真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第一話 |
「・・・・・・・・・・」
練兵場の一角で、二人の男女がにらみ合う。
「どうした?打ち込んでこないのか?」
「っっ!!やああああああ!!!!」
男の挑発に、娘が思い切り地を蹴り、斬りかかる。
「甘い」
ガキン!
金属音が響き、男の剣が娘の剣を軽々と受け止める。
「攻撃が単調すぎるぞ。もう少し相手を揺さぶるんだ。・・・こんな風に」
ふっ、と、男の姿が掻き消える。
娘がその動きを察知し、後ろを振り向く。
そこに男が立っていた。
「今のは見えたか。じゃ、これならどうかな?」
男がすさまじい速さで左右に動きながら、娘に迫る。
「わ、わ、わ。・・・こっち!!」
慌てながらも、男の動きにあわせ、娘は剣を振る。が。
「残念」
娘の剣は空を切り、そして、男の剣が娘の喉にピタリと当てられた。
「あう・・・・」
「ふふ。・・・今日はここまでにしようか、桃香」
そう言って、剣を娘から離し、鞘に収める男。
「・・・う〜〜〜。やっぱり勝てないよ〜〜。一刀ってば強すぎ〜〜」
「はは。けど、桃香だってたいしたもんだぞ。俺とこれだけ打ち合えるんだから」
「五合持たないのは打ち合うって言わないよ。白蓮ちゃんとなら互角なんだけどな〜」
「白蓮か。懐かしい名前だな。櫨植先生の私塾以来か、会ってないのは」
「今は洛陽にいるらしいよ。・・・この間の手紙に書いてあったけど、近々どこかの太守に、
任じられそうだって」
そう言いながら立ち上がる娘――桃香。
「太守か。そうなったらかなりの出世だな。俺たちの同期中でも一番になるんじゃないか」
「一刀だってその気になれば、郡の太守、ううん、州の牧にだってなれるんじゃないの?」
「俺なんて全然さ。県令の身分だって親父から継いだだけなんだし、州の牧なんてとてもとても」
汗を拭きながら、笑顔でそう言う男――一刀。
「も〜。一刀ってばもう少し上昇志向を持とうよ。・・・なんたってあたしの自慢のお兄ちゃんなんだから」
「お?久々に聞いたな。桃香が俺をお兄ちゃんって呼ぶの」
そう言われて、思わずもれた自身の一言に、赤くなる桃香。
「もう!一刀の意地悪!!」
「ははは」
(でも、ほんとに自慢のお兄ちゃんなんだよ?劉翔北辰は、劉備玄徳にとっての)
そう心の中で、ひそかに想う桃香。
ここ、幽州は琢郡・琢県にて、その県令を務める兄、劉翔・字を北辰。真名は一刀と、
それを補佐する妹、劉備・字を玄徳。真名は桃香。
二年前。前県令であった父の死後、その後をついで県令に就任した兄を補佐すべく、
桃香は少し予定を繰り上げて、私塾から帰ってきた。
兄は父が没する一年前に、父親の病を理由に、故郷である楼桑村に帰っていた。
それからというもの、桃香は兄のことばかり考えていた。
親友である白蓮・公孫賛には、
「まるで恋する乙女だな」
と、冗談交じりに言われた。
だが、三年ぶりに兄と再会したとき、桃香は気がついた。
いや、気付いてしまった。
自分が、兄に対して、持ってはいけない感情を抱いていることに。
むろん、言葉にすることだけは決してしなかったし、今でもそうである。
おそらく、一生言葉にすることはないだろう。
だから、せめて、名前だけは、”一刀”と、呼びたかった。
そのたびに、高鳴る胸の鼓動を抑えながら。
「・・・桃香?どうかしたか?」
「え!?あ、ううん!!なんでもないよ〜!!さ!ご飯を食べたら、残ってる仕事、片しちゃお!!」
「あ、ああ」
兄の背を押しながら、
(顔があかくなってるの、気付かれませんように)
そう祈る桃香であった。
昼食を済ませた後、執務室にて政務に励む一刀と桃香。
そこへ、一人の女性がやってきた。
「五月(さつき)さん。どうしました?」
「・・・公務中はちゃんと姓名で呼ぶようにと、いつも言っていますでしょう?」
「う。・・・ごめんなさい。・・・それで、簡雍さん、用件は?」
「太守さまに書状が届いております。送り主は公孫白珪様です」
簡雍と呼ばれた女性が、一刀に書状を渡す。
「白蓮から!どれどれ」
「一刀、白蓮ちゃんなんて?」
久々に送られてきた旧友からの手紙に、少し興奮気味の劉兄妹。
「へえ!!白蓮、北平の太守に任じられたってさ!!」
「北平の?!じゃあ、近いうちに挨拶に行かないと!!」
「ああ。お祝いもかねて、な。手紙では今週中には到着するらしいから、準備しとかなきゃな」
「そうだね。簡雍さん、大丈夫ですよね?」
「そうですね。北平までは片道でも二日というところですか。
それくらいならば、私だけでも何とかなりますよ。存分に旧交を温めてきてください」
笑顔でそう返す簡雍。
「ありがとう、五月さん」
「ですから、公務中は姓名でと、言っているでしょう!!まったくあなた方ときたら!!」
「あ〜、つい」
「つい、じゃないでしょう。まったく」
「あはは」
部屋の中に笑い声がこだました。
その頃、楼桑村に程近い場所にて。
「姉者ー!!邑が見えたのだー!!」
「わかってる!鈴々!!あまり先に行くな!!」
赤毛の少女の声に答える、黒髪の少女。
「ふふ。天下の関雲長も、義妹には甘いんですね」
その背に男が声をかける。
振り向き、すまなそうな表情で、
「申し訳ありません。・・・言って聞かせてはいるのですが」
そう答える少女。
「良いんですよ。お気になさらず。・・・それより、あの邑が楼桑村で、間違いないのですね?」
「はい。以前に訪れたのは、まだ物心つくかつかないかの頃ですが、場所だけはよく覚えています」
「そうですか」
にっこりと、少女に微笑む男。
彼らの後ろには、五十人ほどの男たちが従っていた。
「あの村で間違いないのですね?あなたの宝剣を奪ったという、賊が根城にしているのは」
邑の方を見ながら、男に問いかける少女。
「ああ。我が家に伝わる由緒正しき一品を、ね」
にやりと、笑みを浮かべながら答える男。
少女はそれに気付かず、
「わかりました。必ずやその剣、取り戻してごらんにいれましょう。
その暁にこそ、我が真名を預け、終生、御身の剣となりましょう」
再び男の方を見て、自信満々にそう言い放つ。
「期待してますよ、関雲長殿」
にこりと微笑む男。
「お任せを。・・・劉備玄徳殿」
はい。
刀香譚の第一話にございます。
いかがでしたでしょうか。
オリキャラとしてひとり、簡雍さんを出しました。
字(あざな)をちょっとしらべてないんで、次までには調べておきます。
さて、一刀と桃香の関係について少しだけ触れました。
というより、桃香の想いだけですが。
一刀の方の想いについては、また今後ということで。
最後にちらっとだけ出てきました、愛紗と鈴々。
二人が従っているのは果たして?
な〜んて、皆様ならすぐわかりますよね。
そう、あいつです。
その目的は何なのか?
一刀と桃香の運命は?
愛紗と鈴々はどうなるのか?
ハムの出番は?!(笑)
第二話にこうご期待!!
コメントもお待ちしてます!!
では。
説明 | ||
刀香譚の第一話を投稿です。 いつもながらの駄文ですが、 見てやってください。 |
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コメント | ||
偽者に思わず吹いてしまったwww(稲荷大神) 出た、偽劉備(グロリアス) アニメ版の変態君が出てきた(VVV計画の被験者) 一刀の武術の腕前は白蓮と同等なのでしょうか?昔の事だからまた変わってくるのかな? そこらへんも含めて楽しみです(ペンギン) ここでアニメ版偽劉備がでてくるとは・・・ ますます面白くなってきたな。 (hokuhin) あきそら・・・か。そうなったら大変だなwwwたしか呉の作品で兄妹のやつがあったきがする・・・(ちいさいひと) また、背徳的なww・………………………………………………・……………………………………ぜひww あきそらみたいになるのかな、そうなると(gmail) ↓の意見に賛成!!作者お願いします!!www(スーシャン) 男の劉備はどーでもいいやwハムに・・・みんなが大好きハムに活躍の場を与えてあげてwww(おやっと?) 簡雍さんの字は、憲和っていうそうです。(gmail) フルボッコですか?w(2828) アニメ版劉備来た〜ww それにだまされる愛紗って www(かもくん) gmailさま、はい、また(笑)です^^。(狭乃 狼) アニメの劉備だww底の浅い男ですね、ホント。ていうか、愛紗また騙されたんだww (gmail) はりまえさま、先読みしちゃやーの。ガンバリますけど。(狭乃 狼) 偽物?出てきてお兄ちゃんキレる!?かもしれない・・・・のを期待したいな。ファイトに頑張ってください(黄昏☆ハリマエ) ちいさいひとさま、まったく以ってそのとおりです。何ででしょうね?^^。(狭乃 狼) ガブリエル三世さま、shunさま、コメントをどうも。アニメとは違って桃香とはすぐに顔をあわせますから、その後どうなるか、ご期待のほどを。(狭乃 狼) アニメのような設定ですな(rababasukan) 男の劉備も県令補佐の名前を使うとは大胆ですねwwwすぐバレそうですがwww(ちいさいひと) でも続きが気になります(ガブリエル三世) ほんとにアニメっぽいですね(ガブリエル三世) カズトさま、さっそくどうも。喜んでいただけて、好好^^。(狭乃 狼) おお!?ちょっとアニメっぽいなww(スーシャン) |
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恋姫 真・恋姫無双 一刀 桃香 | ||
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