真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第二話
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 楼桑村はここ幽州でも、かなり裕福な邑である。

 

 父の代から細々と行なっていた生糸の生産を、一刀の代になってから、本格的に、始めたからだ。

 

 桑の木を増やし、蚕を増やす。糸を紡ぐ職人も育てた。

 

 その結果、生糸の生産量は五倍以上となり、邑の収入も激増した。

 

 今年からは、住民からの徴税をやめたほどである。

 

 だが、当然のようにそれを狙う賊も現れ始めた。

 

 一刀は妹の桃香とともに、それらを次々に撃退し、降るものは許して、労働力や、

 

 自警団の戦力にしていった。

 

 そのためか次第に賊の出現頻度も下がり、今では大陸でも一二を争うほど、治安がよくなっていた。

 

 

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 それに目をつけた一人の男がいた。

 

 大陸各地で詐欺を生業にしてきたその男は、そろそろどこかに腰を落ち着けることを考えた。

 

 そんな時、楼桑村の噂を聞いた。

 

 「最後の一勝負といくか」

 

 その辺のごろつきたちを金で雇い、官軍に見えるように、偽装した。

 

 そのためほとんどの財産を使い果たしたが、失敗する可能性など、男の頭にはかけらもなかった。

 

 そうして幽州に向かう途上で、二人組みの少女と出会った。

 

 その一人の容姿を見たとき、こいつらは使える、と男は思った。

 

 噂に聞く黒髪の山賊狩り、関雲長と、義姉妹、張翼徳。

 

 男は、自身の家に伝わる宝剣を、盗まれてしまったと、二人に言った。

 

 しかも、その犯人が自分の名を騙り、琢県で県令をしているらしい、と。

 

 二人はあっさりと信じ込んだ。

 

 そして、目的の邑に到着した。

 

 黒髪の少女、関羽と、赤い髪の少女張飛が、邑の前で二人の人物と対峙していた。

 

 「聞け、賊ども!!わが名は関羽雲長!!劉備玄徳殿より盗みし宝剣、返してもらいに来た!!」

 

 「怪我したくなかったら、おとなしくお兄ちゃんに返すのだ!!」

 

 勢い良く口上を述べる二人。が、

 

 シーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 誰も何も答えなかった。

 

 「どうした!!わが名を聞いて怖気づいたか!!」

 

 「・・・官軍の一団がこっちに向かってる、っていうから来てみれば・・・。関羽、と言ったな。

 

 誰が誰の剣を盗んだと?」

 

 「わたし、靖王を盗まれたことなんてないけど」

 

 二人の人物、青年と娘が交互に言う。

 

 「わ。同じ顔が二つあるのだ」

 

 張飛が驚く。

 

 「おぬしらが賊の頭目か?名があるのならば名乗れ!」

 

 「誰が賊の頭目だ。・・・わが名は劉翔、字を北辰。ここ琢県の県令を務める者だ」

 

 「その補佐。劉北辰が妹、劉備玄徳」

 

 「なん・・・だと?」

 

 

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 それが男の大誤算であった。

 

 伝え聞いた話では、県令が劉備玄徳で、男だと聞いていたからだ。

 

 まさか劉備が女で、しかも県令はその兄の方だとは。

 

 動揺しつつも、男は関羽に、

 

 「関羽殿、動揺してはいけません。これこそがやつらの手口。人の名を騙るどころか、県令まで騙るとは。

 

 これを見よ!これこそ朝廷より頂いた委任状である!!この委任状こそ、私が本物である動かぬ証拠!!」

 

 懐から一枚の書状を出し、広げる男。

 

 (この手の偽造はお手の物よ)

 

 そう、書類の偽造などは男がしょっちゅう使っていた手である。

 

 そのおかげか、その出来は本物と比べても判別できないほど、精巧に作れるようになっていた。

 

 「・・・そうでしたな。私としたことが賊如きの言葉に踊らされるとは」

 

 手に持つ大刀を構え直し、一刀に向ける関羽。

 

 「もはや問答は必要ない。さあ、わが青龍堰月刀の味を思う存分に味わうがよい!!」

 

 「・・・仕方ない。言って分からないのであれば、剣に問うまで。剣の交わりは百の言葉に値する。

 

 ・・・桃香、手を出すな」

 

 「うん。・・・出してもあたしじゃ相手にならないだろうし。・・・強いよ、あの子」

 

 「分かってる」

 

 関羽の方へと歩み寄る一刀。

 

 「鈴々、お前も手を出すな」

 

 「む〜。つまんないのだ〜。あのお兄ちゃん強そうだから、鈴々も戦いたいのだ」

 

 「我慢しろ。・・・私がだめだったら、お前に任せるから」

 

 (そうだ。こやつはかなり強い。私でも勝てるかどうか分からん)

 

 関羽も一刀の方へと足を踏み出す。

 

 「・・・劉北辰、参る!」

 

 「・・・関雲長、参る!」

 

 ガギインン!!

 

 一刀の剣と関羽の堰月刀が激しくぶつかり合う。

 

 

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 それを苛立ちながら男が見つめる。

 

 (くそっ!関羽め、あんな優男にてこずりやがって!とっとと捻り潰せばいいものを!!)

 

 男には分かっていなかった。

 

 二人の戦いが、常人のそれをはるかに超えた域にあることを。

 

 所詮は凡人である。人を騙す事しか能はなのだろう。

 

 (ならば予定通りに)

 

 男は、近くにいた一人に、耳打ちをする。

 

 そして、その一人がひそかに集団から離れた。

 

 みな、一刀と関羽の戦いに見入っていた。気づくものは誰もいなかった。

 

 

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 「・・・惜しい。なぜこれほどの使い手が賊などに身をやつす!!」

 

 「だから、賊じゃないって言ってるだろ。この石頭!!」

 

 ギインっ!!

 

 何十合打ち合っただろうか。一刀は一向に疲れる気配を見せない。

 

 それに対し、関羽は息が上がりつつある。

 

 「・・・関羽、だったな。あんた、かなり生真面目と見た」

 

 「ど、どういう意味だ!!」

 

 「心は武に現れる。師匠の教えでね。・・・こんな風に!!」

 

 ざざざっ!と、一刀は左右に高速移動しながら、関羽に迫る。

 

 「おのれ!ちょこまかと!!」

 

 ぶおん!!と、堰月刀を振るう関羽。

 

 「そう、こうして攪乱する相手には、力任せがもっとも有効な手段。けれど!!」

 

 がしいっ!!

 

 「なっ!?」

 

 「にゃっ!!」

 

 「馬鹿な!!」

 

 「・・・その分、動きを予想しやすい」

 

 関羽の渾身の一撃、それを腕一本で、一刀は受け止めた。

 

 「ばかな・・・」

 

 「鋼気功、ってやつさ。・・・終わり、だ」

 

 「!!」

 

 どごっ!!!

 

 「がはっ!!」

 

 一刀が、剣の柄で関羽のみぞおちに一撃を入れた。

 

 その場に膝をつく関羽。

 

 「・・・にゃ〜。愛紗が負けたのだ」

 

 「さすが一刀。かっこいい!!」

 

 

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 「・・・使えねえ女だ。・・・所詮女は女か」

 

 「劉備・・・どの」

 

 「けっ!!やめだやめだ!!楽して邑一つ乗っ取ろうかと思ったが、興が削がれたぜ!!」

 

 「な・・・・に?」

 

 「ふん!わざわざこんな委任状まで作ったってのによう!!」

 

 びりびり、っと、委任状を破く男。

 

 「なっ!!」

 

 「お芝居はもう止めだ!!あれを見な!!」

 

 男がはるか後方を指す。

 

 そこには、砂塵が舞い上がり、そして、地響きがし始める。

 

 「軍勢!?・・・まずい!!あの砂塵からすると、一万はいる!!」

 

 「そんな!ここには二千しかいないのに!!」

 

 五月――簡雍の言葉に動揺する桃香。

 

 「はーーーっはっはっは!!!この邑は今日から俺たちが頂く!!いや!!この俺が、

 

 本物の琢県県令・劉備玄徳になるのだ!!」

 

 「くっ・・・!!おのれ!!この外道が!!よくもわれらをたばかってくれたな!!」

 

 関羽がふらふらと立ち上がり、男に詰め寄る。

 

 「騙されるやつが悪いのさ。世の中頭の良い奴が勝つんだよ」

 

 「・・・そうとも限らんさ」

 

 「あ?」

 

 男が声のほうに振り向くと、そこに一刀がいた。

 

 「な!いつの間に!!」

 

 「・・・おい、腐れ男。人の最愛の妹の名を騙っておいて、このままで済むと思ってるのか?

 

 ・・・それに、近づいてくる軍勢を良く見な」

 

 「なに?」

 

 男は目を凝らして、その軍勢を見つめる。その先頭に翻るは、赤い、牙門旗。

 

 「なん・・・だ?あれは・・・俺の用意した連中じゃない!!」

 

 牙門旗に書かれた文字は、公孫。

 

 「ぱ・・・白蓮ちゃんだ!!」

 

 「なんと!!今度北平太守になられた、公孫賛殿ですか!!」

 

 「ば・・・ばかな!!なぜだ!!なぜこんなに早く官軍が・・・!!」

 

 「まあ、そこも天が味方しなかった、ってところだろ。・・・こんなに早く来たのは、俺たちも予想外だったけど」

 

 「くっ・・・・・そおおおお!!!!」

 

 男が腰の剣に手をかけ、引き抜こうとする。が、

 

 「ふん」

 

 バキャ!!

 

 「がっ!!」

 

 それより早く、一刀が男に一撃を入れる。

 

 男はその場で気絶した。

 

 「くそっ!頭がやられたぞ!!逃げろ!!」

 

 「そんな訳に行くと思う?」

 

 いつの間にか、手勢で以って周囲を囲んでいた、桃香。

 

 「お。さすが、わが最愛の妹。すばやい対処」

 

 「やだ、もう!!お兄ちゃんてば!!最愛だなんて!!」

 

 慌てて兄から顔を背ける桃香であった。

 

 

 

 〜第三話に続く〜

 

 

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 <あとがき>

 

 桃香譚の第二話でございやっさ。

 

 なんか、こっちの話ばっかり、頭に浮かぶ今日この頃。

 

 出来たものはしょうがないので、投稿するのです。

 

 今回は特に言うことナッシンです。

 

 一刀と愛紗の一騎打ちはいかがでしたでしょうか。

 

 もし楽しんでいただけたのなら、これ以上の喜びはありません。

 

 

 ではまた次回、第三話にて、お会いしましょう。

 

 コメントもお待ちしてます。

 

 それでは、再見〜。 

説明
刀香譚の第二話をお送りします。

偽者の出現に一刀がどう出るか、

では、駄文の世界へどうぞ。
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コメント
鋼気功はたしか硬じゃなかったかな(やはから)
鋼気功? 硬気功のまちがいでは?(車窓)
白蓮は有能なんです。 周りが逝かれてるだけです。(M.N.F.)
偽劉備が馬鹿すぎますwww(ペンギン)
一刀は武チートで、桃香は用兵チートかな。次の白蓮との賊退治楽しみにしてます。(hokuhin)
次回、みんなの白蓮さんが大活躍www (gmail)
白漣の出番は次回かなww(2828)
さすが白馬長史は格が違った。騎兵の運用に定評のある白蓮ですからこの兵力の展開の速さも頷けます。さて、次回は愛紗と鈴々の処断になるのでしょうか。普通に許してしまうとありきたりの展開になってしまいますし、ここは泣いて関羽を斬りましょうw(Daisuke)
弐異吐さま、けして無能ではありませんよ?有能でもないけどww(狭乃 狼)
おやっと?さま、まだまだ、あとちょっとw、だけ?wwかな?www(狭乃 狼)
紫電さま、ありがとうございます。向こうもこちらもお楽しみにです。(狭乃 狼)
白蓮が有能にみえる(弐異吐)
白蓮いいタイミングででてきたwwwさすがですねwwwもう出番終わったかな?ww(おやっと?)
はりまえさま、そのうち始まりますよ〜^^。(狭乃 狼)
カズトさま、お喜びいただけましてなにより。(狭乃 狼)
何この兄妹のやり取り?若干ピキっときた私がいる。そしてお兄ちゃん争奪戦がみたいと思う自分がいる・(黄昏☆ハリマエ)
男ざまぁwww(スーシャン)
sink6さま、天誅、天誅。当然の結末です。(狭乃 狼)
ロンギヌスさま、ぜひご期待に応えましょう^^。(狭乃 狼)
やっぱ偽者には天誅ですよねw(sink6)
「ベタ惚れ愛紗が見てみたい」…と呟いてみる(ロンギヌス)
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