真・恋姫†無双 あなたと共に 6(後編) |
泣いていた3羽烏をあやし終え、笑顔で別れた一刀の元に3つの影が近づいてきた・・・
「・・・やっと風たちの番なのですよ〜」
「・・・お久しぶりです・・一刀殿」
「・・・・・・」
それは・・・魏の誇る3大軍師の3人であった
「風・・・稟・・・桂花も・・・」
一刀は3人の存在を確かめるように真名を呼んだ・・・
「・・・お兄さん・・・遅いのですよ〜」
「・・・まったくです・・・一刀殿」
「・・・・・・」
まず最初に風がゆっくりと・・・抱きついてきた・・
「・・・ごめんな・・・風」
優しく抱きしめながら・・・ゆっくりと髪を梳くようにして撫でる
「おうおう・・・兄ちゃん・・俺のこと・・・・・・忘れてないだろうな?」
少し涙声になりながらも頭の上の人形が話し掛けてきた
「当たり前だろ、宝ャ。宝ャも大事な”仲間”なんだから・・・」
一刀は笑みを浮かべ、ちょんっ、と宝ャの頭をつつきながら答えた
「・・・なら・・・・・いい・・けど・・・よ・・・」
すでに、いつもの宝ャらしくない声になっていたが、一刀は気にせずに”ただいま”とだけ呟いた・・・・・・
「・・・宝ャやろーには言って・・・風には何もないのですか?・・・」
落ち着きを取り戻した風が文句をぶつけてくる
「・・・あぁ、そうだね。・・・・・・ただいま、風」
その言葉を聞いて、風は穏やかな笑みを浮かべて伝えた・・・
「・・・はい・・・おかえりなさいなのですよ・・・お兄さん・・・」
一刀の胸に顔を埋め、風は言う・・・
「・・・風はですね・・・頑張ったのですよ・・・。・・・お兄さんがいなくなっても・・・この国を・・・大陸を・・・お兄さんがいてくれていた時よりも・・・いいものにしたくて・・・」
「・・・風」
一刀は知っている・・・
この娘は普段は冷静そうに見えるが、人一倍負けず嫌いで、頑張り屋だということを・・・
だから・・・伝える・・・彼女の”想い”を思い出して・・・
------風・・・よく頑張ったね------
と、
「ッ!?・・・は・・い・・・なの・・・です」
泣きながらも笑みを浮かべ、一刀に褒められたという事実を受け止める・・・
---3年間・・・頑張った・・・
「(何の為に?)」
自問自答して、すぐに噴出してしまう・・・
「(ふふっ・・決まってますよ〜)」
もちろん・・・
------今、この瞬間の為ですよ------
胸に顔を埋めたまま・・・風は言う・・・
「・・・やっぱり風は・・・”ここ”が・・・いいのです・・・」
「ここ?」
風は答える・・・再会できた喜びを・・・全て伝えるように・・・
------そこは・・・・・・
「・・・お兄さんが”この世界”が”好き”だと思っているように・・・」
------3年掛けて・・・・・・
「風は”ここ”が・・・お兄さんの傍が・・・”好き”なのです・・・安心できるのですよ・・・」
------取り戻せた安心できる”場所------”
「・・・そっか・・・。ありがとうな・・・風」
自分の傍を・・・”居場所”として認めてくれる娘がいる・・・
一刀は抱きしめていた腕に力を込め・・・風だけに聞こえるような声で・・・伝える・・・
「・・・本当に・・・ありがとうな・・・」
------最大限の感謝を込めて・・・------
「(風・・・よかったですね)」
稟は2人が再会を喜ぶ様子を風のすぐ後ろで見ていた・・・
3年前のあの日・・・主である華琳から”北郷一刀は天に帰った”と聞かされ、皆が悲しんだり、行き場のない怒りに襲われているときにも、風はいつも通りのように見えた・・・・・・
風とは仕官前からの長い付き合いである・・・
だからこそ稟には分かった・・・
いくら顔には出さなくとも・・・
------風が今までにない”悲しみ”の中にいることを------
「・・・稟」
「ッ!?か、一刀殿!?」
不意に、一刀は風の一歩離れた位置にいた稟も抱き寄せた
「・・・稟も・・・ごめんな・・・」
戸惑っていた稟に、一刀からの深い謝罪の言葉が向けられる
「・・・一刀殿・・・」
稟も体の力を抜き、一刀に静かに寄りかかった・・・
「・・・本当に・・・あなたは・・・無責任すぎます・・・。・・・あなたがいなくなってから・・・大変だったのですよ・・・」
「・・・・・・うん」
「・・・あなたには・・・私たちの3年間を知る”義務”があります・・・よろしいですね?・・・」
「うん・・・聞かせてほしい・・・稟たちが何を感じていたのかを・・・」
一刀は覚悟を決めたような眼差しを稟に送った・・・
稟は一刀の視線に応えるように頷き・・・語りだす・・・
「・・・あなたが天へ帰ったと聞いたとき・・・正直戸惑いました・・・。戦乱の世が終わり・・・これからは3国で協力して”平和”をつくっていく・・・・・・。それは一刀殿の願いでもあったはずなのに・・・何故・・・今消えるのか、と」
それはおそらく誰もが思っていたこと・・・
あれだけ自分たちの身を案じてくれていた彼が・・・
あれだけ民のことを考えていた彼が・・・
何よりも・・・
------あれだけ”平和”を望んでいた”彼”が・・・なぜ・・・------
と・・・
「・・・・・・うん」
一刀は目を閉じて稟の発する一言一言を噛み締める・・・
それは・・・大切な人たちを裏切った・・・
3年前の自分への”戒め”・・・
------心に刻まなければいけない・・・皆の・・・”想い”------
「・・・続けます」
稟は一刀がしっかりと聞いてくれていることを確認して続ける・・・
「戦争が終わったのに・・・戦勝国であるのに・・・誰一人として・・・笑えませんでした・・・。・・・何よりも・・・これから先のことを・・・考える余裕が・・・できませんでした・・・」
「・・・・・・」
「・・・しかしですね・・・」
稟は俯かせていた顔をあげる
「洛陽に帰ったある日のことです・・・。魏の主だった将たちで・・・あなたの部屋を整理していた時に・・・見つけたのですよ・・・あなたが私たちに”託してくれた”ものを・・・」
「・・・そっか・・」
一刀は気づいた・・・”それ”が何を指しているのかを・・・
「・・・あなたは”天の知識”を残してくれた・・・。・・・しかし・・・私は・・・それをどうすればいいのかすら・・・分からなかった・・・」
自嘲するように言い、何かを思い出すように目を閉じる
「・・・そんな私を・・・風の一言が・・・支えてくれました・・・」
「・・・風の?」
「・・・はい・・・。風は”これはお兄さんが風たちを信じて託してくれたものだから”、と・・・」
稟は昔を思い出し、”ふふっ”と小さく笑った
「”風の言うように・・・もし・・・これが・・・一刀殿からの”信頼”の証ならば・・・私は絶対に応えなければならない・・・”・・・不思議と・・・そう思えました」
そこまで言って・・・稟も一刀の背中に腕をまわす・・・
「・・・”あなたの信頼に応えたい”・・・その思いだけで・・・3年間過ごしてきました・・・」
頬を涙が伝う・・・
「・・・それでも・・・叶えることが・・・できたのは・・・僅か・・・」
悔しかった・・・
自分の力はこの程度なのかと・・・
“仲間”の信頼にも応えられないのか、と・・・
「・・・くぅ・・・うぅ・・・うぅッ」
声を押し殺すように泣く・・・
そんな稟を・・・
「・・・稟・・・泣かないで・・・」
一刀は抱きしめながら・・・頭を撫でる・・・
「・・・かず・・と・・殿・・・」
「・・・稟は・・・胸を張っていいんだよ・・・」
子供に言い聞かせるように・・・優しく伝える・・・
「・・・俺が残した情報こそ・・・本当に僅かなものだよ・・・。・・・それを”たった3年”でいくつか実現したんだろ?・・・それは十分すごいことだよ・・・」
「・・すご・・い・・・こと?・・・」
一刀は笑みを浮かべ・・・答える・・・
「そうだよ。・・・稟たちだからこそ”たった3年”でできたことなんだ・・・。・・・もしそのことで稟たちのことを馬鹿にするようなヤツがいたら・・・俺は絶対に・・・許さない!!」
一刀は強い表情を浮かべる
「(あぁ・・・これです・・・)」
一刀の表情を見て・・・稟は確信する・・・
3年前・・・彼は決して武が強いわけではなかった・・・
しかし・・・
誰よりも強い”想い”を・・・
誰もが認める”優しさ”を・・・
その顔に宿していた・・・
そしてそれは・・・3年という年月を経ても変わることはなかったのだと・・・
「・・・かず・・・と・・どのぉぉ・・・」
稟は一刀にしがみつき・・・泣いた・・・
「(あぁ・・・そうか・・・)」
そして思う・・・
3年間・・・悩んでいた答え・・・
「(私は・・・やはり天邪鬼のようですね・・・)」
認めてしまえば簡単だった・・・・・
「(・・・でも・・・今なら・・・分かります)」
---”私はやっぱり・・・この方が・・・一刀殿が好きなのだ・・・”、と---
------3年間抱え続けた”難問”・・・その答えは・・・今・・・見つけることができた------
稟が一通り泣き終わり、一刀は稟を離して黙り続けていた少女の元に向かった
「・・・・・・桂花」
「ッ!?・・・・・・」
真名を呼ばれ、一瞬体を震わせたが黙ったまま俯いてしまう・・・
「桂花・・・」
一刀は心配して、桂花の顔を見ようとしたとき・・・
「・・・して・・・よ」
呟きが聞こえた
「桂花?」
「どう・・してよ」
今度は少し力のこもった強い声で・・・
そして、ついには吐き出す・・・彼女の抱えた”想い”を・・・
「どうしてッ!!あんたはッ!!・・・私たち”軍師”にッ!!何も言わなかったのよッ!!!!」
「ッ!?・・けい・・ふぁ・・・」
顔を上げた桂花の顔は・・・
「ッ・・・ッ・・・ッ・・・」
泣いていた・・・
泣き声を出さぬように・・・唇を噛み締めながら・・・
「頭悪いくせにッ!!!!」
全てをぶつける・・・・・・
「ない頭でッ!!一人で悩んでんじゃないわよッ!!!!」
桂花の抱えた想いは・・・
“怒り”・・・そして・・・”悔しさ”・・・
桂花は自分の”頭の良さ”を”誇り”に思っている・・・
稟や風、蜀の諸葛亮、呉の周瑜がいるものの、自分が一番であると信じている・・・
だからこそ・・・
一刀が・・・”魏の頭脳”である自分に何も言わずに・・・
一人で悩んで・・・
結果的に・・・
“消える”という結果を招いたことが・・・
------許せない------
そして同時に・・・
------悔しい------
「稟や風はあんたの残したものが”信頼の証”なんて言ってたけどねッ!!私は何にも言わずに消えたヤツの”信頼”だなんて信じられなかったッ!!!!」
確かに普段の自分の態度なら呆れられても仕方なかった・・・
それでも・・・
一刀はいつも言ってくれたのだ・・・
“信じている”、と・・・
「あんたは本当の意味でッ!!私たちを信じていなかったッ!!だから”男”は信用できないッ!!!最低なのよッ!!!!」
そこまで言って、桂花は俯いてしまう・・・
「「「「「「(・・・桂花)」」」」」」
「(・・・桂花ちゃん)」
周りにいた魏の将たちも驚いていた・・・
桂花が一刀を表向きには嫌っていても・・・
心の中では認めていたことは分かっていた・・・
しかし・・・その心が・・・
これほどの想いを抱えていたとは・・・
誰も気づけなかった・・・
「桂花・・・」
一刀自身も驚いていた・・・
そして・・・
何も言い返せなかった・・・
この娘の・・・桂花の言ってることは正しい・・・
「(くそッ!!俺ってヤツはッ!!!!」
自分自身への”怒り”がどうしても湧いてきてしまう・・・
自分を殺してやりたいぐらい・・・
それでも・・・
この娘の心に傷を負わせたという”罪”は償うことはできない・・・・・・
「(・・・じゃあ、どうすればいい?・・・)」
------答えは簡単だ・・・------
「(・・・これからの自分で・・・償っていくしかない・・・。それこそが俺が死ぬまで続く”罪”への”贖罪”)」
「桂花」
一刀は俯く桂花に近づき・・・抱きしめた・・・
「・・・はなし・・・なさい・・・よ・・」
発せられた言葉からは先ほどまでの力は感じられない・・・
「・・・桂花の言う通り・・・俺・・・最低だよ・・・」
自分の中の怒りを押さえ込みながら続ける・・・
「・・・桂花を・・・好きな娘を・・・3年も裏切ったままで・・・」
一刀の目からも涙が流れる・・・
「・・・信じてる・・・なんて・・・言いながら・・・」
「!?あ、あんたッ!?」
桂花も一刀が涙を流していることに気づく・・・
「・・・おれ・・・ほんと・・うに・・・さいてい・・・だよ・・・」
涙は溢れてくる・・・
それでも言わないといけない・・・
「・・・3ねんも・・・うそ・・・つきっぱなし・・・だったけど・・・」
流れる涙を拭う・・・・・・
「今度こそ・・・みんなを・・・本当の意味で”信じてる”って・・・”信じさせる”」
「・・・・・」
「都合のいい話に聞こえるだろう・・・それでもッ!・・・俺のことを信じてほしい・・・」
「・・・北郷」
桂花は一刀の顔から真剣さを感じた・・・
自分を責めているということも分かった・・・
何より・・・
------一刀の”想い”が伝わってきた------
だから桂花は言う・・・・・・
「だったら・・・」
あくまでも自分らしく
------”勝手にすればいいじゃない”------
と・・・
そして・・・伝える・・・
いや・・・おそらくは伝わらないだろう・・・
口の形を変えるだけで声は出さない・・・
一刀の耳元で紡いだ言葉は・・・・・・
------『おかえり』------
桂花が3年間抱えた想いは”怒り”と”悔しさ”だったはずだ・・・・・・
しかし・・・これもまた・・・
彼女の抱えた
------正直な”想い”------
説明 | ||
少し遅くなりましたけど、続編です。 3軍師の話になってます。 ホントは張3姉妹も再会させようかと思ったんですけど、話の流れ的に後にまわしました。 ってことで、5話も若干変更してます。 っと言っても、一刀に抱きつくシーンで人和が「一刀さん」って言ってるのを消しただけですけど・・・ 次回は洛陽への帰還です。 民とのふれあいも書きたいと思ってます。 あっ!?あと蜀と呉もね! |
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コメント | ||
あ。涙が自然にでたわ(motomaru) うわあああん(泣)(readman ) 久方ぶりに恋姫FFで泣けました;;(電撃お兄さん) もう、何も言えないっすわ。何度読んでも画面がぼやけます。次回更新、本気で期待してます。(悠なるかな) ツン100%の桂花が、デ・デレただと・・・(珠さん) highstaさんの文章の書き方がすごく読みやすくて引き込まれてしまった。 軍師たちと一刀のこれからの活躍に期待しています。(AI) 感動しました。(血染めの黒猫) やばいです;;更新が待ちどうしい!!!(リンドウ) あれ目の前が・・・(2828) 緊急洪水警報です、至急PC前から退避して下さい。(悠なるかな) この桂花は・・・ある意味誰よりも本音を一刀にぶつけた形なりますね・・・帰ってきたことの喜びと、黙って消えたときの悲しさが入り混じったストレートな言葉に感動しました!(kurei) どの娘も話のもっていき方が秀逸すぎます。私は風信者ですが、ここはもう全員イイ!(moki68k) ッッッッ!!!桂花が・・・デ・・・デレた・・・(空良) セルフモザイクとか金の掛からないモノ使わないでくださいよぅ・・・w(狐狗狸) 涙が! 稟のはひきょうです!(ゴリポン) あ、あの桂花がデレた・・・・・・だと・・・!?(JIN) まさか桂花がデレるとは、話うまいすね。(ルルーシュ) 涙が・・・涙が止まらないよ〜・・・ぐす・・・っぅ・・・(samidare) 前編の更新に今気づき、まとめてよませてもらいました …桂花…君でとどめささせてもらったよ。 マジ涙です。(よーぜふ) リョウさん> 狙ってるようなぁ〜ってかんじですね〜。桂花は最後って決めてました。(highsta) 桂花は予想外でしたが、うまいと思います。順番は狙いましたねw(KU−) 涙が・・・止まりません・・・うぅ・・・(水上桜花) highsta様…この順番は狙ってますか…?今…画面が見えない私ですが…風・稟・桂花の順番でこの内容は響きましたよ…素晴らしかった…ただそれだけです。(リョウ) 桂花だから罵倒するのかと思っていたが・・・デレた・・・(スーシャン) |
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