過去を断ち切れ! 修羅場モード!
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「大丈夫ですの?」

 去っていくオタク縦と横を見て、まだ高校生くらいと思える女の子に声をかけると、女の子は泣きながら、自分の本を破っていた。

「ダ、ダメですの!? 必死に作った本にそんなことしちゃ……!?」

「ウルサイ! こんな同人誌、クズだ! 散々、酷いこといわれて、それでも、こんな本、売れるわけないよ!?」

「そんな事ないですの!? あなたが一生懸命描いた気持ちは、絶対に伝わりますの!?」

「わからないよ! 知ってるんだよ? あなた、プロとしても活躍してる、「新住所確定」の御影すばるでしょう!? 売れてる人間に、私の気持ちはわからないよ!?」

「ッ……!?」

 女の子の言った言葉にショックを受けたように黙りだすすばるに和樹が怒鳴りだした。

「君!? すばるだって、最初は……ッ!?」

 手で制せられ、和樹はなぜだとすばるを見た。

「……行きましょう。和樹さん」

「す、すばる……」

 まるで泣くのを必死に堪える子供のような顔をするすばるに和樹はなにも言えず、後を追った。

 

 

「なるほどな……そんなことがあったのか?」

 興味無さそうに買ってきたマンガを読んでいた大志にすばるは声をあげて、いった。

「大志さん、お願いがありますの!?」

「なんだ、マイ同士?」

「すばるのマンガをもっと面白くして欲しいですの!? あの人にわかって欲しいですの!? 頑張れば、いくらだってマンガは面白くなるってことを!?」

「……すばる」

 悲しそうな顔をする和樹に大志は読んでいたマンガをパタンッと閉じ、ついて来いとこみパ会場を後にした。

 

 

「ここは……俺の部屋?」

 不思議そうな顔をする和樹に大志はすばるを見た。

「今から、来月のこみパまでに二千部売れる四ページマンガを一時間で描くこと! それが、同士すばるの試練である!」

「なっ……一時間で四ページのマンガを!? 無理だ、そんな事!?」

「出来ないなら、我輩は知らない。勝手にすればよい」

「描きますの!? すばるにはどうしても貫かなければならない信念がありますの!」

「よく言った、同士すばる!? なら、今からはじめる。スタート!」

 バッとマンガ机に座りマンガを描き始めるすばるに和樹は大丈夫かと心配になったが、すばるは見事に一時間で四ページのマンガの下書きを完成させた。

「あまい!」

「あうん!?」

 天井から雷が落ち、ビリビリと感電するすばるに和樹は怒声を上げて、大志を睨んだ。

「おい、なんだ、あれは!?」

「我輩は「マンガを描け」といったのだ。これはマンガでなく、「マンガができる途中までのマンガ」だこの程度でマンガなら、プロもアマも必要ない」

「ウッ……」

 暴論に近い正論を言われ、ぐうの音の出ない和樹にすばるは感電し身体に鞭打ち、ムリヤリ起き上がると、また、マンガを描き始めた。

「まだまだですの!?」

「すばる……頑張れよ?」

 もはや、和樹にはそれしかいえなかった。

 

 

 それからまさに、すばるは地獄の特訓の日々であった。

 一時間以内に仕上げまで辿りついたマンガも、質が悪いといって電撃をくらい。

 今度は質がよくっても、速さを優先するあまり、絵が雑だといって電撃をくらい。

 両方がよくっても、二千部行くほどのものじゃないといって電撃をくらい。

 そのたびに、大志と和樹はモメたが、すばるは弱音を吐かず、マンガの特訓を続けた。

 そして、こみパ当日になった。

 すでにコピー誌でマンガを出すしかなくなったすばるのマンガを見て、和樹は今までの中で会心の出来だと確信し大志に渡した。

「ふん……これなら、二千部行くだろう? 同士すばる、行くがよい。マンガを売るために!」

「はいですの!?」

 

 

 意気揚々とこみパにつき、本を並べだすすばるに遊びに来ていた由宇と詠美は心配そうにすばるを見た。

「大丈夫かいな、すの字……うまく、女の子に自分の気持ちを伝えられればいいけど?」

「大変だ!? オタク縦と横がまた、先月と同じ女の子のサークルを荒らしてるぞ!?」

「ッ!?」

 すばるの顔が強張り、売り子をしていた瑞希に後を任せ、新人サークルのある場所まで走った。

「……大丈夫かしら、すばるの奴?」

「え……どういうことだ、詠美?」

「ん?」

 顔を上げると詠美はすばるの描いたマンガを机に置き、腕を組んだ。

「確かに面白いマンガだけど、オチが弱くって、これじゃあ、千部半ばどまりでしょうね?」

「ッ……どういうことだ、大志!?」

「……」

 大使は冷たい目でため息を吐いた。

「当日になっても、この程度のマンガしかかけない奴に興味はない」

「クッ……大志、貴様!?」

 大使を殴ってもしょうがないと思ったのか、慌ててすばるの後を追った。

 

 

「オタク縦と横さん……」

 新人荒らしをするオタク縦と横にすばるは初めて参加したこみパの出来事を思い出し、データに保存したマンガのフラッシュメモリーのスイッチを押した。

『特撮!』

「過去を振り切りますの!?」

 腰にベルトが巻かれ、ガチャっと挿し込み口にフラッシュメモリーを差し込んだ。

「発……動! ですの!」

『特撮!』

 すばるの服が真っ赤な道着に変わり、新しいフラッシュメモリーを取り出した。

「やめろ、すばる!? 本当は二千部いくマンガじゃなかったんだ!?」

 呼び止める和樹に由宇の手が制した。

「そんな事わかっとるで、すの字は……それでも、やるで。すの字のプライドがあるさかい」

「……!」

 新しいフラッシュメモリーのスイッチを押した。

『パワーアップ!』

 キンッとすばるの着ていた道着が黄色く変わり、そして青へとかわった。

「行きますの!」

 挿したフラッシュメモリーを空中に投げ、すばるの姿が消えた。

「ッ!?」

 オタク縦と横の前にすばるの姿が現れ、空が切れる音が響いた。

「ですの!?」

 二人の腹部にすばるの強烈な蹴りが連打され、オタク縦と横の身体が宙に浮いた。

「なっ……この力は!?」

「ぼ、僕たちの身体が吹き飛ぶんだな!?」

 蹴りの連打にオタク縦と横の身体が光り輝き、しだいに大爆発を起こした。

「だな〜〜〜〜〜!?」

「なんで、毎回、こうなるでござるか〜〜〜!?」

 天井を突き破って吹き飛ばされるオタク縦と横に空に投げたフラッシュメモリーを受け取り、つぶやいた。

『パワーアップ マキシマムドライブ!』

「買い逃し九十八冊……それがあなたの絶望までの数字ですの」

 すばるの道着が元に戻り、女の子の描いた本を読み始めた。

「とっても面白いマンガですの? 一冊いただけますの?」

「え……あ、三百円です」

「はい……ですの」

 チャリンッとお金を渡すと慌ててすばるのもとに走ってきた瑞希が大声を上げて叫んだ。

「すばるちゃん、あなたの描いたマンガ、たった今、完売したわ!」

「え……御影さん?」

 驚く女の子にすばるは恥ずかしそうに笑った。

「実はすばるの同人誌も本業と一緒でそんなに売れてないんですの」

 テヘッと舌を出すすばるに女の子はイスから立ち上がり、頭を下げた。

「先月は失礼なことを言ってすみませんでした!?」

「なんのことですの? すばるは、当たり前のことをしただけですの?」

 ニコッと微笑まれ、女の子は嬉しそうに顔を赤らめ、泣き出した。

 今、すばるの心を受け継いだ新たなマンガ家が誕生したときだったとは、このとき、すばるを抜かした誰もが想像できなかった。

 

 

説明
こみっくパーティーの御影すばるちゃんを仮面ライダーアクセルにして、パロッた本気かジョークか微妙な小説です。本気でバカな内容を突き進んだシリアス小説をお求めの方はお読みなってください。
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だが、たった一人の少女だけは、その事を知っていた。(スーサン)
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こみっくパーティー 御影すばる 仮面ライダーアクセルトライアル 

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