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……俺がアイツ(フラン)と初めて会ったのはマーモンが死んでから1年前に遡る……。
★nebbia・tra・tempesta★
「今日からヴァリアーの新人になるフランです。よろしく。」
「フランには頼れる奴が必要なんだが……。」と言いながらスクアーロは落ち込んで沈んでいるベルをジロジロと見ている。それに気付いたのを確認した後……――
「よし!ベル!!フランの守は頼んだぞぉ?」と言うとスクアーロに肩をポンと叩かれた。
「は!?何で王子があんな奴の子守なんて……――」
「ルッスーリアは変なこと企みそーだし、レヴィだったらキモ扱いされるだけだしな。それで文句はねーだろ??」
「そんなのスクアーロがやればいいじゃんか!!それに何で……どうして、俺なんかに……――」
「お前今日もどうせ暇潰しする事ないだろ??だったら問題ねーじゃねーか。そんな事でギャーギャー喚くんじゃねーよ!」
「……ッッ!!分かった。コイツの面倒、俺が見てやる。」ベルは渋々スクアーロの返事に答える。
「よおぉし!!それでこそ男だぁ!!じゃあ俺はボスさんのところに行って、報告書出しに行ってくるから、しっかり面倒みてやれよ?!」と言うと、部屋を出て行ってしまった。マーモンが突然死んでしまった事が原因で落ち込んでいた事は誰もが知っていた。
ひょっとしたらだ。あのフランという新人だったら、マーモンと同じところがあるかもしれないと思ったからこそ、スクアーロはベルを選び出したのだろう。そして誰もいなくなったところで、ベルとフランが二人っきりになったのを確認した後、先に口を開き始めたのはベルだった。
「えっと……。お前名前、なんだっけ?確かー……フ、ラ……―――」
「フランです。ミーの名前、ちゃんと覚えて下さいよ、ベル先輩。」
「ち…、ちょっと度忘れしただけだし、新人の名前くらい、ちゃんと……!!ちゃんと……―――」
2度目の言葉を喋り出した途端、ベルは歯切れが悪くなった。こんな時こそ、こんな時こそ……マーモンがいてくれたら、ベルになんて一言言ってくれたのだろうか。一言を聞いてみたい程の気持ちで精一杯だった。
「スクアーロ先輩から話聞きましたよ。ベル先輩、前に一緒にいたマーモンという人が突然いなくなったという話。ミーは初めて知りました。」さっきから黙り続けているベルに話しかけてくるフランにベルは不思議な気持ちになっていた。どこか雰囲気がマーモンと似ていると思うような気がしてたからだ。
「ベル先輩?生きてますか〜〜??」目がパチクリしているベルに、手をヒョイヒョイかざしてくるフラン。それに気付いたのか、ベルはすぐにハッとした。
「お前、もしかして…心配事でもして……――」
「そんな訳ないじゃないですか。ちょっと落ち込んでいたから元気づけようとしただけで……。」
「それって、心配してくれたって事じゃん……。」
「違いますぅ〜〜……。勝手に決めつかせないで下さいよ、堕王子。」
ピクリ
「誰が堕王子、だって……?」さっきまで落ち込んでいた筈のベルの調子が上がったかのようなそんな感じがしたのだが、その直後に、堕王子という言葉を聞かされ、声のトーンが下がってしまった。それでも、フランは構いもなく続ける。
「そんなの決まってんじゃないですか。ユーしかいないじゃないですか、カマンベール王子……―――」途中で言葉が途切れ、ドサリと床に押し倒されてしまう。頭に被せていた蛙みたいなものはゴロンと転がっていった。
「ちょっとベル先輩、何してんですか?退いて下さいよ。」
「だからさー……、堕王子だとか、カマンベール王子だとか言うなよ。全然一文字も合ってないし。つーか、お前王子に逆らうなんていい度胸してんじゃん♪それなりの覚悟は出来てんだろーな??」ベルの顔があまりにも近すぎるのだが、フランは全く動揺すらしてこないままそのままでいる。
「先輩、顔近づけ過ぎです。あと10p離れてくれません??」
「嫌だ。王子の事をからかった罰だし、仕返しするつもりだから。」とニヤニヤ笑っているベルに対し、フランは呆れ顔になっていた。『こんな自分の事を王子だと呼んでる人と一緒にやるなんて』と思っただけで、ますますやる気が減っていく……。
「お前、何か似てんだよな〜……。」
「誰にですか??」
「お前見てるとさー、昔亡くなってしまったマーモンと、そっくりなところがあるなー…と思って。」
「ミーがマーモンと言う人と?全然見当がつきませんし、似てませんけど??」
「そういうのは、俺だけかもしれねぇな。」と言うと、軽くフランの唇にキスを交わした。
「ちょっと、誰がチューしても良いだなんて言ったんですか?」と言いながらグイグイと退けようとしているフランだが、力はベルの方が圧倒的だった。
「抵抗しないお前が悪いだろー??だったらさー、今からでも遅くないし……さっきの続きででも、する??」
「却下します。それに……少しは調子が上がってきたようですね?」
「ん?まぁ〜……お前のおかげってとこかな?モヤモヤしていた気持が全部無くなってスッキリした気分?ししし〜……、アリガトな★」と言いながら再びキスしようとするのだが……―――
「Stop!!先輩、何回チューしようとするつもりなんですか!!!」
「いーじゃん……。別に減るような事じゃないし、ちょっとくらい。」
「いー加減にしろ!!このダンベル王子!!!」
「だからその呼び名は止めろって何回言わせるんだよ!?」
「このベルリンヤローがッッ!!」
「それも止めろって、何回言わせるんだよ!?」と言いながら久しぶりに喧嘩というものが味わえた。こうなれたのも、あのフランという奴のおかげかもしれない。そうまるで、昔死んで亡くなってしまったマーモンとやりあったかのような、話したかのような……、そんな感じがしたのだ。ありがとう……天国にいるマーモン。そして俺に気遣ってくれた皆、ありがとう。俺、もう一度だけ頑張ってみようと思う。昔、マーモンに教われた通りに……その代りに……俺がアイツ(フラン)を守ってみせるから。だからせめて、見守っていてほしいんだ……。
★END★
おまけ
「アイツどうやら上手くいったみたいだな。」
「良かったわぁ〜!ベルちゃんが元気になって!!」
「あんな落ち込んだままのベルを見るのは、嫌だしな。」
「私も同感よ!やっぱりベルちゃんはあーでなくっちゃね?ウフフフ……ッ?」
「気持ち悪い顔、見せんじゃねーぞおぉぉ!!!」
「も〜〜っ!スクちゃんったら、本当恥ずかしがり屋さんなんだから〜んっ??」
ズイィッ
「ち……、近づいてくるなああぁッッ!!!!」
ドゴオォッッ!!
「オゴボ……ッッ!」スクアーロが思いっきり殴ってしまった為、ルッスーリアは治療室に運ばれていった……。一方、その頃のベルとフランはというと、ザンザスに思いっきり叱られ、そのまま反省していた。
★The・END★
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