「流石は策殿といったところか。あの華雄を圧倒しておるわ」

孫策の部隊に続く黄蓋が呟く

前方をみると勢いに圧され撤退する華雄を容赦なく追撃していく若き主の姿があった

「だが、なにやら奇妙な動きのような…」

優勢である策殿は気付いていないようだが圧されているはずなのに淀みなく退いていく華雄…その上部隊も敗走しているというのに瓦解する様子が全く見られない

いや、そもそもいくら策殿の攻勢が激しくとも、こんなに早く撤退を開始するものだろうか

「まさか！？」

そういって後ろを振り向く黄蓋

みると先陣部隊の自分達と中盤の部隊との間が開き始めていた

「くっ迂闊じゃった！！」

自軍の優勢に勢い付き過ぎた自分達は知らず知らずに速度を上げすぎていたようだった

「策殿！！先走りすぎじゃ「今です！！両翼より、挟みうつです！！」っく！！」

華雄の部隊に押しのけられる形で両脇に分かれていた敵部隊が自分達先陣と中軸の部隊の間を断ち切る様になだれ込んでくる

「くっ…。やられたわい…！！」

その攻勢に反応するまもなく、自分、策殿の部隊と後続部隊とのつながりを陳宮、于禁、そして十文字の北郷の部隊に分断されていたのだった

「なっ…！！やってくれるじゃない…！！」

孫策が怒気を放ちつつ言う

後方から祭の声が聞こえたと思ったらいつの間にか両脇に逸れていた部隊により後続部隊との連携を断ち切られていたのだった

「皆聞け！！祭達の部隊と連携して中盤との繋がりを…〈ガキィィン！！〉くっ！！」

北郷、陳宮の部隊を破るため兵達に命を出そうとするのだが華雄の一撃に邪魔される

「逃がさないのではなかったのか？」

そういって二撃、三撃と打ちこんで来る華雄

「あなた、っく！わざと負けた振りをしてたのね、ふっ！！」

周りを見ると、先ほどまで敗走していた華雄の部隊も息を吹き返したかのように一気に攻勢に周り、乱戦となっていた

「ああ。ふっ！！この戦、貴様の存在が余計だったからな、ぐっ！！戦が終わるまで、このまま私に付き合ってもらう、はぁぁ！！」

先ほどまでと見違えるほどの力強さで打ち込んでいく華雄

だが、孫策もその攻撃に勝るとも劣らぬ一撃で応戦する

実力の拮抗した両者の戦いは何十合と続くのだった…

敵の分断に成功した俺達は、黄蓋さんの部隊には俺とねねの部隊、後続部隊には沙和が率いる部隊で対抗していた

「まさか、おまえらのような儒子どもに出し抜かれるとはな」

「貴女が黄蓋さんだね。悪いけど後ろとは合流させないよ」

俺の言葉に黄蓋さんは笑いながらいう

「はっはっは！！儒子も、隣のちびっこいのも見たところ武の心得はない様じゃ、いい所指揮官と軍師といったところじゃろう？おぬし等風情が儂を倒せると思うてか！！」

「ちびっこっていうな！なのです！それに、おまえのようなバケモノねね達では倒せない事くらい承知の上なのです！！」

ねねがこれっぽっちも自慢にならない事実を胸を張って言う

「…では、どうするというのかのう？儂を倒せねば、いずれ後続の部隊に挟まれるだけじゃぞ？」

「ああ、それは大丈夫だよ。」

黄蓋さんの言葉にきっぱりと答える俺

「なんじゃと？」

その様子が気になったのか、黄蓋さんが聞いてくる

「俺達の役目は貴女と孫策の兵の足止めだけ。貴女が相手でも時間ぐらいは稼がせてもらう。そうすれば俺達の勝ちだ」

「「「「「うおぉぉぉぉおお！！！」」」」」

後方から見方の怒号にも似た声、それに馬の嘶きと敵の悲鳴が上がる

「なっ…！！」

その声に驚く黄蓋さん…それを気にせず俺は続ける

「なぜなら俺達には、鬼神がついているからな」