真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第18話
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 咲耶ちゃんが俺達の仲間になってもう2ヶ月が過ぎた。

 その二ヶ月間、俺はもう胃腸薬が手放せない状態だった。

 その原因はなにを隠そう新しく仲間になった咲耶ちゃんだった。

咲耶ちゃんは事あるごとに思春と斬り合いを始めるのである。

 まあ親の仇だから仕方ないといえば仕方ないけど、時々、思春が俺の命を狙っていると考えて思春から俺を守るためという理由で斬りかかる事もある。

 

 例えば俺が蓮華とくっついて話していると、いつも思春は殺気を放ってくるんだが、それを俺の命を狙っていると感じた咲耶ちゃんは剣を抜いて思春に斬りかかるんだよ。

 いつも俺と蓮華が二人を宥めるんだが、そこで思春が余計なことを言って第二ラウンドが始まるといった具合だ。

 

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この二ヶ月間、もうこれは日常茶飯事になっている。当然とばっちりは俺と愛紗の方にくる訳で、俺も愛紗もほとほと頭を弱らせていた。なにしろ咲耶ちゃんにはほとんど悪気は無いんだからこちらもあまりきつく怒れないし・・・。

 演義では凌統と甘寧は後に和解するんだけれど、咲耶と思春の様子を見てると、和解なんて無理なんじゃないかと考えてしまう。

 なにしろ咲耶ちゃんは思春について話すことといえば、もうどう暗殺しようか、とかどんなに憎らしい奴か、といった話のみである。これぞまさに水と油の関係、犬猿の仲といった様相である。

 一方の思春はというと、咲耶ちゃんにあまり関心がないようである、というよりほとんど自分から咲耶ちゃんに絡もうとしない。咲耶ちゃんが自分に暴言を吐いてきても何も言わずに聞いているだけだし。

 そのあと咲耶ちゃんのことを謝ると、思春は

 

 「嫌われることには慣れている」

 

と、どこか寂しそうな笑顔を浮かべていた。

 まあ思春にやる気はなくても、咲耶ちゃんにはあるわけで今現在も二人のバトルファイトは続いているのである。

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しかし、最も俺の神経を磨り減らしているのは咲耶ちゃんが予想以上に甘えん坊で、しょっちゅう俺の布団に潜り込んでくることである。

 本人曰く、一人で寝るのが寂しいとのことだが俺としてはたまったものではない。

 いや、決して嫌というわけではないんだ。こっちにぎゅ〜っとくっついてくる咲耶ちゃんの胸とかゲフンゲフン!

 とにかくこっちとしては理性が危なくなるから、ついでに俺の体も。

 なんせ俺と咲耶ちゃんが寝ていると愛紗がオンドゥル化して大暴れするんだよ。

 初めて一緒に寝た日なんて、愛紗が部屋に入るや否や

 

 「ダディャーナザン!!!ナズェイルンディス!!!」

 

 なんて叫びながら青竜偃月刀振り回したせいでまた部屋が壊滅してしまった。

 とにかく愛紗を何とかなだめて咲耶ちゃんになんとか自分の部屋で寝るよう言ったんだけど、そのたびに眼を涙でうるうるさせてくるため、結局そのまま一緒に寝てしまう羽目になるのである。一応愛紗と寝るようにも言ってはみたんだが、

 

 「一刀様と一緒がいいんです!!」

 

 と言って聞かないんだ。なんでも本人曰く

 

 「一刀様は父上のようにとても暖かいからです」

 

 とのこと。

 俺は父親代わりか、と一瞬へこんだんだけどまあ親を亡くしてしまったんだからいいか、

 と今では思っている。

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ちなみに愛紗が強く希望したため今では愛紗も同じ布団で寝ている。

 これのおかげで愛紗のオンドゥル化は無くなったのだが、今度は咲耶ちゃんがいるので

その、色々とできなくなってしまったため現在欲求不満の状態である。

 まさか咲耶ちゃんの前でするわけにもいかず、結局二ヶ月間、悶々とした生活を送ったわけである。

 ちなみに咲耶ちゃんは相当な悪食であるらしく、愛紗が失敗して作った激辛ギョウザ(というかあれはもうギョウザというより赤い色をした何かだ)を

 

 「これ食べてもいいですか?」

 

 と、にこやかに笑いながら全部食べたのには驚いた。

 ・・・本当に橘さんに似てるな、咲耶ちゃんは。

 

 まあそんな感じで咲耶ちゃんが来て以来、俺はかなり慌しく、そして時々命の危険を感じる日々を送っていた。

 

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 そんな中、ついにというか予想していたことが起こった。

 

 漢の皇帝、霊帝の死である。

 

 もともと権威も無くなり、さらに黄巾の乱で疲弊していた朝廷は、皇帝の死によってさらなる混乱に陥っていた。

 その最たるものが何進と宦官達による皇帝の世継ぎ争いだった。

自身の妹の子である弁を皇帝に推す何進と、劉協を推す宦官のトップ十常侍との争いは日々激化し、ついに十常侍が何進を暗殺するという事態にまで発展した。

これをしった何進派の袁紹、曹操らは宦官の殲滅を実行、そんな中洛陽から逃亡中の弁と劉協は、并州の刺史董卓によって身柄を確保された。董卓は小帝弁を廃して劉協を帝位につけ、自信は相国となり名実ともに漢王朝の実力者となった。

が、これに不満をもった袁紹は、董卓誅滅のために諸侯に召集をかけた。

 

 

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「・・・で、袁術の所にも袁紹からの書がきて、当然私達も一緒に出陣ってことになっっちゃったってわけ」

 

 雪蓮は面倒くさそうに俺達に言った。

 ちなみに雪蓮はついさっきまで袁術の城に行っていたとのこと。相当しんどかったみたいだな。

 しかし、董卓か・・・。

 前の世界の月は心優しい子だったけど、この世界では違うのか?

 それともまた白装束の連中がいるのか?いずれにしろ情報が少ないな・・・。

 雪蓮に頼んで洛陽に斥候を出してもらうかな。

 

 「しかし、この戦も我等の功名を立てるいい機会ではある。

 参加するべきだろうな」

 

 「はい、それにうまくいけば袁術軍の兵力を減らして独立に有利にすることもできるかもしれません」

 

 冥琳と藍里は出陣に乗り気のようだ。この戦の後に袁術から独立しようって考えているからかな?

 

 「なるほどね〜、一刀と関平はどう思う?」

 

 と、雪蓮は俺達に話を向けてきた。

 この際だし、洛陽への調査の件、言ってみるか。

 

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「俺も賛成かな?この戦で功名をたてれば色々と有利だろうし、ただ・・・」

 

 「ただ、何?」

 

 「洛陽の調査をお願いできないかな?」

 

 「洛陽の調査?何で?」

 

 俺の言葉に雪蓮は不思議そうに返した。

 

 「実際に暴政が行われているか知りたいからね。それに、敵の情報が入ればこちらに有利だろ?」

 

 「なるほど、北郷殿の言うとおりだな。雪蓮、私も北郷殿の意見に賛成だ」

 

 「はい〜、敵さんの情報を知れるのはこちらにとっても得ですよ〜」

 

 俺の言葉に冥琳と穏も賛成の意を示してくれた。二人の意見を聞いた雪蓮は

 

 「わかった、じゃあ私たちも連合に加わって、さらに独自に洛陽の調査を行う、

 これでいいかしら?」

 

 「うん、俺はいいと思う」

 

 「私も異論はありません」

 

 雪蓮の言葉に俺と愛紗はそう返した。

 やれやれよかったよ・・・。これで駄目だったらどうしようかと・・・。

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「それじゃあ軍議は以上、解散!」

 

 冥琳が軍議の終了を宣言したので広間にいた将達は次々と外に出て行った。

 俺と愛紗も同じく外に出ようとしたら、突如雪蓮に呼び止められた。

 

 「あ〜一刀、関平、ちょっと残ってくれるかな?」

 

 「?」

 

 何なんだ?一体。

 

 「どうかしたの?雪蓮」

 

 「ん〜、実はね、二人に頼みごとがあってね」

 

 「頼みごと、ですか?」

 

 「ああ、入ってきてくれ」

 

 冥琳が呼びかけると、奥からなんかキョンシーみたいな服を着て、片眼鏡を掛けた目つきの鋭い女の子が入ってきた。

 

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「紹介しよう北郷殿、関平、軍師として修行中の将、呂蒙 子明という」

 

 「お初にお目にかかります、天の御使い様、天将様」

 

 と、女の子、呂蒙は頭を下げた。

 

 呂蒙、か。確か初めは武人だったけどその後猛勉強して呉を支える名将になった人物だよな・・・。ん?なにか忘れているような・・・。

 

 「でね、この子をあなた達の補佐役にしようとおもって。ついでにこの子にとってもいい勉強になると思うし」

 

 「そっか、よろしくね、呂蒙ちゃん」

 

 雪蓮の言葉を聴いた俺は呂蒙ちゃんにあいさつした。

 と、呂蒙ちゃんは顔を真っ赤にしながら俺に細々とあいさつを返した。

 

 「は、はい!よ、よろしくお願いします・・・御使い様・・・」

 

 「あはは、俺は一刀でいいよ、呂蒙ちゃん」

 

 「そ、そんな、恐れ多いです〜!!」

 

 俺の言葉に呂蒙ちゃんはますます恥ずかしがって長い袖で顔を隠してしまった。

 なるほど、恥ずかしがりやなのか。

 

 「ほら、恥ずかしがってないで、関平にもあいさつしなさい」

 

 「は、はい!よ、よろしくお願いします!天将様」

 

 

 

 

 

 「ウェェェェェェェェェェェェェイ!!!!!」

 

 と、突然愛紗がオンドゥル語を叫びながらどこかから取り出した青竜偃月刀で呂蒙ちゃんに斬りかかった。

 

 「「「えええええええええええ!!!???」」」

 

 さすがにこのことに俺達は驚いて絶叫を上げる。

 

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 「ひ、ひいいいいいいいい!!!!」

 

 「クサムカァ!!!キサムァガミンナウォォォ!!!!」

 

 突然襲い掛かってきた愛紗に呂蒙ちゃんは怯えて逃げ出す。それを愛紗はオンドゥル語を発しながら偃月刀を振り回しながら追いかける。

 

 「ちょ、ちょっと!?どういうことよ一刀!?関平なにか亜莎に恨みでもあるの!?」

 

 「い、いやそんなのあるわけ・・・!」

 

 ちょっとまてよ・・・。呂蒙ちゃんと愛紗・・・・?

 

・ ・・・ああ!

しまった!!

 呂蒙っていったら関羽を討ち取った将じゃないか!

 何でそんなこと忘れていたんだ!

 うちの愛紗とは相性最悪じゃないか!

 前の外史でも何か殴り飛ばしに行きたいとかいってたし・・・。

 とにかくまずい!このままじゃあ愛紗に呂蒙ちゃんがムッコロサレル!!!

 ・・・て俺までオンドゥルになってどうするんだ。

 

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「ま、待て!愛紗!」

 

 「!?ゴジュジンザァバ!!ナズェトメルンディス!!!!」

 

 いや、止めなきゃまずいから。

 でもなんて力だよ、以前の俺なら一秒も持たなかったぞ。

 

 「ゴジュジンザァバ!!!オンドゥルルラギッタンディスカー!!!」

 

 ああくそ!こうなったら・・・・!!

 

 「ゴジュジ・・・んん!?」

 

 俺は愛紗の顔を俺のほうに向けて愛紗の唇に俺の唇を押し付けた。

 

 「ん、んん・・・・」

 

 「ん・・・はん・・・・ん・・・・」

 

 俺が愛紗とキスしてると段々愛紗は動きを止めていった。

 そして俺が唇を離すと、そこには愛紗が顔を真っ赤にして立っていた。

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「どう?落ち着いた?」

 

 「は、はい・・・・」

 

 俺が愛紗に話しかけると愛紗はへたりと地面に膝をついてがっくりと頭を下げた。

 

 「私は・・・私はなんということを・・・・」

 

 「あ〜、愛紗、大丈夫?」

 

 「私のことより、呂蒙殿は・・・・?」

 

 「あ〜、呂蒙ちゃんは・・・・」

 

 と、俺が呂蒙ちゃんの方を見ると、呂蒙ちゃんは尻餅をついて震えていたものの無事そうだった。

 

 「無事みたいだよ」

 

 「そ、そうですか、よかった・・・」

 

 愛紗は安堵とともに後悔も襲ってきたのかさらにがっくりと頭を下げた。

 と、後ろから雪蓮と冥琳が近づいてきた。

 

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 「大丈夫か?北郷殿」

 

 「な、なんとかね・・・」

 

 「でも随分と見せ付けてくれるわね〜、一刀ったら。これは私へのあてつけかしら?」

 

 「そ、そういうわけじゃ・・・」

 

 雪蓮の言葉に俺はついつい口ごもってしまう。それを見て雪蓮と冥琳は笑い出す。

 

 「それにしても関平、なんで亜莎に斬りかかったりしたの?」

 

 「分かりません。ただ、いつかあの者に斬られるかもしれない、という感覚にとらわれてしまい、いますぐ斬ってしまわねばと・・・・」

 

 まあ正史では本当に斬られているからね。

 そういえば関平も一緒に斬られているんだっけ。

 

 「う〜ん、確かに亜莎は元武官だけど、そんなことしないと思うわよ?」

 

 「はい・・・私も早とちりしてしまいました・・・。ですので、謝らせて下さい・・・」

 

 「雪蓮、冥琳、関平もこう言っているんだから呂蒙ちゃんに謝らせてあげられないかな?」

 

 俺が二人に話しかけると、二人とも首を縦に振って肯定の意を示した。

 

 「まあ、関平も後悔してるみたいだしね、冥琳もいいわよね?」

 

 「ああ、幸い亜莎にも怪我はないしな」

 

 二人はそういって呂蒙ちゃんをこっちに呼んだ。

 

 

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 呂蒙ちゃんはまだ怖がりながらゆっくりとこちらに近づいてきた。

 

 「亜莎、関平があなたに謝りたいそうよ」

 

 「呂蒙殿、本当に、本当にもうしわけなかった!!今回のことは私の責!!

 どうか!どうか貴殿の気のすむようにしていただきたい!!」

 

 そう言って愛紗は呂蒙ちゃんに土下座した。

 

 「そ、そんな!あ、頭を上げてください天将様!そのようなこと、きにしておりませんから!」

 

 それを見て呂蒙ちゃんは恐縮したのか愛紗に頭を上げるように促す。

 

 「いや!此度のことは私の責!なんならば今ここでこの首を掻っ切って・・・・」

 

 「お、おやめ下さい〜!!本当に、本当にきにしておりませんから〜〜!!」

 

 「いや、しかし・・・」

 

 はあ・・・こりゃいつまでたっても終わらないな・・・。

 

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「はいはいそこまで」

 

 「ご主人様!?」 「御使い様!?」

 

 俺は二人にやめる様声を掛ける。

 

 「愛紗、そこまでにしておいて。

 呂蒙ちゃんももういいって言ってくれてるんだしさ」

 

 「し、しかし・・・」

 

 「いいから!それで呂蒙ちゃん」

 

 俺は愛紗から呂蒙ちゃんに目を向けた。

 

 「は、はい!」

 

 「そんなに緊張しなくていいから。呂蒙ちゃんは関平の事、許してくれるのかな?」

 

 「そ、そんな!許すだなんて!私は初めから天将様を恨んでなどいません!」

 

 「呂蒙殿・・・・」

 

 愛紗は呂蒙ちゃんの言葉に驚いたのか顔を上げて呂蒙ちゃんを見ている。

 

 やれやれ、どうやら一件落着、かな・・・。

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「それじゃあ仲直りの証に、二人とも握手してお互いの自己紹介をしてくれないかな?」

 

 俺がそう提案すると、呂蒙ちゃんと愛紗はお互い頷いて握手した。

 

 「先ほどはすまなかった。私の名は関平、天の御使いである北郷一刀様に仕えている」

 

 「は、はい!私の名前は呂蒙、字を子明と申します!よろしくお願いします、天将様!」

 

 二人とも握手してお互いに自己紹介する。それを俺と雪蓮と冥琳は見守っていた。

 

 「やれやれ、どうなることかと思ったよ」

 

 「あはは、大変ね〜、一刀も」

 

 「まあこれであの二人の関係も良くなる・・・」

 

 

 「いや、普通に名前で呼んでもかまわぬぞ」

 

 「は、はい!関平様!」

 

 「クサァァァァァ!!!!」

 

 「ひいいいいいいいいい!!!!!」

 

   

 

 

「・・・・のは、まだ先のようですな、北郷殿」

 

   「・・・ははは」

 

 俺は冥琳の言葉に苦笑いしながら、また追いかけっこを始めた愛紗と呂蒙ちゃんを眺めていた。

 

 

 ふう・・・また苦労が増えそうだ・・・・。

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あとがき

 

 はい、18話目投稿しました。

 

 投稿の間隔が長いので読者の皆様に忘れられていないか心配です。

 

 と、いうわけで呂蒙を原作より早く登場させました。

 

 なにしろ愛紗と最も因縁深い人物ですので・・・。

 

 さて、次はいよいよ反董卓連合の話になると思います。

 

 どうぞ応援よろしくお願いします!

説明
 お待たせしました、第十八話、投稿します!
 いよいよ反董卓連合編、スタートです!
 今回、原作よりも先に、あのキャラが登場します!
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コメント
無印仕様の愛紗では仕方ないのかもしれませんね。(eni_meel)
関羽が前作で殴り飛ばしたいと言っていたのはどの辺りでしたっけ?(ヒトヤ)
相変わらず笑わせてくれますね、このss www(gmail)
・・・呉の将、北郷一刀の死因は過労死になりそうです。(拾参拾伍拾)
一刀のストレス発生源が増えただけだなwww(ロンギヌス)
オンドゥル率がかなり上がりましたね。(笑)(BLACK)
・・・殺した相手だったとしてもさすがにあそこまでひどくはならんと思うのは俺だけ?(sink6)
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