清・恋姫無双 第二話 桃園の誓い
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さまざまな作品を参考にしながら書いていますので、

 

作風が類似している!って思われる部分があるかもしれませんが

 

そこは寛大な心で受け入れてください・・・

 

 

 

 

 

 

 

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〜〜桜桑村〜〜

 

「今日は何して遊ぼっか〜」

 

「え〜っとねぇ、だっこがいい」

 

「それって遊びじゃないよ〜」

 

「だっこで遊ぶ〜!」

 

「お前ずるいぞ〜劉備姉ちゃん、俺とも遊んでよ!」

 

「じゃぁ、みんなで追いかけっこしようね」

 

「わ〜い。じゃあ劉備姉ちゃんが鬼だよ。みんな逃げるぞ〜」

 

「「「わ〜」」」

 

「まて〜」

 

 

 

 

あっという間に子供たちは散らばり、そこには子供たちから劉備と呼ばれていた女性だけが残っていた。

 

「みんな元気だね〜。・・・ふぅ、皆がこうして笑顔でいられる世の中が一番なのになぁ」

 

劉備にとって、争いが無く皆が笑って暮らせる世が理想であり、人々は話し合えば必ず分かり合えるというのが彼女のポリシーである。

 

「でも、どうしてこんなことになっちゃったんだろう・・・」

 

盗賊が蔓延り、民たちが苦しんでいる、それなのに何もできない自分に劉備は耐えられなかった。

 

「いつかはこの邑にも・・・あっ、今は追いかけっこの途中だった。皆を探さなくちゃ!!」

 

そういって彼女が移動しようとしたとき、子供達の一人が血相を変えて戻って来た。

 

かなり急いできたらしく、息も絶え絶えである。

 

「どうしたのっ!?」

 

「ぜぇ、ぜぇ、盗賊たちが村を襲ってて・・・それで・・・曲岐があいつらの人質に!」

 

「えっ!?曲岐ちゃんが!?」

 

「そうだよ。返してほしけりゃ金と食糧よこせって!村のみんなは怖くて動けないんだ。

 

だから劉備姉ちゃん、早く来て曲岐を助けてよ!」

 

私だって恐怖で足が動かない。でも私が行かなきゃ曲岐ちゃんが助からない!

 

・・・覚悟を決めた劉備は足を進めた・・・

 

 

 

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「おいおい、早くしねぇとこいつ殺っちまうぜ」

 

「お頭は優しいんだ、金と食糧さえ渡せば何もしねぇって言ってんだよ」

 

「そうそう、俺らは無駄な殺生なんかしたくねぇんだよ」

 

下卑な笑いを浮かべながら、村人たちに要求する盗賊たち。

 

数は少ないが相手は何度も人を殺めてきた盗賊、村人たちでは相手にならない。

 

それに人質もいるためうかつに手を出すこともできないでいた。

 

「待ってください!」

 

そんな中、声を上げるものがいた。劉備玄徳、その人である。

 

「あぁん、なんだテメェ」

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「姓は劉、名は備、字は玄徳、この邑で草鞋売りをしています」

 

「その草鞋売りさんが何の用だ?」

 

「お願いします!曲岐ちゃんを返してください!」

 

自分の目の前に立ち頭を下げる劉備を見て、頭は理解した。

 

曲岐というのは恐らく人質になっている子供のことだろうと。

 

そして、劉備を見て先ほどよりもさらに悪辣な笑顔を向けた。

 

「・・・分かったよ。その素直な嬢ちゃんの顔に免じて返してやるよ。おいっ、放してやれ!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「曲岐ちゃん!・・・よかった」

 

「・・・でもなぁ、このまま手ぶらで帰るわけにもいかねえんだよなぁ。

 

だからよ、嬢ちゃんが来てくれるっつうんなら俺等は帰ってやってもいいんだぜ」

 

それは劉備にとって、非情な選択であった。

 

ここで断ってしまえば村人たちがどうなるか分からない。

 

かといって、自分を差し出すということはどう言う事かを劉備は理解していた・・・

 

「・・・っ、わたしの体でよければ」

 

「元徳ちゃん!!」「お姉ちゃん!!」

 

劉備はこのとき自分の無力さに嘆いていた。

 

せっかくみんなを助けてあげられたのに、笑顔にしてあげることができなかった、と。

 

「じゃあ、ありがたく」

 

頭の手が近づいてくる。

 

覚悟はしたはずなのに、体が震えてとまらない。

 

それでも、自分で決めたことなのだ、後悔はしない・・・

 

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そして、あと少しで頭の手が劉備に届きそうなところで、二人のものではない声が動きを遮った。

 

「まて」

 

その声は短かったが、こめられた殺気に頭は命の危険を感じて後ろを振り返る。

 

そこには明らかに村人たちとは違う雰囲気を発している3人が立っていた。

 

逆光ではっきりとは見えないが恐らく声を発したのは真ん中の者であろう。

 

姿形から判断して、女性に見える・・・

 

「な、なんだテメェ!!」

 

「悪いことはいわないからあの子の事は忘れて、この村から出て行ってくれないか」

 

「ははっ、それはできねぇ相談だなぁ。この嬢ちゃんは自分から行くっていったんだぜ」

 

「貴様っ!!「待って、愛紗」・・・しかし「ここで騒ぎは起こしたくは無いんだ、だから武器は構えないで」・・・分かりました」

 

「・・・どうしても駄目か?」

 

「うるせぇ、何回も言わせんじゃねぇよ!!」

 

「仕方ないな。できれば穏便に済ませたかったが・・・愛紗、鈴々!」

 

『御意(分かったのだ)』

 

 

それからは一方的な展開だった。呼ばれた二人は次々と盗賊たちを倒していく。

 

先ほどの言葉どおり武器こそ用いていなかったものの、盗賊たちはもはや歯向かう意思など持ち合わせてはいなかった。

 

そして、その間に戦っている二人を呼んだ者は頭と劉備がいるところに近づいていた

 

「くっ、来るんじゃねえ!!」

 

頭は咄嗟に持っていた剣で劉備を人質に取る。

 

「きゃぁ!」

 

「こ、こいつがどうなってもいいのか?」

 

「・・・どうしてこんなことするんだ?」

 

その顔は、とても悲しい顔をしていた。そして、盗賊にするような眼差しではなかった・・・

 

「そりゃあ、楽しいからじゃねぇか」

 

「・・・そうか。分かった」

 

次の瞬間、頭は殺気と共に強い衝撃を受けた。

 

それが、目の前にいた相手から殴られ数メートル飛ばされた挙句、壁に体を打ち付けたと分かる前に、頭は意識を手放していた。

 

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「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・あっ!ゴメンねあんなの見せちゃって、大丈夫?」

 

「・・・はい、大丈夫です。それよりも、助けていただきありがとうございます」

 

「ご主人様、大丈夫ですか?」

 

「お兄ちゃん、大丈夫か〜?」

 

先ほどまで戦っていた二人がこちらのほうへ駆けてくる。

 

わたしを助けてくれた人は「お兄ちゃん」と呼ばれていた。ということは本当は男なのであろう。

 

正直、劉備は信じられなかった。こんなに綺麗な人が、男なんて……

 

ふと、周りを見るといつの間にか盗賊たちは逃げた後だった……

 

驚きなのは、誰も死者を出さなかったことだ。敵である盗賊たちでさえも怪我はしただろうが誰一人として死んではいなかった。しかし、恐怖というものを植え付けられただろう賊達はもはやこの邑を襲いに来ることはないだろう。

 

「俺は大丈夫だよ、二人ともありがとう」

 

そういって男は二人の頭を撫でる。

 

二人ともとても嬉しそうに受け入れているし、男のほうも先ほどまでとはまったく雰囲気が違うと言っていいほど、慈愛に満ちた顔をしていた。

 

先ほどまで、あんなに賊を圧倒していた3人と同じなのかと疑ってしまう。

 

と同時に、劉備にはある決意が芽生えていた。

 

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「あのっ!」

 

「んっ?どうかした?」

 

「わたし、劉備って言います。それで、わたしを一緒に連れて行ってくれませんか?」

 

男は『劉備』という言葉に反応したようだが、真剣な顔で劉備に顔を向けた。

 

「どうして?」

 

「わたし、今の世の中を変えたいと思っていたんです。

 

皆が笑って暮らせる世界にしたいって。でも自分だけじゃ何もできなくて・・・」

 

「それで、俺たちと一緒に行きたいと」

 

「はい。皆さんならばもっと多くの人たちを助けられると思います。

 

わたしには優れた武も知も無いけど、このまま指をくわえて見ている事なんてもうできないんです。

 

だから、お願いします!一緒に旅をさせてください!」

 

「「俺たち(私たち)からもお願いします!」」

 

「みんな・・・」

 

それは邑の皆の声であった。

 

邑の人たちは劉備がこの世を憂いていることを知っていた。

 

でも、自分がついていっても何も変わりはしないということもわかっていた。

 

そして、劉備の思いを実現させるには、今彼らと一緒に行くのが最もよい方法なのだと・・・

 

そんな思いからのお願いだった。

 

「・・・分かった。いいよね?二人とも」

 

「そこまで言われては断るわけには行かないでしょう。」

 

「鈴々はお兄ちゃんがいいならいいのだ!」

 

「そういうことだから。俺の名前は北郷一刀、字と真名はない。一応『天の御遣い』なんて名乗ってるけど、その呼び方はやめて欲しいかな……」

 

「わたしは関羽、字は雲長。愛紗とお呼びください」

 

「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ。お姉ちゃんには鈴々って呼んでほしいのだ」

 

「北郷さん、愛紗さん、鈴々ちゃん、わたしは劉備、字は玄徳。真名は桃香って言います。

 

これからは桃香って呼んでください。」

 

「じゃあ桃香、共にこの乱世を沈めよう!」

 

「はい」

 

 

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〜〜一刀〜〜

 

「「「「おお――――――。」」」」

一面に桃色が広がる場所に俺たちは来ている。

 

あの後、邑を助けてくれたお礼に酒をもらったので、せっかくだからと桃香が教えてくれたのだ。

 

「これが桃園かー・・・初めて見たけどすごいねぇー」

 

「美しい・・・まさに桃園という名にふさわしい美しさです」

 

「ホントだな。・・・御苑の桜みたいだ」

 

「ほお・・・ご主人様の居た天にも、やはりこれほど美しい場所があったのですか。」

 

「咲いていたのは、桜だったけどね。すごく綺麗だったよ」

 

「雅だねぇ〜」

 

などと、三人で風雅を楽しんでいると、

 

「さぁー!酒なのだぁ!」

 

わくわくした表情を浮かべた鈴々が、俺の周りをクルクル走り回る。

 

「・・・約一名、ものの雅も分からぬ者も居るようですが・・・」

 

「あははっ、鈴々ちゃんらしいのかな」

 

「らしいのか?・・・まぁいいや。みんな準備はいい?」

 

「はい!」「はっ!」「いいのだ!」

 

三人がそれぞれ返事をし、手に持った盃にお酒をそそいでいく。

 

愛紗曰く、桃香の理想、村の皆から慕われる姿に感銘を受けたらしく、桃香と俺は並び立つ存在になるらしい・・・

 

それなら桃香が一番上でいいじゃんって言ったのに、結局押し切られてしまった。

 

そんなこんなでいろいろあったけど、俺が長兄、桃香が長女、愛紗が次女、鈴々が三女ということで落ち着いた。

 

「よし、皆持ったね。では・・・」

 

皆が俺の言葉にうなずくと、掌で包んでいた盃を、空にむかって高々と掲げた。

 

「我ら四人っ!」

 

「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!」

 

「心を同じくして助け合い、みんなで力なき人々を救うのだ!」

 

「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」

 

「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」

 

「・・・乾杯っ!」

 

桃園の誓い

 

 

 

この出会いに幸多からんことを・・・

 

 

 

 

説明
今回で、「仁徳の王」が登場します
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コメント
劉備は元徳ではなく玄徳では?(ちや)
こういう個人単位の話だと、桃香も強いなって思えます。(マフェリア)
タグ
真・恋姫無双 恋姫無双  愛紗 鈴々 桃香 一刀 

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