極楽幻想郷(紅) その1
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「お? 魔理沙どっか行くのか?」

 

「おう。お前は知らないと思うが、お前が来る前に幻想郷が紅い霧に覆われてな……」

 

何時ものように鳥居から現れた横島を動じないで挨拶を交わす魔理沙に霊夢は何度目か分からない溜め息を吐いた。

 

「……外の人間が幻想郷に染まる事はあるけど、幻想郷の住民が外に感化されるってのは如何言う事なのよ……」

 

魔理沙が横島へと語る姿を眺めながら、霊夢はこの間の出来事――紅魔郷異変の事を思い返した。

 

 

極 楽 幻 想 郷 (紅)

紅魔郷編 リプレイ その1

 

 

あの日、夏の太陽を隠す程の紅い霧が幻想郷を包み込んだ。

 

夜になって霊夢と魔理沙は異変解決へと動き出し、道中襲いかかって来る妖怪・妖精を蹴散らして『霧の湖』に構えた紅の館――『紅魔館』へと踏み込む。

 

そこで待ち受けていたのは妖怪、人間、魔女。そして、吸血鬼。

 

異変の首謀者である紅魔館の主「レミリア・スカーレット」を打ちのめし、異変は解決した。

 

その後で魔理沙がレミリアの妹と弾幕ごっこをしたのだが、霊夢には関係ない事であった。

 

 

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「へー、吸血鬼の館ねぇ……想像しただけでも恐ろしいな」

 

「会ってみると中々面白い奴だぜ?」

 

「いや、吸血鬼って……中世の世界地図を広げて「世界征服だ!」とか言うボケ爺みたいなのだろ?」

 

横島の思い当たる吸血鬼らしい吸血鬼と言えば、同級生のヴァンパイア・ハーフの(恥ずかしい)父親くらいである。

他には劇場版に出てきたのも思い当たるが、名前が出てこないので横島は考えるのを止めた。

 

呆気に取られ目が点になった魔理沙は、恐る恐る横島へ問い掛ける。

 

「な、なぁ? その中世の世界地図って……」

 

「地球が丸いんじゃなくて真っ平らのな。こう、人が支えてるヤツ」

 

横島が地球を支えるかのようなポーズを取ると魔理沙は冷や汗をかきながらレミリアのフォローをする。

 

「いや、アイツは吸血鬼の方でもまともな奴だと思うぞ……多分。

それにしても、横島。お前吸血鬼の事をよく知っているような素振りだったが」

 

「あぁ、同級生がヴァンパイア・ハーフなんだ……畜生、男はやっぱ顔なのか!?」

 

衝撃的な一言も、すぐに横島の行動によってどうでもよく感じてしまうのが恐ろしい事だろう。

 

ムキーッと猿のように怒る横島を宥めながら魔理沙は深く探りを入れてみる事にした。

 

「参考までに聞くが、その同級背のヴァンパイア・ハーフはどんな奴だったんだ?」

 

「なに!? 魔理沙も興味があるだと……!?

おのれぇピート……! 話に出てこないのに女の子にモテやがってぇぇぇぇ! 許せん!」

 

懐から藁人形を取り出し、怨念を込めて釘を打ちつけようとしたところで、横島の眉間に針が突き刺さる。

 

「ちょっと、私の神社でそんな怪しげなこと止めてくれないかしら?」

 

次変なことしたら針鼠ね、と言わんばかりに手に大量の針を横島に見せながら霊夢はワラッタ。

 

のわぁぁぁぁ! と眉間を押さえてのた打ち回る横島も、一瞬その場で竦み行動できなくなってしまった。

 

「取りあえず横島、落ち着け。私が聞きたいのは何でヴァンパイア・ハーフが同級生なんだ、って話だ」

 

「何だそんな事か。

 

アイツの故郷がブラドー島ってところで――かくかくじかじか――

 

で、オカルトGメンに入る為には高卒しないといけないから、俺の高校に通ってるんだわ」

 

横島の説明にふむふむと頷く魔理沙。

 

こっそり話を聞いていた霊夢も、話に上がった"唐巣神父″に親近感を湧いていた。

 

頭的ではなく金銭的に、である。(なに? そもそも人格からしてちが……うわ何をする、やめ……)

 

「なるほど……光と闇が合わさり最強に見えるのか……」

 

「頭はおかしくなって死ぬことは無いがな。

……ん? 俺的には頭がおかしくなってくれた方が得……?」

 

何か思う所があったのか急に考え出した横島に、これは拙いと魔理沙は話題を変えることにした。

 

「そ、それにしても外の世界って案外幻想郷よりも無節操なんだな!」

 

「ブツブツ……んー? そうかもしれんな。

何せウチの事務所だけでも節操無いし」

 

今度こそ本気でこっそり聞き耳を立てていた霊夢は突っ伏したくなった。

 

そんな人外魔境とも言える世界なら何の為に幻想郷があるんだと叫びたかった。

 

「聞いてるだけで興味深いな……なぁ霊夢? 今度私を送ってくれないか?」

 

「嫌よ面倒だから。結界を開くのも一苦労だし、そもそも結界を開くなんて……」

 

「その前に俺が『勝手口』作ってるの忘れて無い?」

 

「「あ」」

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そう言えばそうだった、と横島の一言でお互いの顔を見合わせる二人。

 

事の発端である幻想郷の『勝手口』は、目の前のトンデモ存在(笑)の語る外の世界のイメージによって忘れかけられていた。

 

……まぁ今のところ大した影響は無いが、十分注意をしないといけないのだが。

 

「それだ! 今度それを使って外に行ってみようぜ、霊夢!」

 

「……あぁもう! 分かったわよ。

管理はアイツに任せるとして、『博麗の巫女』がこのままにしておく訳にはいかないわね」

 

乗り気の魔理沙にやれやれと首を振りつつ、霊夢は折れた。

 

結界をどうにかしないといけない、という思惑もあるが、外への好奇心も手伝ってかなのか、その表情には仕方ないと言いつつも軽く笑っていた。

 

「それじゃさっさと紅魔館へ行って用事を済ませないとな! 横島、掴まれ!」

「へ?」

 

咄嗟に手を前に出すと、魔理沙はその手を掴むと箒を浮遊させた。

 

「ちょ!?」

「一気に加速するぜ!!」

 

横島の悲鳴を聞かず、手を箒の柄へと添え、スペルカードを宣言する。

 

手を離された横島は空中でジタバタしながら箒の先を掴んだ瞬間――

 

「彗星『ブレイジングスター』!!」「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

箒の先から出た極太なレーザーが横島を呑み込み、一気に加速した箒は幻想郷を掛ける一瞬の閃光と化した。

 

「魔法の箒はこんなんばっかかぁぁぁぁぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ!!?」

 

遠ざかる横島の悲鳴に、霊夢は溜め息を吐いた。

 

振り返ると極太レーザーの被害を受けたと思われる鳥居が若干欠けているのを見て、僅かな怒気を含ませ……

 

「……魔理沙、あとで〆る」

 

ボソッと呟いた一言は高速移動中の魔理沙の背筋に悪寒を走らせるのであった。

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「あら、美鈴。

あなたが居眠りしていないなんて珍しいわね」

 

「咲夜さぁーん、それって私が居眠りばっかしてるって言ってませんか!?」

 

あら違うの? と純粋に首を傾げる咲夜に美鈴はシクシクと項垂れた。

 

ここは紅魔館門前。

 

門番として立つ少女「紅 美鈴」に話しかけるメイドの少女の名を「十六夜 咲夜」と言い、この紅魔館のメイド長だ。

 

「……それにしても、咲夜さん何の用ですか?」

 

「あら、お昼を届けに来たのだけれど要らないy「頂きます!」えぇ素直でよろしい」

 

一瞬にして手に数個のおにぎりと湯呑みをお盆に載せると、美鈴は咲夜の言葉を遮って素直に頭を下げた。

 

微笑む咲夜の顔からして恐らく冗談であったのだろう……多分。

 

「ところで美鈴」

「ふぇ?」

 

「私の見間違いで無ければ、向こうから何か飛んで来るんだけど……」

 

「……あー」

 

頬張っていたおにぎりを呑み込んでお茶を啜り、一息吐いたところで美鈴は前を向く。

パシン、と拳を打ち鳴らし、美鈴は準備運動を始めた。

 

 

「まぁた白黒でしょうね。「分かってると思うけど、ちゃんと止めるのよ?」

やだなー咲夜さん……止めれたら毎回毎回フッ飛ばされてませんよ……」

 

遠い目で白黒――魔理沙が来る方向を眺めながら美鈴は乾いた笑みを浮かべた。

 

大丈夫かしら? と若干不安になりながらも、咲夜は魔理沙と思われる影を眺める。

 

「さーて、開幕マスパに気をつけて、っと……あれ? 何だか白黒の箒が変な気がしますね……」

 

しばらく観察して、なんとなくわかった。

 

箒の先の部分を掴み、そのままレーザーに焼かれているナニカに美鈴は首を傾げた。

 

はて、箒の先を掴んでいるのは一体何なのかと気になった所でポロっと箒から落ちた。

 

「あ、落ちた」

 

「取りあえずここ頼むわよ美鈴。期待はしてないけど」

 

そんなぁと涙目になる美鈴を無視して咲夜は紅魔館へと戻っていく。

 

取りあえず狙いであろう図書館の方へと赴き、咲夜は静かに扉を開けるのであった。

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あとがき

 

取りあえず紅魔郷編の導入部を書いてみました。

 

最初は横島を紅魔郷の使用キャラとして参加させるつもりだったのですが…。

 

話が進まなかったので紅魔郷の後日談として書いていきます。

 

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