異世界の天の御遣い物語13 |
反董卓連合終結
一刀
洛陽の前まで着いた連合軍は陣を展開する。
そこで俺たちは恋から聞いた真実により、董卓を助けるために行動する。
「おーい、みんなぁ!」
「あ、桃香さま、ご主人様!」
朱里が俺と桃香が帰ってきたことに気づき、皆を集める。
「・・・それでどうでした?」
「ああ、バッチシ先行偵察は取ってきたぞ」
「ほっ。よかったです〜・・・」
雛里が安心し、胸をなでおろす。
「袁紹に、『これだけ近づいてもなんの反応も無いところを見ると、罠かもしれませんから俺たちが先行して、様子を探ります』・・・って言ったらあっさりと。」
「ふふっ・・・さすがご主人様です」
「この事に関してだけは袁紹さんが総大将でよかったです」
朱里がなんか・・・黒い。
「みんな・・・ありがとう」
「まだ礼は早いぞ、恋。・・・ここからが大事なのだから」
「・・・(コク)」
「まぁでも、あの飛将軍に礼を言われる日が来るとは夢にも思いませんでしたな」
とニヤニヤと俺を見てくる星。
「・・・星」
「おおっと、そう睨むな愛紗。怖くてかなわん」
「・・・くっ。あとで覚えておれ」
「いや、もう忘れた」
んー、和むなぁ・・・。俺は目を瞑りながらそう思っていた。
「何を目を瞑って笑っているのですか、こいつは」
「はいはい、二人とも喧嘩しないでー。・・・朱里ちゃんお願い」
「はい。・・・では、作戦を説明しますね」
曹操軍
「ふむ・・・一刀達は先発をとったか」
「ん?・・・なに考えとるん、孟ちゃん」
「・・・いや。なんでもないわ。・・・それにしても、まさかあの呂布が一刀たちの軍に加わるとはね」
「おお。それにはウチもびっくりしてんねん。・・・あの恋を倒してさらに仲間にするなんてなぁ。・・・やっぱり一度一刀に直にあってみたいなぁ」
「霞。・・・会ってどうするの?」
「そらもちろん・・・戦ってみたいわ」
その言葉に少しホッとしている自分に気づき、心の中で一刀を殴っておく曹操。
「なに顔赤くしとるん?孟ちゃん」
「な、なんでもないわっ」
「霞さまっ!」
「ん・・・なんや凪?」
「その、先に隊長と戦ってもらいたいのは自分ですから、忘れないでいただきたい」
楽進が頬を染めながら言う。
「凪ちゃん。素直に『強くなった自分を見てもらいたいから』って言えば良いのに〜」
「《かぁぁ〜・・・》なっ、沙和っ!何をっ!?」
「にししし。凪。顔がまっかっかやで」
「ま、真桜っ!それ以上何も言うなよ!」
楽進は握り拳を作り、そこに氣を集める。
「そんな真っ赤になって怒ったって、何も怖くあらへん」
「と、そんなこと言いながら沙和に後ろにかくれないでほしいの〜っ!」
「真桜ー!」
「な、凪ちゃん!?まってほしいのー!」
「こらあかん!逃げるで!」
三人はそのまま、この場から離れていく。
「ふふっ・・・あの三人は北郷の話になると、華琳さまの前でもまるで子供だな」
「まったく・・・あの三人はあとで言っておかないとね」
「んー・・・」
「どうしたのだ、霞」
「いや、ここまで孟ちゃんたちを笑顔にする一刀ってホンマにすごい奴なんやなーって」
「なっ、笑顔だとっ!?いつ私がそんな顔をしたっ!?」
「今」
「そ、そんなはずはないっ!」
「姉者。そんなに慌てると認めているようなものだぞ」
「くっ・・・ええい、ここに居なくても迷惑なやつめ!」
「(・・・私。・・・笑っていたのかしら・・・?)」
曹操は自分の頬をクニクニと触りながら考える。
とそこに、
「華琳さまー!」
陣の展開ため、兵士たちに命令を出していた荀ケ、許緒、典韋が帰ってくる。
一刀
「・・・・こちらス○ーク。現在・・・」
「なにをやっているのだ、お兄ちゃん?」
「ふふ・・・お兄ちゃんではないぞ、鈴々。・・・ダンボールさんと呼ぶんだ」
「・・・こんな訳のわからない事を言っているバカは放って置いて先に行きますぞ、恋殿」
「・・・・・・・・・・・・ん」
ああ!?恋が返事をして行ってしまうじゃないか・・・!
「お兄ちゃん、早くしないと置いて行っちゃうのだ」
「・・・すいません」
体の調子がよくなってきたから、つい調子に乗っちゃった。健康万歳。
俺と鈴々とねねと恋はただいま洛陽に、潜入中。
あくまで偵察という名目で先行しているので、派手に正面から入っていくと袁紹とか各諸侯に手柄を
取るために先行したと言われるので、だから隠密行動。
桃香たちは俺たちの合図があるまで、洛陽前で待機している。恋とねねは洛陽内部に詳しいので来てもらった。
鈴々はまぁ何かしたかったらしい。俺はもちろん、ス○ークに憧れて・・・というのは冗談で。
董卓を助けるためにここにいる。
「にしても・・・広いな」
さすが洛陽というべきなのか、この世界に来てから今まで見たことのない広さだ。
「ご主人様、鈴々・・・こっち」
「では、ねねは数人の兵士をつれて、恋殿の家を確保してくるのです」
「(コクッ)・・・ねね、セキト達をお願い」
「心得ておりますぞ。では皆のものねねに続くのです」
「はっ!」
そうして、ねねと数人の兵士は俺達と別れていく。
「なぁ、恋。セキトって?」
「・・・友達」
「もしかしてそれって馬?」
「(フルフル)・・・犬」
「(赤兎馬じゃなくて赤兎犬≠ゥ?それは・・・見てみたいぞ)」
「・・・恋。その友達俺に、あとで紹介してくれないか?」
「・・・(コクッ)いい」
「お兄ちゃん、話してないで早く進んでほしいのだ」
「おっと、悪い」
俺は頭を切り替えて、恋の後に続く。そしてしばらく走っていると、
「・・・いた」
恋が急に止まり、ある方向を指差す。
その先に居たのは、兵士数名に守られながら移動している女の子二人だった。
「・・・月、詠」
「え?・・・あっ!恋さん!?」
「うそ・・・なんで恋がここに」
二人は幽霊でも見ているかのように驚いている。
「ここからは俺が説明するよ、恋。鈴々は周りを見張っていてくれ」
「わかったのだ」
「・・・(コクッ)」
恋は頷くと一歩下がって道を空けてくれる。
「あんた・・・誰?」
多分賈駆であろうその娘は、董卓を庇っておれの前に立つ。
「そんな警戒しなくてもいいよ。・・・俺達は君達を助けにきたんだ」
「・・・この状況でそんな言葉信じられると思う?」
「まぁ、無理だろうな。おれが君の立場でもまず疑うはずだから」
「じゃあ次にボクがやる行動も想像できるでしょっ!」
そう言うと賈駆は董卓を後ろの道へと押し出す。
「月っ!逃げてっ!」
「っ!・・・詠ちゃん!?」
「・・・・逃げちゃ、ダメ」
恋はその行動を予想していたのか董卓の前に立っていた。
「恋・・・あんた裏切ったのねっ!?」
「・・・裏切ってない」
「裏切ってるじゃないっ!現にボクたちの前に立ち塞がっている・・・」
「待った。・・・それ以上恋を責めないで欲しい」
恋の苦しそうな顔を見て、咄嗟に庇う。
「・・・とりあえず俺達の話を聞いてくれ」
「そんなの無理に決まって・・・」
「詠ちゃん。・・・話だけでも聞こう」
「月っ!?何を言ってるの!?こいつら敵なんだよ!?」
「でも恋さんはやさしい人だから、私達のためにここに来てくれたんだよ。・・・だから、その恋さんが
連れてきてくれた人だから、話だけでも聞いてみたいの」
「・・・・・詠」
「詠ちゃん。お願い」
「ううっ・・・ああもう!わかったわよっ!話聞くからそんな目で見ないでよっ!?」
「・・・ありがとう、詠ちゃん」
賈駆は頬を桃色にして、そっぽを向いている。
「そういえばあんた、名前は?」
「俺?俺は北郷一刀って言うんだけど・・・」
「北郷・・・一刀・・・。あっ!あんたが噂で聞いた天の御遣いって奴なのね」
「・・・この人が御遣い様」
董卓と賈駆が目をパチクリさせながら俺を見てくる。
「よろしく。んで、さっそく確認なんだけど、君が董卓でそっちのツンツンしてるのが賈駆でいいんだよね?」
「・・・はい」
「ちょっと!誰がツンツンしてるのよっ!」
「・・・ツンツン」
「恋!指、指さないでくれるっ!」
「まあまあ。詠ちゃん。・・・落ち着いて」
「・・・月。・・・そうね。・・・・よし。さっそく話を聞かせてもらおうかしら」
おお!一発で落ち着いたぞ。・・・そういえば恋が言ってたな。賈駆は董卓のことが好きだって。
「・・・なるほどね」
「ん?・・・なによ?」
「いや、なんでもない。・・・それじゃあ、話すからしっかり聞いてくれ」
二人はそれに頷き、黙って聞いてくれる。
俺は簡潔に今までのことを説明する。
・
・
・
・
・
・
・
「・・・ってなわけなんだけど」
「確かにこのまま涼州に帰ってもすぐに追ってはやって来るわね・・・。でも、なんで私たちを助けてくれるわけ?あんた達にとって私たちは荷物になるだけよ」
「荷物になるかどうかは俺達が判断するところだから、問題ないよ。もう俺達の頭の中は君達を助けるって事で一杯だから。・・・それに恋とも約束したしな」
「・・・(コクッ)」
恋を見ると頷いて返してくれた。
「恋さん・・・。・・・ありがとう」
「恋。さっきは・・・その・・・」
「・・・・・??」
「賈駆ちゃん。頑張れー」
「う、う、うるさいっ!あんたはだまってて!」
「・・・ふふっ、おう」
なんだか微笑ましくてつい笑みがこぼれてしまう。
「さっきは、強くいいすぎたわ。・・・ごめん」
「(フルフルッ)・・・いい」
「それと・・・ありがとう」
「・・・(コクッ)」
恋は少し頬を染めていた。
「さてと、それで俺達の助けを受けてくれるか?」
「・・・わかった。あんた達の助けを受けることにするわ」
「詠ちゃん共々、宜しくお願いします。北郷さん」
「よし。それじゃあ・・・鈴々!」
「んにゃ?話は終わったのか、お兄ちゃん」
「ああ。それで鈴々には悪いけど、桃香たちを呼んできてもらえるか?」
「わかったのだ!」
鈴々は返事をするとすごい速さで駆けて行った。
「・・・ご主人様。恋。ねねを呼んできてもいい?」
「ん・・・ああ。そうだな。頼むよ」
「・・・(コク)」
恋も返事をすると、駆けて行った。
「・・・恋があんなになついてるなんて・・・あんた、恋に何したの?」
「何って・・・。だからさっきも話したけど、戦っただけだって」
「・・・ふーん」
「そんなことより、桃香たちが来る前にもう一度確認するけど。・・・これから真名で生きてもらうことのなるけど本当に大丈夫?」
「・・・私は別に大丈夫です。詠ちゃんと一緒なら」
「月・・・。私も月のためなら我慢できるわ」
「・・・そっか。なら、もう聞かないよ。・・・強いんだな、二人は」
そんな二人を見て、無性に撫でたくなり、
「・・・(ナデナデ)」
「な、なんですか?」
「わっ、ちょ、ちょっと・・・!何すんのよっ!」
「ごめん。・・・強い二人をみてたら急に・・・。嫌か?」
「嫌に決まってんでしょっ!早くこの手を・・・」
「へぅ・・・」
「・・・月?」
「・・・なんだかとてもあったかいです〜」
「な、なななな、なっっにっしてんのよっ!このバカー!」
詠のアッパーが俺の顎に直撃する。
「〜〜〜っ!?な、なにも殴ることはないだろ、詠」
「フン・・・ボクの月に気安く触るからそんなことになるのよ」
「・・・大丈夫ですか?北郷さん。・・・ごめんなさい。詠ちゃんはただ恥ずかしいのを誤魔化しただけなんです。・・・だから、許してあげてください」
「ああ。わかってるから、大丈夫だよ。・・・月」
(ナデナデ)
「へぅ・・・」
「だから・・・月に気安くさわるなー!」
「ぐほっ!」
まだ治りかけの体に渾身の拳が二発・・・はっきり言って。・・・すごく痛い。
そうして二人と話していると、しばらくして桃香たちがやってきた。
桃香達は袁紹に問題ないことを伝令で伝え、連合軍と共に入城してきたらしい。
恋もねねを連れて戻って来て、月と詠は全員に顔を見せ挨拶した。
そして、
「それでは、董卓を討ち取ったと報告してきます」
愛紗と桃香はそう言って、袁紹の元へと行く。
月たちを討ち取ったことにして、かくまうことがこの作戦のすべて。
まぁぶっちゃけ、華琳の作戦をパクッただけなんだけど・・・。
だがこれが、うまくいったのか。各諸侯から歓声が上がっていた。
「月、詠。辛いだろうけど我慢してくれ」
「・・・はい」
「フン・・・これぐらい平気よ」
その歓声が静まるころに、桃香と愛紗は帰ってきた。
「・・・ただいま」
「おかえり。・・・ご苦労さん」
「・・・朱里とご主人様と雛里の作戦通りうまくいきました」
「これでこの戦いもようやく終わりのようだな、主よ」
「・・・ああ。敵だった恋とねねも仲間になってくれたし、月と詠も助けられた。みんなのおかげでここまでなんとか来れた。・・・みんなお疲れ様」
これからまだ戦いは続くかも知れないけれど、今このときはみんなに労いの言葉をかけたくて言う。
「・・・うん。ご主人様もご苦労さま」
「・・・よし。それじゃあ、ここから移動しようか」
「御意!皆のもの移動を開始するぞ」
俺達は全員で洛陽の中心部に移動を開始する。
その移動の最中、力強く靡く俺達の旗を見る俺だった。
―――――こうして反董卓連合という名の戦いは幕を閉じた。
炊き出し
一刀
ただいま洛陽中央部にて炊き出し始めました。
桃香の提案で炊き出しをすることになった俺達はいそいそと頑張っていた。
「ほい、愛紗。これをみんなにくばってくれ」
「・・・ご主人様、これは?」
愛紗の手には今出来上がったばかりの、豚汁がある。
「俺の世界の料理だ。せっかくの炊き出しだし、俺が作ってもかまわないよな?」
「それはかまいませんが。・・・これはおいしいのですか?」
「ああ、うまいぞ。・・・そうだな。試しに愛紗も食べてみるか?」
「い、いえ私は・・・。それよりもご主人様。鈴々の奴を見かけませんでしたか?先ほどから探しているのですが一向に見当たらなくて・・・」
「鈴々?・・・鈴々ならむこうで恋とねねと一緒に豚汁食べてるぞ」
「・・・・・・・」
愛紗は俺の少し後ろで人が集まっている所を、目を細めてよーく見ていた。
「・・・あっ!居ました!鈴々めー!手伝いもせずあんなところで・・・!」
「あの・・・愛紗さん?これを持っていって欲しいのですが・・・」
「こらー!鈴々ー!」
と叫びながら愛紗は鈴々の方へと走って行ってしまった。
すると、そこへ、
「・・・いいにおいね、一刀」
「兄ちゃん、元気してたー?」
「こんにちわー」
「おっ、華琳に季衣に・・・、えっと、ごめん。・・・君は確か」
「はい、典韋といいます。季衣がお世話になったそうで」
典韋は礼儀正しく頭をさげて挨拶してきた。
「そんな堅苦しい挨拶はいいよ。俺は北郷一刀。よろしく、典韋」
「あ、はい。宜しくお願いします」
「名前は好きに呼んでくれて構わないから。・・・俺には真名ないし」
俺がそう言うと、典韋はビックリしたような顔になる。
「季衣の言ってたこと本当だったんだ・・・」
「ね、言った通りでしょ?流流。・・・へっへっー、賭けはボクの勝ちだね。ご飯山ほど作ってよね」
「わ、わかってるわよ。・・・えっと、それじゃあ。・・・に、兄様と呼んでもいいでしょうか?」
典韋は少し頬を桃色にしながら言う。
「兄様か。・・・別にいいよ。けど、どうして?」
「季衣が、その、に、兄ちゃんと呼んでるのが少し羨ましくて・・・」
「なるほど。まぁさっきも言ったけど別にいいよ、それで」
「あ・・・はい♪」
典韋が俺から了承を得ると、とてもいい笑顔を見せてくれた。
「(うわ・・・かわいい)」
その笑顔についこちらも微笑んでしまう。
「・・・そろそろいいかしら?」
今まで黙ってみていた華琳が喋りだす。
「ん、ああ。・・・そういえばどうしてここに?」
「それを今から話すから。まぁ、話は簡単なんだけどね。一刀、その料理を私達にもくれないかしら?」
「これか?」
おれは言われた豚汁を指差しながら尋ねる。
「ええ。私もそうだけど、流流や季衣もこの料理に興味があるのよ。ダメかしら?」
「ダメじゃないけど・・・。こっちの糧食も無限にあるわけじゃないからなぁ」
うーん・・・と頭を悩ませていると、
「それなら安心なさい。こちらの軍の糧食を分けてあげるから。ちなみにこの話がもう一つの話」
「ん、そういうことなら。・・・ちょっと待ってろ」
俺はなべに作ってある豚汁をお碗にそれぞれよそい、三人に渡す。
「はい、どうぞ」
「兄ちゃん、ありがとう」
「兄様、ありがとうございます」
「いただくわね、一刀」
それぞれに礼を言った後、豚汁に口をつける。
「(!?・・・なんだろうこれ、すごくおいしい。今までこんな味に出会ったことない!)」
「うまっ!何これ!兄ちゃん!これおいしいよっ!」
典韋と季衣は対照的な食べ方だった。
典韋の方は味をしっかりと確かめるように食べ、季衣はもうなんていうかガツガツ食べていた。
そして華琳は、
「・・・・・」
無言だった。うまそうな表情もまずそうな表情もせず、ただ食べていた。
「(なんで華琳は黙ったままなんだろう?表情も読めないし・・・。た、頼むからなんか言ってくれ!
クイズミ○○ネアのみ○さんの溜めなみに緊張するんだけど・・・!)」
その後も少しの間華琳は何も言わずただ黙々と食べていた。
「(いや待てよ・・・。食べてるって事はまずいってわけじゃないだろう?)」
「(・・・以前食べたおみそしる≠ノ似ていて、おいしいわね)」
「(お。少しだけど、頬が緩んだぞ)」
俺はそれを見て安心し、心に平穏が訪れた。
「一刀、ご馳走様。・・・おいしかったわよ」
「兄ちゃん!これうまいね!」
二人は食べていた豚汁の入っていたお碗を俺に渡し、感想を言ってくれる。そして典韋は、
「ぶつ・・・ぶつ・・・ぶつ・・・」
なにやらブツブツ一人で喋っていた。
「な、なぁ。華琳。典韋の奴どうしたんだ?」
「ああ。流流は元は料理人だったのよ。だからじゃないかしら。この料理に刺激を受けて今考えているのよ」
「流流をここまで悩ませるなんて、兄ちゃん。恐るべし!」
「そ、そうか?・・・それは喜んでいいのだろうか?」
そうやって首をかしげていると、
「それじゃあ一刀。私達はそろそろ行くわ。糧食は後で届けさせるから」
「あ、ああ」
そのまま華琳達は自分の仲間のところへ戻っていった。・・・典韋が最後までブツブツ言っていたことは気にしないでおこう。
「さてと、残りもチャッチャッと配るか」
伸びをし、気合を入れていると、
「主ー!」
星がやってきた。
「どうしたんだ、星?そんなに急いで」
「主にぜひこれを食べていただく」
そう言ってだしてきたのは、おにぎりだった。
「なんだ、ただのおにぎりじゃないか?」
「あいや待たれい。このおにぎりただのおにぎりにあらず。私特製のおにぎりですぞ」
星は俺にどうしても食べさせたいように、迫ってくる。
っていうか、特製がついた時点で想像できそうなんですけど・・・。
「そ、それじゃあ、いただくとするよ。・・・いただきます」
星からおにぎりを渡され、俺は口に入れる。
「(・・・やっぱりだ)」
俺の予想は当たってしまった。・・・中身の具材が・・・メンマだった。
しかし、まずいわけでもなく。かと言っておいしいわけでもなく・・・・普通だった。
「星。はっきりと言うけどこれ、微妙じゃない」
これも星のためだと、思い切って言うが、
「うむ。私も微妙だと思っております」
意外な返事が返ってきた。
「え?星はこれに自信があって、持ってきたんじゃないの?」
「いえ。炊き出しのため、試しに作って見たのですが、あまりの普通さなので主に何とかしてもらおうと思ってここにきました」
「・・・な、なんとかって」
「以前のメンマのような味を期待しておりますぞ」
星の目はすでにキラキラとお星様のように輝いていた。・・・星だけに。
「ええい!しょうがない!なら、これをこうしてあれをああして・・・・・・」
しばらくメンマと格闘した末に、ついに・・・。
「こ、これです!このおいしさ!たまりませんな」
俺が手を加えたおにぎりを食べ、満足そうな星だった。
そして満足した星はそのまま、月と詠の護衛に帰っていった。
星には月と詠の護衛を頼んでおり、多分おにぎりはその合間に作ったのだろう。
「・・・月や詠はうまくばれないだろうか?」
星が着いているから安心だと信じていても、少し心配になってしまう。
「後で様子でも見に行くか」
そう思い自分の役割をすぐに片付けようと頑張り、大体が終わったところで兵士と交代してもらった。
月・詠・桃香・朱里・雛里
「桃香さま。これはここでいいのですか?」
「うん。・・・ありがとう、月ちゃん」
「いえ・・・」
お礼を言われてうれしいのか董卓は頬を桃色に染めていた。
「月ー!悪いんだけど、こっち手伝ってくれない?」
「あ、うん。わかったー。今行くね、詠ちゃん」
董卓はそのままパタパタと呼ばれたほうに歩いていく。
「(・・・よかった。今のところ誰にも二人の正体はばれてないみたい・・・)」
劉備は二人を見ながら安堵する。
「桃香さまー!ご主人様がこちらに来てくれました!」
「あ、あわわ・・・!朱里ちゃん、待ってよぉ〜・・・」
「ご主人様が?・・・あっちの方は終わったのかな?」
一刀
「どうだ、桃香?・・・終わったか?」
「あ、ご主人様。うん。後少しでみんなに配り終えそうだよ」
「それはよかった。・・・ところで二人の様子どう?」
俺はあたりを見渡しながら、桃香に聞く。
「今のところばれてないし。それに二人も元気に手伝ってくれているよ」
「・・・それならよかったよ。今は・・・忙しそうだな」
二人はいそいそと激しく動き回っていた。
「うーん・・・邪魔しないほうがよさそうだな。仕方ない、戻るか」
「え?もう?って・・・ご主人様?終わったからきたんじゃないの?」
「いや、大体終わったところで交代してもらってさ。だから、戻るわ」
俺は桃香にそう言った後、走って戻る。
愛紗・鈴々・恋・ねね
「・・・この、とんじるは、誰にも渡さない」
「鈴々も絶対渡さないのだー!」
「恋殿ー!待ってくだされー!」
「恋!鈴々!人の話を聞けー!誰もとんじるを取ろうというわけではないっ!」
一刀
「・・・・あの四人は一体なにやってるんだ?」
俺がこの場所に戻って来て最初に目にしたのは、追いかけっこをしている四人だった。
兵士の話によると、愛紗が手伝うように恋と鈴々に言ったら、どういうわけかああなっていたと。
「ま、微笑ましい光景だよね」
俺は追いかけっこに関わらず、兵士に交代を言い、残りの分を終わらせるために配り始める。
「・・・んー、どうやらあと少しだな」
なべの中を確認しそう言っていると、
「隊長、お久しぶりです」
「たいちょ、おひさーなの!」
「元気しとったか、隊長?」
凪、真桜、沙和がやってきた。
「おお!三人とも久しぶりだな!もしかして、華琳の言っていた糧食を届けにきてくれたのか」
「はい。それでどちらにおいたらいいですか?」
「そうだな。・・・んーと、あ」
俺は近くにいた数人の兵士を呼び、糧食を朱里と雛里のところへ届けさせる。
俺からの伝言で華琳から貰ったものだからって言えばわかると思うから、と伝言を兵士に頼み向かわせる。
「あ、そうだ。あと少しだけ、これ残っているから食べてかないか?」
残りの豚汁をお碗によそい、三人に渡そうとする。
「え?・・・しかし」
「安心しろ。大体の人たちにはもう配り終えてるから、あとは多分残ると思うから食べてくれるとありがたいんだけど」
「そういうことなら、ありがたくいただきます」
「おおきにー」
「いただきますなのー」
「おっと。凪にはこれだったな」
俺は粉末にした唐辛子を凪に渡す。
「あ、ありがとうございます、隊長。・・・覚えていてくれたのですね」
凪は辛いものが大好きなのだ。飯屋に入ると注文するメニューは大体が唐辛子ビタビタと決まっていた。
「ああ。忘れたくても忘れられないからな・・・」
初めて凪達と飯に行ったとき、興味本意でビタビタの凪の料理を食べさせてもらったことがある。
あれは辛いじゃなく、もう痛いだけだった・・・。
「それにしてもこの料理おいしいのー!」
「そういえばウチら隊長の料理食べたの、初めてやないか?」
「・・・(モグモグ)・・・・(コク)」
「そっか。・・・考えてみたらそうかもしれないな」
うーん・・・なつかしいなぁ。と思っていたら、
「隊長、ごっそさん」
「ごちそうさまなの〜」
「とてもおいしかったです、隊長」
三人はいつの間にか食べ終わっていた。
「はい。お粗末様でした。・・・よし。完全になくなったな」
なべの中を確認し、なくなったことに達成感を感じる。
「話は変わりますが、隊長に聞きたいことがあるのです。・・・よろしいですか?」
「ん?なんだ、凪」
「あの、呂布と戦っていたときに使っていた技。・・・なんで自分の時には使ってくれなかったのですか?・・・私は本気でお願いしますと言った筈なのに」
凪は少し唇を噛み締めていた。どうやら俺が手を抜いていたと勘違いしているようだ。
「言い訳に聞こえるかもしれないが。・・・あの技は、俺自身まだ操れきれてないんだ。だからあの時は使わなかった。・・・でも凪が手を抜いたと感じたなら謝るよ。・・・すまん」
「それはつまり私は呂布に負けていると、そういうことですよね?」
「・・・・ああ」
「・・・・・・・・・ふぅ。隊長、はっきりと言っていただき、ありがとうございます」
「凪ちゃん・・・」
「凪・・・」
「いいんだ、二人とも。あの戦いを見たときからわかっていた。・・・今の私では呂布にも隊長にも勝てないということを」
俺は凪に何て言ったらいいのか悩み、考えた末、
「凪・・・。凪さえよければ、俺が一つ技を教えてやろうか?」
「え?・・・・いいのですか?」
「ああ。つきっきりっていうのはさすがにできないから、やり方だけ教えてやる。・・・後は凪次第だけど、それでもいいか?」
「は、はい!お願いします」
さっきまでの暗い顔が消え、笑ってくれる凪に少し安心する。
「(隊長が自ら自分に技を教えてくれるなんて・・・。絶対に覚えて隊長のように強く・・・!)」
それから俺は凪に、ある技のやり方を教える。凪は真剣に俺の話を聞いていてくれた。
そして、しばらく説明し、
「隊長、ありがとうございました!魏に帰ったら鍛錬して、絶対に覚えてみせます!」
「隊長〜。また会おうね〜」
「ホンならまたー」
「ああ。三人とも元気でな」
三人が帰るころにはもう、日が落ちそうになっていた。
そして、桃香たちもその頃にはすでに作業は終わっており、自分たちの領土に帰るための準備をしていた。
次の日、連合軍は解散され、皆がそれぞれに領土へと帰って行く中、俺たちも自分たちの領土へと帰って行く。
月と詠はなんとかばれずに洛陽をでることができた。
俺は新しく仲間になった恋達にうれしさを感じつつ、馬を歩かせていた。
五胡
「これより、軍儀を始める!」
―――――五胡ではちゃくちゃくと悪が力を蓄えていた。
五胡勢力
五胡
「これより、軍儀を始める!」
西王母の声が洞窟の中に作った、軍儀室に響き渡る。
「始めるって・・・。まだ、夢幻がきてないじゃねぇか?」
シェイロンがめんどくさそうに頭をかきながら、西王母に聞く。
「夢幻様ならただいまいらっしゃるから・・・と、いらっしゃったぞ」
西王母は夢幻が来るほうに目線を向ける。その方向にシェイロン他、幻猫の金嘩、幻狼の銀樺、
幻蜘蛛の絡新(じょろう)・茅需(ちじゅ)。そして・・・及川が同じく目線を向ける。
「全員、そろっているようだな・・・」
夢幻はゆっくりと歩きながら、全員が座っている岩の座席に向かう。その時・・・
「・・・ぷっ。・・・くくっ。・・・だ、だめだ。もう・・・がまんできん・・・」
「シェ、シェイロン・・・くくっ。我慢しなさ・・・いよね・・・ふふっ」
金嘩とシェイロンは笑いをこらえながら、夢幻を見る。
「・・・くっ。だーははははははっ!!」
「ぷっ・・・くく、あっはははは!」
二人はついに我慢できなくなり笑い出す。
「こ、この無礼者!?夢幻様を見て、笑うなど何事か!」
「だ、だってよ。・・・あの姿を見たら・・・・くくっ!」
「そうよねぇ〜・・・。太平要術を使って封印を解いて復活したまではよかったけど・・・。・・・まさか縮んでいるとはね〜」
幻蜘蛛の絡新も二人と同じことを考えていたようだ。ちなみに、幻蜘蛛の絡新が姉で。幻蜘蛛の茅需が弟だ。
「・・・笑うなっ!仕方なかろう、縮んでたんだから」
身長は諸葛亮と同じくらいの背で、一杯に背伸びしなが皆を見ながら言う。
「見ておれよ、貴様ら!俺に力が戻ったら笑えなくしてやるからなっ!」
「・・・・・・」
西王母は無言のまま、夢幻に近づき、そして抱き上げる。
「よしよし。私はわかっておりますから。大声を上げないでください」
「お前が一番わかってないのだっ!」
腕の中で暴れだす夢幻に対して、
「ああ!なんてかわいいのかしらっ!」
ムギュっと腕に力を込めて抱きしめる。その豊満な胸に抱きしめられ息ができなくなり、苦しむ夢幻。
「・・・おい。そのくらいにしてさっさと軍儀を始めないか?」
今まで黙っていた茅需が話を切り出す。
「・・・そうね。夢幻様も入らした事だし。・・・始めるわね」
「おい。西王母、俺をおろしてからはじめないか?」
「いえ。夢幻様はこのまま私の膝の上で軍儀に参加していただきます」
「なんだとっ!俺を侮辱するのかっ!?」
「・・・夢幻様を膝に抱くなど、あなた様に力が戻ったらできなくなります。ですから、今のうちだけでいいのでどうか。お願いします・・・」
西王母は少し悲しそうな顔をしながら言う。
「・・・そうか。・・・わかった。今のうちに存分に俺を楽しむがいい」
「・・・はっ。・・・ありがたきしあわせ」
「(・・・夢幻の奴。縮んだせいか?性格が全然ちがうぞ・・・)」
シェイロンは不思議に思っていた。
「では、新顔も居ることなので・・・。まずは自身のことを言ってもらう。では・・・シェイロンからだ」
「は?俺?・・・なんでだよ。俺は昔からいるじゃねえか」
「いいから。・・・さっさと言うんだ」
「・・・ちっ。・・・めんどくせいなぁ」
頭をボリボリ掻きながら席を立ち、
『幻龍の竜人・シェイロン
こことは違う外史で生きていた龍。ドラゴンライダーとして人間と仲良くしていたが、ある日人間の都合により龍族を絶滅させられた。人間をひどく憎んでいる。夢幻とは人間に裏切られた後に出会い仲間になり、夢幻にその外史を壊してもらう。人型、竜人型、龍型、巨龍型になれる。人型は滅多にならない。誰かを背中に乗せるときは、龍型になる。竜人型は全身の肌が竜の鱗になり、背中に翼が生えてくる。巨龍型は・・・秘密。』
「・・・(なんで俺がこんな事言わなくちゃなんねえんだ)」
「よし。座って良いぞ。・・・次」
「は〜い。カカ様。次、銀が言うー」
『幻狼の銀樺
こことは違う外史で生まれた狼娘。人間と狼の間に生まれた子供。そのせいか、誰からも嫌われ誰からも必要とされなかった。その外史で西王母に必要だと言われ、そのうれしさのあまり、西王母をカカ様≠ニ呼ぶ。犬耳にシッポが生えている。人型と狼型になれる。普段は人型で、身長は張飛ぐらいで髪の色は銀色ロングヘアー。狼型の全長は普通の馬の三倍ほどで、移動速さも馬より速い。』
「・・・って、こんな感じで良いかな?カカ様」
「ああ。えらいね、銀は。・・・よしよし」
「えへへ・・・」
銀樺は耳をピンピンにし、頬を桃色に染める。
「次!」
「私が言うわ」
『幻猫の金嘩
ご存知、一刀の事が大好き。その告白中関羽に邪魔され敗北。その結果、猫とは思えない念氣をもち
それに目をつけた西王母によって、人型化になった。あだ名はねっちゃん。
普通の猫にもなれる。身長は関羽ぐらいあり、胸はぺたんこ。金髪ロングヘアー。戦闘法は爪と念氣』
「・・・なんか私の短くないかしら」
「次!」
「私達が言うわ」
『幻蜘蛛の絡新・茅需
蜘蛛の姉弟。昔からの夢幻の部下。姉の絡新は弟のことを凄く大切に思っている。
弟の茅需はその所為もあってわがままな性格。欲しいものはなにがなんでも手にしたがる。
人型と蜘蛛型になれ、蜘蛛型は手が六本になる。口から出す糸は耐久力と粘着性があり、応用が能。』
「姉上、こんな説明で大丈夫なんでしょうか」
「大丈夫よ。全部説明しないほうが想像力が高まるのよ」
「はい。それ以上言うと、大人の事情に関わってくるから。・・・次!」
「・・・俺の番だな」
『夢幻
外史を破壊しまくる悪。その昔、北郷一刀の先祖によって封印されていたが、西王母によって復活。
封印が解けたが、力が戻らず、体が縮んでいる。』
「さすが夢幻様です。簡潔でとてもいいです」
「・・・ふふっ・・・次はお前だ。西王母」
「はい」
『西王母
夢幻の部下であり、夢幻のことを敬愛している女性。北郷一刀に敗れた、夢幻を復活させるためにいろいろな外史に飛び現在に至る。妖術使いで、接近戦は苦手。背格好はORO〇HIの妲己のような感じ』
「おい。某作品の名前が出ているがこれはいいのか?」
「あいかわらずうるさいわね。シェイロン。細かいことは気にしないの」
「最後に・・・俺やな」
『及川祐
一刀の悪友だった男。その正体は外史に生きる道化。昔から夢幻の部下で聖フランチェスカ学園にはスパイとして通っていた。北郷一刀がこちらの外史に来た事により、スパイをやめ、西王母達と合流する。武器は二丁拳銃。弾は爆発するエクプロ≠使い、それ以外にも臨機応変に弾の種類を変えて戦う。』
「さてと、これで全員の紹介は済んだわね。それでは、本題に入る」
「やっとかよ。・・・長かったな」
それから西王母の話が始まる。
反董卓連合が終わったこと。これから各自がどう動くのか。・・・西王母は皆にわかりやすいように簡潔に述べていく。
そして・・・。
「シェイロンは西涼に行きなさい。そして・・・。わかってるわね」
「・・・ああ。了解しているよ」
シェイロンの目は、人間を殺したくてギラギラしていた。
「絡新と茅需はそれぞれ別々に、操りやすい人間の太守を探し出して、軍を動かし、戦を始めなさい」
「わかったわ。・・・操りやすいとなると、あそことあそこしかないわね」
「姉上。ボクは魏に攻めてもいいですか?」
「・・・なぜ?」
「殺し損ねた人間が居るんですよ。・・・ボクの矢を避けてね」
「・・・わかったわ。あなたの好きにしなさい。・・・ただし」
そう言って絡新は茅需の唇にキスをする。
「危なくなったらすぐに逃げなさい」
「・・・はい」
絡新と茅需の口からは透明な橋ができていて、離れるとそれがなくなる。
「・・・はぁ。私は夢幻様の力をなんとかしなくちゃいけないから。・・・よろしく頼むわよ」
「カカ様。銀たちはカカ様の護衛でいいんだよね?」
「そうよ。頼むわね、銀」
頭に手を伸ばし撫でる。
「・・・うん」
目を細め気持ちよさそうに返事をする。
「(一刀・・・。会いたかったな〜)」
金嘩の頭の中は一刀のことで一杯だった。
「一週間後に作戦を開始する。それまで各々準備を怠るな!・・・解散!」
そう西王母が言うと、それそれが席を立ち軍儀室からいなくなっていく。
「さぁ。夢幻様。誰もいなくなりましたので、我々も閨にいきましょう」
「うむ。・・・かわいがってやるぞ」
「・・・・はい」
二人も軍儀室を後にする。そして・・・閨からは、二人の声が聞こえてきていた。
徐州の州牧
五胡で夢幻たちが軍儀を行う数週間前、北郷一刀たちは反董卓連合が終わり、平原へと帰ってきてた。
新たに呂布や陳宮。そして・・・董卓、賈駆を加えた一刀たちの城は以前よりさらに、にぎやかになっていた。
そうして平原に戻ってから、一週間が経ったある時、どこからか綺羅を纏った使者が現れた。
その使者は、連合で活躍した劉備を徐州の州牧に命ずるため帝から来た者だった。
使者は劉備に書簡と一編の印を渡す。
「徐州の州牧だって。・・・でも州牧って何?」
「以前は刺史と言われていたものですね。霊帝の時代に州牧という名に変更され、権限なども刺史や牧より大きなものになっています」
「つまり太守みたいなものと考えてください・・・」
「太守・・・私、太守様なんだ・・・」
「おめでとうございます、桃香さま」
「おめでとうなのだ、お姉ちゃん」
関羽、張飛は三人で旅を始めたことを思い出しながら言う。
「・・・ありがとう。でも、この街はどうすればいいんだろう?」
「おそらく朝廷より後任の方が来られるかと」
「折角、頑張って内政したのにね・・・」
「全くだな。せっかくなじみの酒屋やラーメン屋が出来たというのに」
鳳統と趙雲はなごりおしそうな顔をしながら口にしていた。
「そうは言うが、これは大きな前進になる。・・・すぐに徐州に移りましょう」
「そうだね。・・・この街のみんなと別れるのは寂しいけど、この街はみんなの頑張りのお陰で安心して暮らせる街になったから、次のところも皆でがんばろう♪」
「はい。・・・それでは、移動の準備を」
「うん。・・・ところでご主人様はどこにいるの?」
劉備が首をかしげながら皆の顔を見る。
「私は知りませんが・・・」
「鈴々も知らないのだ」
「はわ・・・一体どこに?」
「・・・(キョロキョロ)」
「主なら先ほど恋たちと、一緒におりましたが」
「ご主人様・・・!こんな時に一体なにを・・・!」
関羽はデコに青筋をたてながら怒っていた。
一刀
「・・・はぁ〜。癒される〜」
「・・・ワン!」
ただいま俺はドッグセラピー中。以前恋と約束していたセキトを見せてもらっていた。
「セキト・・・なついてる」
「バウ!」
「おお!いいのです!張々、もっとやるのです」
「うお!?」
張々が自分も構ってくれと俺の背中にのしかかってくる。
張々はセキトよりでかいので少し重い。
「にしても、あんた、こんなところに居てもいいわけ?」
「ん?」
「さっき誰か来てなかった?」
「そうなのか?俺は知らないけど・・・、まぁ愛紗たちに任せとけば大丈夫だろ」
そんなことよりこの肉球はたまりませんなぁ〜・・・。ぷにぷに。
「わふ」
「おお、すまん。こそばゆかったか。でも・・・・触らせてくれ〜」
「はぁ・・・。だめだ、こいつ。顔が緩みまくってるもの・・・」
「ご主人様、・・・かわいい」
「へ?・・・月?何言ってるの・・・?」
董卓は一刀をため息まじりに見ていた。
「ワンワン!《ぺろ・・・ぺろ・・・》」
「あははっ!くすぐったいよ!セキトっ!」
「(!?・・・なに子供みたいな笑顔してんのよ)」
賈駆が一刀の笑顔をチラチラと目線を動かしながら見る。そこに、
「ご主人様〜。どこに居るの〜」
「・・・桃香?」
劉備がやってくる。
「おーい。ここだぞー」
「あっ!いた〜。ご主人様、今までなにを・・・」
桃香はこっちに駆け足でくると、セキト達を見て納得したように頷く。
「ずる〜い。ご主人様だけ遊んでるなんて・・・ぶー」
「まぁまぁ。そう怒るなって。・・・ところで、俺に何か用なんだろ?」
俺は背中に居た張々を背負いながら立ち上がる。
「あ、うん。私、徐州の州牧になったんだぁ」
「へ〜、そうなんだ。・・・・って、そうなの!?」
「うん。さっき使者さんが来て、書簡にそう書いてあったんだよ」
「・・・なるほど。桃香・・・おめでとう」
「うん。・・・ありがとう、ご主人様」
桃香は笑顔で答えてくれた。
「それってこの平原から移動するってことでしょ?」
そこへ詠が桃香に質問する。
「うん。ここは朝廷から後任が来るからって」
「それじゃあ、私たちも何かお手伝いします」
「ありがとう、月ちゃん。それじゃあ、朱里ちゃんのところに行ってくれる?」
「はい、わかりました」
月は返事をすると、俺にお辞儀をしたあと歩いていく。
「あ!待ってよ、月!ボクも行くからー」
詠は月の後を追いかけるように走っていった。
「う〜ん・・・。メイドの後ろ姿はいい」
「バウ?」
俺の独り言に張々だけが聞こえたみたいだ。
詠と月の格好はいわゆるメイド服。この時代には無いものだが、俺が呉服やのおっちゃんに頼み込み作ってもらった。
最初、詠は着たくないと、猛反発していたがあの服ではさすがに目立つのでしぶしぶ着てもらった。
まぁ、メイド服も十分目立つがまさか董卓が生きていてあんな服着ているなんて誰も思わないだろう。
そのことを詠に説明すると、しぶしぶから少し納得してメイド服を着るようになった。
詠と月の仕事は俺の侍女なのでちょうどいいだろう。
「ご主人様・・・どうしたの?」
ボーとしていたのか、恋が俺の顔を覗き込むように見ていた。
「いや、なんでもないよ。・・・さて、そういうことなら俺たちも準備しないとな」
「しょうがないから、ねねも手伝ってやるのです」
「ははっ、ありがとう。ねね」
お礼に頭を撫でてやる。張々を背中にかたよけながら、片手で支え器用にやる。
「こ、こら。気安くさわるなっ!ちんきゅーきっくをくらいたいのですかっ!」
「・・・ちんきゅーきっくは・・・・やっちゃだめ」
「恋殿〜・・・・」
「ほらほら。三人とも早く行こう。皆、準備してるよ」
「ああ」
俺とねねと恋は桃香についていく様に歩いていく。そして俺は、
「セキト、張々。そろそろ降ろしてもいいかな?」
「「ワンワン!」」
セキトは前で、張々は依然後ろに。片手づつ使いながら器用に抱いている。
降ろそうとすると、二匹の犬は吼えまくる。
なので降ろせないまま、俺は桃香についていった。
―――――そうして、俺たちは平原での暮らしに終わりを告げ、新たに徐州にむかうのだった。
そして数日後、徐州に着いた俺たちは平原で学んだことを生かしながら、ここでの生活を始める。
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最近、花粉が飛んでいるのか苦しいです。 敵キャラ紹介が入ってます。 こんな敵キャラ紹介は嫌だという方申し訳ないです。 |
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