東倣麗夜奏 2話 |
東倣麗夜奏 〜 Phantasmagoria of Nostalgic Flower.
楽園の外に棲む妖怪達による些細な話。
2話
樹海にある小さな屋敷。
長い間、来客とはほぼ無縁だったが最近はそうでも無くなっていた。
屋敷の主の式である七椿奏は、主が遠出するようになった分
暇になると考えていたが実際は以前よりも少しだけ忙しくなったようである。
今日はまだ誰も来ていないようだが、来客は大抵妖怪なので
何時何処からやって来てもおかしく無いのが困りものだ。
奏 「そろそろ、色んなものが出る季節ね。
色んなものが出る季節には色んな対策をしなければいけないわ。
・・・最近は妖怪も出るけど。」
梅雨の近い季節、今日の樹海は深い霧に包まれていた。
これに加えて前日の雨とすっきりしない天気が屋敷の湿度を高めている。
古い屋敷だが内部は何度か改装され、見た目とは裏腹に現代的である。
それでも一部老朽化した部分には湿度と気温の上昇と共に不愉快なものが
沸いてくるだろう。
奏 「うーん、微妙な気温だわ。
除湿なんてすると寒いわ、少しでも厚着すると暑いわ・・・
でもジメジメしてるとねえ・・・」
奏が除湿機のリモコンと睨み合いをしていると、背後からプツンという音と共に
部屋が少しだけ光ったような気がした。
奏 「んー? 今日は雷なんて来ないはずなんだけど・・・」
妙な音がしたのは後ろにあるテレビからのようだったが、電源は入っていなかった。
奏 「おかしいわね。 テレビを消したときみたいな音だったんだけど。
特に何も無いし・・・ 妙だわ。」
奏は部屋の中を見渡してみたが、見た目は何も変わった所は無い。
しかし、部屋には妙な気配があった。
部屋の中で電源の入っている家電はお湯のポットくらいだが、部屋の家電全ての
電源が入ったかのような、変な感覚がした。
奏 「!?」
奏が警戒していると、電源の入っていないテレビに突然砂嵐の画面が現れのだ。
驚いた様子でテレビの画面を見ていると、どこからか声が聞こえてきた。
? 「きゃはは、驚いた驚いた。 人間の作った道具で驚くなんてまだまだね。」
奏 「いくら最近客が多いからといっても、直接部屋に現れるなんて
思って無かったわ。 ところで誰?」
? 「名乗るほどのものでもない、通りすがりの妖精ですわ。
いや、こんな場所に家があったから珍しくて寄ってみたのよー。
そしたら、妖怪の家だったっていう。」
奏 「妖精とな。 話のできる妖精なんてまだいたのね。
この辺りの妖精は話もできないくらい元気が無くてねぇ。
あんたみたいなのを見たのは、いつ以来だったか・・・」
妖精 「互いに珍しいのを見ちゃった感じだわー。」
奏 「まあゆっくりしていくが良い。 急な来客はもう慣れっこだし。」
妖精 「あら、これはどうも。
ところで来客ってもしかして・・・妖怪?」
妖精が言うには、話の出来るくらい元気な妖怪を見たことが無いという。
妖精 「えっ、そんなに妖怪が来るの?
寝てるばっかで動いてる妖怪なんてもういないかと思っていたのに。」
奏 「あー、うちの主もそんな感じだったわー。 でも最近、急に活発になってねぇ。
それに釣られたのか、この辺りじゃ活発な妖怪が少なく無いわ。」
妖精 「そうだったのね、ここに来れば何だか楽しいことが起こりそう!」
妖精は妖怪を避けるものだと思っていたが、この妖精の場合そうでも無いようだ。
単純に力があるのか、世間知らずなのか、そこまで考える頭が無いのか。
屋敷に来る妖怪と出会った時にどうなるのかちょっと楽しみになった。
−−−−−−−−−−
妖精 「今日は楽しかったわ! こんな山奥にも来て見るものね。
それじゃ、また来るわ じゃーねー」
そう言って妖精はテレビの中に吸い込まれるように消えていった。
今思うとあれは本当に妖精だったのだろうか。
妖精とは自然の象徴のようなものだと記憶している。
しかし、あの妖精は人工物である家電の中へと帰っていた。
自分は何かとても奇妙なものと出会ったのでは無いか。
うちの主はそういったものを探しに行っているのだと思うが、
報告すると主のテンションが低くなりそうなのでとりあえず黙っておく事にした。
未知の妖精
○オクテット(Octet)
結界の外に棲む妖精。
規則性を操る程度の能力を持つ。
家電やコンピュータに棲む。
過去に該当する記録の無い妖精であり、コンピュータの普及により
新しく生まれた妖精の亜種では無いかと言われている。
この妖精は、規則的に動くものの動きを少しだけずらしてしまう。
その能力は機械だけでなく生物にも及び、家電やコンピュータであれば
誤作動を引き起こし、時計であれば時間がずれ、人間が近づくと少しドキドキする。
あんまり長く近づくと不整脈になるので注意したい。
説明 | ||
・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。 | ||
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