ミレニアム・アンデットデビル下3 |
第二章『八方美人』?須藤欄編
須藤欄、現役高校生スタート!
「・・・・・・。」
泣きたくなってきた。
女子の制服を着て、高校生の授業を聞く。それも県立高校で。これはどこからどう見ても現役高校生であろう。
「え?、つまりこの作者が言いたいのは、平蔵の・・・・・・」
「うわ、マジかよ。」
「そんで、彼氏が言ったのよ?」
しかも県立。まともに授業を受けている生徒はごく僅か。ハプネスの一般教養ではありえない光景である。当然ながら、欄も授業を聞いてはいない。貴重な時間を割いてまでこんな遊びに付き合っている以上、少なくとも今頼まれているクライアントの依頼は全て終わらせなくてはいけない。
だが、世の中そうそう自分の都合通りには動かないものである。
「ねえ、欄が前いた学校ってどういうとこだったの?」
いきなりファーストネームかよ!
もちろんそんな暴言を口にするわけない。欄はあくまで八方美人を演じきる。この先、潜入のミッションもあるかもしれないので、そのための練習と割り切れば少しはこの境遇でもプラスに見えるだろう。
「ランがいた学校は、みんな真面目だったよ。休み時間も勉強してたし。」
一人称をランなんて言うのは正直初めてである。
「え?、うそ?!お嬢校なんだ。すごーい。」
「そんなことないよ。みんな勉強さえしてれば、誰でも入れるところだし。」
・・・・・・お嬢校?
ちなみに、当たり前だがハプネスにはただ勉強しただけでは入れない。
「え?、ってことはやっぱり偏差値とか高いんじゃない?」
「そーでもないよ。私でも入れたんだから渚さんでも入れるよ。」
私に仕事をさせろ!
だんだん頭に血が上っているのが自分でも分かる。こんな生活を続けたら、確かに人間的になんらかの変化があるのは間違いないだろう。
「ねえ欄ちゃん!彼氏いるの?」
後ろの席に座る茶髪の軟派そうな男が声を掻ける。
「一応いるよ。とってもかっこいいんだ?。」
なんだか、自分でこの自分のキャラにイライラしてきたわ・・・・・・。
「あ??、やっぱりかっ。残念だなあ。ねえ、彼氏と俺どっちがいい男?」
比べるまでもないわよ!授業聞けこの豚!・・・・・・・なんて双葉の様に自由気ままに言えたらどんなに楽なことか。
「え??っと、彼氏の方がちょっと上かな・・・・・・。」
「ねえねえ、どっちから告白したの?」
この話題に隣の席の渚が再び参入してくる。くりくりした子犬みたいな目が特徴な女の子だ。
「私から・・・・・・かな?」
「えーーー!欄から告白なんて、その彼氏幸せ者だよ!」
「そこ、うるさいぞ。」
大声で叫ぶ渚を教師が注意する。教室全体にくすくすと笑い声で埋め吐くされる。欄の名が大声で叫ばれたわけだが、それを気にする程世間体を重視しているわけではない。 ・・・・・・それにしても、渚、キャラ変わったわね。
幼い頃、川越家にいた時に家が近いからといって遊びにきていたのが渚である。当然、妃子の友達であるが、欄も一緒に遊んだ記憶が何回かある。(本当は毎日妃子と渚を泣かせていた。)
「ねえねえ、彼氏の写真とかあるなら見せて。」
「ええ、いいわよ。」
あ、今素で喋っちゃった。
欄は携帯パソコンを開き(カモフラージュ。欄は携帯パソコンを必要としない。)俊の画像を開いて渡した。
「・・・・・・何だよ、俺のがかっこいいじゃん。こいつ、寝てんじゃないの?目なんて細すぎだし。」
なら、あなたの目は腐っているわね。
どれどれという仕草で渚が携帯パソコンを奪い取る。
「・・・・・・ああ、結構いい男じゃない。狐みたいで可愛い目してるし。」
俊の容姿を褒められ、自分が照れているのに気付いた。そして、自分の右手がDerringer(デリンジャー)を無意識に握り締めていたことにも気付いた。
「ありがと。」
会話の途中、視界の半分に異変が起きた。
【メール受信・Syunn.Sathuma】
テクノ・アイに文字が写る。それを開けようとする
「ってかこいつ、微妙っしょ?絶対オレの方がいけるって。」
「・・・・・・っ!」
ダァァン!
私じゃないわよ。確かにイラっときたけど、世間体ぐらい分かるわよ。
ちなみにこの音は隣のクラスから。もはや柳双葉以外考えられないだろう。
とりあえず俊から来たメールに目を通す。内容は、このお遊びのルールであった。それには、人を殺すなと記されているが・・・・・・あの音では、もはや手遅れであろう。
・・・・・・闇医者でも呼んで起きましょう。まあ、今すぐ来れば一命はとりとめられるわね。
キーンコーンカーンコーン。
欄は俊からの通信をプリントアウトするため、職員室へと向かった。
・・・・・・にして、この生徒一人にノートパソコンすら支給されていないなんて・・・・・・本当に日本は先進国なのかしら?
この時、欄の中で全ての政治家は無能な人間に分別されたのであった。
昼休みは渚と一緒に屋上で食事をしている。ご飯をご馳走すると言えば、一般人はピョコピョコ着いてくる。犬に近いが、扱いやすいのでこの際構わない。ちなみに妃子は双葉と一緒に昼食を採るらしい。いつもの馬鹿(双葉)なら断固拒否するが、あの特別ルールがあれば話は変わるだろう。
200円のパンをかじる。久しぶりにパンを食べたからか、以外においしかった。
・・・・・・何200円で満足しているのよ。
そんな自分に腹を立てたが、とりあえず心の中でつっこみを入れておいた。
パンを野菜ジュースで流し込むと、会話がないからか渚が話しかけてきた。
「欄ってさ、妃子の義姉って聞いたけど、ホント?」
「・・・・・・・・・・・・。」
ぶ???っとか、それらしいリアクションも出来ない。なんというか、この場の空気が一瞬氷ついてしまった。
「・・・・・・あれ?やっぱりこういうのって、聞かない方がよかった?」
「いえ・・・・・・ねえ、それって直接妃子さんから聞いたの?」
自分の妹をさん付けするのに違和感を感じるが、今日は全てのことに違和感を感じているのでだんだんと慣れてきた。
「そうだけど・・・・・・ご、ごめんね。やっぱり、こういうのって言われたくないよね。色々、家庭の事情があると思うけど・・・・・・・。あ、あはは、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
家庭というか、組織というか・・・・・・・。妃子、これは情報漏洩。立派な犯罪よ。
帰ったら久しぶりに泣かしてやろうと心に決める。みんなの命にも関わる問題だし、何より欄の仕事に対するプライドがずたボロである。今まで様々なセキュリティを用い、二日ごとのパスワードの変更から、ファイヤーオールや自作のIIS等様々なセキュリティを用い、それらセキュリティの費用だけで総額数億は下らない。プライベートの金の80%以上をつぎ込み作成したこの絶対の砦が、妹の一言で壊されたのだ。
「あ、・・・・・・あの子ね。え、えと、妃子なんだけど、とってもいい子なのよ!」
この私のプライドをボロボロにする程ね。
渚自身も自分で口にして何を言っているのか分からないだろう。フォローをしているつもりが返ってフォローになっていないし、それ以前にここで妃子の株を上げる意味すらない。
「妃子は、その、幼い頃を姫子(きこ)・・・・・・えっと、血の繋がった姉がいたんだけど、亡くなっちゃったの。」
「・・・・・・。」
いつからこの私を呼び捨てにできる程えらくなったのかしら?
「それで最近までずっと暗くて、えと、なんとかしたかったんだけど、何もできなくて、それから妃子のお母さんが倒れちゃって・・・・・・だけど、今日2週間振りに学校来たら、あんなに明るかったの。理由はお姉さんができたって言ってたから、その、妃子にはお姉さんが必要なの。・・・・・・それで、」
双葉なら会話の途中で「うるさい」と割り込んで話を終わらせ、俊君ならば「日本語を喋ってくれるかい」とでもいいそうだ。だが、欄の胸が少し温かくなっていたので口を挟まなかった。
「その・・・・・・上手く言えないけど、妃子にとっては欄がとっても大事だと思う。・・・・・・うん。・・・・・・多分。」
多分ってなによ。
「もういいよ。時間無いから早く食べようよ。」
「え・・・・・あ、うん・・・・・・・。」
再び静寂が訪れるが、その中身は先程とは少し種類が違っていた。
「大丈夫よ。」
「・・・・・・え?」
野菜ジュ?スのパックを潰して、ゆっくりと立ち上がる。
「私は、妃子の姉だから。」
「あ・・・・・・。」
ボーっとした渚の腕を掴んで立ち上がらせた。
「どうしたの?」
「いや・・・・・・その、なんか、亡くなった妃子の姉に似てたから・・・・・・。」
その言葉に、ふっと笑みを漏らした。
「きっと妃子さんにはランが必要なんだよ、さあ、行きましょう。」
黒髪を靡かせ、優雅に道を切り開く。その華麗な姿に渚は見とれていた。
・・・・・・ま、それでも帰ったら泣かすけどね。
カリスマ性溢れる欄は、情よりプライドを選んだのであった。
放課後になり、帰り支度をする。そうは言っても持ち帰る物なんて何もないが。県立高校で教科書を持ち帰る生徒なんていないし、欄も当然持ち帰らない。小柄のバックに化粧品を詰めたりという女子高校生のようなこともしない。
ただ普通に帰宅して、今日一日目の茶番劇が終了するだけのはずだった。
「須藤欄さん、少し時間いいですか?」
教室がざわめく中、一人の男が声をかけてきた。髪形は丸坊主を伸ばした無造作ヘアといった感じで、顔や体も特に特徴のない至って平凡な姿。ただ、少し女遊びが激しそうな印象を受ける。
「ごめんね、ラン、今日は少し急いでいるの。」
一般人と馴れ合うつもりはない。それに、仕事の方も授業中は殆(ほとん)どできなかったので、帰ってからある程度はまとめなければいけないのだ。
だが、男は先程と同じ薄い笑みを浮かべて言ってきた。
「デビル・ウイルスさん、少し時間いいですか?」
「・・・・・・っ!」
どこからか情報が漏れているのは間違いないらしい。
「場所、変えよっか。」
「いや、今日は挨拶だけなのでこのままでいいですよ。」
腰を上げた欄を静止させる。
「今、オレはお金持ってないんですよ。」
「・・・・・・それで?」
こちらから億単位と請求してくるのがパターンであろう。こちらとしても、この立場からして金を払うしかない。
「いえいえ、あなたから一時的に金を頂いてもすぐにうちの組織が全滅させられますからね。」
「・・・・・・・。」
殺し屋としてのレベルは結構上位みたいね。
「あなたの首には多額な賞金が懸かっていましてね。」
「・・・・・・私に勝てると思っているのかしら?」
二人は周りの生徒聞こえない様、小声でやりとりをする。。
「あまり自惚(うぬ)れない方がいい。あなたは確かに生きる伝説と化した人物だが、実際オレと殺し合いをして生き残れるとでも本気で思っているのか?」
「・・・・・・。」
なかなか面白いことを言うわ。・・・・・・そう挑発されると、試してみたくなるわ。
男の死角となる左手でDerringer(デリンジャー)を握り絞める。男もそれに合わせ、上体を低く構えた。恐らく、ナイフ系の速攻型であろう。
「欄、上月(こうづき)君と知り合い?」
張り詰めた空気をかき消す渚の登場でお開きとなる。元々、これだけ人間に囲まれている中で殺し合いなんてやるわけがない。今日のところは互いに威嚇のみであろう。
「デートに誘ったんだけど、断られちゃった。」
白々しいいいわけだが、変に隠し通すよりは何倍もマシであろう。こちらもその言葉に乗る。
「ラン、ナンパされちゃった。」
「え??!上月君、やるね。」
クリクリと可愛い仕草を振舞う渚は、二人の眼中に無かった。
「じゃ、LANさん、近いうちに二人きりで合いたいもんだね。」
今上月が言ったLANは、欄のハンドルネーム、パソコンで使う異名であった。
「機会があれば、是非。」
捨て台詞を言い残し、上月という男は去っていく。
「欄、彼氏いるんじゃなかったの?」
一般人は融通が利くのだが、正直めんどくさい。
「遊びよ。上月君がランに吊りあうわけがないよ。」
「うわ??っ!この子、自分で言っちゃった!」
欄は立ち上がる。もうここには用はないし、上月という男のせいで今日の予定が一つ増えた。
「あれ?欄帰るの?一緒に帰ろうよ。」
この子は昔からこんなんだ。転入したてでまだ友達の少ないと思い込んでいる人間に自分から積極的に仲良くなろうとする。・・・・・・いい子なんだが、正直もう私に友達なんて必要ないのよ。それに、一般人の友達なんてこの子の命に関わる問題だしね。
「ラン、今日は急いでいるから妃子と・・・・・・妃子さんと一緒に帰ってあげて。」
・・・・・・何で私は妹にさん付けしてるのやら。
だんだんと自分が情けなくなってきた。渚は、どこか暗い顔をしながら呟いた。
「え??っと、妃子、なんか彼氏と一緒に帰るらしくて・・・・・・はあ、幼馴染で親友だったのに抜け駆けされて、しまいには渚は一人ぼっちになって・・・・・・」
「はいはい、ランは忙しいの。帰ったら近くの安いケーキでもいっぱい食べていっぱい太ればいいでしょ。当然一人でね。」
「うえ???ん、妙にリアルだよ。・・・・・・こうなったら私も男の一人や二人作って、それで甘い夏をエンジョイして泊まりで海にいったら彼氏がホテルをとってあって、それからそれから・・・・・・、」
渚の妄想癖な部分は十分承知である。ランは教室を出て行きながら、テクノ・アイで今日の予定を確認した。
それにしても、妃子も彼氏か、とうとう大人になっちゃったわね。・・・・・・・・・・・・・ん?彼氏?
ピタリと、欄は廊下で突然静止した。
彼氏=男
男&女(妃子)=カップル。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ!?」
あわててC組に戻り、渚を捕まえた。
「ねえ!妃子の彼氏って誰よ!」
思いっきり素で話しているが、もう教室には渚しかいないのが幸いだった。学力のレベルが低いこの学校では、部活か遊びに行く生徒しかいないらしい。
「・・・・・・そしてクリスマスになったら指輪を貰って?、んで私が料理作って待ってたら交通事故に遭って?」
「渚、この世界に帰ってきなさい。」
というよりこの子の妄想は少し危なくないだろうか?
「あっ!欄だ、私と帰ってくれるの!?」
「うん、ランと一緒に帰ろうよ。」
という口実を作ってから話を切り出した。
下駄箱まで行き、本題に入る。
「だからさ、それでミーちゃんが言ったんだよ。『私、毛深い男の人って嫌い』って!鬼以外の何者でもないでしょ!もう告白してきた松平くんが泣いちゃって、」
「で、妃子の彼氏って誰よ。」
「・・・・・・欄、私といて面白くないでしょ。」
「そんなことないわよ。で、妃子の彼氏って誰よ。」
「・・・・・・(くすん)。」
本当に泣きそうな顔を堪え、校門を出た時に渚は口を開いた。
「えっと、日下部君は振られて、体育系の山下君は・・・・・・OKしたのかな?ああ、それと今日B組に転入してきた人、確か硬派君だっけ?それかも知れないし・・・・・・、」
「最後だったら殺すわよ。」
「え”・・・・・・」
「冗談よ。」
硬派なんて名前の人間がいるなんて思わない。それに一番近いのが一文字違いの双葉であろう。
妃子、やはりあなたは今日、私に泣かされる運命の様ね。
心の中の本当の欄が薄い笑みを浮かべていた。
「ねえ、その日下部とか山下っていう人は妃子が告白したの?」
双葉に好む時点から、薄々気付いていた。欄の知っている妃子はもういない。今の妃子は、ただの男好きの川越妃子であるということを。
「あははははっ!あの子が告白なんてするわけないじゃない。向こうからに決まってるよ!」
「・・・・・・・はあ!?」
私の耳がおかしいのか、この子の頭がおかしいのか、それとも日下部や山下という奴らの目がおかしいのか・・・・・・?
「この歳になるとね、色々あるんだよ。ちょっと可愛い子はすぐに奪い合いだよ。告白なんて月に2,3回ある行事の様なものだし。」
「・・・・・・・。」
思っていたより、なんというか軽かった。この歳の一般人は、頭が悪そうにみえてちゃっかりやることはやってるんだな。
「それじゃあ、当然渚も告白されたことあるんでしょ?何で付き合わなかったの?」
「・・・・・・・(くすん。)」
いきなり泣き出したが、・・・・・・正直言ってこれは欄の予想の範疇であった。
「よしよし。今日一日で一番可愛いわよ。」
「言わないで??!」
そんなこんなで下らない話題をしてから解散し、家に着いた。
・・・・・・その間、上月は欄の50m背後から着かず離れずの距離を保っていたことを、欄は知っていた。
説明 | ||
一応高校生のレベルということで修正はしてないが......文章の基本も分からないのかオレは。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
511 | 508 | 0 |
タグ | ||
ミレニアム・アンデットデビル SF オムニバス 殺し屋 オムニバス サイバー 厨二 高校生の作品 オリジナル ライター志望の方へ | ||
朝霞 アドミさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |