真・恋姫†無双 月詠伝 第二話
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―数年前冬・涼州隴西郡―

 

この日は近年稀に見る雪となり普段の景色と変わり辺り一面白色に染まっていた。そんな白色の地面に目をよく凝らさないと見えない小さな、小さな窪みが一つあった。

窪みは小刻みに震えており、そばには赤い斑点が所々についていた。

 

―――あぁ・・・・ぼく・・・もうダメみたい・・・

 

窪みの震えが次第に弱くなっていき、その動きが止まりそうになっていた

 

―――なんだか・・・眠たくなって・・・・・きちゃった・・・・もう・・このまま・・

 

ズサ・・・ズサ・・・

 

窪みが動きを止めようとすると、何かが雪を踏んで近づいてくる気配がした。

 

―――なんだろう・・・虎かな?・・・別にいいや食べられても・・・あぁ、でも・・・せめて眠った後がいいなぁ・・・痛いのは嫌だよ・・・

 

気配は窪みのすぐそばまでやってくると窪みに手を入れ、窪みから何かを持ち上げた。窪みの中から出てきたのは真っ白いフワフワの毛で被われた獣の子供。子供の獣の左目下からは血が流れていた

 

???「もう大丈夫だよ。今すぐ暖かい所に連れていってあげるからね」

 

子供の獣を持ち上げたのは薄い紫色の髪をした小さな少女。少女は子供の獣の左目元から流れていた血を服の裾で拭った

 

―――なんだろ?・・・すごく・・・・暖かい・・・・

 

子供の獣は先ほどとは違いその顔に生気を取り戻していた。子供の獣を胸に抱いた少女はホッと一安心していると少女がやって来た方向から緑色の髪をしたメガネを掛けた少女が此方に走って来るのが見えた

 

???「ゆ、月〜〜な、なんで、ハァハァ・・・いきなり・・・走り出したの・・・・ふぅ」

 

走って来た少女は月と呼んだ少女のそばまで来ると肩で息をしながら呼吸を整える

 

月「詠ちゃん、ごめんね置いて先に行っちゃって、この子が震えていたのが見えたから・・・」

 

月は詠と呼んだ少女に胸に抱いていた子供の獣を見せる。詠はメガネを掛け直しながら子供の獣を観察する

 

詠「これは子犬?、此処に一匹だけだとすると親と逸れたようね。それにかなり衰弱してるようだし目元の傷も早く治療しないとこの寒さじゃ凍傷になるわよこの子」

 

月「うん、だからね、詠ちゃん・・・」

 

詠「うぅ!!・・・・////// //////」

 

月は潤んだ目で詠に上目使いをすると、詠の顔はみるみる赤くなり頭に積っていた雪が湯気を上げながら溶けてなくなった

 

詠「うぅ〜・・・ハァ、しょうがないわね。帰ったら先ずはお風呂に入れて冷たくなった体を温めないと、次に傷の治療ね、その後は栄養の着くものを用意して・・・・」

 

っと、連れ帰った後の世話についてあれこれ呟きながら考える詠。さすがは、歴史に名前を残した軍師なだけはあった

 

月「連れて行ってもいいの?」

 

詠「ダメって言っても連れて行きたいんでしょ」

 

月「詠ちゃん・・・だ〜〜い好き♪」

 

月は嬉しさのあまり詠に抱きつく、詠はまたしても顔を赤くする。

 

詠「は、早く帰りましょ!小母様達も心配しているだろうし」

 

月「うん、えへへ♪」

 

月は詠と手をつなぎ自分達の帰る家を目指す。二人の顔は笑顔になっており、まだ戦乱の世を知らない子供の姿がまだ二人には見られた。子供の獣はそんな二人に抱かれ安らかに寝息をたてていた。

 

 

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時は変わり現在、県令の不正を暴きそれを報告に行く途中、県令の強襲にあい窮地に追いやられていた月と詠。もう駄目だと思い瞳を瞑るがいつまでも痛みが来ない事に疑問を思い瞳を開くとそこには・・・・・

 

月「大きな・・・・・犬さん?」

 

 

 

真・恋姫†無双 月詠伝 第二話

 

 

 

突然、県兵と月たちの間に現れた全長2メートル以上にもなる大きな獣、一見犬に見えるが犬には到底出しえない覇気を獣は纏っていた。獣は大きな牙を剥き鋭い目付きで県兵達を威圧する。県兵たちはその威圧に圧され後づ去る。

 

獣「ガルルルルルル!!ガウッ!!」(これ以上、月様たちに近づくんじゃねぇ!!)

 

県令「ひぃ!な、なんだよお前!お、お前もぼ、僕の邪魔をするの!そ、そんなの許さないよ!お、お前達なにをしているだよ!はやくそいつ等を殺しちゃって!」

 

県令「は、はい!!」

 

県兵たちは獣の威圧に圧されながらも、主からの命令を遂行しようと前に出る。

 

県兵「い・・・一斉に飛びかかるぞ!」

 

県兵「おう!」

 

県兵たちは互いに合図を出しながら獣を取り囲む。取り囲まれる獣を心配そうに見守る月、詠を抱きしめていた手は無意識に強く握られていた

 

詠「うぅ・・・ゆ・・え?」

 

月「詠ちゃん!?大丈夫?」

 

腕の傷の痛みで意識を失っていた詠が気が付き、月は安堵の息を漏らす。

 

詠「いったい僕達どうなったの?」

 

月「わかんない。県兵さん達に殺されそうになったんだけど、いつの間にかあの大きな犬さんが私達の前にいたの・・・」

 

詠「大きな・・・犬?」

 

詠は月からの説明を聞いて大きな犬がなんなのか聞こうとすると、月が県兵に取り囲まれている銀色の毛をした犬の姿に近い獣を指さす。すると、詠はメガネの奥にある瞳を大きく広げ驚愕していた。

 

月「あの大きな犬さん私達を守ってくれているみたい」

 

詠「月・・・・あれは犬なんかじゃないわ」

 

月「え!?」

 

詠「あれは・・・恐狼・・・何百年も前に絶滅した狼よ」

 

月「きょ・・・ろう?」

 

恐狼・・・・別名ダイアウルフ、平均体長約2.0m体高約1.5mの大型の狼。外見は現在にいる狼に似ているが、彼らの特徴は牙と体毛にあった。牙は普通の狼より長く頑丈に出来ていて、体毛は外敵から守るため頑丈に出来ていたが動きやすい様に軽くなっていた。この体毛は炭素を含み銀色に輝いていたと学者が発見し、名前をダイヤモンドウルフと名付け次第にダイアウルフと呼ばれるようになった。

 

月「でも、なんでその狼さんが私達を助けてくれるの?」

 

詠「わからないわ。でも、一つだけ言えることがあるわ」

 

月「言える事って?」

 

詠「あの狼にあいつ等を倒してもらわないと僕達は終わりってことよ」

 

月「・・・・・狼さん・・・」

 

月は心配そうに狼を見詰め願う。敵を倒してもらう事ではなく、怪我をしないように天に願う。

 

月(どうか神様、あの狼さんを助けてあげてください・・・・)

 

 

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県兵「いいか!1,2の3で飛びかかるぞ」

 

県兵「了解」

 

狼を取り囲んでいた県兵たちは各々に武器を構え襲いかかる体制に入る。

 

県兵「いくぞ!1!」

 

県兵「2の〜」

 

県兵「さっ!」

 

県兵が最期まで言葉を言う前に狼は県令の目の前から消えた。

 

県兵「き、消えた!?」

 

県兵たちは周りをキョロキョロ見渡し突然消えた狼を探すも周りその姿は見えない

 

県令「え?ど、どこにいったの?」

 

数人の兵に囲ませて様子を見ていた県令も狼が消えた事に困惑しながらも周りを探す

 

ポタ・・・ポタ・・・・

 

県兵「ん?・・・・わ、わ、わぁーーーー!!!」

 

一人の県兵が何かが滴る音に気付き、そちらを向くと目を丸くして腰を抜かし地面に座り込み絶叫を上げた。

 

県兵「どうした!?」

 

県兵「あ・・・あ・・・あれ・・・」

 

他の県兵たちが座り込んだ県兵の周りに集まる。県兵は歯をガタガタと鳴らしながら、震える手で自分が見たものを指さす。その指さす先は・・・・

 

県令「え?ぼ、僕がどうしたの?」

 

県兵「おい、主を指さすなんて無礼だ・・・ぞ?・・・!?!?」

 

指の先の県令を見た県兵たちは先ほどの県兵と同様に目を丸くし驚愕の表情を浮かべる。

 

県兵「ア・・ア・・・た、太守様・・・」

 

県令「ど、どうしたのさ!そんな顔をして」

 

県兵「だ、大丈夫なのですか?」

 

県令「だ、大丈夫ってなにが?」

 

県兵「で、ですから・・・・」

 

県令「ん?・・・・」

 

県兵は下を見るように促すジェスチャーをする。県令はそれに従い下を向こうとする。月達も何が起きたのか気になったため月達も県令の下部に視線を向ける。

 

県令「い、いったい僕の下に何があるって・・・・・え?」

 

県令が見たのはいつもなら見慣れていた腹の出たお腹だが、今自分が見ているのは半分だけ、腹の縦半分だけしか見えなかった。

 

県令「な、なにこれ・・・」

 

県令は自分のお腹があった所に手を持っていく。しかし、そこには何も無くただポッカリと空いた空間しかなかった。ようやく何か手に触れる物があるのを感じ引っ張り見てみるとそれは薄い桃色をしており伸びたり縮んだりした。

 

県令「は、はは・・・ねぇ、みんな見てよ!これなに?ねぇ、僕一体どうなってるの?僕の体どうなってるの!!」

 

詠「そ、そんな・・・・うぷっ!?」

 

月「詠ちゃん、いったいあの人どうしちゃったの?

 

詠「!?月は見ちゃダメ!!」

 

月「へうぅ!?」

 

詠は県令の姿を見て胃の中の物を吐き出しそうになるのを堪え、ちょうど県兵で県令の姿が見えなかった月が県令を見ようと視線をずらそうとするのを月の顔胸に抱く事で阻止する。

 

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県令「はは、あはははははははははははははは」

 

県兵「た、太守さま!!」

 

県兵「ぐえぇ!」

 

県令は自分の状態に気が狂い、笑いながら何もない空間となった片腹から両手を入れ自分の中身をグチャリと引きずり出し、さらに笑い出す。

 

県令「あはははははははは、あははははははははは、は・・・は・は・は・・・・・・」

 

グチャ・・・・・

 

自分の中身を出しつくした県令だった容れ物は動くことを止め中身が散らばる地面に倒れ伏した。

 

県兵「な、なんだよこれ・・・・なぁ!これなんだよ!!」

 

県兵「知るかよ!俺に聞くな!!」

 

県兵「い、いやだ!!俺はこんな死に方したくない!死にたくない!!!」

 

県兵「だ、だれか助けてくれ!!」

 

県兵たちは自分達の主を失い混乱し、得体のしれない敵と死に恐怖する。

 

ズサ・・・ズサ・・・

 

県兵たちが混乱してる中、先ほど消えた狼が森の暗闇からゆっくり現れ県令だった物のそばまでやってくる。暗闇から出る時、月光が銀色の毛に反射しなんとも美しい輝きを見せる。しかし、それとは不釣り合いにその口は真っ赤に染まっており、口の端からは県令が来ていた服の切れ端がヒラヒラと揺れていた。

 

狼「ガホ、ガホ!ガルルルル」(ゲホ、ゴホ!まずいな、コイツ)

 

ドスッ!!

 

県兵「ひぃ!!」

 

狼は転がっていた県令をその前足で蹴飛ばし県兵の前に転がし、県兵に向かい歯を剥きだし威嚇する。

 

ギロッ!!

 

狼「グルルルルルル!!」(てめぇら、こうなりたくなかったら・・・)

 

県兵「「「ひぃ!!」」」

 

狼「ガォウ!!!」(失せろ!!!)

 

県兵「う、うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

県兵「「「「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

一人が逃げ出すとそれに続くように蜘蛛の子散らすように県兵たちは逃げていった。残ったのは月達と狼の二匹と一匹だけとなった。

 

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狼「・・・・・・」

 

ズサ・・・・ズサ・・・・

 

狼は誰もいなくなった事を気配で感じると狼は静かに月達の方に歩み寄る。

 

狼「がうぅぅぅぅぅ」(や、やっと会えました。月様)

 

ズサ・・・・ズサ・・・・ズ・・・・

 

狼はあと数歩、歩めば月に触れられそうな位置でその歩みを止める。

 

狼「ガ、ガウゥゥ?」(な、なぜです?)

 

狼は見てしまった此方を向き怯える月と詠の姿を。月はなにが起きたのか分らず目の前の血だらけの狼に恐怖し、詠は痛む腕に恐怖で震えている足を大きく広げ月を庇おうとする。

 

月「あ・・・えぁ・・・・」

 

詠「ゆ・・・・月には・・・触らせない!・・・」

 

狼「ガウゥゥゥ・・・クゥ・・・」(そんな・・・そんな顔・・・しない・・・で・・)

 

狼はやっと会えた恩人が自分を怖がっている事に傷つき後ずさる。

 

ズサ・・・・・

 

詠(え?・・・コイツ・・・)

 

月(・・・怯えてる?)

 

月達は狼の不審な行動に気が付く、更に月達は狼の目を見て驚く

 

詠「ちょ!?あ、あんた!」

 

月「な、なんで泣いてるの?」

 

狼は後ずさるとその場でお座りし頭を下げて泣いていたのである。

 

狼「ガウ・・・ガッグ・・・・クゥ・・・」(ひぐ・・・へっぐ・・・せっ・・かく・・・会えたのに・・・)

 

クイクイ・・・・

 

詠「月?どうしたの?」

 

泣いている狼を茫然と見ていた詠の服の裾を引っ張る月。ようやく我に返り月の方を向く詠。

 

月「詠ちゃん・・・・あれ・・・」

 

詠「あれ?・・・・」

 

月は狼を指さす先を見ると狼の方を指さした。

 

詠「あの狼がどうかしたの?」

 

月「うん、あの目元の傷・・・見おぼえない?」

 

詠「傷?」

 

詠はそう言われ狼の目元に視線を集中する。そこには鋭い眼から流れる涙が上を伝う大きな傷跡があった。

 

詠「確かに・・・どこかで見た気がするわ」

 

月「詠ちゃん・・・あの狼さん、もしかしてあの時の・・・」

 

詠「あの時?」

 

月「ほら数年前の雪が降った日に助けた怪我して震えてた子犬助けたの覚えてる?」

 

詠「う、うん。そりゃ、覚えてるわ。僕たちにすごく懐いていたよね」

 

月「うん、連れて帰って怪我も治って元気になったよね。だから、冬が終わって春になった時に・・・・」

 

 

 

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―数年前春・涼州隴西郡―

 

子犬「キャン!キャン!」(待て!待て!)

 

森の奥に開けた場所にある花畑で子犬が元気よく駆けまわり蝶を追いかけていた。そんな光景を近くの木陰で見守っている幼かった時の月たちがいた。

 

詠「あの子、すっかり元気になったわね」

 

月「うん♪詠ちゃんの看病のお陰だね」

 

詠「ち、ちがうわよ!月が付きっきりであの子の面倒を見てたのがよかったんだよ。僕はなにも・・・」

 

月「ううん、詠ちゃんあの子を助けようとしていろんな本を読んで頑張ってたの知ってるよ。」

 

詠「月・・・・」

 

月「だから、あの子が元気になったのは私達が頑張ったからだよ。そうだよね詠ちゃん」

 

詠「・・・・そうね・・・・月の言うとおりね。私達は一つの命を助けたのよね」

 

月「うん♪」

 

月達は子犬を見詰める。子犬ははしゃぎ過ぎたのか、花畑の中で丸くなって寝ていた。その頭には一匹の蝶が羽根を休め、リボンみたいに見えた。

 

月「フフ、可愛いね♪」

 

詠「・・・・・月・・・いいのね」

 

月「・・・・うん・・・・あの子を私達の戦いに巻き込むわけにはいかないもん」

 

詠「・・・・・わかったわ・・・・だったら今のうちに行きましょ」

 

月「うん」

 

月達は立ち上がりその場を離れようとする。月は振り返りもう一度花畑で寝ている子犬を見詰める。

 

月「・・・・さようなら・・・」

 

月たちは子犬を花畑に残し森から姿を消した。

 

月達が去ってしばらくした花畑に一陣のやさしい風が吹く。

 

子犬「ZZzz・・・・・・キャウ?」

 

子犬は周りの異変を感じ、起き上がると周りを見渡す

 

子犬「月?・・・・・・詠?・・・・」

 

 

 

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現在

 

 

月「・・・・・・」

 

詠「あの時の子犬がアイツだって言うの?」

 

詠は昔の出来事を思い出したが、今だに信じられないでいた。自分達が助けた、あの小さな子犬が今、目の前にいる血塗られた狼だと・・・

 

月「・・・・・」

 

ズサ・・・・ズサ・・・

 

詠「ちょ!?月どこに行く気?月!!」

 

月は詠の制止の言葉を聞かず狼の方に歩いて近づく。

 

狼「ガッグ・・・・・ヒガ・・・・」(ひっぐ・・・・・へぐっ・・・・)

 

狼は今だに泣き止まず頭を垂れたまま涙を流していた。そのため月が近づいてくることに気がつかなかった。

 

ピタ・・・・スリスリ・・・

 

狼「ガウ!?」(え!?)

 

狼が気が付いた時は月が血が付いていなかった鼻先に手を置き撫でていた。

 

狼「ガウ?」(月様?)

 

月「ごめんね・・・・・思い出して上げられなくて・・・・そして、助けてくれてありがと」

 

狼「ガウ・・・・・」(月様・・・・・・)

 

月は自分の額を狼にくっ付け目を閉じ狼にお詫びとお礼の言葉を言う。狼も泣き止み目を閉じる、狼の背後では尻尾が静かに振られていたのは二人には見えなかった。

 

 

 

 

詠「・・・・で、本当にコイツがあの時の子犬なの?月」

 

月「うん、そうだよ」

 

狼「ガウ」(そうです)

 

あれからしばらくして、詠も恐る恐る狼に近づき月の後ろに隠れるように狼をマジマジと見る。

 

詠「さっきから気になってたけど、コイツ私達の言葉理解してる?」

 

狼「ガウ、グルルルル」(はい、わかりますよ)

 

月「わかるだって詠ちゃん」

 

詠「月!?コイツの言ってる事わかるの?」

 

月「う〜ん、なんとなく・・・かな」

 

詠は狼の言葉が理解できる月に驚いたが、確かに昔から月は動物によく懐かれていたので動物の言葉も理解出来て不思議ではないかもしれないと納得した。

 

月「そうだ!皆さんは、兵士の皆さんは」

 

狼「が、がうぅ・・・」(そ、それは・・・・)

 

狼は気まずそうに唸る。その態度で、二人とも察したのか俯いてしまう。

 

ザク・・・・・ザク・・・・

 

あれから狼と月達は森を出て途中で川で血を洗い落とし、始めに立てこもっていた小屋まで戻ってくるとそこには、予想していた通りの惨劇が広がっていた。月はショックのあまり倒れそうになったが詠が支えてくれたおかげで堪える事が出来た。月達は悲しみに耐えながら川のほとりに彼らの墓を作った。

 

ゴツ・・・ゴツ・・・・

 

狼が墓穴を掘り兵士たちを埋葬する。最後に墓標代わりの石を積み重ね、月達は手を合わせる。

 

月「・・・・・私達を守ってくれてありがとうございました。」

 

詠「アンタたちのことは忘れないわ。だから、安らかに眠ってなさい」

 

狼「ガオオォォォォォォン」

 

狼は夜が明け明るくなってきた空に向かい大きく吠える。自分の大切な人を守ってくれた彼らに向けて狼は空高く吠える。

 

月「狼さん、ありがとうございました」

 

狼「・・・・・・」

 

詠「アンタに助けてもらわなかったら僕たちは死んでいたわ。ありがと」

 

狼「・・・・・・」

 

詠「僕たちは隴西郡に戻るわ。アンタも自分の森に帰りなさい」

 

狼「・・・・・」

 

月「狼さん、この御恩は忘れません。」

 

狼「・・・・・」

 

詠「それじゃ、バイバイ」

 

月「さようなら」

 

月達は狼に別れを告げ自分達が治めている町に向かい歩き出す。

 

月「また…会えるといいね」

 

詠「会えるわよ。僕達がこの乱世を終わらせたら、いつだって・・・」

 

月「そうだね・・・・うん?・・・・!?え、詠ちゃん!」

 

詠「ん?どうしたの月?・・・!?ア、アンタ!!」

 

月たちは何気なく後をふり向くとそこには、先ほど別れた狼が後ろからついてきていたのである。

 

月「狼さん、どうして?」

 

詠「なんで、付いて来てんのよ!!」

 

狼「ガウ?」(なぜ?)

 

月「もしかして、私達と一緒に来たいの?」

 

狼「ガウ!!」(はい!!)

 

月「・・・・・・詠ちゃん」

 

詠「う〜〜ん」

 

狼「キラキラ」

 

月は困った顔で詠に投げ掛ける。詠も手を額に当てて考え込む、その間にも狼は尻尾を大きく振りキラキラとした目で見つめる。

 

詠「・・・・・仕方ないわね。連れて行きましょ」

 

狼「ガウ!!」(本当ですか!!)

 

月「いいの詠ちゃん?」

 

詠「仕方なが無いじゃない。僕たちじゃ力ずくで置いて行くなんて出来ないでしょ、それに今は猫の手・・・じゃなかった狼の手も借りたい時期なの、コイツは僕達にとって大事な戦力になるかもしれないわ」

 

月「・・・・わかった、詠ちゃんがいいなら私もいいよ」

 

詠「ありがと、月・・・・さてと連れて行くのなら、まず名前を決めなくちゃね」

 

狼「ガウ?」(名前?)

 

詠「前は、決める前に別れちゃったからね。いつまでも狼とかアンタじゃかわいそうでしょ」

 

月「それなら私良い名前があるよ」

 

詠「どんなの?」

 

月「エへへ♪私達の真名の月と詠をくっつけて月詠(つくよみ)、どうかな?」

 

詠「月詠かぁ・・・いいわね」

 

月「うん♪私達が拾って育てたから私達の子供と一緒だからね」

 

詠「わ、私達の!!子供!!///// //////」

 

詠は真っ赤になり頭から湯気を出した。

 

月「今日から貴方は月詠だよ。よろしくね♪」

 

月詠「ガウ!」(はい!)

 

ガブッ

 

月「え?へぅ!?」

 

ガブッ

 

詠「月との子供、月との子供、子供、子供、子供ってわぁ!!」

 

月詠は大きく返事をすると月とブツブツと何かを呟いていた詠の襟を噛み、二人を背に乗せ走り出す。

 

月「わぁ、早い!すごく早いね、詠ちゃん」

 

詠「ちょ!!は、早過ぎよ!!落ちちゃう、落ちちゃうわよ!!」

 

月詠の駆ける早さに月は感激し、詠は上手く乗れずに落ちないように必死に月詠の背にしがみ付いている。こうして二人と一匹は再開し、共に戦乱へと身を投じるのであった。

 

 

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あとがき

 

 

こんにちはどうだったでしょうか今回の話は、やっとまともに出せました主人公の月詠。TINAMIの恋姫小説を読んで狼を主人公にした話はなかったと思い書かせてもらいましたが、一刀さんとかぶってしまいました。ですが、この主人公は転生など特別な力はありません。天然の狼なのでそこはご理解の方をお願いします。

 

さてここでアンケートです。天の御使いの北郷一刀ですが、この話に出すか迷っています。出してほしいかどうかコメントに感想と一緒に書いてもらいたいと思うので、ご協力お願いします。

 

 

 

 

説明
こんにちは、二回目の投稿となります今作ですが
内容に若干エグイ場面がありますので起きお付けください。
それでは、楽しんでください。
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コメント
作者の書きやすいほうでww(リンドウ)
P4・二匹と一匹になってる・・・(サイト)
出すのなら董卓軍√にしてください(rababasukan)
県兵が県令のなってるところがある(フルー)
作者の書きやすい方で良いと思いますよ狼が主役ってのもコレはコレで良いと思いますし(2828)
出してもいいけど、月達のところで保護してほしい。次回も楽しみにしてます。(おやっと?)
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