愛しい人6 月明かりに溢れる思い
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秋蘭と凪の会話も終わって一行は再び歩き出した。

三人は目隠しをしているため今どこへ向かっているかわかっていない。

一行の中からヒソヒソと声がする。

 

(なぁ沙和…さっきの秋蘭様と凪…すごかったな〜)

(ホントなの…私も負けてられないの!)

(おお!沙和も宣戦布告か!)

(でも…そこまで勇気ないの〜)

(なんや〜、でも負けられんなぁ…)

 

沙和と真桜は先ほどの秋蘭と凪の話を聞いてから何か思う所があったらしい。

二人も一刀を想う女の子なのだ。

負けられないという思いが芽生えていた。

 

(はぁ…秋蘭様…すごいなぁ)

(典韋様はいいのですか?)

(へっ!///)

(典韋様、かわいいですねぇ)

 

流琉は秋蘭の方を尊敬のまなざしで見る。

孫礼はそんな流琉の自分はいいのか?と聞いてみる。

 

「そういや…孫礼は何で目隠しせーへんの?」

「そういえばそうなの…」

 

真桜、沙和は孫礼に尋ねる。

 

「実は…私この事知ってたんです」

「なんや〜知っとったんかい」

「すみません…隊長に話さないでって、言われていたので…」

「そっか…まあええわ。かわりに後で隊長どついたろ!」

「そうするの〜!」

「あはは…」

 

真桜と沙和はすべてを一刀にぶつけようとする。

そんな二人に苦笑する孫礼だった。

 

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それから少し歩いた頃に秋蘭から声がかかった。

 

「着いたぞ、目隠しを取っていいぞ」

 

秋蘭の声に三人は恐る恐る目隠しを取る。

 

(まぶしい…)

(うっわっ…)

(あわわ…!)

 

近くに強い光源あるせいかかなりまぶしい。

目が光りに慣れていないせいか、その眩しさに三人は目をくらませてしまう。

目が慣れた出したころ、三人の目に入って来たのは…

 

 

 

 

 

 

 

『北郷隊結成一周年!!今までありがとう!そしてこれからもよろしく!!』

 

 

 

 

 

 

 

と書かれた幕だった。

 

「一周年…?」

「こっれて…」

「どういうことなの〜…?」

 

三人はまだちゃんと理解していないのか混乱している様子だった。

いまだに茫然としている凪、沙和、真桜だった。

 

「あら?見たままなのだけど?」

 

と声の方を見るとそこには華琳が立っていた。

周りを見てみると都にいる魏の武将・軍師(+張三姉妹)が勢ぞろいだった。

皆がそれぞれ凪達に祝いの言葉を叫んでいる。

 

(あれから…そんなに時間がたっていたのか…)

 

自分たちが華琳の部下となり、一刀と出会い、そして北郷隊の結成。

あの出会いからもう一年が過ぎていたのだと。

 

「おめでとう、凪、沙和、真桜」

「華琳様…ありがとうございます」

 

凪達は華琳にむかって礼を言う。

 

「私達のためにこのような席を用意していただいて…」

「ホンマ…ありがとうございます」

「ありがとうなの〜…」

「あら、用意したのは私じゃないわ」

「「「えっ!」」」

「私は協力しただけよ、あのお人よしのね」

「まさか…」

 

凪は周囲を見回す。

 

(あの人はどこだ?)

 

自分達を呼んだという本人がいない。

どこを探してもいない。

 

「華琳様!!隊長は、隊長はどこにいるんですか!!」

「そや!!どこにおるんや!」

「いないの〜!!」

「一刀は今少しはずしているわ」

 

一刀はここにいなかった。

北郷隊の隊長である本人がいない。

 

「隊長がいなければ我々だけで祝っても意味がありません!!」

「そや!」

「そうなの〜!」

 

凪達は華琳に詰め寄った。

華琳はやれやれといった顔で答えた。

 

「あの大バカは準備にはしゃぎすぎて梯子から落下してね…」

「梯子から…」と真桜と沙和が痛々しそうな顔になる。

「それで隊長は!」

 

心配な凪は華琳を問い詰める。

すると華琳は凪達の向こう側を見た。

 

「だそうよ、一刀」

 

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振り向く三人。

そこには一刀が立っていた。

頭と腹のあたりに包帯を巻き、足を痛めただろう杖をついていた。

そんな一刀を見て三人は駆け寄る。

 

「ごめんね、凪、沙和、真桜…俺が迎えに行こうかと思ったんだけど…うわ!!」

 

三人は一刀の言葉を待たずに飛びかかった。

怪我をしているのにもかかわらず。

最初に飛び込んだ凪は一刀の胸に飛び込みもう離さない、と言わんばかりに締め付けてきた。

真桜と沙和は左右から一刀の首に腕を巻くように抱きつく。

 

「凪!ちょっとそこは痛めててててててっ!!」

「たいちょう!!…たいちょう!!」

「このアホ!…心配かけんなや…」

「だぁいちょ〜うううぅぅ…」

「沙和も真桜もちょっとそこだめって!凪!それ以上やると中身があぁぁぁ!!」

 

一刀は物凄い勢いで絞め技を食らうかのようになっている。

技(?)を掛けている凪は怪我をしたことが心配なのか、この席を設けてくれたことが嬉しいのかどちらなのか分からないくらいに大泣きしている。

真桜は大泣きしないものの一刀をしっかりと抱きしめている。

沙和はもう泣き声で何が何だか分からない。

周りはその光景を自業自得と言わんばかり見つめており霞や春蘭、桂花などはもっとやれとあおっている。

そんな姿を孫礼は一刀に抱きつき泣きじゃくる三人を涙目で見つめている。

 

「三人とも、そろそろ感動の瞬間をやめないと一刀がほんとに死んでしまうわ」

 

そんなところをさすがに華琳は止めた。

慌てて三人は一刀から離れる。

一刀はか細い声で「お、遅い…」とつぶやき倒れた。

 

「あぁぁ〜!!隊長しっかり!!」

「こないなところで気絶すんな!!」

「たいちょう〜!!」

 

そこに華琳と春蘭が…

 

「一刀!目を覚ましなさい!!」

 

バシ!

 

「北郷!目を覚ませ!!」

 

ドバシィ!!!

二人による平手打ちが始まった。しかし…

 

「姉者…北郷の目が白くなってないか?」

「ああ!しまった!北郷!!起きろ〜!!」

 

バシバシバシバシ!!!

慌てた春蘭が早く目を覚まさせようと慌てて往復で平手打ちを始める。

 

「姉者!やめないと北郷が死ぬ!!」

 

秋蘭が止めたことによりなんとか死は免れた一刀だった。

それからすぐに『北郷隊一周年記念ぱーてぃー』は始まった。

 

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若干顔のはれた一刀が音頭をとる。

 

 

「みんな、集まってくれてありがとう!今日は北郷隊一周年を記念したパーティーだ。主役はもちろん俺の隊の凪、沙和、真桜の三人だ」

 

そんな一刀の紹介に凪は顔を赤らめ、真桜と沙和は笑顔で答えた。

 

「堅苦しい話は苦手だから話はここら辺にして今日は思いっきり楽しもう…凪、沙和、真桜…今まで俺を支えてくれてありがとう。では乾杯!」

「「「「カンパーイ!!」」」」

 

「よっしゃー!飲むでー!!」

「春蘭様!ご飯取りに行きましょう!」

「よし!行くぞ、季衣!」

「今日の料理は私と華琳様が用意しました」

「思う存分味わいなさい」

 

季衣と春蘭はさっそく料理を取りに行く。

そんな二人に流琉と華琳が料理の説明を始める。

料理の中には真っ赤な料理があった。

興味を持った春蘭と季衣が少し食べてみる。

 

「「辛―――い!!」」

「華琳様、なんですか!この料理、辛いです!」

「それは凪用の特別製よ」

「辛いよ〜!」

「ほら季衣…お水持って来たよ」

「ありがとう〜流琉〜」

(おいしいのに…)

 

案の定、春蘭と季衣があまりの辛さに悲鳴をあげていた。

同じものを食べながらそれを見た凪は若干残念そうだった。

 

「あぁ〜これ阿蘇阿蘇にのってたのと同じなの〜!」

「ホントだわ!」

 

沙和と地和、天和は甘味の所ではしゃいでいる。

 

「それは沙和さんがそういうのが好きだって聞いたんで作ってみました」

「流琉ちゃんありがとうなの〜!」

「沙和さん///くすぐったいです…」

 

沙和は流琉に抱きつき頬ずりしながら礼を言った。

 

「さぁ真桜!飲むで!」

「よっしゃ!姐さん、今日は付き合いますで〜!」

 

真桜は霞と酒を酌み交わしている。

 

「ほら北郷、一緒に飲まないか?」

「おっ!悪いね、秋蘭。そういえばさっきは凪達を連れて来てくれてありがとう」

「なに、その格好で行かれてもな…」

「ははッ。でもホントありがとう」

「なら礼としてしばらく酒に付き合ってくれ」

「おやすい御用だよ」

 

一刀は秋蘭と一緒に飲んでいるようだ。

 

 

他の面子もそれぞれで酒なり食事なり始め出した。

 

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時間も経ち、パーティーも半ばにさしかかったところで華琳が一刀に耳打ちした。

 

「一刀、『ご褒美』の用意は出来てるの?」

「ああ、バッチリだよ」

「じゃあ、そろそろじゃないかしら?」

「そうだな…」

「いったい何を用意したの?」

「秘密だよ」

 

そういって一刀は立ち上がる。

一刀は酔っている霞に抱きつかれて真っ赤になっている凪それを一緒に見て遊ぶ真桜、別の所で地和と最近の流行について話している沙和を呼んだ。

 

「隊長〜助けてください〜!!」

「何かあったん?」

「どうしたの〜?」

 

沙和、真桜は何事かと一刀に尋ね、凪は助けを求めた。

 

「霞、ごめんね。ちょっと凪に用があるんだ」

「なら…またあとでちょうだい♪」

「わかったよ」

「隊長!!」

 

霞は渋々凪を離した。

凪はまた霞に遊ばれるだろうことに気を落としてしまう。

それから一刀はパーティーから離れ、凪達を『ご褒美』の所へ案内する。

 

「今日華琳に言われて俺の仕事片付けてくれたんだったよね?」

「はぁ…しかし風様や稟様達に助けていただきまして…」

「でも俺の仕事をやってくれたことに変わりはないさ…そこでだ」

「「「「?」」」」

 

一刀は三人を奥の部屋に連れていく。

この日のために一刀は用意していたものがあった。

 

「これって…」

「あらま〜…」

「きれ〜…」

 

それはこの世界にない『着物』だった。

凪には白を。

真桜には紫。

沙和にはピンク。

柄に美しい桃の花やツツジの花等があしらわれている。

 

「隊長…これは?」

「俺の国にあった女性が着る服さ、祝い事に着ることが多い服だよ」

「きれー…」

「隊長私達のためにこんなものを…」

 

凪はまたその目を潤ませる。

 

「私は…自分勝手なはやとちりで隊長に手を挙げ怪我をさせたのに…」

「そうや!あれは隊長が悪いんや…」

「そーなの…」

「ごめんな…?三人にさびしい思いさせて…」

 

申し訳なさそうに謝る一刀。

凪達は再び謝る一刀に抱きつく。

今度は激しくなく、それであって強い思いのこもった抱擁だった。

一刀も三人の思いにこたえるように三人を抱きしめた。

 

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「実はこれ、まだ華琳たちにも教えていないんだ」

 

その発言を聞いた凪達は一刀の方を見る。

 

「隊長…それって大丈夫なん…?」

「…考えてなかった…」

 

三人は一刀の失態に苦笑いしてしまう。

今日は良いとしてその後どうなるかわかったものじゃない。

特に華琳は新しいものに目が無い。

一刀の世界の物となればなおさらだ。

 

「…隊長、無事を祈ってます…」

「隊長、いままでありがとな…」

「短い間だったの〜」

「俺は死ぬこと確定か!」

 

さっきとは打って変わって三人は一刀を悲しい目で見る

そんな視線に叫ぶ一刀だった。

そして凪達はとりあえず着ようと始めた時、気付いた。

 

「…隊長、どうやって着るんですか?」

 

さすがにわからなかったようだ。

すると一刀の姿が無い。

 

「隊長…?どこですか!?」

 

三人があたりを見回す。

するとついたての向こう側から声がした。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

しばらくして一刀が出てきた。

 

「悪い、さすがに着替えてるとこにはいられないだろ」

 

そこに現れて一刀はさっきと違う格好だった。

凪達が着ようとしている服とよく似ているが少し違う。

 

 

「これも俺の国の服だよ」

 

一刀は紋付き袴まで作っていた。

腰には木刀がつけてある。

 

「久々に着たよ…昔は爺さんによく着させられたからな…」

「「「…」」」

「どうしたんだ?」

「いっいえ!///」

「なんでもない!///」

「そう!なんでもないの!///」

「?」

 

三人はいつもと違う一刀の姿に見惚れてしまっていた。

思わず顔を真っ赤にしてしまう。

 

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一刀はとりあえず着物の着方を知っているだけ教えた。

なおこれは祖父から教わったものだった。

なぜ祖父が知っているかは謎だった。

 

「隊長…こうですか?///」

「おお!」

 

一刀は着つけの終わった三人を見た。

それは思わず声を挙げるほどにあっていた。

 

「変…ではありませんか…?」

「何言ってるの凪ちゃん!」

「自分たちで言うのもなんやけど、こらいいなあ!」

 

一刀は心の中で叫ぶ。

 

 

グッジョブ!俺!

 

 

「じゃあ三人とも、そろそろ戻るか!」

「えっ…」

 

凪は声を挙げる。

 

「隊長!ダメです!恥ずかしすぎます!///」

「良いじゃないか凪!似合ってるって!」

「でも…///」

(ええやんか凪〜、ここでついでに秋蘭様の時と同じように隊長は自分の物宣言や!!)

(ってなぜそうなる!)

(凪ちゃんボヤボヤしてると取られちゃうの〜)

(うぅ…///)

 

沙和と真桜は凪の肩をつかみ、耳元でしゃべる。

真桜と沙和は見せることには全く恥ずかしさはないようだ。

凪は顔をこれでもかと真っ赤にしてしまっいる。

 

「さて、そろそろ華琳たちを待たせるのも悪いな…」

「よっしゃ!いくでー!」

「おー!」

「おー…」

 

沙和、真桜は元気よく声をあげ、凪は同意しないもの声をあげた

一刀と三人は華琳たちのいる部屋へたどりついた。

広間ではいまだにパーティーは続いていたが主催者と主役が中々戻ってこないことに不満の声が出ていた。

 

「悪い!遅れた!」

「遅いわよ、かずとなにをし…て…」

「どこいっとたん…や」

「…ほう、これは…」

 

広間にいる全員の視線が一刀と凪達の方を見る。

誰も声を挙げず静けさが広まる。

 

(ほら!やっぱり駄目なんだ!)

(そんなこと無いって!)

(そやそや)

(大丈夫なの〜)

 

「一刀…」

「どうした…?霞?」

 

霞がこっちにどんどん近付いてくる。

一刀は何事かと思ったその時。

 

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「なんやこれめっちゃかわいいやん!!おっしゃー!もちかえりやぁー!!」

「って霞様!?ちょっとやめ…!真桜!助けて!」

「あー…凪、ごめん。無理や」

「薄情者〜!!」

 

凪は隣にいた真桜に助けを求めるも拒否された。

止めに入った時のことを考えたのか手を貸すのを止めた。

霞が行動したのをかわきりに、さらに人が集まってくる。

 

「何その服!私もほしい!」

「いいなぁ〜私もほしいなぁ〜」

「地和ちゃん天和ちゃん、ひっぱらないでなの〜!///」

「もう姉さん達ったら…」(一刀さんから貰ったのかしら…)

 

沙和には張三姉妹が囲んでしまった。

姉二人はものほしそうに触ったり眺めたりしている。

そんな姉二人を人和は呆れ顔で見ているが心の中では羨ましそうにしている。

 

「一刀…これはどーゆーことかしら…!」

「かっ華琳…どうしたんですか…って春蘭に秋蘭まで!」

「そうだじょ〜ほんごう…!」

「…さて、話してもらおうか?」

 

一刀は華琳と秋蘭に酔った猫化春蘭が囲んでいる。

着物のことを教えなかったことに怒っているようだ。

 

「あとできっちり話してもらいましょうか?」

「…はい」

 

「おや〜お兄さんが着てる服…霞ちゃんが着ているのと似てますねぇ。どう思います?稟ちゃん」

「一刀殿の…たしかにそうですね…」

「兄ちゃん似合う〜、かっこいいよ!ねぇ流琉!」

「ホント兄さま、かっこいいです…」

「ふん!あんなの似合ってるわけないじゃない!」

「荀ケ様、顔赤いです…」

 

遠目に風と稟は一刀の袴を観察し季衣と流琉は一刀の格好をほめている。

桂花はさっそく一刀を罵るが孫礼に突っ込まれた。

 

それから宴は滞りなく続いた。

張三姉妹による歌に盛り上がり、秋蘭の弓による演武に華琳の詩、一刀が凪達にせがまれて見せた剣道の型に居合いの型までも催された。

 

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夜も遅くなった頃、一刀は一人で月を見ながら酒を飲んでいた。

流琉や季衣は広間の隅に一緒になって寝ている。

そばには秋蘭が柱にもたれながら眠っている。

春蘭は霞と共に途中で飲み比べを始め今では大の字で寝転がっている。

時折変な寝言が聞こえてるが一刀は聞かなかったことにする。

軍師三人もだいぶ飲んでいたのか風は眠る稟のそばに猫のように丸まって寝ていた。

その少し離れた所で桂花が猫耳の頭巾を取って寝転んでいる。

真桜と沙和も一刀の後ろの戸に寄りかかって眠っている。

そんな彼女らの姿を見て一刀は微笑む。

 

「今日はどうだったかしら?」

「華琳…うん、よかったと思うよ」

「そう…」

 

広間の中から華琳がやって来た。

華琳が一刀のそばに寄りかかる。

 

「あの服」

「ん?」

「私も欲しいわ」

「そっか…わかった、準備しとくよ」

「約束よ」

 

すると華琳は立ち上がった。

 

「華琳?」

(今日の主役はあの子達よね…)

「…?」

「一刀」

「ああ」

「私もそろそろ眠るわ…酒がまわっているみたい」

「大丈夫か?」

「…大丈夫よ」

 

そして華琳はしばらく歩き一刀の方を振り向いた。

 

「…その格好、似合っているわよ///」

「…ありがとう、華琳」

 

華琳は振り向き廊下を歩いていく。

一刀の居た場所から離れてすぐ柱の陰の方を向いた。

 

「今はあなたの物よ…凪」

「…///」

 

柱の陰に隠れていた凪に声をかけた。

 

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「華琳様…」

「どうしたの?」

「よろしいのですか?」

 

凪は不安げな顔を華琳に向けた。

華琳も凪と同じく一刀を愛している。

華琳に臣下の礼を取っている身として引け目を感じているらしい。

 

「ご褒美と言ったでしょ?」

「しかし…」

 

それでも凪は華琳の方を向く。

そんな凪に華琳は言う。

 

「あなたは私の部下である前に…女の子なのよ」

「女の…子」

「だったらもっと正直でいなさい…そのほうがかわいいわよ」

「かわっ…!」

「あら?良い反応ね…今度いっしょに…」

 

華琳の目の色が怪しく変化する。

その目を見た凪は身の危険を感じる。

 

「いえ!遠慮しておきます!」

「あら、残念」

 

華琳は実に残念そうな顔をした。

 

「では行ってらっしゃい、一刀の所へ…」

「…ハイ///」

 

凪は顔を赤くして頭を下げた。

 

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凪は廊下を出た先で広間の前の縁側で座っている一刀を見つけた。

一刀は月を見ながら酒を飲んでいる。

その顔にはどこか遠い所を見るような雰囲気を醸し出していた。

懐かしさ、寂しさ…そんな雰囲気だった。

そんな一刀の横顔を見て凪は何故かわからないが不安を感じる。

まるで月の光を浴びて消えてしまいそうな。

 

(隊長!)

 

凪は一刀に駆け寄った。

着物を着ているため上手く走れない。

思うほど近付かない距離を凪はもどかしく思う。

やっと凪は一刀にたどりつく。

 

「隊長!!」

「わ!って凪…どうしたの?そんな大きい声出しちゃうとみんな起きちゃうって…」

「すみません…」

 

凪は一刀に抱きつく。

その顔には不安が浮かんでいる。

一刀は笑顔で凪を見る。

その顔にはさっきまでの、さびしそうな雰囲気は無かった。

 

「どうしたの?凪?」

「…」

「話したくないなら良いんだけど…」

 

一刀は凪に優しく語りかける。

凪は不安を浮かばせながら聞く。

 

「隊長は…どこにも行かないですよね?」

「凪…?」

「ずっと…私達の隊長ですよね…?」

「…うん」

 

凪の顔から不安の色が消える。

不安の消えた凪を見て一刀は笑顔になる。

 

「隊長…もう少し、このままでいいですか?」

「どうしたの?」

「いえ…」

「…?」

「隊長…この服、ありがとうございます」

「お礼なんていいよ」

「…(スッ)」

「…ん?」

 

凪は抱きつくのをやめ、一刀の肩に寄りかかる。

その顔はほんのり赤くなっていた。

顔の赤い凪は目線を少し上に向けてみる。

視界に入ったのは一刀の赤く染まった頬だった。

そんな一刀を見て凪はほほえましくなる。

 

「…ふふっ」

「どうしたんだ?」

「隊長、顔赤いです」

「なっ!…凪だって…///」

「はい…///」

 

凪に言われて一刀はますます赤くなってしまう。

そんな一刀に凪はうれしくなる。

自分で顔を赤くしている。

自分を意識してくれている。

自分を思ってくれている。

そう思うとますます嬉しくなる。

 

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「隊長…今日はありがとうございました」

「いつも世話になっているからね」

「あと…殴っちゃって、すみません///」

「あれは俺が悪いさ…みんなに黙っていたからね」

 

そんな一刀の言葉に凪は首を振る。

 

「違うんです。」

「…?」

「あれは…隊長が、他の女性と一緒に居るのを見るのが嫌だったんです…。隊長が秋蘭様と、春蘭様と、稟様と、風様と、流琉様と、季衣様と、天和と、地和と、人和と、孫礼と…華琳様と…一緒にいて親しげに話しているところを見ているのが、嫌だったのです」

「…」

 

一刀は黙って聞いていた。

今、何も言うべきではないと。

ただ黙って凪の思いを聞く。

 

「嫉妬、だったんです…おかしいですよね」

 

凪は恥ずかしそうに笑う。

自分が、そんなことで手をあげたことに恥ずかしさがあった。

 

「そんなことないさ」

「隊長…」

「俺を思ってくれたんだろう?…男なら嬉しい限りだよ」

 

一刀は凪の方を見る。

 

「それに…凪の知らない一面を見れたと思う…嫉妬する凪も、かわいいよ」

「…///」

 

凪はかわいいと言われたせいか顔をさらに赤くさせた。

すると凪は頭を肩から胸元へと移す。

 

「そんなこと言って…他の女性にも言っているのではないのですか?」

「う…」

「否定してくださいよ、もう…」

 

凪は顔を少し膨れさせる。

そして凪は顔をあげ一刀を見た。

一刀の瞳の中に凪が映る。

 

(なんか…今日の凪はちょっと、大胆だなぁ…///)

 

一刀はそんなことを考える。

 

(隊長は自分の物…か///)

 

凪は少し考えた後、自分の思いを実行に移す。

 

 

 

 

 

一刀は当然、目の前が真っ暗になってしまう。

目の前に凪の手が置かれていた。

 

「わっ!どうしたんだ!?な…」

 

その時、月の光に映る一刀と凪の影が重なる。

一刀は口には柔らかな感触を感じる。

 

「…///」

「ンッ…///」

 

一刀は不意に目の前が明るくなる。

同時に口からなにかが離れるのを感じた。

 

「な、凪…」

「ふふふ…///」

 

凪が赤い顔で優しく笑う。

 

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「私は貴方が好きです…

 

 

 

 

 

 

 

北郷一刀…///」

 

 

 

 

 

月明りがまぶしい中

 

凪は自分のありったけの真っ白な思いを唇と言葉にのせて一刀に告げた。

 

-14ページ-

 

 

凪と一刀が月の光に浮かぶ中、口づけを交わす。

そんな後ろでは…

 

(((おおお〜!)))

と声を小さくあげる張三姉妹。

(隊長…)

と心の中で思う孫礼。

(凪め…宣戦布告に先手必勝か…)

と先手を打たれた秋蘭。

(かじゅと〜…)

と悔しそうにしている猫春蘭。

(うっわ〜…もう凪はホントかわええわ〜///)

凪の新たなかわいさを見つけてもだえる霞。

(大胆ですね〜、む〜…)

少し不機嫌な風。

(凪殿が、か、一刀殿と…ブフッ!)

凪の行為を見て鼻血を流す稟。

(あの子!!あんなヤツと…!)

と思っている桂花。

(凪さん大胆〜…///)

と顔を赤くして言う流琉と。

(すごいね〜流琉…///)

同じく顔を赤くして同意する季衣。

(よっしゃ!!凪!ようやった!!)

(凪ちゃん頑張ったの〜)

と凪の成長を喜ぶ真桜に沙和。

(ホントかわいいわね…///)

と今度こそ凪を閨にと誓う華琳。

などとしっかり野次馬に見られ、聞かれている凪と一刀だった。

 

-15ページ-

完成しました…いろいろと弄った結果…8000文字超えました。

 

まぁこのままのせることにしますが…

 

さて今回で一刀の隠し事が分かったはずです。

 

北郷隊1周年記念日。これを祝うために隠していたのです。

 

あ、そんなことかと思った方、期待させて申し訳ありません。

 

想像力薄い自分ではこれが限界でした。

 

まぁ結果的には凪をあんな風にしてみたかったってのが本音です。

 

そのためにいろいろとうろうろさせましたが…いかがでしたでしょうか?

 

一応これでこのシリーズ…終了?となります。

 

いままでコメントくださった方、読んでくださった方。

 

ホントありがとうございました。

 

なお1周年としていますが本編の時間軸としてはまだ赤壁の前ぐらいです。

 

この世界の時間はどう流れてんだか…

 

説明
できました…
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コメント
更新お疲れ様です。 そして、この後三人は逆に一刀を食べちゃうんですね(w  それにしても、あの三人に浴衣……補正が大変そうですよねぇ。 体格的に華琳や稟や風を初めとする困ったちゃん組には似合いそうですけど(w(うたまる)
3P目、一刀に抱きつき泣きじゃくる三人の姿を、孫礼も涙目で見つめていたのほうが通りやすいかなーと思いました(kirikami)
motomaruさん>可愛くできましたか?今度は誰を…秋蘭とか?(同人円文)
hishigi04さん>度々報告ありがとうございます。もう自己嫌悪の域に…次回は何もないように頑張ります。 ちなみに人間は最初と最後の文字があっていれば文章として読めるそうです。およはうとかこちんはとか。(同人円文)
まーーーーじーーーーでーーーーーカーーーーわーーーいーーーーいーー!!!(motomaru)
p12,ですかですかになってる所がありますね・・・何度も読んでいるのになんで気付かなかったんだろう・・・。次回作期待しています。(hishigi04)
hishigi04さん>報告ありがとうございます。何度か確認したはずなんですがうまくいかんですね…。 これからも凪を可愛くしていきたいです!(同人円文)
誤字報告。p5、沙和を読んだ→呼んだ。いやーそれにしても凪はホント可愛いですね。(hishigi04)
サイトさん>今回、凪には素直になってもらいました(笑)凪、可愛いですよね凪(エンドレス)(同人円文)
素直に甘える凪も可愛いよ、凪、可愛いよ凪(以下エンドレス)(サイト)
jackryさん>ありがとうございます。そこまで言っていただけるとは…可愛くできて何よりです。(同人円文)
よーぜふさん>ありがとうございます。凪は今回少し大胆にしてみました。凪いいですよね。(同人円文)
kureiさん>やっぱあそこで誰かが見てるって状況が定番でしょうね、その後ネタにされる…(笑)(同人円文)
お疲れさまです。なにはともあれグッジョブ、一刀! 猫春蘭もいいけど凪最高!(よーぜふ)
全部丸く収まってよかったです!凪は可愛すぎw最後のオチはもはや仕様!w(kurei)
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