかないよ!
今更修正しようとも思わないのでそのまま投下!では次回で!
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これ書いてから随分経ってて自分でも何書いたかわからないという… | ||
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コメント | ||
>>スターダストさん …まさか未来の文章を予知する事ができるのかっ!? 大分前に書いたままなんで筆者も展開を憶えていないというw 仕事で投稿する気がおきん!(きゅうり) え〜と・・・・・言っちゃ〜なんだけど〜これ・・・死亡フラグ・・・だよな?・・・この状況でどう生き残るんだああああ!!上手く岩と岩との間に入り込んだとかか?誰が助けるんだ?流那さんだったら最高のシチュエーションだけどなwww(スターダスト) >>kyowaさん フ、フラグ…さてどうでしょう!(きゅうり) ま、まさかこんなところでフラグが!?(kyowa) >>aoirannさん 漢中はあっという間に過ぎるからすぐに状況リセットされてしまいます… 本当にこの降りは必要あったのか!(きゅうり) 驚いた!!このような展開になるとは、これは楽しくなってきた(aoirann) >>ねんどさん 漢中の降りで華琳様…筆者もなんともいえない!(きゅうり) >>封神さん 打ち切る!さあ打ち切るぞ!形あるもの何時しか…というやつで…(きゅうり) >>地方妖怪さん 誤字報告どうもですー なんだろう、何かで有名武将の武器は量産されてるって知ってそれで書いた記憶がある!…確かちょーりょーさんの飛龍がどうのの降りだたかなあ(きゅうり) >>かなたさん 終わらせない!でも打ち切ろうかな!(きゅうり) >>一刀さん さあどうでしょう…というか筆者も次の展開憶えてないというw(きゅうり) これは華琳フラグかなw(ねんど) !!(詩) おいおい死んじゃったら終わってしまうよ〜 というか武器の耐性弱すぎ・・・(RAIN) 誤字報告 P3:呂布意外→以外(地方妖怪) 有名武将の武器ってかなりの業物なのに、結構簡単に折りましたねカクショーさん パソ壊れてwiiからやってるんで名前変換出来ない(T T)(地方妖怪) 某悪来さんを思い出した……。此処で死んだら物語が終わってしまう!(かなた) ちょっ死んでる死んでるwwまぁここらへんで流那が助けるんでしょうかねぇ〜?(空良) |
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