恋姫無双 袁術ルート 第三十五話 劉備の国 |
第三十五話
一刀は現在、益州に向けて移動中である。劉備との同盟を結ぶために、雪蓮たちと共に益州に行くのだ。
「それにしても、劉備ってどんな人なのかな?」
一刀が呟き程度の言葉に雪蓮が答えてくれた。
「そうね〜。どことなく一刀に似ているわよ。」
「俺に?」
「うん。」
言っている意味が分からない。でも、劉備と言えば、三国志の主人公の一人だ。おそらくは雪連や曹操並みのものすごいカリスマを持っているのだろう。一説によれば、あの関羽や張飛は劉備のあまりの徳の高さに自らひれ伏したという説もあるくらいなのだからな。三国志での劉備軍の特徴と言えばそこだ。敵だった者たちが勝負や劉備の持つ徳にひれ伏して劉備軍が出来上がって行ったのだ。まさに物語の王道ともいえる主人公だろう。
「それにとっても可愛い子なの。」
「か、可愛い?」
やはり劉備も女の子なのだろうか?いや、これまでの流れからして間違いなく女の子だろう。もう驚く事はない。だって、すでに月と言う史実とすさまじくかけ離れている人物と出会っているのだから。どんな容姿をしていても驚く事はない。
「そうよ♪ いきなり襲いかかったら駄目よ。」
「そんな事、するわけないだろう。」
そんなふうにケラケラと一刀をけなしていると、突然、隣からどなり声が聞こえてきた。もしかしなくても華雄だ。
「雪蓮!貴様、一刀様に対してなんという口を……!」
「あらやだ。妬いているの?華雄。」
「なっ!そ、そそそんな事あるはずないだろうが!」
相変わらずの二人だ。一刀は傍目からこの二人のやり取りを見ていた。やはり華雄はどこか垢ぬけている。いつもの華雄は危なっかしいというか、余裕がないというか………とにかく、そんな感じだったと言うのに……。まあ、いい傾向にあるのだからなんの問題も無いだろう。
そんなこんなで賑やかなメンバーで劉備の待つ益州へ行く一刀たち。劉備たちの使者である月たち。それと雪蓮に一刀。護衛として華雄も付いてきた。呉のメンバーはこの三人だけである。いつもだったら、冥琳や祭さんが付いて来てくれるのだが、今回はお城にお留守番と言う事になった。
このメンバーだけで大丈夫なのだろうか?と思う者たちもいるだろう。その者たちのために一応説明しておく。今回、雪蓮は同盟を組むために劉備の元へと訪れる。ここだけ聞けば、ものすごく大切な儀式めいたものを感じないでもないが、すでに、使者である詠と冥琳とで大体の条約や約束事などが取り決められていたのだ。なのでそんな大層なものではなく、ただ単に、劉備に『よろしくね〜』などと、挨拶に行くようなものなのだ。なので別に冥琳が付いていく必要もなく、やらなければならない仕事が山ほどあるようなのでそちらを優先したようだ。斗詩や猪々子を軍に取り入れ、彼女たちの隊を編成したり、曹操軍の動向を考えたり、他にも面倒くさそうな事務的な仕事、等など。最近は亞莎に軍略や兵法などを教え込んでいるようだ。
しかしそれでもだ。雪蓮一人に行かせるのは冥琳らしくない。冥琳は雪蓮の右腕であり分身のような存在だ。そんな冥琳が雪蓮を一人で行かせる。これはおそらくは、月や詠たちの事を信頼しての判断なのだろう。月たちだけではない。立派な王様になった雪蓮の事も信頼しているからこその判断なのかもしれない。
賑やかな旅路ももうすぐ終わる。月が言ってきた。
「ご主人様、雪蓮様。到着いたしました。ここが桃香様の街です。」
こうして一刀たちは劉備の街へと到着したのだ。
何とも賑やかで気持ちの良い街。劉備の街だ。
「へえ、ここが劉備の街なのね。」
雪蓮も感嘆したかのように言う。まあ、それもそのはずだろう。劉備たちは前のこの街の支配者であった劉表を追い出して、この街を乗っ取った……いわば侵略者なのだ。街の人たちにとってもあまりいい感情を持たれるはずがないというのに………どういうわけか、街のみんなは不平や不満はないようだ。むしろ満足しているようにも見える。劉表の統治が相当悪かったのか、劉備の徳が街の人間の不満をどこぞへと飛ばしたのかは誰にも分からない。ただ、はっきりしている事は、街の人間たちはみんな劉備の事を慕っていると言う事だ。
恐るべき劉備である。
一刀たちは月たちに城を案内され、いよいよ劉備との対面となる。心なしか一刀も緊張していた。無理もない。これから会う人間はあの劉備玄徳。三国志の主人公にして本物の英雄。不安と期待を胸に一刀は劉備が現れるのを待った。
だが………
「………遅い。」
雪蓮が指をトントンさせながら呟いた。確かに遅い。
「も、申し訳ありません!雪蓮様。も、もうしばらくお待ちください……!」
月がペコペコと頭を下げていた。そこまで申し訳なさそうにする必要もないのだが……。ともかく、確かに劉備がなかなか現れない。いや、そもそも何かがおかしい。
「………雪蓮、これって……」
「一刀も気付いた?」
一刀が感じた違和感。雪蓮は一刀よりもずっと早くこの妙な違和感に感づいていた。
「ねえ、月?」
「は、はい!」
月はビクっと身を怯め、雪蓮の方をなんだが苦い笑顔で対応した。
「関羽たちはどこ?」
「っ………!」
もろに直球だったのが分かる。聞かれたくない事を親に聞かれた時の子供の表情と同じ。月はまさにそんな感じの表情をした。
一刀が感じた違和感はまさにそれだ。一刀は関羽と面識はないが、ここは劉備の城であり、そしてこの場所は玉座の間だ。だと言うのに、ここは酷く静かだ。不気味なくらい静かである。城の中にも使用人とかしかいなく、兵たちの姿も見えない。そして、この玉座の間も普通なら劉備軍の重鎮たち。つまりは関羽なり張飛なりの人物がいて当然なのだ。だと言うのに、主である劉備だけではなく、臣下たちの姿も無い。これが普通なわけがないのだ。
「別に怒っているわけではないわ。ただ、どうしていないのかと聞いているのよ。」
雪蓮は優しく言った。月はそんな雪蓮を前に、さらに申し訳ない感じになった。
「申し訳ありません、雪蓮様。黙っているつもりはなかったのですが……」
月は今の状況を話してくれた。理由はさしてものすごく大変な事情と言うものでもなかった。要は劉備は臣下たちと賊を退治しに行ったようだ。月の話によると、なんでもこの街の前の支配者だった劉表は劉備軍に負けてた後、盗賊やら山賊やらの連中と手を組み、国境の街に悪さをしていたようなのだ。自分の国を取った劉備へのあてつけだろうか?元は自分の国だと言うのに、何とも器の小さな王様である。それで、そんな困った奴を捨て置く事も出来ず、劉備は臣下たちと共に劉表たちの討伐に向かったそうな。
本当だったら、雪蓮たちの出迎えのための準備とかで大忙しのこの時期に討伐しに行く事はさすがに無理じゃないかと臣下たちに言われたのだが、
「困っている人を見過ごす事なんか出来ない!」
とか何とか、言って無理やり討伐に出かけたらしい。劉備の臣下たちも、雪蓮が来る前にはすべてかたが付くだろうと思い、劉備の命令通り討伐のために進軍したのだった。しかし、思いのほか、敵の抵抗が強いらしく、こうしてかなり時間がかかっているようだ。その間に何も知らない雪蓮たちが劉備たちよりも早く到着してしまった……と、言う事らしい。
…………………………
……………
……
「ふ〜ん………」
さも無関心に聞いていた雪蓮だが、月や詠たちはそれはもうハラハラしながら劉備たちの帰りをまだかまだかと待っていたのだ。まあ、この二人がこれほどまで焦るのも無理はないだろう。何せ、雪蓮と劉備のこの会談は、今後の大陸を揺るがす事になるだろう大切な行事である。それなのに、劉備は雪蓮をわざわざ自分の国に来させ、さらにはこのように王である雪蓮を待たせているという事をしているのだ。ヘタをすれば、この同盟だってどうなるか分かったものじゃない。
だが………
「ふふ。劉備らしいわね♪。」
と、とても涼しい顔で事実を受け入れていた。
「本当に申し訳ありません。雪蓮様。」
「別にいいわよ。」
雪蓮は、劉備に待たされている事などどうでもいいらしい。まったくもって雪蓮らしいな。
そして数日後……
現在、一刀はものすごい状況にあった。右手には雪蓮、左手には華雄がそれぞれ腕を組み合わせて来ているのだ。しかもここは街のど真ん中。さすがにこの状況はものすごく目立つ。どうしてこうなったのかと言うと、話は少しだけさかのぼる。
………………………………
…………………
………
劉備軍が戻ってくるまであと数日ほどかかるらしい。そのために一刀や雪蓮、そして華雄はそれはもう丁重なおもてなしを受けた。この街特製のお酒をふるまわれたし、素晴らしい踊りも披露してくれた。まさに竜宮城に行った浦島太郎ばりのおもてなしだったのだが…………しかしだ、あの雪蓮が、アウトドア派の雪蓮が数日間も同じ城に居座るなんて事が出来る筈もない。一刀が予見した通り案の定……
「一刀!【でーと】をしましょう!」
などと言いだした。【デート】なんて単語を教えた事があったかな?などと思いながら、一刀は雪蓮に引きずられて行ったのだ。
「………で、なんで貴方がいるの?」
城の前には華雄が仁王立ちしていた。
「私は一刀様の護衛者だ。ならば一刀様のお傍にいても何の不思議も無かろう。」
「一刀は私が守るから貴方は別にいいわ。いつも通りにその辺の庭で鍛錬でもしていなさい。」
異様な空気だ。見えないけど、雪蓮と華雄のはお互いに火花を散らしているように感じる。
「何を勘違いしている。貴様がいるから余計に不安なのだろう。貴様のいやしい食指が一刀様に届かぬよう、貴様から一刀様をお守りするのだ!」
「あらやだ!嫉妬?ふふ、いやらしい性根が見え透いているわ。」
「なんだと!」
「なによ!」
などと、喧嘩に発展しそうだから、一刀が三人で出かけようと提案したのだ。こうして、なんとか喧嘩に発展するのを防ぐ事に成功した一刀だが、三人で歩いている最中、雪蓮が一刀の腕にしがみついてきたのだ。どういうわけか、華雄も負けじともう片方の腕にしがみついてきた。
そして、現在に至るというわけだ。
……………………………
…………………
……
(さて……この状況をどうしたものか……)
まさに両手に花と言うこの状況。しかも二人ともものすごい美人である。街の男たちの視線が嫌に痛い。しかも、痛いのは街の人たちの視線だけではない。
グルグル!!
ガルガル!!
華雄も雪蓮も今にもお互いに今にも噛みつきそうな雰囲気である。視線だけではなく、この場の空気もものすごく痛い。
「あ、あのさ………」
「うん?なに?」
いち早く、この場の空気を変えたかった一刀は、まず雪蓮に話題を吹っかけた。
「い、いや、劉備さん、まだ帰ってこないのかな〜?なんて……」
「何?一刀はこの街が飽きたの?」
「い、いや!そういうわけじゃなくてさ………ただ、大丈夫かな〜って思って……」
いくら簡単そうな討伐でっても、身が危険にさらされる事には変わりないのだ。向こうも命がけでこちらを殺しにやってくる。そこに油断があったら命なんていくらあっても足りないのだ。
「大丈夫でしょ。劉備には関羽と張飛が付いているのだから。」
確かに関羽は軍神。そして張飛は剛腕無双とまで言われた傑物である。でも、それでもだ………命の危険には変わりない。変わりないのだ。
「それに、劉表の残党ごときにやられるような子なら、今回の同盟はこっちから願い下げよ。」
ずいぶんと手厳しい答えを言ってくれる。この程度で苦戦するなら、戦力にならない。だから必要ない。優しいだけではなく、きちんと厳しい判断も出来る。
「ずいぶんと手厳しいな。」
「そう?優しいくらいだと思うけど……」
どうやら自覚がないようだ。でも、一刀は言ってあげたかった。立派だよ……と。でも言っちゃうと、何だか調子に乗りそうだったから自重した一刀だった。
この奇妙な三人のデートも一刀が空気を入れ替えてくれたおかげで、それなりに楽しくやっていた。三人で食事をしたり、買い物をしたり。すごく楽しい時間を過ごせた。
「それにしても、久しぶりだな。こんなにゆっくりを街を歩くのは……」
一刀がため息を含みながら呟いた。
「本当ね。」
雪蓮もまたため息を含みながら呟いた。何だか懐かしい感じを思い出しているようだ。それもそのはずだろう。一刀は今まで街から街へと逃亡生活を繰り返し、雪蓮の方は曹操軍攻略のために南の豪族や諸侯たちを平定したり、あちこちで同盟を結んだりと、大忙しだった。なのでこんなにゆっくりと街を見て歩くと言うのは本当に久しぶりなのだ。
「ふふふ、今回は口うるさい冥琳もいない事だし、思いっきり遊ぶわよ!」
本人がいないからと物凄い事を言う雪蓮だ。
「冥琳が聞いたら怒られるぞ。」
「ふふふ、大丈夫よ。ここには貴方たちしかいないのだから。」
ものすごいご満悦な顔をしてらっしゃるが、そんなフラグを立てられてしまったら、言わざるを得ないじゃないか。一刀は華雄を目を合わせた。すると華雄はものすごい悪人顔の笑顔で返してくれた。やはり華雄。同じ事を考えているようだ。
…………………………………
……………………
………
楽しい?デート?も終わり、城に戻った一刀たちは月からいろいろと報告を受けていた。どうやら、劉備は見事、討伐を終え、明日の朝には帰還するそうだ。劉備軍から早馬が届き、情報を送ってくれたのだ。情報によると、時間はかかったものの被害はたいしてなかったそうな。
「良かったな、雪蓮。どうやら無事みたいだぜ。」
「だから言ったでしょ?あの子なら大丈夫だって。」
まあ、なんにせよ本当に良かった。これでなんの問題も無く同盟が結ぶ事が出来る。
………………………
劉備の無事の知らせが届き、後は劉備の帰りを待つばかりだった一刀たちは、今日も劉備の城で夜を明かすのであった。
「さてと、そろそろ寝ようかな……」
一刀が床に着こうとしている時であった。
ヒュン!ヒュン!
「うん?なんだ?」
外から何だか風を切るような音が聞こえてきた。別に不快なわけではないが、一刀は気になったので見に行った。するとそこには華雄がいたのだ。
ヒュン!ヒュン!
華雄はそのすさまじい質量を持ちそうな戦斧を軽々と振り回していた。
「ふっ!はっ!はっ!」
彼女はどうやら鍛練中のようだ。しかし今の彼女はどうだ?華雄が斧を振るたびに汗が月光に反射している。それが何とも言えないほど美しいのだ。まるで何かの物語に出てくるような英雄のように美しく、とてもかっこよかった。一刀は思わず声をかける事も忘れ、ずっと彼女に見惚れてしまっていた。
「はっ!………うん?」
華雄の方も一刀に気付いたようだ。いったん、鍛錬を中止し、あわてて一刀の元へと駆け寄った。
「一刀様。このような所になぜ………。」
「………へ?……あ、ああ!」
声をかけられてようやく我に返った一刀はあわてながら華雄の問いに答えた。
「ああ、えっと……外から風を切るような音が聞こえてきたから、何かなって思って来てみたんだ。」
「も、もしかして、お休みの所をお邪魔してしまいましたか?」
「とんでもない。ものすごいいいものを見せてもらったよ。」
すると、華雄は非常に恥ずかしがりながら、この一刀の言葉を否定した。
「そ、そんな……!見苦しいところをお見せしました。」
「そんな事あるもんか!すごくかっこ良かったよ!」
「………本当ですか?」
「勿論!」
なんの躊躇いも無く一刀は言い切った。
「華雄がいれば、百人力だな♪」
「…………………」
一刀は調子に乗って華雄を褒め称えていたが、華雄は逆に申し訳なさそうに一刀の言葉を否定した。
「いえ…………私などまだまだです。これでは足りないくらいに………」
「華雄?」
不思議だ。華雄は何か焦っているような感じだった。
「私が不甲斐ないばかりに、月たちだけではなく、一刀様まで危険な目にあわせてしまって………」
「………華雄…。」
未だに華雄は泗水関での出来事を気にしているようだ。彼女は普段は超が着くほどの熱血漢?だ。過ぎた事などあまり気にしない豪快な人物だとずっと思っていた。しかしその分、思い込みも激しいようだ。あれは華雄のせいなんかではないというのに……
むしろ、一刀は華雄の行動がとても誇らしいものだと感じていた。華雄は自分の事ではなく、友であり、仲間でもある一刀たちのために激怒して、突撃して行ったのだ。勿論、作戦をめちゃくちゃにした事はいけない事だ。でも、心のどこかではとてもうれしかったのだ。一刀たちが言いたかった事を彼女はその身を呈して代弁してくれたのだから。
「本当に申し訳ありませんでした。」
そう言って、深々と頭を下げたのだ。彼女ほどの武人がこれほど頭を下げると言うのはどれほどの屈辱なのだろうか?どれほどの覚悟なのだろうか?それは武人ではない一刀には到底理解できるようなものではなかった。でも、これだけは分かる。彼女は心の底から謝っているのだ。ならば、ここは言ってあげる言葉はそう多くはない。
「駄目。絶対に許さないよ。華雄。」
「……………」
許さない。一刀はそう言った。華雄は何も驚きはしなかった。それもそのはずだろう。彼女は許しを請いたくて謝ったのではない。自分の覚悟を見せたのだ。ならば、ここで簡単に許してしまったら、彼女の覚悟を穢してしまう事になる。
「俺は華雄を絶対に許さない。だから、華雄………」
「……はい。」
彼女は自分を許さない。ならばこそ……
「罰として、これからずっと俺の側にいて、俺を守ってくれ。」
彼女には罰を与える。
それが、
「はい!」
彼女が彼女自身を許す事の出来るただ唯一の方法なのだから……
翌日
「………と、言う事があったんだ。」
一刀は昨日の華雄との出来事を雪蓮に話していた。
「そう。あの子、まだ気にしていたのね。」
「そうみたい。だけど、華雄なら大丈夫だよ、絶対に!」
「ふふ、そうかしら?」
人は罪悪感でも死ぬ事が出来るのだ。だからこそ、一刀は華雄に罰を与えたのだ。華雄が華雄自身を許してあげる事が出来るように……
「でも、華雄を護衛に選んだ事は間違いじゃないわよ。」
「別に間違えたつもりはないけど………どうして?」
「今の華雄は私より強いから。」
「…………はい?」
聞き間違いじゃないよな?
「………本当に?」
「ええ。本当よ。」
一刀は若干どころか、かなり驚いた。雪蓮は呉の王でありながら、その強さは小覇王と呼ばれるほど、まさに鬼人のごとき強さで、敵から恐れられるほどだと言うのに………・祭さんや思春や明命と言った呉の武人たちには悪いが、一刀は雪蓮こそが呉の最大の戦力だと思っていた。その雪蓮より強いって………
『華雄がいれば、百人力だな♪』
『いえ…………私などまだまだです。これでは足りないくらいに………』
昨日の会話だ。
(まだまだって………一体、華雄はどこまで強くなれば気が済むのだろうか?)
一刀は半場、呆れ気味になって行った。自分に厳しいにもほどがある。もう少し、自分に甘えればいいのに……
「さてと、無駄話はこれくらいにして、そろそろ気を引き締めなさい。これから、劉備が来るのだから。そんな不抜けた顔をしているとみっともないわよ。半人前とはいえ、劉備は一国の王なのだから。」
そうだ。これから劉備がやってくるのだ。三国志の主人公。英雄の中の英雄。彼女の話は伝説になっているのだ。その劉備本人がとうとうやってくる。
一刀が気を引き締めていると、一人の女性が近づいてきた。
「孫策殿。よくおいでなさいました。」
黒い髪の女性だった。素晴らしく美しい女性だった。特筆すべきはその美しいまでの黒髪。目を奪われるとはこの事だ。
「あら、関羽。久しぶりね。」
「はい。連合以来となりますね。」
関羽。
雪蓮は彼女をそう呼んだ。関羽。劉備が伝説なら、彼女は神話。実際、彼女は現実の世界でも神として、軍神として崇められている。
なるほど。彼女が関羽。分からないでもない。彼女はとてもいい顔をしているのだ。容姿の問題ではない。こう……なんというか、気品が滲み出ているというか、不思議なオーラを纏っているというか……とにかく、何も分からない一刀が感じる事が出来るほどの存在感を彼女は持ち合わせていた。
「お待たせさせるような形にさせてしまって申し訳ありません。」
「別にいいわよ。あの子なら仕方ないわ。」
「あはは……」
タッタッタッタッタ
不思議な音がする。いや、不思議と言うわけではない。この立派な城には不釣り合いの軽やかなステップ音が聞こえてくるのだ。
「間もなく、我が主である桃香様がお見えに………」
関羽の声は途中でかき消された。
先ほどのステップ音が近づいてくる。そして、その足音の主が、ものすごい声と勢いで雪蓮に突撃してきたのだ。
「孫策さ〜ん!!!」
ガシ!
ホップ、ステップ、ジャンプの要領だろうか?子供が、親の元へとに走ってきて、助走をつけながら親の胸元に飛び込んでくるアレ。まさにソレそのものであった。
「孫策さん!会いたかったです〜♪!!!」
そして、雪蓮の豊満な胸に顔を押し付けて、ブンブン首を振っている。とてもうらやましい構図である。
先ほどの黒髪の女性、関羽はそんなカオスな場面を見て、思いっきりため息をしていた。
ああ、何となく分かった。この元気な少女が誰なのか。
そして、案の定一刀が想像した通りの名前が雪蓮の口から出たのだ。
「久しぶりね。劉備。」
と。
続く
あとがき
こんばんわ、ファンネルです。あまりにも遅い、投稿ですが、見てくださいった人たちには感謝感謝です。
一応、言い訳させてください。田舎から上京し、一人暮らしを始めました。その引っ越しやらいろいろな準備やら契約やらで大忙しだったのです。
ですので、こうして、ゆっくり書くことができなかったのです。
でも所詮、言い訳なんですよね。
さてと、とうとう一刀は劉備と出会いました。基本、キャラの性格などは原作に忠実にしているつもりですが、僕の書く華雄の性格がツンデレになってしまいました。
一刀以外の奴らにはツン
一刀にはデレ
といった感じに……。まあ、原作でも彼女はあまり出番もなかったし、主人である月にどんな口調で話していたのかもわからなかったので、一応、主人である一刀には敬語で話させました。こういった、オリジナルな性格を嫌う人は結構いますが、これは二次創作なのでその辺は、分かってくださいね。
あまりにも、遅い投稿なので自分の中に決めていたルール。5月21日までに物語を終わらせるというルールが守れなくなってしまうかもしれない。何とかしなければ……一年たってしまう!
このサイトに登録してもうすぐ一年。それまでに何とかしたいと思います!
では、次回もゆっくりしていってね!
説明 | ||
こんばんわ。夜更かしして書いていたらこんな時間になりました。久しぶりの投稿です。前回のお話を覚えていただいているか、不安ですが……… まあ、頑張って書いたので見ていってください。 それでは、ゆっくりしていってね。 |
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