真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第四話
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 「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん!今だよ兵を左右に!!」

 

 「了解です!!」

 

 「応なのだ!!」

 

 桃香の指示を受け、関と張の旗の部隊が素早く展開する。

 

 瞬く間に陣形が方陣から鶴翼へと変わる。

 

 あっという間に包囲されてしまった賊軍が、慌てふためく。

 

 「放てーーーーー!!」

 

 桃香の声とともに、五千の兵が一斉に矢を射る。

 

 賊兵たちは次々と矢に貫かれ、倒れていく。

 

 「くそっ!!退け、退けーーー!!」

 

 たまらず後退を始める賊軍に、今度はその撤退先から、別の一団が襲い掛かる。

 

 「我こそは劉北辰!敵将は何処だ!!」

 

 蒼い戦装束を纏った一刀が、賊軍の将らしき男を視界に捕らえた。

 

 「黄巾の将、ケ茂だな!覚悟しろ!!」

 

 「なめるな小童!!」

 

 頭に黄色い布を巻いた男が、大刀を振りかざして、一刀を迎え撃つ。

 

 そしてすれ違いざま、

 

 どかっ!!

 

 一撃で男の首を落とす一刀。

 

 「賊将ケ茂!劉北辰が討ち取った!!」

 

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 一刀たちが、桃園にて義兄妹の契りを交わして既に一月。

 

 これまでは散発的にしか現れていなかった賊達が、頭に黄色い布を巻いた者達によって統率され、

 

 大陸各地でその規模を大きくし始めていた。

 

 世に言う、「黄巾の乱」の勃発である。

 

 一刀たちも郡太守である白蓮の指揮下、幽州各地を転戦し、その討伐にあたっていた。

 

 ケ茂を討ち取り、賊軍の別働隊、三千を撃退した一刀達は、敵の本隊と対峙する白蓮のもとに帰還した。

 

 「ご苦労さん、一刀、桃香、関将軍に張将軍も。よくやってくれたな。これで横腹を突かれる心配は無くなったな」

 

 笑顔で一刀たちを迎える白蓮。

 

 「伏兵の情報をお前が持ってきたときはどうなるかと思ったが、一刀達が居てくれて助かったよ。なあ、水蓮(すいれん)」

 

 「そうだな、姉貴。愛しい人が居てくれて、な」

 

 「ば!!な、何を言い出すんだお前は?!」

 

 真っ赤になって、水蓮こと妹である公孫越を睨む白蓮。

 

 (じと〜〜〜〜〜〜〜〜)

 

 その白蓮の背に、殺気のこもった視線が突き刺さる。

 

 桃香だった。それはもう、すさまじい形相で。

 

 「そ、そんなことよりだ!!いつも言ってるが、言葉使いを直さないか!!」

 

 「細かい事あ、いいじゃんか。誰に迷惑かけるでなし」

 

 (私が迷惑してるんだっての)

 

 そう、水蓮は将として姉に仕えるようになってからも、昔からの言葉使いのままで居た。

 

 「まあまあ。姉妹喧嘩はそれくらいで。公孫賛どの、それで戦の状況は?」

 

 白連をなだめ、軍議を進める様に促す愛紗。

 

 

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 「・・・正面の兵力は約三万。こちらは一刀たちを含めて二万と五千。向こうは所詮烏合の衆とはいえ、

 

 まともにやり合えば、こちらにも相当の被害が出るだろうな」

 

 「なら、敵を分断してからの各個撃破が、一番かな?ね、一刀?」

 

 先程までの凄まじい嫉妬の炎はどこへやら。

 

 まじめな表情で一刀に問う、桃香。

 

 「そうだな。俺と桃香、愛紗で敵を引き付けて、白連と鈴々で左右から横撃。

 

  敵を分断したところで、各個に撃破を」

 

 一刀がそこまで言った時だった。

 

 「し、失礼します!!た、大変です!!」

 

 天幕の外から、兵士の声が聞こえた。

 

 その声は相当に焦っている。

 

 「何事か!?」

 

 「か、華雄将軍がお一人で敵陣に!!」

 

 「なんだと!?」

 

 「白蓮、華雄将軍って?」

 

 はじめて聞く名に、思わず質問する一刀。

 

 「ああ、そういえばまだ話してなかったな。詳しいことは後で話すが、別の軍から一時的に、

 

  私を手伝いに来てくれているやつでな。お前たちに次いで、私が親友になったやつだ」

 

 すっと席を立ち、剣を腰に佩(は)く、白蓮。

 

 「水蓮、すぐに出陣の支度を!!見殺しにするわけにはいかん!!」

 

 「あいよ。しょーがねーな、あの姉ちゃんも」

 

 同じく席を立つ水蓮。

 

 「白蓮、俺たちも手伝うよ。いいね、桃香、愛紗、鈴々」

 

 「もちろん」

 

 「まったく、世の中には無謀な奴が居るものです」

 

 「鈴々も頑張るのだ!!」

 

 「・・・すまん、感謝する」

 

 

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 ちょうどその頃、山間に陣を張る黄巾軍の真っ只中。

 

 一人、戦斧を振るい、死闘を演じる者が居た。

 

 紫の鎧を纏う、その者の名は、華雄。字はない。

 

 その周囲には無数の賊兵の死体。

 

 「どうした貴様ら!!もっとかかって来い!!それともこの私に怖気づいたか!!」

 

 叫ぶ華雄。

 

 だがその息は荒い。既に半刻近く、戦い続けていた。

 

 (体力はまだある。しかし、足場がこれでは・・・)

 

 自ら築いた屍によって、足場の確保がしにくくなっていた。

 

 そんな華雄を、周囲の賊達がさらに包み込む。

 

 (これまで、か・・・・)

 

 そのときであった。

 

 「華雄ーーー!!生きているかーーーー!!」

 

 突如響き渡る、女性の声。

 

 「白・・・蓮?」

 

 「幽州の精兵達よ!!賊どもにその力を見せてやれ!!全軍・・・突撃!!」

 

 「おおーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 二万の幽州軍が、白蓮の号令で、左右の崖から一気に駆け下り、黄巾軍に襲い掛かる。

 

 そしてさらに、正面にも別の軍勢。

 

 黄巾軍の者たちは、恐慌状態におちいった。

 

 あれよあれよという間に、討たれていく。

 

 その中でただ一人、呆気にとられる華雄だった。

 

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 その後、賊将の程遠志は鈴々によって討ち取られ、残った者たちも半数以上が討たれたところで、

 

 残る者はすべて投降した。

 

 戦は終結した。

 

 幽州軍にも、相当の被害を出して。

 

 立ち尽くす華雄の傍に、近づく白蓮。

 

 「華雄、無事だったようだな?怪我はないか?」

 

 「白蓮か。私は大丈夫だ。怪我などしてもおらん」

 

 「そうか。・・・もう一度だけ聞くが、怪我はしていないんだな?」

 

 「だからそう言っているだろう!あんな賊どもに遅れを取る私ではない!!」

 

 しつこい白蓮に怒鳴る華雄。

 

 「なら、遠慮はいらないな」

 

 「え?」

 

 バキイッ!!

 

 「!!」

 

 突然、華雄を殴り飛ばす白蓮。

 

 「ちょっ!!白蓮、何を・・・」

 

 「お兄ちゃん、待って」

 

 あわてて飛び出そうとする一刀を、桃香がその腕を掴んで止める。

 

 そして、無言で首を振る。

 

 双子の兄妹である。一刀の理解は早かった。

 

 (手を出すなってことか)

 

 

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 「白蓮お前!!いきなり何を「ふざけるな!!」・・・う」

 

 白蓮の迫力に、黙り込む華雄。

 

 「何をするだと?それは私の台詞だ!!自分が何をしたのか、周りをよく見てみろ!!」

 

 言われて、周囲を見渡す華雄。

 

 そこには、大勢の怪我人が居た。すべて、公孫賛軍の兵だ。

 

 「お前が一人で先走った結果がこれだ!出なくて良かった犠牲も出た!」

 

 白蓮は、自軍の兵たちの死体置き場へと、その視線を転じる。

 

 すでに物言わぬ屍となった者達が、整然と横たわられていた。

 

 「彼らにお前はなんと言って詫びるつもりだ!!」

 

 白蓮の目には涙が浮かんでいた。

 

 「・・・・・・」

 

 何も言えず、俯く華雄。

 

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 その華雄と白蓮のもとに、一刀がいつの間にかやってきていた。

 

 「一刀・・・」

 

 「はじめまして、だね、華雄さん。俺は劉翔。白蓮の幼馴染だ」

 

 何も答えない華雄。

 

 「・・・あなたのことはここに来るまでに少し聞いた。かなりの武を誇る猛将だと」

 

 「・・・・・・・」

 

 「けど、話とはまったく違ってたな。こんなに弱い人とはね」

 

 「!!なんだと!!」

 

 一刀の言葉に憤り、掴みかかろうとする華雄。

 

 「怒る資格があるのか!!今のあなたに!!」

 

 「ぐ」

 

 こぶしを握り締めたまま、固まる華雄。

 

 「確かにあなたは誇り高く、強い。けど、真の武はいまだに身に着いていない」

 

 「真の武・・・だと?」

 

 「そう。誇るものは己ではなく、周りに居る仲間。兵も、民も、その全てだ。

 

 そう思える者こそ、真の武を、将の武を得られるんだ」

 

 「将の・・・武」

 

 「それが出来て、初めて一騎当千と言われるようになるんだ。自身の武しか信じないものは、

 

 何処まで言っても、どれほど技を極めようとも、ただの”戦人形”でしかない」

 

 「・・・・・・」

 

 華雄は黙ったまま、一刀の言葉を聞いている。

 

 「あなたがこれから先も将たることを望むなら、少しだけ、周りを信じてみるといい。

 

 そうすれば、きっと将の武は身につくはず。あなたにはその才気があるんだから」

 

 「・・・う、グスッ、う、う」

 

 華雄が嗚咽を漏らしだす。

 

 「ここに居る白蓮も、あなたを待つ、本当の主の人も、そう願っているはずさ。

 

 ・・・分かってもらえたかな、華雄”将軍”?」

 

 「白蓮・・・。月様・・・。・・・わたしは・・・、わたしは・・・、

 

 う、う、うわあああああ!!!!!!!!!!!」

 

 恥も外聞も忘れ、大声で泣き出す華雄。

 

 その肩を、優しく掴み、そして、抱きしめる白蓮。

 

 

 

 長い一日は終わろうとしていた。

 

 

 

 

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 さて、刀香譚の第四話でしたが、皆様いかがだったでしょうか。

 

 白蓮と華雄、この二人、実は仲良しなんだろうなーと、

 

 勝手な妄想の末に、こんな話になりました。

 

 星ですか?

 

 一応次回登場の予定です。

 

 今はまだ、あの二人と旅をしている途中です。

 

 

 

 さて、黄巾の乱が始まり、いよいよ動乱の時代が迫りつつあります。

 

 何処で歴史を大改変するかで、ただいま頭を悩ませております。

 

 とりあえず、次回も黄巾の乱のお話になります。

 

 

 

 ではまた次回、第五話にて、お会いしましょう。

 

 それでは。

 

 

説明
刀香譚の四話です。

まさかの人物が登場です。

誰かは読んでのお楽しみ。

では駄文の世界へどうぞ。
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コメント
あれ、これってうたわれになかったでしょうか?(karibu)
はじめまして。ガチの兄弟愛はあまり見ないのでとても楽しく読んでます(マフェリア)
禁断の恋 GJ(aruto)
gemさま、ありがとうございます。期待していただいていいですよ^^。ぜひ次回をご覧あれ。(狭乃 狼)
紫電さま、多少どころか・・・おっと、口が滑った^^。(狭乃 狼)
moki68kさま、ぜひお楽しみに^^。(狭乃 狼)
お初にお目にかかります。転生モノとお見受けし飛びついたものです。近親恋愛、もしや前世(原作)に関係があるのかと予想しますが作者様の今後の展開を楽しみにしています。 p.s.妹!?嬉しいオリキャラです。公孫姉妹白馬陣、期待していいでしょうか?(gem)
おや?猪フラグが消えつつありますね。反董卓連合がどうなるのか楽しみにしてます。(moki68k)
リョウ流さま、何をデスカ?(狭乃 狼)
ヒトヤさま、感動して貰えたんですか?嬉です。(狭乃 狼)
2828さま、ソンナコトハナイデスヨ?(狭乃 狼)
↑2828さん、感動を返してW(ヒトヤ)
白蓮が殴っただと・・・・目立つためですか?w(2828)
パプワ大佐、サンキュー、サー!であります!拠点でありますか。うー。五話以降となりますが、よろしいでありましょうか!?(狭乃 狼)
お疲れさまです〜個人的な要望ですが愛紗と鈴々の拠点フェイズ的な話を入れてほしいなぁ〜っと。気になりますしね〜3話後の愛紗と鈴々。(パプア大佐)
hokuhinさま、ありがとうございます。ただ、発想に文才がついていけてないんですが。(狭乃 狼)
無印の星の位置に華雄を持ってきたかな。相変わらず面白い発想で感服します。(hokuhin)
はりまえさま、若干、白蓮が濃くなっては来てますがね、最近w(狭乃 狼)
tomo002さま、もちろん、そのための伏線ですww(狭乃 狼)
影が薄い者同志・・・・通じ合ったのか?(黄昏☆ハリマエ)
お疲れ様です〜元々華雄は猪武将でなければ有能な将ではあるとはおもいますからこの出来事でそうなればいいかなと期待w(tomo002)
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