ツバサの折れた天使達 |
斬島翔太には夢がある。
それは平凡な暮らし。可愛らしい庭付きの一戸建てで、美人でなくていいから気立てのいい奥さんと、素直で腕白な子供。できれば、二人くらいは欲しいと思っている。
・・・まあ、もちろん高校生の彼には遥か未来の話である。
だが、この時点で、彼にとってはそういうものはあまり身近に感じられなかった。
彼は、あまり平穏というものに恵まれていなかったのである。
彼がその平穏を手放したのはいつの事だっただろうか。
そう、その日は雲一つもない静かな空と、うっとうしいくらいの暑さの夏日だった。
八年前、両親の出張で海外に訪れていた僕は、国際空港爆破テロ事件に巻き込まれてしまった。
「生存者だ!生きてるぞ!」
「子供だ!タンカ、早くしろぉ!」
・・・お母さん・・・お父さん・・・どこ・・・。
お姉ちゃん・・・。
姉はしっかりと俺の手を握ってくれていた。
手を離さないで・・・お姉ちゃん・・・。
僕は心の中で呟きながら、救助隊に引っ張られると、さっきまで繋がっていた姉の手は、腕ごと身体から離れていった。
もしかしたらここは地獄なのかもしれない。悪い夢なら早く覚めてほしかった。
・・・けれど、現実だった。
八年前のあの事件から、俺は全てを失った。
だから一人で生きていけるだけの強さがほしかった。
でも本当は・・・。
もう誰も失いたくなかった。
突然のテロで家族を失った俺は、幼なじみの優子の家に預けられることになった。
「遊ぼ、翔太。」
「・・・・・」
「元気出して、ね。遊ぼ?」
こんな風に児童館でも家でも、話しかけてくれたが、俺はボーっと座り込んでいた。
あずけられた当時のことはほとんど覚えていない。
そしてしばらくして・・・あの事件がおこった。
ジッ、犯人は国際不明の武装グループ。白昼堂々の凶行および、老若男女を問わず、多数の死傷者が出ています。
現在武装グループは、児童館の子供達をさらい逃走中。多数の火器を所持しているため、十分注意を____________________。
無線から現在の状況が知らせれてきた。
そして現在は、暗い港に停泊されている船の中。
周りの子供はうずくまり、ガクガクと震えて泣いている。
「翔太・・・私達どうなっちゃうの・・・」
「売られるんだよ、きっと。この船で外国まで連れて行かれて。」
「・・・!!」
優子はその状況に言葉も出ず、ただ泣いていた。
泣いている子供達の中で、俺だけは泣かなかった。俺はむしろ嬉しかったんだ。
その時、バンッと強く扉が開く音がした。
「チッ、オスとメスを選別しとけって言ったろう。」
「すんません。ごちゃごちゃしてたもんで・・・」
「メスの方が高く売れるんだ。少しは考えろ。」
「男の方はどうします?」
一人のリーダーらしき男が、近くで震えている少年に近づく。
「・・・ああ・・・ああ」
「邪魔だ。」
そう言った男は、少年に銃口を向け、躊躇なく頭を撃ち抜いた。
その場で少年はゴロリと横たわる。
「売れるヤツは売って、残りは処分しろ。在庫は作るな。」
「うわあああ!!!」
次々と少女は捕まり、少年は殺されていく。その子供達の叫び声はこの世のものとは思えないほど、苦痛に満ちていた。
「後は任せたぞ。」
リーダーの男は一人その場を去っていった。
「く、来るなあ!!!」
優子は僕を守ろうと、近くにあった鉄の棒を持ち、男に立ち向かう。
「やっ・・・!!」
けれど、力はまだ子供。到底大人に立ち向かえるわけがなく、すぐに捕まってしまった。
「やだあああああ!!翔太!!しょっ・・・!」
「? 何だガキィ。そのもの欲しそうな目は?俺とヤル気かぁ!?」
「・・・・・っ。」
俺の態度が気に入らなかったのか、俺は男に顔を殴られた。そして、周りと同じように銃口を向けられる。
「やっ・・・やめて!!!翔太を殺さないで!!」
俺は嬉しかった。
これでやっと、天国の家族のところへ行けると思った。自然と笑顔になっていた。
「・・・チッ!!」
そして、俺は撃たれた。撃たれたはずだった。
生死の間で誰かが俺に話しかけてきた。
またお前は自分だけ、楽になるのか?
友達を見捨てるのか?
お前は死んじゃいけない。生きなくちゃいけない。
死んでいった者達のため。
力を貸してやろう。誰も傷つかせない力を。
この堕天使の力を!
目を覚ました俺は、信じられなかった。
胸を撃たれたはずなのに、生きている。傷さえも塞がっていた。
「な・・・っ!?」
俺を撃った男は驚愕していた。そしていつの間にか死んでいた。
手には男の血が付いていた。自分が殺したのだと今、気が付いた。
そして、再び扉が開いた。入ってきたのはさっきの男ではなく、銃を持ったくわえタバコ女性だった。
「・・・・・」
「何だテメエは・・・!」
男達は銃を構え始めたがすでに遅く、女性が素早く男達の頭を撃ち抜いた。
その衝撃は突然現れた。
これだと思った。
この強さ、死の衝動など吹き飛ばす感動。
自分もこんな風に強くなれば、もしかしたら生きられるかもしれない。
家族のいないこの世界でも。強く・・・。
「・・・翔太?」
俺はスッと立ち上がり、女性に近づいた。
「・・・だめ・・・その人に近寄っちゃだめえ!!」
優子は必死に俺を呼び止めるが、俺は女性に近寄る。
「・・・?」
「僕を・・・あなたの弟子にしてください。」
「どうして?」
「強くなりたいんです。」
「どうして?」
「生きるためです。」
女性は俺の瞳をしっかりと見つめてくる。
「・・・・・」
そこから何か感じたのか、しばらく沈黙が続いた。
「お前名は?」
「斬島翔太。」
「斬島・・・か。私は朝霧樹里。お前と同じ‘堕天使,だよ。これも何かの縁かもしれんな、ついてこい。」
「し・・・!!」
優子は手を伸ばすが届かず、俺は優子を置いて、樹里さんについていった。あの頃はなにふり構っていられなかった。
そして、樹里さんは俺を明鏡家に紹介してくれた。
俺は明鏡の内弟子となり。地獄の修行に身を投じていった。
修行とは・・・常軌を逸した肉体改造。
身体中の骨で折れなかった場所はなかった。何度も折られ、砕かれ、叩き潰され、内臓の位置さえ変わるような修行に明け暮れていた。
俺は強くなりたかった。
家族のいなくなった世界でも、一人で生きていけるように・・・。強く・・・。
※どうもお米です。何を血迷ったのか、つい書いてしまいました・・・。ちょっと恋姫の方が手詰まりになってしまったので、気分を一新して書いてみましたが・・・やっぱりオリジナルって難しいですね。途中、全然思い浮かばなかった。さて、それでは恋姫の方を頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。それではさよなら〜。
説明 | ||
最近マンネリ気味だったので、気分を変えるために適当に書いてみました。ですので、軽く流して読んで下さると助かります。 ※現在、この作品の続きは予定していません。もし、けっこう好評でしたら続きを書きたいと思いますので、あまり期待しないで待っていてください。 |
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