輪・恋姫†無双 二十三話 |
「「ただいま〜」」
「あ、祐一さんにあゆさん…」
「おかえりと出迎えてくれないと祐ちゃん泣いちゃうぞ、雛さんや。」
「ちゃ…ちゃんと呼んでください…」
あわあわしている雛里から散歩中の軍議で決定した内容を聞きだす。
それを軽くまとめると以下のようになる。
劉備軍先陣。公孫賛軍と共闘。総大将袁紹。作戦、雄々しく、勇ましく、華麗に進軍。
最後に関してはボケだと断言してくれるなら、きっとそいつとはウマが合うかもしれないな〜と遠い眼をしながらぼやく祐一。
聞こえていたのか雛里のジト目は半端じゃない。
「いや、まぁ、マジなら笑い事じゃないが。」
一応言い訳を加えてから、残る疑問をぶつける。
「んで、公孫賛って誰?」
「「ええ!?」」
「なっ!?あゆまでその反応なのか!?」
「…というか私たちが初めて会ったところは公孫賛様の領内だったんですけど……桃香様の御学友でもあり、桃香様たちは一時期公孫賛様のところで客将をされていたこともあるそうです。」
「…や、待て。じゃあれか?指揮権とか向こうに持ってかれるの?」
「それは…会って話してみないと何とも…」
「最悪、俺とあゆが自由に動けるようにしてほしいんだが。」
「はい、一応言っておきます。…でも……」
「?雛里さん?なんか拙いの?」
すこし言い淀む雛里を見て、あゆが聞く。
「たとえ私たちの間でどう決まろうと、祐一さんとあゆさんは動くんですよね?」
「……悪いな。我がまま言って。」
「っ!い…いえ、大丈夫です?」
「……なんか祐一君がすっごく優しい笑顔だよ…いいなぁ雛里さん…うぐぅ…」
水関、虎牢関を通って王都洛陽へと向かう最中。
董卓軍の主だった将は飛将軍・呂布、神速の張遼、黄巾党の乱での出撃回数最多記録保持者・華雄。
最初の関である水関には華雄が詰めているらしい。
そして、なぜか袁術が先行して勝手に軍を動かした。
その先鋒は孫の旗らしい。深読みするまでもなく孫策たちだろう。
そんな情報が、公孫賛とその客将である趙雲と親睦を深めるべく行軍中に語らっている最中に、曹操から届いた。
「で、どう思う?これ。」
「罠ということはないのではないかと思います。曹操さんは野心の塊のような方ですが、味方の足を引っ張って評判を落とすようなことをするとも思えません。」
「我らの方で確信した情報でも、孫策が水関の攻略に失敗したことは確認が取れている。偽の情報だということはないだろう。」
公孫賛の客将に趙雲が居ると聞いた時の祐一の驚きはなかなか大きかった。
劉備の子供を敵陣から救い出したという逸話のイメージが大きく、それ以前にどこかの陣営に入っていたなどとは、三国志に対して興味を抱いていなかった祐一は考えていなかったからだろう。
ふむ、一つ賢くなったと頷いて、そもそもこの世界が厳密に三国志を再現しているわけではないことは意図的に無視した。
だいたい何でもう肉まんがあるんだ。南蛮遠征時の食料として、諸葛亮が考案したんじゃなかったのか。何の目的で誰が考案したんだ、この世界の肉まんは。
と、思考が完全に無関係な方向に流れていることに気がついて意識を現実に戻す。
とりあえず、場の雰囲気的には曹操からの情報は信頼するに値するが、自前で偵察も送るというあたりに落ち着いたらしい。
「華雄だっけ?水関の将。どうすんだ?真正面から城攻めするの?」
「いえ、なんとかして砦から出てきてもらいたいんですが……」
「罵倒なり挑発なりして関から攻めに来てもらおう、というわけだな?」
「はい、関に籠られているよりはやりようがありますし。ですが、全軍火の球で攻めてくる華雄将軍を受け止めるのも私たちの役目なので……」
「ふむ、ならば相手が出てきたときの対処法はどうする?」
「突撃、粉砕、勝利なのだ!」
「鈴々、頼むから鈴々の能力を基準にして発言するのはやめてくれ。俺なんかはそんな命令受けたら寿命が縮む。」
元気よく答えた鈴々にかなり切実そうに訴えかける祐一。いまいちピンと来ていない様子の鈴々に若干恐ろしいものを感じつつ、
「……袁紹さんの作戦を聞いてウマが合うかもとか言った祐一さんがいう台詞じゃないですよ。」
予想外の所から攻撃を受けた。
「……おや、ミッシー、あの会話聞いてたのか……やらかしたな…」
「祐一さん、ミッシーは止めてくださいと何度言えばいいんですか?」
「おやおや美汐さんや?その手に持ったものは何ですか?」
「知りたければ一度おとなしく殴られてください。」
「あ、あのっ!話を戻していいですか?」
作戦の話から随分離れてしまっていることに気づいた朱里が強引に話を戻して、再び作戦会議に戻る。
「基本的な作戦としては、突出してくる部隊を半包囲して兵を削る、というあたりですね。」
「もう一つの方法としては、華雄さんの部隊を袁紹さんになすりつけるとか……」
「え?そんなことできるの?」
「私たちの部隊の後には中軍として袁紹さんの部隊が控えているので、押し込まれたふりをして後退すれば可能だと思います。」
「……それはなかなか素敵な案だな……公孫賛さんと趙雲さんは?」
「私はありだと思うぞ?麗羽への意趣返しにもなるし。」
「ああ、ありですな。」
残った面々もみな一様に賛同する。
「それでは、具体的な作戦を説明します…」
魔女のような帽子のつばで顔を隠すようにして、雛里が作戦の内容を語る。
作戦の内容が一通り説明されたあとに桃香がそれぞれ役割を決めていく。
「じゃあ、愛紗ちゃんと星ちゃんは先陣の先陣をお願いしていい?」
「ふっ…やってみましょう。」
「お任せください、桃香さま。」
「雛里ちゃんと朱里ちゃんは二人の補佐をお願い。私と白蓮ちゃんは本陣で崩れてくる愛紗ちゃんたちを援護できるようにして…」
「お姉ちゃん、鈴々は〜?」
いかにも、先陣で暴れたいです!なオーラを出しながら質問してくる鈴々に、返事をしたのは桃香ではなく祐一だった。
「鈴々はあれだよ、スーパーマンだよ。」
「お、お兄ちゃん、それ、なんなのだ?なんか凄そうなのだ…」
「敵の追撃を受けながらもなんとか撤退する愛紗たち、そこに本陣を率いて颯爽と窮地を救う鈴々…!!」
食い付きが良かったことに安堵しつつ、この上ないほどに熱く、オーバーすぎるほどの身振り手振りを混ぜながら語る。
「か、かっくいいのだ〜…」
「つーわけで鈴々、本陣よろしく。ついでに桃香の警護も。」
「任せるのだ!!」
元気よく返事をした鈴々に大げさに頷きながら、すぐ隣にいる朱里に小声で確認する。
「……これで問題ないよな朱里?」
「……はい、祐一さんは本当に口八丁ですね…鈴々ちゃん、本陣で待機だってこと気づいてないんじゃないですか?」
「……いや、いくら鈴々でもそれはないだろ…」
「それで、相沢はどうするんだ?私たちと一緒に本陣か?それとも先陣?」
ふと思い出したようにされた質問に、キラリと目を光らせて反応する祐一。
「相沢だなんて他人行儀な!祐一と、いやむしろ祐ちゃんと呼んでくれ公孫賛さん!そして、なんかもう、すぐにでも先陣に走っていきそうなそこの趙雲さんも!!」
「いいのか?真名だろ?それ。」
「ふっ…真名を預けられぬものに背中を預ける気はない!!………とか偉そうなことを言いつつも、文化圏が違うせいか真名の慣習がなかったりするんだな、これが。まあ親からもらった名前は祐
一だけであることは胸張って言えるが。」
「そうか…わかった。私の真名は白蓮だ。宜しく頼むぞ、祐一。」
「ふむ。ならば我が真名も預けよう。私の真名は星という。」
「おう!よろしくな、白蓮、星!」
「それで、祐一は結局どうするんだ?」
「俺か?俺は……」
悪戯を仕掛けるときのような笑みを浮かべて答える。
「遊撃隊だ。」
説明 | ||
二十三話投稿です。 なんか三週間くらい更新が止まってしまっていました。 去年の感覚ではもっと大学行ってても余裕があったのに…… はたしてどれだけの方が拙作の更新を待ってくださっているかは別にして、何も言わずに更新をやめることはないようにしたいです。 |
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コメント | ||
K2様 どうしましょうか……。一応“祐一”はすでにタグで入れているんですが……このテの祐一君はローマ字表記の方がしっくりくるんですかね?タグに入れるかどうかは気分しだいです。あまり期待はしないでお待ちください。(柏葉端) タグにYUICHIを追加すべきと思いました♪(K2) レイン様 どうもありがとうございます。執筆頑張ります!そうです。『彼女』は出てきてもちゃんと好物を食べられるんです!…お茶菓子とかもあるくらいだから、砂糖なんかもちゃんとイメージ通りのものがあるでしょうし、作れそうですね。ジャム。でもアイスはさすがに…冷蔵庫もないですし………謎パワーで冷やす?…シャレにならない…。(柏葉端) 追伸:書き忘れていましたが、更新はずっとお待ちしておりますよ〜(遅っ!?)追伸の追伸:ぢゃm…じゃなかった(汗)ジャムやアイスクリーム等、この『外史』で再現不可能っぽいモノでも『あの女性』なら出来ると感じたのは私だけでしょうかね?…確か、料理は最初から『ほとんど』手作りしてましたよね?彼女…(レイン) 元の世界で面識が無くても、祐一君とkanonヒロインのフラグは不滅のようで、あゆちゃんのちょっとした嫉妬にほのぼのと…まぁ、食べ物についてはラーメンもあるし、当時の中国大陸に無いもの多いですよ。だから肉まんに驚いちゃいけませんぜ…んっ?肉まん…そうかっ!『彼女』は出ても無問題なのか…さて祐一君が遊撃隊とな?華雄さん達の命運や如何に!?(レイン) |
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