料理人対決
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「お嬢、家を出た貴女が勝ち進んでは示しがつかないの。ここであたしに討たれなさい」

「はッ、あちしを止める為に人の道から逸れちまったのかい。悲しいねぇ」

 

そこは1辺が100メートルの箱の中だった。

壁も床も天井も、材質は不明ながら大理石のような艶を放っている。

その四角い戦場の中央で2人の少女が互いの得物を手に向かい合っていた。

本来の対決を明日に控えた二人の料理人は、邪道と理解しながらも互いの再起不能を狙っている。

 

あたしは焦りを覚えていた。

お嬢の包丁捌きが尋常ではない事は何度も確認している。

飛来する雨粒を全て両断する速度は筋肉だけでは説明が着かない。

恐らく射程となる球状の空間が、そのまま死線となるだろう。

果たして右手に持ったネギだけで対抗できるだろうか。

緊張で喉の渇きを覚え、ごくりと唾を飲み込んだ。

 

あちしは焦りを覚えていた。

罠に嵌めるつもりだったのに、正面から戦う事になってしまった。

あのネギは触れた生物の命を吸い取り鮮度を保つ諸刃の魔物だ。

恐らく射程となる球状の空間が、そのまま死線となるだろう。

果たして右手に持った出刃包丁で、目の前の幽霊を斬れるだろうか。

湧き上る恐怖を抑え付け、ごくりと唾を飲み込んだ。

 

―――明日を勝ち取る為の戦いが始まった。

 

彼女達の戦場は外から見れば赤いリボンで結んだ白い小さな四角い箱だった。

0時にタイマーをセットしたプレス機の腕に存在する。

 

今日が終わるまで、あと約1時間。

決着、迫る。

説明
超短編。バトルシーンを書くというお題で書いた代物。
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タグ
超短編 打切り 料理人 魔法 ファンタジー 

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