真・恋姫†無双  星と共に 第17章
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真・恋姫†無双  星と共に  第17章

 

 

月を保護し、反董卓連合が解散してから一ヶ月弱が過ぎた。

華琳の予想通り、後漢王朝には諸侯の小競り合いを抑える力はなかった。

その頃の一刀達は……、真桜がなにやら新兵器を作っているようでそれをなかなか教えてくれないので沙和が怒っていた。

 

「真桜、これは何だ?」

「隊長も知りたいん?」

「知りたい……」

「教えてくれたら私の秘蔵のメンマをやろう」

 

一刀と星も真桜に頼むが……。

 

「どうしようかな〜」

 

真桜はかなりじらそうとするが、一刀はものすごく早く諦める。

 

「教える気が無いならいい。星、行こうか」

「そんな〜もうちょっとくいついて〜な〜」

「だったらなんだ?」

「どうしようかな〜」

 

真桜のあまりの引っ張りに一刀は思わず拳銃の黒(ブラック)を取り出し、真桜につきつける。

 

「言う気が無いならあれを壊すぞ」

「やめてぇなぁ隊長。秘密兵器や! それ以上はいくら隊長でも教えられへん!」

「あ、そう」

 

一刀は黒をしまう。

 

「しかし何で作ってるんだ?」

「私の指示で作らせているのよ。華琳様にも許可をいただいてるわ」

 

桂花が話を聞いてやってきた。

 

「そうだったのか」

 

それを聞いて一刀は勝手に納得した。それから少し経って会議が始まった。

内容は袁紹と公孫賛の争いは袁紹の勝利、公孫賛は徐州にいる劉備の所に落ち延びたと言うことであった。

 

(公孫賛が生き延びた)

(前の世界では伯桂殿は袁紹に殺されたはず……)

(ああ、そして袁紹は俺達の居た徐州を攻めてきたんだが……)

(伯桂殿が生き延びるのは意外でしたな)

(確かに意外だったな。しかしこれで俺の知っている前の世界と完全に違うのがよく分かった)

 

一刀と星はこっそり話している間も会議は続いている。

 

「それで袁紹の動きは?」

「青州やへい州にも勢力を伸ばし、河北四州はほぼ袁紹の勢力下に入ってます。北はこれ以上進めませんから、後は南へ下るだけかと」

「と言うことは劉備のところに来るってことか……(それこそ前の世界のように……)」

「さあ、どうでしょうね?」

 

華琳の言葉に一刀は尋ねる。

 

「どういうことだ?」

「麗羽は派手好きでね。大きな宝箱と小さな宝箱を出されてどちらかを選ぶように言われたら、迷わず大きな宝箱を選ぶ相手よ」

「そう言う性格なのは分かってるが……」

 

一刀は前の世界の事を言おうとしたが、やめた。

公孫賛が生き延びたことは一刀にとっては想定外の出来事だったので、また想定外の出来事が起こるかもしれないので言うのをやめたのだ。

 

「と言うことは華琳が狙われる可能性ありって事か」

「そういうこと。国境の各城には、万全の警戒で当たるよう通達しておきなさい」

 

その後、袁術の方の警戒指示を桂花が既に出していると言い、桂花の大変さを改めて知る一刀。

 

「秋蘭や詠やねねにも手伝わせたいけど、色々任せているから無理として……」

 

そこで桂花は一刀や春蘭、霞に恋をみるが……。

 

「使えそうなのがいませんから、いりません」

「まあな、戦闘だけならともかく頭を使うのは結構きついんだよな……」

 

その頃袁紹はと言うと華琳の予想通り華琳を攻めることになっており、顔良はその事に片隅で泣いたそうだ。

ちなみに実はもう一人、その事に頭を悩まされた将が一人いた。

その人物とは名を張コウと言い、字は儁乂(しゅんがい)と呼ばれる白混じりの薄蒼いワンピースのような服で、髪はセミロングの藤色であった。

 

(今さらだけど、ここに居るのはよくないかもね……)

 

張コウは袁紹の馬鹿さ加減にいよいよ愛想を尽かし始めてきたのだ。

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そして数日経たないうちに一刀達は非常招集を受けた。

 

「袁紹が来たのか!?」

「馬鹿は決断が早すぎるのが厄介ね。敵の情報は」

「旗印は袁、文、顔。敵の主力はすべて揃っているようです。およそ三万…」

 

三万の部隊は国境警備の中で七百ともっとも少ない所を攻めてきたのだが、その七百で援軍はいらないと言ってきたのだ。

それを言った指揮官の名は郭嘉、程cの二人であった。

 

「とりあえずその二人には袁紹がいなくなったらこちらに来るように伝えなさい」

 

そしてこの会議はひとまず終了したのだが、納得の出来ていなかった春蘭が勝手に出撃準備をしていたのを一刀が止める。

 

「出撃は禁止だと華琳が言ってただろ!」

「ふん。袁紹ごときに華琳様の領土を穢されて黙っていられるものか! 華琳様がお許しになっても、この夏侯元譲が許さん!」

「本気で行く気か?」

「本気だ!」

 

一刀は満月を鞘から抜く。

 

「だったら俺を倒してからにしろ!」

「望むところだ!」

 

一刀が満月を構え、春蘭も剣を構える。そんな時霞が慌てて止めに来た。

 

「おいこら! 自分ら、何やっとんねん!」

「ちっ…厄介なのが」

「俺は春蘭が援軍に行くのを止めようとしているだけだ」

「たく。ここも猪か! どあほう!」

 

その霞の言葉に春蘭が怒る。

 

「貴様も似たようなものではないか!」

「ウチは自制効くぶんまだマシや! 一刀はさっさと華琳呼んで来ぃ!」

「その必要は無いみたいだな」

 

一刀がある方を見る。そこには澪が連れてきた華琳がいた。

 

「何をしているの!」

「華琳様!」

「春蘭! 霞! 一刀! これはどういう事! 説明なさい!」

「春蘭が勝手に援軍に行こうとしたから、止めようとしたら霞と澪と華琳が来たってところだ」

「なるほどね……」

「これも華琳様を思えばこそ! 華琳様の御為ならば、この首など惜しくありませぬ!」

 

華琳は春蘭に呆れるように言った。

 

「あなたにはもう少し、説明しておくべきだったわね。いいわ、出撃なさい」

「華琳様!」

「いいの?」

「ただし、これだけの兵を連れて行くことは許さないわ。あなたの最精鋭…そうね、三百だけ動かすことを許しましょう」

「あっちの兵を合わせて千ね」

「出来るの? 出来ないの?」

「華琳様の信任を得た以上、出来ぬことなどありませぬ! 総員、騎乗!」

 

そして春蘭は出撃した。

 

「このまま行かせてええのか!?」

 

霞が華琳に意見を言うが、華琳は良いと言い残った部隊を盗賊殲滅のために霞に使わせるようにした。

この間に一刀は黙っていたが、理由がなんとなく分かっていたので何も言わなかった。

その日の夜のうちに春蘭達の部隊は帰ってきたが、誰一人戦った跡が無かった。

その理由連れてきた程cに聞くと袁紹達とは全然戦わなかったのだ。

それは袁紹の性格上、万単位の軍勢で千にも満たない相手を相手にしないことであり、逆に援軍が来たら攻められていたとの事であった。

一緒に連れてきた郭嘉に程cの作戦を華琳が聞くが郭嘉の反応がなく、そしてすぐに鼻血を出した。

 

「おお!?」

 

その様子に皆が驚いた。

どうやら郭嘉は華琳に仕えるのが夢だったようだが、妄想が激しい人のようであった。

 

「お前達といい勝負だな」

「なにを!?」「何ですと!?」

 

一緒にいた詠とねねは一刀の言葉に怒るがあまり否定も仕切れない。

そして郭嘉と程cは華琳の元で軍師として働くことになり、その際に真名を皆に預けた。郭嘉は稟、程cは風と言った。

しかしその際、色々大変な事があった。

それはなんと郭嘉と程cは星と知り合いだったのだ。

 

「星ちゃんではないのですか?」

「私は星だが、お主達の知っている趙子龍ではないと言うことだ」

「どういうことでしょうか?」

「まあ仲間になる以上きちんとした説明をしておこう」

 

一刀は稟と風に自分とここに居る星が別の世界の人間であることを説明した。

 

「にわかに信じられませんね」

「信じられないのも無理はないな。俺だって前の世界の出来事が無かったら信じられなかったからな」

「でもこの世界には二人の星ちゃんが居るのですか〜」

「どうしたのだ?」

「いえいえ、もし星ちゃん同士が会ったらどうなるのかな〜と思いまして……」

「どうなるんだろうな」

 

星は笑いながら答える。

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それから数日後、袁術が劉備のいる徐州を攻めてきて、袁紹も攻めてきたとの報告が華琳の元に入ってきた。

 

「そう麗羽が…」

「劉備の方に行ったか……」

「あら、私は可能性としてはありえたことだと考えていたけど、一刀も同じような事を考えていたの?」

「いや、前の世界じゃ公孫賛を攻めた後はすぐに俺の所に攻めてきたからな。

前の世界だとこの時の俺は徐州に居たから今の劉備とほとんど合致してるんだよな」

「そう……」

「しかし何故袁紹は劉備を……。袁術相手で精一杯の劉備を見て、好機と思ったのでしょうか?」

 

稟が華琳に意見を聞く。

 

「袁術に徐州を独り占めされるのが急に惜しくなったんでしょうよ」

「子供だな…袁紹は……。まあ、前の世界だと袁術はいなかったから色々事情が変わってるんだろうな。それで、これからどうする?」

「皆の意見を聞きたいわ。これから我らは、どうするべきかしら?」

 

華琳が軍師達に意見を求める。

稟は袁紹を徹底的に叩く方針、桂花はとりあえず袁紹と袁術は放っておいて劉備を叩くことを方針にしたいと言った。

 

「一刀はどう思う?」

 

軍師達の言葉を聞いて華琳が一刀の意見を聞く。

 

「う〜ん……。劉備と同盟を組んで、袁紹と袁術と戦うのが無難か……? 風はどう思う?」

 

一刀は自分の意見を言いつつ、風の意見を聞こうとするが風は寝ている。

 

「寝るな!!」

「おおっ!」

 

一刀の叫びで風は目を覚ました。

 

「寝てませんよ?」

「嘘だろ?」

 

風のボケに一刀が丁寧に返す。

 

「で、劉備さんをよってたかって袋叩きにするんですか? それとも袁紹さんの所に火事場泥棒に入るんですか?」

「言い方が悪いな」

「けれど、それが世間の風評でしょうね。私は弱いものを虐める気も、火事場泥棒をする気もないわ。

今は力を溜め、次の動きで最善の一手を打てるよう静観すべき時でしょう」

「そのほうがいいのです」

「下手にどちらかを刺激すると、両方に攻められる可能性もあるからね」

 

どうやらねねと詠も同意見だったようであり、華琳は静観することを選んだ。

その日の夜、一刀達は突然呼び出された。それは徐州から国境を越えて関羽がやってきたのだ。

 

「関羽か……(愛紗……)」

 

一刀の目つきが変わった。

 

「何で関羽がこないな所に……」

「劉備は華琳の所に助けを求めに来たってことなのか?」

「残念だけれど、少し違うわね。説明してくれるかしら?」

 

華琳が関羽に説明を求め、関羽が説明する。

その内容は劉備が華琳達の国境を抜けて益州に向かおうとしており、そのため通行したいと許可を求めに来たのだ。

 

(俺の時と大違いだな。俺は戦って切り抜けたが……)

(一刀殿の時は恋が居たであろう。それに袁術が居なかったから戦力もこの世界の時よりも少なかろう)

(それもそうだな)

 

華琳はその返答をしに劉備の所に向かおうとし、そのお供を求めるが結局皆で行くことになった。

念のため、一刀が保護した月、詠、恋、ねねは城に残るよう一刀がお願いした。そして星にも……。

 

「何故です? 一刀殿」

「時期的に考えるともうこの世界の趙雲が劉備の下に居る可能性が高い。そんな時にお前がこの世界のお前と鉢合わせになるのはまずいだろ。戦場ならともかく……」

「しかし……」

「大丈夫だ。星と一緒に居るって言ったけど今日だけは許してくれ。この詫びは後日するからな」

 

一刀は星を抱く。

 

「分かりました。詫びの方、楽しみにしておりますぞ」

「ああ、行ってくる」

 

そして一刀達は出ていった。

 

「華琳は人気者だな」

「おだてでも何も出ないわよ」

「そんなつもりはないんだな。これが」

「何でアンタまで付いてくるのよ」

 

桂花が少々嫌がる顔をして一刀に言う。

 

「ま、色々とな」

 

そうしている内に劉備のいる本陣前に着いた。その本陣は国境ギリギリで後一歩間違えれば大問題になるくらいに近かった。

 

「関羽、あなたの主の所に案内して頂戴。何人か一緒に付いてきてくれる?」

「華琳様! この状況で劉備の本陣に向かうなど、危険すぎます! 罠かもしれません!」

「桂花の言うとおりです! せめて、劉備をこちらに呼び出すなどさせては…!」

 

春蘭と桂花が華琳を諫める。

 

「でしょうね。私も別に、劉備のことを信用しているわけではないわ」

「曹操殿」

「けれど、そんな臆病な振る舞いを、覇者たらんとしているこの私がしていいと思うかしら?」

「ぐっ…」

 

その言葉を聞いて春蘭達は何も言えなくなった。

 

「だから関羽。もしこれが罠だったら…貴方達にはこの場で残らず死んでもらいましょう」

「御髄に」

 

そして華琳はお供として春蘭、永琳、季衣、流琉、霞、稟、澪そして一刀を連れて行き、劉備の所に向かった。

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「曹操さん!」

 

最初に出迎えたのは劉備であった。

 

「久しいわね、劉備。連合軍の時以来かしら?」

「はい。あの時はお世話になりました」

「それで今度は私の領地を抜けたいなどと…また随分と無茶を言ってきたものね」

「すみません。でも、皆が無事にこの場を生き延びるためには、これしか思いつかなかったので……」

「まあ、それを堂々と行うあなたの胆力は大したものだわ。いいでしょう。私の領を通ることを許可しましょう」

「うん?」

 

一刀は華琳の答えに少々驚いた。

 

「本当ですか!」

「華琳様!?」

 

一刀以外も驚いた様子であった。

 

「華琳様。劉備にはまだ何も話を聞いておりませんが……」

「聞かずとも良い。こうして劉備を前にすれば、何を考えているのかが分かるのだから」

「曹操さん…」

「ただし街道はこちらで指定させてもらう。米の一粒でも強奪したなら、生きて私の領を出られないと知りなさい」

「はい! ありがとうございます!」

 

劉備がお礼を言うが、華琳はまだ何か条件があった。

 

「それから通行料は…そうね。関羽でいいわ」

「……え?」

 

華琳の言葉を想定していなかった劉備は驚く。

 

(なるほどな、華琳の奴、愛紗を諦めてなかったんだな……)

 

一刀はそう思っていた。

前の世界では華琳が一刀達の領土に侵略した理由の一つとしては愛紗をいただくためであった。

前の世界の華琳は愛紗を心から手に入れたいと言っていたのだ。

そして愛紗を手に入れるために一刀達を攻めると華琳は言い、一刀は魏軍と戦ったのだ。

 

(この世界の華琳はあまり愛紗の事を言わなかったけど、やっぱり愛紗が欲しいんだな。

気持ちは分からないわけじゃないけど…。そこの所は曹操として外せない要素なのかな)

「何を不思議そうな顔をしているの? 行商でも関所では通行料くらい払うわよ? 当たり前でしょう」

「え、でも、それって……!」

「あなたの全軍が無事に生き延びられるのよ? もちろん、追撃に来るだろう袁紹と袁術もこちらで何とかしてあげましょう。

その代価をたった一人の将の身柄であがなえるのだから…安いと思わない?」

「桃香様…」

「曹操さん、ありがとうございます」

 

その答えに諸葛亮や張飛が驚く。

 

「桃香様!?」

「お姉ちゃん!?」

「でも、ごめんなさい」

「あら」

「愛紗ちゃんは大事な私の妹です。鈴々ちゃんも朱里ちゃんも……他のみんなも、誰一人かけさせないための、今回の作戦なんです。

だから、愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ、意味がないんです。こんな所まで来てもらったのに…ほんとうにごめんなさい」

 

そう言って劉備は頭を下げて謝る。

 

(気持ちは分かるけどな……)

 

もし一刀が同じような事を言われたら、恐らくは劉備と同じ事を言うだろうと一刀は考えたのだ。

 

「そう。さすが徳を持って政事をなすと言う劉備だわ。残念ね」

「桃香様、私なら」

「言ったでしょ? 愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ、意味がないって」

 

劉備はそう言うと諸葛亮に他の経路はないかと聞く。

 

「劉備」

「はい?」

「甘えるのもいい加減になさい!」

(華琳ならそう言うと思ったさ……)

 

華琳は劉備に大して怒りを顕わにする。

 

「たった一人の将のために、全軍を犠牲にするですって? 寝惚けた物言いも大概にすることね!」

「でも、愛紗ちゃんはそれだけ大切な人なんです!」

「なら、その為に他の将…張飛や諸葛亮、そして生き残った兵が死んでも良いというの!?」

「だから今、朱里ちゃんに何とかなりそうな経路の策定を…!」

「それがないから、私の領を抜けるという暴挙を思いついたのでしょう? 違うかしら?」

「それは……」

「それに他に道はないと思うぞ」

 

華琳と劉備の話し合いに一刀が乱入する。

 

「一刀は黙って…」

「いや、言わせてくれ。頼む」

「……、まあ言ってみなさい」

「劉備さん、今他の道を探しても無駄だと俺は思う。俺が考える限り、もう安全な道はないと思うからだ」

「ええ、一刀さんの言うとおりです」

 

稟も自分の意見を言う。

 

「我が軍の精兵を基準としても、半数以上は戦闘などで脱落します」

「…朱里ちゃん…」

「……」

「そんな…」

 

諸葛亮は既にその事実を知っていたが、それを劉備に黙っていた。

 

(やっぱり朱里も気付いてたんだな)

「現実を受け止めなさい、劉備。あなたが本当に兵のためを思うなら、関羽を通行料に、私の領を安全に抜けるのが一番なのよ」

「桃香様……」

「曹操さん…」

(俺だったらどうするか……)

 

一刀はもしも今の自分が劉備と同じような事になったら自分はどう切り抜けるか……考える。

 

(俺だったら……多分、劉備と同じ事……しないな。

俺だったら、例え恋が居なくても前の世界と同じように戦っているだろうな。

仲間を死なせないようにするために、朱里と考えるさ。例え前のように力が無かったとしても……)

 

一刀はあくまで戦う事を選ぶと考える。

 

「それから、あなたが関羽の代わりになる、などという寝惚けた提案をする気なら、この場であなたを叩き斬るわよ。国が王を失ってどうするつもりなの?」

「……」

(俺なら叩き斬られるようなことがあっても俺は俺の決めたことを通すつもりだが……、劉備はどうするんだ?)

「どうしても関羽を譲る気はないの?」

「……」

「まるで駄々っ子ね、今度は沈黙?」

 

華琳は皮肉るように言う。

 

「……」

「いいわ。あなたと話していても埒があかない。勝手に通っていきなさい」

「え?」

 

華琳の思いもよらない答えに劉備はまた驚く。

 

「聞こえなかった? 私の領を通って良いと言ったのよ。益州でも荊州でもどこへ行けば良い」

「曹操さん、ありがとうございます」

「ただし」

「通行料ですか?」

「当たり前でしょう。先に言っておくわ。あなたが南方を統一したとき、私は必ずあなたの国を奪いに行く。通行料の利息込みでね」

「…」

(前の世界とあんまり変わらないな)

「そうされたくないなら、私の隙を狙ってこちらに攻めてきなさい。そこで私を殺せれば、借金は帳消しにしてあげる」

「そんなことは…」

「ない? なら、私が滅ぼしに行ってあげるから、せいぜい良い国を作って待っていなさい。

あなたはとても愛らしいから…私の側仕えにして、関羽と一緒に存分に可愛がってあげる」

 

こうして華琳から通行許可をもらった劉備軍は霞と稟が案内をし、華琳の領土を通ることになった。

帰り道、一刀は華琳に言う。

 

「大層な悪役ぶりだったな。偽善者ならぬ偽悪者に見えたぜ」

「あら、そうかしら?

それに私は徳と理想だけで乗り切ろうとする彼女がどこまでいけるのか、見てみたいのよ」

「そうかい……。正直な話、俺も昔同じような事があった」

「どういうことがあったの?」

「愛紗……、まあ前の世界の関羽の事何だが、前の世界のお前は関羽を求めて俺の領土を攻めると言って来たんだ」

「あら、私そんなことを言ったの?」

「ああ。それで俺達は先に華琳達を攻めようとしたら一歩遅く攻められたんだよな。あの時は」

「そう………。ところでその前に袁紹に襲われたと言ってたけど、その時はどう切り抜けたの?」

「あの時は必死に戦って勝ったさ。幸いにもまだ袁紹達に落とされてない城があったからそこで防衛線をはって、その後反撃して打ち負かしたさ。もっとも袁術が居なかったから戦力的には今のよりは少なかったからどうにか出来たよ」

「もしも袁術が居なかったら劉備は袁紹に勝てたかしら?」

「さあな。恐らくは無理だろうな」

「何でそう思うのかしら?」

「俺が戦った時は諸葛亮が言ってたんだ。こちらの将の質は顔良、文醜以上だと。その言葉を聞いて皆勝つ気でやってやった。その時は確か後から聞いたんだけど、華琳が袁紹の領地を攻めてきたんだよな。そのおかげもあって結果は勝ったんだ。

でも劉備のあの様子とか見ているとこの世界の諸葛亮は多分俺に言ったことを言わなかったんだと思う。それに……」

「それに?」

「あの子は俺と違って優しすぎる。俺も結構甘いとか言われてたが、あの子はそれ以上だ。それに戦う覚悟が足りないと俺は思う」

「鋭い観察眼ね。私もそう思うわ」

「それはどうも……」

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それから幾ばくかして袁紹軍が劉備軍を追うために攻めてきて、一刀は凪達と合流した。

 

「この人数で大丈夫か?」

「桂花様は大丈夫だと言ってましたが…」

「楽進様! 敵の先鋒を確認しました!」

「よし、総員戦闘準備!」

 

凪の声とともに、部隊全員が弓矢を構え、一刀も破偉派を構える。

そして袁紹軍がだんだん近づいて行く。

 

「よし!」

「撃て!」

 

凪の掛け声とともに兵達は一斉に弓を放ち、一刀と凪の気弾と兵達の矢が空高く飛んで相手に襲い掛かる。

その様子を見た文醜は頭を悩める。

 

「もしかして曹操軍に待ち伏せされたんじゃ…」

「うわ、めんどくさー! いちいち曹操なんか相手してられないのに……。

全軍転進、別の道から劉備たちを追うぞ!」

 

袁紹軍の撤退に一刀はあっけに取られる。

 

「本当に撤退するとはな」

「凄いですね、桂花様の予測は…」

「あいつのこと少しだけ見直したぜ」

「では隊長。北郷隊は本隊に合流します」

「ああ、注意しろよ」

 

そして文醜達追撃軍は次に沙和達の部隊に阻まれ、その次は秋蘭の部隊に阻まれ、最後は正面で来たのを春蘭の部隊に蹴散らされ撤退した。

袁紹軍を追い返してしばらくの時が過ぎていき、劉備軍がようやく領地を抜け、霞と稟が戻ってきて袁紹軍と本格的に事を構える計画が進められた。

 

「敵が集結してきてる?」

「はい、どうも袁紹と袁術の両軍が、官渡に兵を集中させているようなのです」

(官渡の戦いか……、前はなかったな)

「これで二面作戦をしなくていい分、楽になったわね」

「……春蘭様、どういう意味ですか?」

「…それは…」

 

季衣が春蘭に意味を尋ねるが、春蘭が答えられるわけもなかった。

 

「おい北郷説明してやれ」

「俺!?」

「お前がだ!」

 

その間に華琳が丁寧に季衣に教えた。

 

「ただ、警戒すべきは……」

「袁術の客将の孫策の一党かと」

 

春蘭は孫策とはちょっとした因縁があるため、華琳は第二陣として袁術軍との戦いには春蘭を主力とし、孫策が出たら自由に判断し、補佐に季衣と流琉をつけた。

第一陣はの主力は霞に任せ、霞は補佐に凪、真桜、沙和の三人が良いと一刀に頼む。

 

「恋じゃだめなのか?」

「恋の場合やとあまり言いたいこと伝わらないことがあるからなぁ〜」

「………?」

 

恋は自分の言われようがあまり分かっていないようだった。

 

「俺は良いけど、良いのか華琳?」

「構わないわ、一刀は秋蘭と一緒に本陣に詰めなさい」

「了解っと」

 

桂花は霞達を出陣前に以前に真桜が作った秘密兵器の訓練をさせてから行かせた。

そして曹操軍と袁紹&袁術軍は官渡の地に入った。

 

「あの櫓は厄介ね。あそこから陣形を読まれたり、矢を射掛けられたりしてはたまらないわ」

「大丈夫です。この時のための秘密兵器ですから。真桜、用意はできているわね?」

「完璧や、任しとき」

「華琳様、袁紹が出てきました。あの櫓も一緒です」

「動くのか!? あの櫓」

「動く櫓か…」

「まあいいわ。行ってくるから、準備をしておきなさい。いつでも攻められるようにしておいて」

「御意!」

 

華琳と袁紹が戦闘前の布告を言うが少々子供の喧嘩に近かった。

そして袁紹が攻撃を命じる前に華琳の方の攻撃のほうが早かった。

 

「おーっ! さすがウチの最高傑作や! よう飛ぶなぁ!」

「投石器だったのか…」

 

真桜の作った秘密兵器、投石器はかなり絶大で袁紹軍の櫓を壊滅させた。

そして白兵戦となったのだが、相手はほぼ烏合の衆。

華琳達の敵ではなかったが……一人だけかなり厄介なのが残っていた。

一刀は一人で、その人間と対峙しようとしていた。

その人間とは張コウであった。

張コウの両手には鉤爪のようなものが付けられており、それで兵達を倒していたのだ。

 

「何者だ?」

 

一刀が張コウに名を尋ねる。

 

「我が名は張コウ」

「張コウ……」

 

元々袁紹軍に居て、その後曹操軍に従った将の一人っと一刀は思い出す。

 

(前の世界に居なかった人間だな)

「その武器……」

 

張コウが一刀の持つ、刀や銃を見る。

 

「あなたが噂の天の御遣い、北郷一刀ね」

「俺の名前まできちんと知っているとは……」

「この乱世よ。それくらいの情報は知っておかないと」

「それもそうか……」

「私はあなたと一度戦ってみたかったのよね」

 

張コウが格闘技のような構えを取る。

 

「…………」

 

一刀も居合の構えを取る。

 

「やるしかないのか?」

「ええ。そうね」

「やるなら仕方ないが、一つだけ約束してくれないか?」

「何?」

「俺が勝ったら、華琳の……曹操の下に降ってくれないか?」

「あら? 私を殺さないの?」

「俺は人殺しはしたくない。間接的には何度もあるが、直接は殺したくない」

「戯言ね」

「そうだろうな。だが、俺はその戯言を貫くつもりだ」

「いいでしょう。あなたが私に勝てたらね!」

 

張コウが先に走り出す!

 

 

「はあっ!」

 

張コウが右手の鉤爪を一刀の上から振るう!

 

「ふん!」

 

一刀は鉤爪が自分に襲いかかる前に張コウの右手首を白(ホワイト)から放った氣弾をぶつける。

 

「!」

 

張コウは防がれたと同時に左手の鉤爪を一刀に当てようとするが……。

 

「は!」

 

一刀は飛びあがり、うまく鉤爪のとがっていない部分に足蹴りをし、後ろに跳ねる。

跳ねると同時に黒(ブラック)もホルスターから抜き、着地するまでの間に白と黒の二丁拳銃で張コウを狙い撃つ。

もちろん二丁拳銃から放たれる弾は氣弾である。

 

「くっ!」

 

銃から放たれる氣弾の数に張コウは思わず両手で防ぎ、一刀に攻撃する暇が無かった。

一刀は着地と同時に二丁拳銃をホルスターにしまい、素早く満月を引き抜き上から斬りかかるように振る!

 

「轟けぇ!!」

 

一刀が振った満月は凄い早さで張コウを襲い、まだガード中だった張コウを襲った。

張コウはガード体制のままだったので、満月は鉤爪で防がれるが、それでも張コウは後ろにかなり引きずられる。

 

「やるわね! でも!」

 

張コウは先ほどよりも早さが増したかのようにまた一刀に向かって走る!

 

「そこだぁ!」

 

一刀は破偉派を取り出し、引き金を引くが、破偉派から放たれた氣弾を張コウは巧みにかわす。

 

「はあああああ!」

 

張コウは氣弾をしゃがんでかわしたことにより、一刀の下から攻撃しようと、一刀の胴を斬ろうとするが……。

 

「はあ!」

 

一刀は張コウの鉤爪が到達する前に、鞘に納めていた満月を鉤爪の間に挟むことにより、胴に到達するのを阻止する。

 

「うぉおおおおおおお!!」

 

一刀は鉤爪に挟まれた刀を無理矢理あげようとし、張コウがそれに釣られて持ち上げられる。

 

「甘いわね!」

 

張コウが開いている手の鉤爪を一刀に当てようとするが……。

 

「う、動かない!?」

 

手が動かなかったのだ。

何故なら一刀の氣術で氣の壁を作り出し、張コウを持ち上げたと同時に氣壁に張コウを磔の状態にして、張コウの動きを止めていたのだ。

 

「無防備な所、悪いが……」

 

一刀は白と黒を取り出し、両手が使えない張コウに向かって連射する。

そして連射を終えると同時に氣壁が砕け散り、張コウは後方に勢いよく飛ばされる。

 

「…………うう」

 

張コウは無防備に氣弾をくらったので立てるような状態ではなかった。

 

「大丈夫か?」

「大丈夫に見える?」

「あまりだな」

「でも大丈夫よ。私の負けね」

「ああ。約束守ってくれるな?」

「ええ。曹操の下に降りましょう」

 

そして張コウは華琳の元に降った。

 

「私の名は張コウ。真名は咲(さき)です。以後、よろしくお願いします」

 

こうして官渡の戦いは終結した。

 

「さてと次はどうなるかな……」

 

戦いを終えて、一刀は考える。今後はどう世界が動いていくかを……。だが……。

 

「ま、なるようになれだな」

「相変わらずですな、一刀殿」

-6ページ-

 

 

おまけ

 

 

作者「第17章だ」

一刀「どうした突然。第22章でも書けたのか?」

作者「あと少しと言ったところだな」

一刀「しかし新キャラは張コウときたか」

作者「本当はコウの字を漢字にしたかったが、諸々の事情で無理でした。だが私は謝らない!」

一刀「まあ漢字の場合は無理なときはあるから仕方ないか」

作者「実は昨日真・恋姫†無双の4コマ漫画の新刊を買った」

一刀「それがどうした?」

作者「いや、どうも俺の頭の中で少し思い描いてたことがあったりしたなと思ってな。

既にやってる事として月と詠が華琳に拾われるネタがあった」

一刀「確かにお前の奴じゃ何度もやってるな」

作者「宣伝になってしまうが敢えて言おう。それは恋とねねは仲間じゃないんだよな」

一刀「それはある意味変則だな」

作者「それで死んだ雪蓮が蓮華に取りつくネタもあったな」

一刀「それがどうした?」

作者「いや、丁度その日電王の映画を見たばかりだから電王だなと思ってな…」

一刀「イマジンじゃないだろ」

作者「まあな。前にも言ったが『アスラクライン』俺は原作は読んでなくてアニメしか見てないが、操緒が『憑依』というのを聞いてピンと電王のイマジンを思いついた」

一刀「電王の見すぎだろ」

作者「普通にリアルタイムの1回してみてないけどな…。

で、全く別の話になるが、『迷い猫』って作品があるんだがな…」

一刀「?」

作者「どうもその作品がアニメでロボットのネタをやった時かなり不評の嵐だったんだが、俺はそうは思わなかった。むしろ全話見たいと思った」

一刀「なんじゃそりゃ?」

作者「まあいい悪いかは人それぞれだからな。個人的には凄く良かったとだけ言っておこう。

ああ、それと前回のコメントで『華雄は?』ってのが多かったから答えよう。

実はあの後出番が無かったのですが、皆さまのコメントをもらったので何とか再登場させよう思ってます。そのための構成は一応頭で出来あがってます。どんな再登場は内緒です。期待しないで待って下さい」

一刀「期待させないのかよ」

作者「まあ原作と違うのだけは確かだな。

次回はかなり短い小休止的な話だ。

しかし実は結構重要だったりする。

それでは!」

説明
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。
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コメント
張コウ→張?です(VVV計画の被験者)
迷い猫ですねあれはびっくりしました、何かのネタフリかな〜と思ったんですが最後まであれでつらぬくとわwww(brid)
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真・恋姫†無双 一刀 真・恋姫無双  恋姫†夢想 第17章 

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