外史伝外伝 第八話『悲しみの一刀・哀しみのカズト』
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真・恋姫†無双 魏ルートアフター 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外史伝外伝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『外史伝エピソード零:鏡花水月編』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話『悲しみの一刀・哀しみのカズト』

 

 

 

 

 

 

 

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一刀と韓湘子の戦いは一刀の敗北に終わる

 

しかし、一刀を殺しきれなかった韓湘子は華琳を人質にとり、再戦を強要した

 

場所は、蜀領白帝城…

 

その白帝城は即日、韓湘子の手に落ちた

 

城にいた者達は城を追われ、城下に追い出された

 

劉備こと桃香は蜀兵を差し向けたが、韓湘子にかなうはずも無く

 

息をするまもなく瞬殺され、兵たちは命からがら逃げ帰った

 

そして、韓湘子は城全体に結界を張り、誰も入れぬようにした

 

 

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成都城

 

韓湘子に敗北した一刀は成都城で治療を受けていた

 

満身創痍といった感じのその姿は誰が見ても痛々しい

 

死ななかったのが奇跡のようなものだろうと医者は言っていた

 

一刀を心配した桃香たちは看病しようとしたが、医者により面会謝絶を受けてしまう

 

韓湘子の指定した日数は7日

 

其れまでに回復できる見込みは…ゼロ

 

一刀は二日後に目を覚ました

 

しかし、彼は失意に沈んでいた

 

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深夜

 

一刀の病室

 

 

 

「情けねぇ!!」

 

目が覚めた一刀は、壁を思いっきり殴りつけていた

 

ドガン!ガン!!

 

これで何度目だろうか?その手には血が滲んでいた

 

自分でも分からないくらい彼は自身を攻めていた

 

これで、華琳が帰ってくるはずも無いのに…

 

「華琳…俺は…」

 

コンコン

 

扉を叩く音が響く

 

「(こんな時間に誰だろう?

 

って!この手を見せるわけにはいかんぞ!!)」

 

一刀は血で染まった手を慌ててベッドにもぐって仕舞い、上半身を起こした状態になった

 

「(これでいい)

 

どうぞ」

 

ガチャ

 

「失礼いたします。一刀様」

 

扉から現れたのは、寝巻きを着た愛紗であった

 

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「愛紗…。どうしたの?」

 

愛紗は黙って一刀に近づくと、

 

「手を…見せてください」

 

「い…いやぁ、そのぉ」

 

一刀があたふたしていると、愛紗は一刀の手を布団のなかから引っ張り出した

 

血で染まったその手を…

 

「…ッ!!!」

 

「……これは、その…」

 

愛紗は手を離すと、一刀と目線を合わせるようにしゃがみ一刀を見つめる

 

「愛…し、わぷぅゃ!?」

 

一刀をその胸の中に抱きしめた

 

「……めないで」

 

「へ?」

 

愛紗は更に強く抱きしめる

 

「自分を攻めないで!

 

華琳を守れなかったとご自分を責めるのはおやめください!」

 

「愛紗。でも、俺は…」

 

愛紗はゆっくりと一刀を離すと、その手を握る

 

「一刀様はこの世界を守るために自分自身と戦ってくださいました。

 

きっと、華琳も誇りに思ってくれています。そして、貴方様を待っています。

 

ですから、皆で取り返しましょう。

 

相手が貴方様自身なら、貴方様が超えられぬはずありません。」

 

「俺が…あいつを超える!?」

 

「はい。」

 

「そんなこと…できるはずない。

 

あいつは、百年も自身を鍛えてきたって言うのに…」

 

ネガティブな思考に肺癆としていた一刀

 

そこに、更なる客が来た

 

「いや、諦めるのは早いぞ。北郷よ!」

 

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「あなたは、卑弥呼さん!?」

 

ムキムキマッチョの化け物こと、卑弥呼である

 

「どういうことだ?」

 

「うむ。関羽のいうとうりだと言う事じゃ。

 

あのホンゴウはお主の未来の姿といっても良いじゃろう

 

そして、あの力は間違いなく失われた禁忌の技…鏡花水月

 

かつて八仙と謳われた初代の呂厳洞賓が使ったといわれる幻の力じゃ

 

じゃが、ホンゴウがお主ならば…お主が勝てぬ理由も無いのじゃ。」

 

一刀は伏目がちに聞いた

 

「でも、どうすれば…」

 

「それについては明日、わしの口から皆に話す。

 

関羽よ。すまぬが、明日。

 

魏・呉・蜀の将たち集めておいてくれぬか?」

 

卑弥呼の頼みに頷く愛紗

 

「分かった。」

 

卑弥呼はうむと頷くと、部屋を出て行こうとする

 

しかし、

 

「卑弥呼さん。」

 

「うむ?」

 

一刀は、卑弥呼を呼び止めた

 

「助けていただいて…ありがとうございました」

 

「ふっ…。御主を見ておると、ダーリンを思い出すワイ…。

 

今は、ゆっくりと休むがよいぞ」

 

「はい」

 

卑弥呼は部屋を出て行った

 

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再び静寂が包む

 

「愛紗、すまないが…一人にしてもらえないか?」

 

泣きそうになる自分を抑え、愛紗に言う

 

「…泣いてもいいのですよ?」

 

愛紗にずばり指摘される一刀

 

「愛紗…。でも?」

 

「…一刀様。貴方様は私の第二の主様。

 

ですから、どうか私を頼ってください。」

 

愛紗はその大きな胸のなかに一刀を再び迎え入れた

 

「愛紗…」

 

「私は、貴方様のお力になりたいのです。

 

家臣としても…そして、女としても…」

 

一刀は愛紗を抱きしめ返すように抱きしめる

 

「悔しい…、愛紗…。

 

俺は、か・勝てな…かった!

 

華琳を……守れなか…った!」

 

一刀は愛紗の胸のなかで泣き続けた

 

愛紗は一刀の背中を撫でてやりながら優しく抱きしめる

 

「(あぁ、貴方を愛してよかった。

 

貴方の支えになれるなら、こんなに嬉しいことはない)

 

私は…貴方のお側にいますよ

 

だれが、なんと言おうと……」

 

愛紗はその心に強く刻む。

 

己の愛する男の弱さと、その強さを

 

そして、愛おしさを…

 

 

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同時刻

 

 

白帝城…玉座の間

 

 

 

曹操こと華琳は玉座に座らされていた

 

「なんのつもり?」

 

華琳は不機嫌そうに聞く

 

手枷足枷もされず、拘束もされていない

 

「…………カズトだ。」

 

彼女を見つめ、そう言った

 

「え?」

 

「オレの真名だ。

 

こんなことにキミを巻き込んでしまったせめてもの侘びだ…」

 

険しい顔…だけど、その瞳は哀しみを帯びている

 

「簡単に真名を!?」

 

「なぁ〜に…キミに呼ばれるのなら悪くは無い…」

 

華琳は韓湘子を睨みながら問うた

 

「では、カズト。

 

貴方は…本当に北郷一刀なのね?」

 

韓湘子はふっと笑う

 

「あぁ…。そうだ。

 

しかし…キミはそうして玉座に座っているのが、一番美しい。」

 

韓湘子は組んでいた腕を下ろす

 

「話をそらさないで…」

 

「おっと、すまん。

 

確かにオレはもともと、ホンゴウカズトと呼ばれていた。

 

そう…元は、な……」

 

「元?ってどういうこと?」

 

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「オレはな…曹操殿。

 

この世界とは、別の世界に降り立ち、三国を統一してしまった北郷一刀

 

その哀れな慣れのはてだ…」

 

「なんですって!?」

 

華琳は驚いた…

 

その役目は、自分のはず

 

なぜ、部下の一刀がそれをしているのか?

 

「………別の世界って言ったわね?

 

それって、どういうことかしら?

 

貴方は、私の部下では無かったってこと?」

 

韓湘子はコクリと頷く

 

「あぁ…。

 

オレが降り立った世界は劉備殿がいない世界だった

 

オレは、関羽と出会い…世を救ってくれと頼まれた。

 

そう、天の御遣いとして…な。」

 

「愛紗と!?」

 

韓湘子は更に続ける

 

「そうだ。オレは、公孫賛に世話になりながら力を蓄え、黄巾の乱に乗じて県令に成り上がった。

 

乱が終息すると、今度は董卓の討伐。

 

だが、それはオレの命を狙う左慈と干吉という神仙たちの罠だった

 

真実に気が付いたオレは、董卓と賈駆、呂布を味方に引き入れ董卓を打ったと偽の情報を天下に流した

 

そうして、しばらくは平穏を得ることができたが天下は戦国時代へと流れていった

 

そして、曹操…オレはキミとの戦に負けた。」

 

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華琳は驚きを隠せない

 

目の前のホンゴウカズトは王だった

 

しかも、自分と戦を交えたとも言う

 

「この私と戦って勝てるとでも思っていたの?」

 

「勝てるか、勝てないかの問題ではない。

 

オレは自分を慕うもの達のために戦いそして、負けた。

 

それだけだよ…

 

領土を失ったオレは蜀へと逃亡し、劉璋から土地を奪い三国鼎立をなし、キミの魏に対抗するために…孫呉と同盟を結んだ

 

そして、キミとの決戦は近づきつつあった

 

でも…

 

オレ達の決着は付くことは無かった」

 

「どういうこと?」

 

「さっきも言っただろう。

 

オレの命を狙う干吉という神仙がいたと…

 

奴は、キミを催眠術で操り…決戦を汚した

 

キミを救うために夏侯惇達はオレ達に下り、孫呉と協力して君を救出した」

 

「…私が…貴方に負けたの?」

 

「いや…アレでは決着は付いていない

 

キミは、自分を殺すように言ったが、オレにはそれはできなかった。

 

オレは城下での自由を与え、キミ達を捕虜として監禁した。

 

そして、その後孫呉とも戦を交えさせられた。

 

こいつもまた、干吉の仕業だったよ…

 

操られた周瑜は、自刃。孫権はオレ達に下った」

 

「では、別に問題は無いじゃない」

 

「いや…。

 

オレは…周瑜さんを救えなかった…

 

苦しみもがいていたはずの彼女を救えなかったんだ。」

 

韓湘子は無念そうに語り続ける

 

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「みなは、捕虜は殺せと言う。

 

でも、オレは殺すこと自体が…嫌だった。

 

だから、オレは…孫呉も曹魏も、その他の国々も…併呑こそしたが、生き残ったものは極力生かした。

 

生きていれば…必ず、報われるときが来る。

 

そして、平和な世をともに作り出せる。

 

そう信じていた。

 

三国を平定したオレは、孫権と曹操の力を借りながら世界をより良いものにしようと走り続けた

 

理想とは大きくかけ離れていったがそれでも確実にオレは皆と共に、世界を平和へと導いていった。

 

だけど…、そんな時、再び奴らが動き出した。

 

そう、左慈と干吉だ。」

 

韓湘子の顔が怒りに歪む

 

「奴らは…奴らは…オレ達の成した平和を土足で踏みにじった。

 

オレはやつ等と戦った。

 

愛する愛紗たちと共に…」

 

拳を握り締めながら無念そうに続ける

 

「だが、オレは間に合わなかったんだ。

 

奴らは不思議な力を持つ鏡を使い、オレ達の世界を破壊した」

 

「せ、世界を!?」

 

華琳は信じられないような口調だった

 

しかし、韓湘子の目はそれが真実だと告げる

 

「そうだ…。

 

守りたかった世界も守れなかった。

 

それどころか、恩義ある公孫賛も、愛した女達、救いを求めていた民達も守れなかった」

 

ふぅっと息をつく

 

「だが、たった一つ。

 

たった一つ、残ったものがあった

 

そう、愛紗だ…」

 

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韓湘子の顔は幸せだった頃を穏やかに語った

 

「オレは、彼女と共に新たな世界で暮らしていた

 

幸せだった…

 

平和な世界で、敵に怯えることなく、少年と少女として愛し合える

 

どんなに嬉しかったことか…どんなに幸せだったことか…

 

この幸せが永遠に続くものと…信じて疑わなかった

 

何も守れなかった愚かな男でも、この娘だけは守り抜こう

 

そう、誓っていた。

 

しかし、そんな幸せもすぐにくだけ散った。

 

奴ら…神仙たちが、その世界さへも破壊しようとしたのさ。

 

だから、オレは今度こそ皆を守るために…

 

正史の誘惑に乗り、自分の命を対価に世界と契約を交わした

 

この世界を救ってくれるのなら、オレの命をくれてやるってな…

 

たしかに、世界は愛紗を守った

 

だが、世界はオレを神仙と化し、使役し続けた

 

守りたかったはずの…世界たちを壊すために…な」

 

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「……!!」

 

華琳は絶句してしまう

 

彼は裏切られ続けた

 

まずは、理想に裏切られた…

 

次に、現実に裏切られた…

 

そして、戦をやめない人々に裏切られた…

 

このカズトはそうして全てを奪われ、それでもようやく手に入れた小さな幸せさへも

 

最後には、世界に裏切られ、奪われた

 

…守りたかったものを壊すために使役し続けられている。

 

なんて、哀しい存在なのか?

 

「貴方は皆の幸せのために戦い続けてきたのに…

 

最後には世界にまで、裏切られ続けたっていうの?

 

そんなの…。そんなことって!許されるはず無い!

 

貴方は、幸せになるべき人よ!!ホンゴウ!

 

世界の命令なんて、無視なさい!!!幸せになりなさい!!!

 

そして…、一刀と戦わないで…!

 

貴方も…一刀も…傷つけあう必要なんて無いじゃない!」

 

「それができたら…どんなに嬉しいことか」

 

韓湘子はポツリと答える

 

「え!?」

 

「既に・・・この身は、多くの罪に染まりすぎた。

 

なにより、世界には逆らえんし、オレは自分が許せない。

 

無関係なヤツを巻き込んでしまったことは、心が痛い。

 

だが、もはや之しか方法は無い。

 

正史の縛り、北郷一刀の存在、皆との絆それらの条件がすべてそろうなんてのは、奇跡だ。

 

次の機会なんて、恐らく永久に来ないだろう。

 

この機を逃すわけにはいかんのだ」

 

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マントを翻し、韓湘子は踵を返した

 

「客間の用意をしたから、好きに使ってくれ。

 

まぁ、オレの城ではないがな…

 

あぁ、食事も用意しておこう。

 

オレの手製で悪いがな…」

 

苦笑いを浮かべながら、玉座の間から出て行こうとする

 

 

「韓湘子」

 

 

「ん?」

 

 

「一つ聞かせて…孫権を操ってまで一刀を殺そうとした理由は?」

 

 

「ふっ…。オレは、孫権を操ってなどいない。」

 

 

「なんですって!?」

 

 

「オレはかつて愛した女を利用してまでヤツを殺すつもりは無い

 

 

いや、無かった…。今回も、キミを巻き込んだことには…心底後悔している」

 

 

その言葉には嘘が感じられなかった

 

 

そして、なにより…

 

 

本当に申し訳なさそうに話す韓湘子は、華琳に怒られている一刀そのものだったからだ

 

「では、誰が?」

 

 

「アレは…、ふっ、いいか。

 

 

ヤツとて哀れな男だ…。

 

 

恨みこそあれ、オレの計画には巻き込めなかった。

 

 

まぁ、兎に角、今日は寝なさい。

 

 

夜更かしは美容と健康に悪い…」

 

 

「ま、待ちなさい!」

 

 

華琳が声も空しく響いた

 

 

つづく

 

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あとがき

 

 

いかがだったでしょうか?

 

ホンゴウカズトこと韓湘子が自分を憎む理由をうまく表現できてますでしょうか?

 

ホンゴウカズトは純粋にただ大切なものを救いたい一心で戦い続け、そして全てを失ってしまいました。

 

それでも残ったものを守るために戦い続け、最後には自分自身さへ失ってしまいました。

 

神の如き力を得ても、誰も救えず…何も守れず…外史を壊し続けた結果、生まれたのが韓湘子なのです。

 

一刀は、そんな自分自身を止めることができるのでしょうか?

 

次回をお楽しみに!

 

(今日の一言:いやぁ…。暗い話って、案外難しいですね)

 

説明
第八話『悲しみの一刀・哀しみのカズト』です。
前回の戦いで韓湘子に敗れ、大切な者『華琳』を奪われた一刀は悲しみにくれる。自分を責め続ける一刀…
果たして、一刀は復活できるのでしょうか?
そして、韓湘子は華琳に真実を伝え始めます。
それでは、どうぞごゆっくりお楽しみください!

(皆様のご感想をお待ちしております)
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コメント
な、なんと!?韓湘子の過去にそんな事があったなんて・・・・。愛紗を一目見た時の心情、すごくつらく、悲しかっただろうな。二人の一刀は幸せになってほしいな。更新お疲れ様です(mighty)
巻き込みたくなかったといっていたけど、もしかしてカズトは一刀も本当は殺したくないし巻き込みたくないのでしょうか?いずれにしても悲しすぎるよ、カズトに幸あれ。(サイト)
人間にとって一番つらい物それは孤独だ・・・韓湘子にはもうそんな思いをして欲しくないな・・・もう十分だ!・・・幸あれ。 つか、しつこくてひどい奴らだってことは知ってたけどここまでとわなあの二人。(スターダスト)
(T_T)(滝涙)(JIN)
jackry様へ。彼らの行く先をどうか、見守ってやってください。(たっちゃん)
M2様へ。韓湘子の元ネタはアーチャー、その人なのです (たっちゃん)
カズト様へ。早速のコメントありがとうございます。韓湘子は救われるのでしょうか?次回をお楽しみに!(たっちゃん)
泣いちゃったじゃないか!!・・・韓湘子を誰か救ってやってくれーーー!!!!(スーシャン)
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