真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第五話 |
冀州・平原郡。
ここは今、おびただしい数の賊軍に包囲されていた。
「むう・・・。まさかついて早々にこのようなことになるとは」
「だから言ったでしょう!寄り道なんてするから、こんな目にあうんです!!」
槍を手に持つ女性に、眼鏡の女性が大きな声で怒鳴る。
「ぐう・・・・」
「・・・こんなときまで・・。起きなさい、風!!」
「おお、あまりの絶望的状況につい」
頭に何かが乗った少女に、眼鏡の少女が突っ込む。
少女たちは現在、旅の途中であった。
本来なら今頃は、冀州を抜けて幽州に到着していたはずだった。
なのに、
「だがな稟、もしあのまま幽州に向かっていたら、どうなっていたと思う?昨晩のあの至高の出会いは無かったのだぞ?」
「それは星だけでしょう。私たちはたかだかメンマのために、こ」
「たかだかとは聞き捨てならんな、稟よ。あれこそまさに!この世の宝といってよい味だったでは無いか!」
「たしかにあれはおいしかったですね〜。稟ちゃんもばくばく食べていたじゃないですか」
「そ、それはそうだけど・・・」
そう、一行が予定を変更してまで平原に来た理由、それは星、趙雲が聞きつけた、最高級メンマを扱う店が、
ここ平原にあるといううわさであった。
連れである稟、郭嘉・字を奉孝と程立・字は仲徳こと、風の二人は反対した。
これまで星のメンマ好きがらみで、ろくなことに遭遇したためしが、無かったからだ。
そして今回もその予想通り、この町は黄巾の大軍に囲まれてしまっていた。
「もし仮に、この町に逗留しなかったらどうなっていたと思う。あの至高の味を、ついでに、多くの民たちの命が失われていたであろう!
そうなってはこの趙子龍の名折れというものだ!!」
((民の命はついでなのか))
と、口には出さず突っ込む稟と風。
「何はともあれ、こうなった以上は町のもの達に協力し、なんとしてでも守り抜く!!いいな、稟、風」
「・・・仕方ないでしょう。守備隊の人たちにも頼まれましたし」
「風もがんばるのですよ。・・・ただ、戦力差だけはなんとも」
「そうだな・・・。援軍が来るまで、果たして何日かかるか」
「平原に向かえだって?」
「は。わが方には余分な戦力は無く、正面の戦力を抑えるのが精一杯。そこで、公孫賛様たちには、賊に包囲されている平原の救助に向かっていただきたいと、わが主・袁本初の言葉にございます」
幽州の賊軍を壊滅させた白蓮たち幽州軍は、冀州の袁紹を援護するため、幽州と冀州の境を越えた。
そこに、袁紹軍の将を名乗るものが、使者としてやって来た。
「・・・どう思う、一刀」
「どうもこうも無いさ。麗羽が実際何考えてるか、まあ、大体は見当つくけど、平原の人たちが危機なのに変わりは無いんだ。すぐにでも向かうべきだろう」
意見を求めてきた白蓮に、一刀が答える。
「そうだよ白蓮ちゃん。「小さい町なんか助けたって目立たないですわ!」とか言ってると思う人のことなんて、気にする必要ないよ」
「こらこら、桃香。そういうことは思ってても言わない。ほら、沮授さんが困った顔してる」
「え?あ、あはは、・・・すいません」
「・・・何気にお前もひどいぞ、一刀」
「いえ、お気になさらず。・・・おっしゃるとおりのことを、姫様が言っておられました。お恥ずかしい限りです」
主君の悪口を言われたというのに、かえって申し訳なさそうな表情の沮授。
「ごほん!!それで沮授どの、平原の戦力と、それを囲む賊の数は?」
「平原の守備兵は三千。賊の数は、・・・三万、です」
「はい〜〜〜〜〜?」
呆然とする一同。
「ここからだと、平原までは三日というところですが、これでは到底間に合いませんよ、義兄上」
「わかってるよ愛紗。・・・桃香、すぐに動ける騎兵は?」
「ん〜、五百って所だと思う」
「白蓮の方は?」
「こっちは白馬義従五千なら、すぐにでも動けるが。・・・一刀、お前まさか」
「うん。騎兵のみでまずは先行する。その途中に、ここにある邑の人たちに頼んで、本隊用に食料なんかを用意してもらっておく」
地図を見ながら、その一点を指す一刀。
「輜重隊は置いていくと?」
斧を担いだ女性、華雄が問いを挟む。
「ああ。何より時間が惜しいからね。桃香、鈴々。君達は本隊を。俺と白蓮、越さん、華雄さんで、騎兵を率いる。輜重隊は愛紗に任せる。いいね?」
「「「「「「応(なのだ)!!」」」」」」
「よし!!出陣するぞ!!」
場面は再び平原。
黄巾の将、斐元紹はいらだっていた。
3万もの手勢でこの町を攻めたはいいが、十日もたってもいまだに落とせずにいたためだ。
城壁に取り付いて昇ろうとすれば、上から煮えたぎった湯や、どろどろに溶けた鉄が降って来る。
さらに、こちらの食事時を見計らっては、少数で奇襲を掛けてきて、散々にかき回してくれる。
おかげで一切、気の抜けない状況になっていた。
そんな時だった。
はるか後方から、馬蹄の音が響き、「劉」と「華」、そして二つの「公」の旗を掲げた一団が、彼らに迫ってきた。
「馬鹿な!!幽州勢だと!?」
何でこんなに早く、と斐元紹は疑問に思った。
たとえどんなに馬を早く飛ばしたところで、幽州との境からは二日はかかるはずだ。
細策の話では、やつ等が出陣したのは昨日の昼頃だという事だった。
ありえない。
だが混乱しつつも、斐元紹は自身の周りにいる兵達を反転させ、幽州軍にあてた。
すると、「劉」と「華」の旗が、左右に展開。正面の「公」の部隊だけがそのまま突っ込んでくる。
「こちらを囲むつもりか!!ならば!!」
それにあわせて、斐元紹も兵を左右に展開し、鶴翼の陣に変化する。
そこまでは、彼の判断は正しかった。
しかし、「公」の旗の部隊が突然、反転した。
前曲のもの達が、我先にと、反転した部隊を追いだし始める。
「きさまら!!何をしている!!陣を乱すな!!」
斐元紹が叫ぶ。しかし、時すでに遅し、であった。
「よしいまだ!!敵の横腹を食い破れ!!」
「華雄隊!!劉翔隊に遅れるな!!行けーーーー!!」
一刀と華雄の部隊が、乱れた賊軍に横撃を掛ける。
賊軍は大混乱に陥った。
平原の城門。
「あれはどこの軍でしょうか」
「ふむ。なかなかの手並み」
「ですね〜。指揮官さんは結構優秀な人みたいですね〜」
星と稟、風の三人が、城外で賊と戦う一刀たちを見ていた。
「ここは好機だな。我らもうってでるか」
「ですね〜。前後から挟撃されれば、敵さんもたまりませんでしょうし」
「ならば行くとするか。全軍、出陣だ!!」
その後、平原から星達が討って、出てくると、戦局はほぼ決した。
さらに、おくれて到着した桃香たちが戦線に加わると、賊たちは蜘蛛の子を散らしたように潰走を始めた。
「なんでだ!!何でこんなことになるのだ!!」
斐元紹はおもわず叫んでいた。
「あの小娘どもを利用し、いずれはこの”外史”を破壊することも出来た筈なのに!!」
「どういうことだそれは?”外史”とは何のことだ?」
斐元紹の近くに、いつの間にか一刀がいた。
「・・・貴様か。・・・やはり貴様がすべてを狂わすファクターなのだな」
「ふぁくたあ?・・・なんだそれ?それに、俺はあんたとあったことなんて無いはずだけど」
「ふふ・・・。そうか、そうだったな。今の貴様は”あいつ”であって”あいつ”でないのだったな。まあいい。今ここで貴様を殺せば、再びチャンスはやってくるはず」
剣を一刀に向ける斐元紹。
「わけのわからんことばかりだな。・・・俺に勝てると思うか?」
「くくく・・・。確かに、本来の”こいつ”なら勝てないだろうな。・・・だが!!」
斐元紹が一枚の呪符を取り出す。すると、それが何枚にも増え、そして、
「?!クグツか?!」
「ほう、知っているか。ならばこやつらの力も知っているだろう!!さあ行け!!やつを殺せ!!」
「く!!」
次々と一刀に襲い掛かる、クグツたち。
一刀はそれを次々に斬っていく。
「くそ!!こいつら力はたいしたことは無いけど、この数では・・・!!」
そのときであった。
「はーーーーっはっはっは!!」
「な、なんだ?」
突如戦場に響く高笑い。
それは、近くの崖の上から。
そこには。
蝶の仮面を掛けた、一人の、
「・・・変人?」
「誰が変人だ!!わが名は華蝶仮面!!そこのもの!!助太刀いたす!!とおっ!!」
崖から飛び降り、そのまま周囲のクグツを薙ぎ倒す、華蝶仮面。
さらに、
「一刀ーーー!!生きてるーーー!?」
「一刀ーーーー!!無事かーーーー!!」
「義兄上ーーー!!」
「お兄ちゃん、今助けるのだーーー!!」
「劉翔!!待ってろ今行くぞーーー!!」
次々にクグツたちを吹き飛ばしながら、一刀の元に集まる桃香たち。
「みんな!!」
「おやおや、愛されていますな、あなたは」
「ちっ、これまでか」
舌打ちし、ふわっ、と宙にうく斐元紹。
「!!逃げるのか!!」
「ふふ・・・。またいつかお会いしましょう、劉北辰殿。・・・いや、この世界の”北郷一刀”」
すう、と。その姿が掻き消える。
あっけに取られる一刀たちであった。
それから数日後、青州の黄巾党が、?州の曹操によって討伐されたと、知らせがもたらされた。
黄巾の乱は終結した。
時に、漢の初平元年。六月のことである。
追記:
このときの幽州軍の一日行について、その内容を記した記録は、史書には一切見られない。
唯一、著者不明のある書物に、なぜかこのときの物と思しき記述が、あった。
曰く、
「戦の後に合流した彼らからは、それは凄まじい、臭気がした」
と。
その書物の名は、「めんまの味力」といった。
あとがき
さて、刀香譚第五話です。
どうでしたでしょうか。
ほんとは星だけ登場の予定だったんですが、あえて、稟と風も出しました。
仲間になるかどうかは、はてさて。
で、変な複線のようなものを張ってみました。
あの男の正体は果たして?
例のどっちかなのか、それとも、ほかのやつなのか。
今後にご期待ください。
で、最後の追記なんですが、一日行で何があったのかは、あえて書きません。
てか、最初は書こうとしたんですが、ハム姉妹とかゆうまに、
「「「書いたらコロス」」」
と言われました(ガタブル、ガタブル)
なので、皆様のたくましい想像力にお任せしたいと思います。
さて、黄巾編はこれにて終わりです。
次回はリクのあった、拠点をかこうかな。
ではまた次回にて。
ごきげんよう〜〜。
説明 | ||
刀香譚の第五話をお送りします。 黄巾編は今回までです。 まずはお読みください。 では。 あと、今回から、誰でも見れる公開レベルに 変更しました。 これまでのも全部です。 さらにたくさんの方に読んでいただきたいと思います。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
33952 | 28078 | 127 |
コメント | ||
まさかの展開にびっくり!(稲荷大神) めんまだと(グロリアス) moki68kさま、はるか先のお話になると思いますけどww(狭乃 狼) gemさま、せ・・もとい、華蝶仮面が何で一刀の前世を知ると?そんな描写しましたっけ?(狭乃 狼) マフェリアさま、まさに星の生き様ですな。えw(狭乃 狼) hokuhinさま、真の救世主はメンマ?!(狭乃 狼) あー!本人の許可無く真名を呼んだら殺されても文句言えないのにーw と言うことで斐元紹とかいう輩も死亡確定と言うことでw(moki68k) 更新お疲れ様です。メンマ優先とはさすが星wwしかしこの外史にも宇吉の仲間(外史破壊派)がいる模様。そして一刀の前世を知るせ・・・もとい華蝶仮面も気になります。次回も楽しみにしています。(gem) メンマの為に生き、メンマの為に死す。by超雲(マフェリア) 何故か今回の話を読んで、思いついたセルフ→メンマは世界を救う・・・(hokuhin) 紫電さま、結果良ければ、すべて良し、ですww(狭乃 狼) はりまえさま、メンマを供えておきます。あ!!持ってかれた・・・。(狭乃 狼) メンマ大活躍!?んなばかなぁ・・・・私は昔メンマは割り箸から作られていると思い込んでました・・・・・・。0蝶仮面「このドタわけが!!!!それならば私がすべての割りばしを食いつくしてるわぁ!!!」。ひぃ!?すいませN・・・・・・・・・・・(返事がない只の屍aのようだ)(黄昏☆ハリマエ) |
||
タグ | ||
恋姫 真・恋姫無双 一刀 桃香 白蓮 愛紗 鈴々 星 | ||
狭乃 狼さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |