『舞い踊る季節の中で』 第59話 |
真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-
第59話 ? 熱き叫びに舞う魂 ?
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋
得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)
神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術
最近の悩み:某日、某宿内の一室にて
吸い付くような柔らかな頬に、 長く細い睫毛の形を整え、 全体に薄く化粧を重ねて行
く、必要以上の事はしない。 あくまで彼女らしさを、優しく強調するに留める。 それ
が、一番彼女を輝かすからだ。 控えめだけど、野に咲くどの花よりも、優しく美しい花、
そんな彼女に似合う装飾と化粧を施してゆく、 仕上げに、目元が明るく輝いて見えるよ
うに、胡粉をほんの少し塗す。 そして、薄い色の紅を、彼女の瑞々しく柔らかな唇にひ
く事で、俺は彼女に化粧を施すと言う作業を終え、一歩下がって、その出来を確認する事
にする。
「・・・・・・・・・・」
化粧を終えた彼女は、閉じていた瞼を開き、 首をやや傾げて俺を見る彼女の姿は、とて
も眩しく、俺をしばし呆然とさせた。 彼女の心優しい性格が滲み出るような優しい微笑
みは、やや大きく開いた目は、幼さを感じさせるも、その瞳に宿る光は間違いなく大人で、
女性としての艶を同時に感じさせる。 小さな唇は、まるで吸い込まれそうな感覚に襲わ
れるも、まるで彼女の甘い香りが、其処から出ているように感じられる。
・・・・・・俺、一体どうしたんだろう。
(今後順序公開)
一刀視点:
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
客を気持ちよく送り出し、店内の様子に視線を送りながら、次の客を迎えるために、今空いたばかりの机の上を片付け、綺麗に拭き磨く。
客の出入りは、まぁまぁだ。 この店に来る客の殆どは女性客だが、一割くらいは男性客も居る。
なんにしろ、この店の雰囲気や茶を、楽しんで行ってくれている事には違いない。
店員も、まだまだだけど、それなりに動けるようになってきて、俺がいない間も、何とかお店を切り盛りしてくれるようになった。
・・・・・・・・・・・・もうこの店とも、お別れか、
明命の出してくれたお金と、翡翠の手回しのおかげで、始める事の出来たお店。
翡翠は手回ししてくれただけあって、お店の経営が心配なのか、毎日迎えに来てくれた。
それなりに苦労してきた甲斐あって、定期的なお客もつき、それなりに繁盛していたと言えると思う。
1年も経たないけど、色々な想い出と想い入れが、このお店には詰まっている。
・・・・・・・明命と再会出来たのもこの店だったな。
明命は、このお店はあまり気に入らなかったのか、この店に居る時は不機嫌な顔をしている事が多かったけど、なんやかんやと来てくれたのは、やはり俺がしっかり働けているか心配だったのだろうな。
まぁ、あれだけ情けない姿見せてきたから、それも仕方ないか・・・・・・・・・、
そう言えば、孫策達に会ったのも、この店でだったよな。
あの、我侭能天気大王が発端で、俺の生活は一変したんだよな。
・・・・・・・・・・まぁ、気がついたら、異世界に放り込まれていた事を思えば、理解の範疇だよな。
それに、この店を辞める事は、決まっていた事だし、お店を引き継がせるための準備もしてきた。
暫らくは、そのための最後の仕上げとして、午前中だけ店に出て来れるが、近いうちに完全に彼らに譲り渡す事が決まっている。
お店の子達には、冥琳がそれなりの補償を払ってくれると言ったし、明命への借金も、冥琳経由で無事返す事が出来た。
無論、大事な軍資金の一部を、そう言う事に廻してくれる以上、それなりの働きを求められるのは、当然の事なんだろけど、・・・・何処でどう間違えたら、将だなんて血生臭い世界に、足を踏み入れる羽目になったんだろうなぁ・・・・、まぁ、その事事態は、後悔する気は無い。
理由はどうあれ、自分で選んだ道だし、その事で助けたい人を助ける事が出来るなら、俺としては満足出来ると思う。
・・・・・・まぁ実際は、逆に助けられたり、守られてばかりと、我ながら情けないけどかぎりだけど・・・・・・、
ただ、心の何処かで、納得行かない処があるのか、
「・・・・・・ごく普通の庶人の俺が、将か」
等と、思わず呟いてしまう。
「ぶぅーーーっ! けほっ、けほっ」
「・・・・お嬢様、そのような事、お嬢様には相応しくありませぬ故、どうか皆様と私めの顔を立てると思い、
御容赦くださいませ」
『・・・・・・仮にも王なら、人目がある所で、それは無いだろうっ』
と、片付けをしていた隣の机に座って、突然飲んでいた茶を吹き出した、孫策に文句を言うが、
「けほっ、 一刀が突然しみじみと、面白い事言うからでしょっ」
等と、咽ながら訳の分からない事を言って、逆に文句を言ってくる。
「私めは、何も可笑しな事を言ったつもりは、ございませぬが」
『俺は、本当の事を言ったつもりだ』
「何処をどう見たら、一刀が普通の庶人だって言うのよ」
「私めは、才気溢れるお嬢様と違って、周りの皆様となんら変らぬ只人にございます」
『俺を孫策達と一緒にするな、何処から見ても庶人だろうが』
「あぁ、確かに何も知らなければ、只の茶館の主よねぇ?、本性を知らなければね」
「お嬢様、余り突拍子も無い事を言われましては、周りの皆様方が驚かれてしまいます。どうか御容赦を」
『人聞きの悪い言い方は止めてくれ、あらぬ誤解を受けるだろうが』
くそっ、只でさえ美人で目立つ孫策が、目立った言動をしてくれたおかげで、
今の孫策の戯言を真に受けて、目を点にしている客や、何故か絶望したように顔を横に振って居る客が居る。
まぁ、すぐに誤解は解けるとは思うけど、孫策の傍にいては、それも不可能だな。
どのみち、この店で孫策相手に騒ぐ訳には行かないし、早急に戦略的撤退をするか。
そう、判断した時、それは起きた。
ガタンッ
トサッ
音のした方を見ると、床に女性が倒れていた。
お店に来た時より、どこか具合を悪そうにしていた、年若い常連客だ。
俺は、倒れた女性に近づくと、女性は腹部を押さえながら苦しんでいるけど、それすらも痛みのあまり意識が朦朧としかけている様子だ。
「失礼」
非常事態のため、返事を待たずに、女性の額に手を当てて熱を測ってみると、
案の定発熱している。
一度帰るように進めたのだが、きっと具合がある程度良くなるまで、待っていたのだろうな。
とにかく、このまま地面に寝かして置く訳にはいかない。
「よっと」
きゃーーーーーっ
女性を持ち上げると、何故か当人ではなく、周りの女性が声をあげる。
まぁ、この際非常事態だから、多少の事は目を瞑って欲しい。
俺は店の奥の長椅子に女性を運ぶと、とりあえず上着を脱いで、それを枕として女性の頭の下に敷く。
「持病かい?」
「い・・・いえ、ここ、うっ、 数日」
俺の問いかけに女性は、何とか答えてくれる。
この店に通っている以上、それなりの生活を送っているはずだけど、
医者に掛かるとなると、話は別なのかも知れないな。
それに金額もそうだけど、馬鹿馬鹿しいような間違った知識が広まっているため、
いまだ迷信じみた妄言や、世間体を気にする人達が多いらしいからな。
孫策達に渡した本とて、そう簡単に広まるようなものではないし、それはそれで危険だ。
とにかく、今はそんな事より、この女性を何とかしないと、
俺は店員に、医者を呼ぶように頼むと、
「少し見させてもらうよ」
そう言ってから、女性の腹部に手を当て触診する。
まずは、腹部全体にゆっくりと軽く圧迫を掛け手を離すと
「う゛っ」
女性は痛みに声をあげる。
そして鳩尾から、そして右腹部に掛けて感触を確かめると、
・・・・・・やっぱりか、
実家に出入りしていた医者から教わった程度の、俺の半端な知識でも分かるくらい。
女性の腹部に硬く張った手応えがあった。
おそらく虫垂炎。
でも腹膜炎の症状が出るまで放って置かれた以上、手術するのが一番だけど、
この時代に、そんな事を出来る医者も設備もない。
術式は幾つか見たビデオの中にあった通りならば、やってやれない事は無いけど、
輸血も出来ないこの世界じゃ、想定外の事が起きた場合対処できない。
どうする? 放っておいても、死ぬ可能性が高いだけだぞ。
「病人がいると言うのは、ここかっ!」
そんな騒々しい声と共に、一人の男が店に入ってきた。
(無論、後に医者を呼びに行かせた店員が、息を乱しながら入ってきたけど)
「ここだ、おそらく虫垂炎で腹膜炎を起こしている」
俺は、入ってきた青年と呼べるくらいの赤髪の男に、病人の居場所を示すように呼びかけるが、
「虫垂炎? 腹膜炎なんだそれは?」
「だぁぁぁ、そうだった。 病名も通用しなかったんだ」
となると、やっぱり俺がやるしかないのか?
そう思っていると
「どけっ、俺が見る・・・・・・・・・・・・なるほど、腹に嫌な"氣"が溜まっているな」
男はそう言うなり、懐からなにやら取り出すと、
「はああああぁぁぁぁぁぁっ!」
ピカァ???ッ!
なにやら雄たけびを上げながら、手を振り上げると、
手に持った針らしい物が、眩しく輝きだし、
「げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
掛け声と共に、その手を女性の腹部に振り下ろす。
やがて、光が女性の腹部に吸い込まれるように消えると、
「病魔退散、これでよしっ、一晩寝れば体力も戻るはずだ」
そう言って、女性から離れる。
「いや、虫垂炎が、そんな事で・・・・・・」
この世界の医者に、文句を言っても仕方ないと分かってはいても、言ってしまった俺は、
女性の顔色が、先程よりかなり良い事に気が付き、声をすぼめて行く。
まさかっ・・・、俺はもう一度女性のお腹に手を当て、触診をするが、
「・・・・うそ・・・・だ・・・・ろ」
その結果に、俺は驚きの声を漏らす。
何度確かめても、先程のような異常な感触も無く、
押してみても、女性は痛がらない。
感じる気脈も、確かに正常そのもの、
一体何が起きたんだ?
もう一度、確認のために触診をしていると、
「あ・・・・あの・・・・」
「一刀、いったい、いつまで女の腹を弄っているつもり」
上から聞こえてくる女性の恥ずかしそうな声と、
孫策の、何かピリピリした声に、俺は我に返り、
慌てて女性のお腹から手を離し、
「す・すまない。 そう言うつもりでは」
「あ、はい、分かっています。 私を心配してくれての事だと言う事は」
女性は、男の俺にお腹を触られて、恥ずかしかったのだろう。
顔を真っ赤にして、俺と顔を合わさないように俯いていた。
「これは二人に、報告しておかないとね」
女性との気まずい空気の中を、孫策のそんな言葉が静かに俺の耳に届く。
二人とは誰の事だろうなぁと、思いつつ、二人のシルエットが脳裏に浮かぶ。
・・・・・・でもまぁ人助けをしたのだから、なんの恥じる事は無い、
・・・・・・のだが、何故か嫌な汗が、ダラダラと吹き出てくる。
だが、理由が分からないので、どうしようもない。
とにかく、そんな嫌な感じを、少しでも早く振り払おうと、
「今日は家に帰ってゆっくり休むといいよ、食事は今夜は止めておいて、二・三日は消化の良い物にした
方が良い。 そして元気になったら、またお店に顔を出して欲しいかな」
女性に、病後において当たり前の事を言ってから、
病気の不安が少しでも和らぐように、
少しでも安心できるように、
俺は、精一杯の笑顔で、女性に微笑んであげる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・は・はい」
女性は、まだ恥ずかしいのか、顔を朱に染めたまま、やや呆然としながら、起き上がると、
知り合いらしい女性に連れられて、お店を去って行った。
俺はそれを見届けてから、彼女を助けた男に向かい。
「ありがとう、おかげで彼女が助かったよ」
「いや、俺は医者として当然の事をしたまでだ。 先程の触診の手際から同業と見たが」
「残念ながら、知識を齧っただけの、ただの庶人だよ」
「ただの?」
俺と医者の男の会話に、孫策がいまだそのネタで突っ込んでくるが、この際無視して、
「それでも、今の治療法は、見た事も聞いた事も無い。
ただの針治療に、あんな真似が出来るとは思えないんだけど」
「ああ、あれは五斗米道(ゴッドヴェイドォー)と言って、特殊な針と"氣"で持って、病魔を退散する。
俺はその継承者だ」
「孫策知ってる?」
「五斗米道(ごとべいどう)なんて、聞いた事も無いわよ。 もちろん今みたいな治療もね」
だろうな、あんなものが広まっていたら、普通の医者は廃業だよな。
この世界の無茶苦茶振りには、慣れたつもりだったけど、幾らなんでもこれは無いよな・・・・(汗
まぁ、受けた感触からして、かなり特殊な"氣"を持っていないと、使えない技なんだろうな。
「で、その五斗米道(ゴッドヴェイドォー)の継承者が、何故この街に?」
そもそも、俺の世界だったら、五斗米道は道教の教団の一つだったはず。
もしこの世界でも、そういった教団だったなら、孫策がまったく知らないなんて、在るはずが無い。
やはり、俺の世界の歴史は、当てにならんな・・・・・・、
そう思いながら、男に何と無しに尋ねるが、
「素晴らしいっ、完璧な発音だっ! 正しい呼び方をしてくれた者等、数年ぶりだっ」
等と、何故か、えらく感動してくれている。(・・・・・・普通に、英語読みしただけなんだけど)
男は、その事がよほど嬉しかったのか、俺の手を取って、半分涙交じりに何か頷いている。
・・・・・・よっぽど正しく発音してくれる人、いなかったんだな・・・・・。
「俺は華佗、五斗米道の継承者として、病魔と闘い続ける事を宿命とし、渡り歩いている」
「ああ、俺は北郷一刀、一応この茶館の主をしている」
「うむ、そう言えば先程、患者を虫垂炎とか言っていたが、あれは?」
「ああ、あれは・」
「一刀、口調が地に戻ってるけど、良かったの?」
何やら色々熱い男らしく、その熱心な眼差しと勢いに押されるように、説明しようとした所に、
孫策に、まだ仕事中だという事を思い出させられた。
・・・・しまった
そう思い、お店を見回すが、
「・・・照れてる・・・・可愛いわ・・ね・・・・」
「・・・・差が、・・・・・よけいに・・・・・」
「・・・・・・・・・さっき・・真剣な顔・・表情も・・・・・」
「・・・・地も優しい・・・・・・・・・ね」
等と、奇異な目で見られてはいても、比較的好意的な視線と話し声が聞こえてくる。
・・・・・・・・まぁ、お店のイメージダウンに繋がってなければ、この際何でもいいけど・・・・、
でも、孫策があそこで止めたって言うのは、そう言う事なのだろうな。
そう言えば、翡翠から、赤髪の男に付いて注意するように言われてたんだ。
非常事態の後で、少し気が緩んでいたな。
「一刀、少し早いけど、城に行くわよ。
それと華佗とか言ったかしら、貴方も一緒に着なさい。 いいわね」
孫策はそう言うなり、急かす様に机上に代金を置いて、お店を出て行く。
とりあえず、いきなりの展開に呆然としている華佗に、
「とりあえず。悪いようにはしないよ」
そう促して、店員に『後を頼む』と言って、急いで身支度を整える。
まぁ、華佗が実際何者なのかは知らないけど、本当に医者なら、そう悪い事にはならないはずだ。
まぁ流石に無いと思うけど、俺の時のように、あまり無茶を言うようなら、止めないといけないしな。
城に着くと、孫策は庭の真ん中で足を止め、
「そう言えばまだ名乗ってなかったわね。 私は孫伯符、そう言えば分かるわよね。
華佗、一刀も聞いたけど、貴方この街に来た理由は何? まさか、たまたま立ち寄っただけ、
なんて言わないわよね。 うちの医者から色々聞いているわよ」
孫策は、険しい目つきで、嘘を一切許さない王者の気魄で、華佗に問いかける。
・・・・・・・・その医者、何かあったのか?
「やはり、孫家が関わっていたか、頼むあの写本の原本を見せて欲しいっ、
世の病魔を少しでも減らすため、一人でも多くの病人を病魔から救うため、
俺に、あの本の原本を読ませて欲しいっ!」
などと、何か炎を背景に見えてきそうなくらい、熱い言葉と手振りで、孫策に数歩だけ詰め寄る。
だけど、流石は孫策そんなものに誤魔化されず、
「ふーん、でも貴方の五斗米道なら、あの知識等無くても、十分に病人を救えそうな、気がするけど」
と言い放つ、まぁ、あれを針と"氣"で直してしまえるのなら、中途半端な知識なんて不要だよな。
だが、
「確かに、俺の五斗米道は、多くの病魔を退ける事が出来る。
だが、あれを継承できる者が、今の所俺一人では、とてもこの大陸中の病魔を、退治する事など叶わぬ。
必要なのは、確かな知識と技術、それを一人でも多くの良識の在る医者が、共有する事だ。 何時までも
呪(まじな)いじみた治療を、信じさせておく訳にはいかないっ」
いや、華佗、お前が呪いじみた治療を否定するか? あれも十分呪いじみてたぞ。
「アレを世に広げるのが、目的なの?」
「頼む、一人でも多く、病魔に苦しむ人を減らすため、あの知識を解放して欲しいっ!」
「嘘は言っていないようね。 で、貴方はアレをどう見たの?」
「生憎俺が見たのは、不完全な写本のほんの一部・・・・・・・・、それでも、アレは今までに無い、多くの知識が、
病魔に対する、克服の仕方が書いてあった。 何故そうなるかは分からないが、経験的に見て間違いない事
が理路整然と書かれていた」
華佗は、手放しに褒めてくれたが、俺としては複雑な気持ちだった。
元々、俺が纏め上げたものではなく、俺の知っている一般常識や、叩き込まれた医術の知識を、書いただけなので、俺自身の手柄と言う訳じゃない。 偉大なのは、それらを苦心の上で発見してきた、過去の偉人達だ。 それを俺の手柄のように言われても、正直喜べるようなものではない。
「悪いけど駄目よ」
「何故だっ。 貴女も民達を守る身ならば、そのために知識を解放してくれても良いだろう。
それとも、金か、金が必要なのか? 民に慕われると言う孫家も、袁家のように、金・」
「黙れ」
孫策の静かな殺気と言葉が、華佗の口を閉じさせる。
まぁ、こんな世の中だ。 華佗がそう言いたくなる気持ちも分かるし、孫策の怒りも分かる。
孫策、お前が袁家の老人達と一緒じゃないって事を、華佗に、そして俺に見せて欲しい。
「次に、そのような侮辱をすれば、問答無用に斬るから覚えておきなさい。
駄目な理由は、貴方の言ったように、今までに無い知識が多く書かれているからよ。
そんな知識を、一気に解放しても、民に無用な混乱を引き起こすだけよ。
無論、私達もあの知識を守るべき民達のために、活用したいと思っているから、段階を見て少しづつ知識
を広めていくつもり。 これで満足いったかしら」
「だが、その間に・」
「これは政としての決定なの、貴方の熱意には、敬意を払うけど、
学問は一夕一朝には行かないのは、分かるわよね」
華佗の心意気は買うけど、これは孫策だけではなく、冥琳や翡翠、そして陸遜が、相談して決めた事、
なら、託した以上、俺がそれに口出しする訳には行かない。
「かと言って、貴方がこれで諦めるとは思えないわね。
条件次第では、貴方に原本を見せても良いわよ」
「条件とはなんだ。 やはりか・いや、俺に出来る事なら何でもやるぞっ」
「命拾いしたわね」
ああ、俺も今のは焦った。 一瞬、華佗を守るため飛び出す所だった。
「五年で良いわ、その間、孫呉にお抱えの軍医として仕えなさい。
そして、得た知識を無闇に広げず、きちんと弟子を作って伝える事」
「ご、五年もだと・その間にどれだけ」
「此処でも救えるでしょ。 それに、普通医者の弟子だなんて言ったら、十年以上師事を仰ぐものじゃない。
それに、原本を見せる以上の、知識を得れる事は約束するわ」
そう言って、孫策は俺に視線を寄越す。
・・・・・・勝手に決めるなっ!
そう心の中で悪態を付くが、もう言ってしまったものは仕方が無い。
華佗は、暫らく歯を食いしばりながら悩んだ末に、
「了承した。 約束は守る。 だが折角仕えるのなら、その知識がどれだけ有効なのかも確かめたい。
本を見せて欲しい」
「まだ駄目よ。 貴方が約束を破るとは思わないけど、どれだけ信頼出来るか分かってからよ。
別に年単位で待たす気は無いから、安心しなさい。
一刀、華佗は貴方の隊に預けておくから、面倒見てあげて、必要な事があったら、冥琳達に相談しなさい。
それと、私の許可があるまで、余計な知識を教えちゃ駄目よ」
孫策は、それで終わりとばかりに、俺達二人を置いて城の奥へ消えていく。
取り残された俺達二人は、突然の出来事に呆然としながら、
大きく溜息を吐く。
まったくあの、突発奇天烈行動王め、結局全部、俺に押し付けて行きやがった。
でも、一部隊に軍医か、
・・・・・・孫策の心遣いは分かるが、もう少しやり方と言うものが在ると思うのは、気のせいか?
「あんなんだけど、本当に良かったのか?」
「なに、耐えるのも一つの修行。
それに、確かにこの地でも人を救えるのは事実、修行期間だと思えば、なんでもないさ
そして、その間に学んだものを生かして、俺は、俺達医者は、もっと多くの病魔に冒されし人達を救って
みせるっ!」
などと暑苦しいばかりの言葉を言ってくるが、まぁこう言うノリは嫌いじゃない。
元の世界の悪友達を思い出す。
「そう言えば、この街に入ったのは少し前と聞いていたけど、今までなにしてたんだ?」
「うむ、前の街で教えて貰った写本ので何処の医者の所に、毎日通って誠心誠意、写本の出所を教えて貰い
に行っていた」
「誠心誠意?」
「ああ、朝昼晩と俺の考えた健康食を作って差し上げ、掃除はおろか、駆けつけて来た急患を代わりに診て
あげていた。 何故か、日が経つに連れ、直接俺の所に来る急患が増えていたがな。
今日も、そう言った事情で俺が来た。 先生も急患の往診には、俺を快く見送って下さる。 やはり高齢故
に急な往診は堪えるのであろうな」
・・・・健康食ってアレだよな、この時代の発想だと、美味しくもなんとも無い味気ない食事。 それを三食毎日、それに、急患を代わりに診るって、それって患者を奪っているんじゃないか? まぁ流石に、治療費まで奪いはしないだろうけど、あの五斗米道の効果を見れば、その医者としては、気が気じゃない筈・・・・・・、
「・・・・・・そ・そんな高齢な人なのか?」
「うむ、まだ四十代のはずだが、此処最近めっきり老け込まれてな、特に毛髪が良く抜けられている。
最初は、病魔の仕業かと思ったのだが、その様子は無かった。 きっと色々お疲れなのだろうと、その分
俺が代わりに頑張って差し上げてきた」
「・・・・・そ・そうか、なら、今日はその医者によくお礼を言って、明日から出入りするのは止めておこう。
華佗は、目的を果たしたのだから、あまり家族や弟子でない者が出入りしては、気を使う事になる」
「うむ、そうだな。 お身内でゆっくりされるのが、一番の療養かも知れぬな」
うん、きっと、孫策達からの口止めと、この暑苦しいまでの熱意に板挟みになったのだろうなぁ。
まぁ、なんにしろ、心労で倒れる前で良かったよ。 この時代、医者が倒れたんじゃ、信頼にも関わってくるしな。
まぁ、話している様子からして、本気で悪気はなさそうだし、
人を助けたいと思っているのも、本気なのだろう。
五斗米道以外の医者の腕は、まだ分からないが、写本とは言え、あの内容がある程度分かるならば、知識としては、本物に近いものが在ると思う。
問題は、この男が、自分の事が分かっていないと言う事だな。
まぁ、根は悪い奴じゃなさそうだし、何とかなるかな。
「華佗さん、なんにしろ、これからよろしくお願いします」
「華佗で構わん。 年上だからって遠慮は無用、五斗米道を正しく発音してくれたのだ。
俺等はもう魂の兄弟っ、 なんなら兄貴と呼んでくれても構わん」
「・・・・いや、流石にそれは遠慮しとくよ」
どういう理屈でそうなるか分からないが、俺はそれを丁重に断り、普通に話しかける事にした。
・・・・・・孫策、本気で俺に押し付けて行ったんじゃ、ないよな?
その夜、何処から聞いたのか、医療行為はともかく、やりすぎだと、
翡翠だけではなく、明命まで一緒になって、
明け方近くまで、二人にお説教を喰らったのは、
俺にとって忘れたい出来事の一つとなった。
つづく
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第59話 ? 熱き叫びに舞う魂 ? を此処にお送りしました。
今回は、あの熱い漢をついに登場させました。
一刀の書いた本の内容を、世に広めようと、この街に誘われるように来ていた訳でしたが、如何でしたでしょうか? 色々生活環境が激変しつつある一刀、そんな一刀が待ち受ける運命とは、どんな物になるのでしょうか? それはこれからの展開をお待ち下さい。
華佗に関しては、原作は、思いっきりSkipさせたので詳しい事は分かりません。 他の外史で見かけた華佗を、自分なりに作り上げた物なので違っている所が多くても、どうかご容赦下さい。 医療知識も適当なので、お叱りは覚悟の上の内容です。
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
説明 | ||
『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。 多くの思い出に詰まった一刀の茶館、その茶館で働けるのも残り僅か、 そんな時、在る出来事が茶館で起きる。 それを救ったのが・・・・・・、 拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。 ※登場人物の口調が可笑しい所が在る事を御了承ください。 タイトルを一部変更いたしました。(06/12) 発覚した誤字を修正いたしました。(06/12) |
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七詩名様、おうっ! これはありがとうございます。さっそく修正いたします。 現在、話の続きを執筆にあたって全体の読み直し中ですが、結構誤字脱字を発見(汗 しかもweb上で確認なので、誤字がそのまま……此の外史を全て書き終えたら加筆修正して一つのファイルにしてアップするつもりなので、その時に徹底的に直します(うたまる) コピペで伝えればよかったですね、すいません^^;「ああ、あれは五斗米道(ゴットヴェイドォー)と言って、特殊な針と"氣"で持って、病魔を退散する。」ここですね。トの濁点がついていなかったので。そのあとの「で、その五斗米道(ゴットヴェイドォー)の継承者が、何故この街に?」も然り。(七詩名) 七詩名様、雪蓮の発言の処ならばわざとですよ。一刀の発言にあったように、正しい発言をしてくれない事を表現した場所でしたが、作者しか分からないような分かり難くにくい表現だったかな(汗(うたまる) 訂正箇所。漢字表記の読みは”ごとべいどう”ですが、華佗読みは”ゴッドヴェイドー”ですね(七詩名) 抹茶様、出番在りますよぉ〜、おまけ的要素でですが(w(うたまる) 漢女sの出番はあるのでしょうか(抹茶) ヒトヤ様、華佗ってそんなに強いんですか? 漢女達と旅するくらいですから、一般兵より強く、医者なので頭も多少回ると言うくらいの意識しかありませんでした。 とりあえず。 戦闘に出す予定は今の所ありません(汗(うたまる) samidare様、ふふふっ、華佗はどんな所で活躍するのか、そして何のためにでてきたのか、それは今後の展開のお楽しみになりま(うたまる) この医者の強さって本だとSだったような、孫策より強くなかったか?(ヒトヤ) 今回華佗が登場したことによって雪蓮と冥琳の死亡フラグは立たなくなったんでしょうか?最後のお説教最高ww(samidare) 流星軍様、 読者様の皆様にとって、この外史は、翡翠の腐女子世界が前提になっているのですね(汗 誰なんだろう、こんな外史にしたのは(ぉw(うたまる) ジョージ様、まぁ死人すら甦らせましたからねぇ、・・・・一体本当にどうなっているんdね将、この世界って(w(うたまる) はりまえ様、鼻血軍師の妄想世界はすごい事になるでしょうねぇ(w 其処にどう朱然が絡んでくるかは分かりませんが(汗(うたまる) jackry様 来ましたよぉ あの熱い漢が、孫呉陣営にやって来ました。 どんな熱い展開を巻き起こすのか、そして一刀はどうそれに振り回されるのか乞うご期待下さい(うたまる) ほわちゃーなマリア様、結果は知ってのとおりですが、どう一刀の精神が弄られているかは、次回へのお楽しみになっております♪(うたまる) 緋炎桜様、雪蓮の死の場面は、呉シナリオにおいて閃光のように眩しい感動を私達に与えてくれたものです。 あの感動をどうするのか、その時までお待ち下さい(うたまる) 紫電様、これによって、一刀の部隊の消耗率は格段と低くなるでしょうね。 これからの華佗の活躍に期待して下さい(うたまる) 青福様、むろん、二人の恋の物語が再開されるのです♪ 誤字報告ありがとうございます早速修正いたしました(うたまる) GLIDE様、原作通り行って孫策の死によって、一刀に大きな絶望と成長を促すのか、それとも助かるのか、それはその時までの秘密となります。(うたまる) よーぜふ様、 五斗米道何処まで無茶な世界なんでしょうねぇ(w よーぜふ様にとってとりあえず腐女子に脳内で穢されるのは決定なのですね(汗(うたまる) eni_meel様、そう言ってもらえると嬉しいですが、他勢力に比べると呉勢は将が少ないのは確かですよねぇ。 武も特化した将がいないし、そういった劣勢をどう覆していくのか見守り下さい(うたまる) 睦月 ひとし様、華佗は、要所要所で一刀を助けてくれる事になってくれる予定です。 今後の展開を見守り下さい(うたまる) suisei様、 5度ですか(驚 原作ではどれだけ暑苦しい漢だったのだろう・・・・・(汗(うたまる) 血染めの黒猫様、華佗を出したのは今後のプロット上の問題ですが、今後それをどう肉付けしていくかは、作者の楽しみの一つになっています。 一刀男の友達少なさそうだもんなぁ(うたまる) 砂のお城様、砂のお城さまの中では、もう一刀と華佗の絡むのは決定なのですね(w (うたまる) future様、あははははははっ、翡翠ですよ。 弄らない訳無いじゃないですか(w(うたまる) hokuhin様、確かにそれは恋姫の雪蓮と冥琳のファンなら誰もが思うでしょうね、 現に移植版では生きていると言う話し出し(汗 さてこの外史ではどうなるでしょうか、どうか見守り下さい。 ・・・・まぁあの二人が逝ってしまっても、メインヒロインは明命と翡翠なので、さして問題はありませんが・・・・それはそのときまでの秘密です。(うたまる) mokiti1976-2010様、その辺りは、作者にも分かりませんが、きっと華佗は一刀の心強い味方になってくれると思います(うたまる) ついに華佗が登場しましたね、そして翡翠によって一刀と華佗の2人が本のネタにされてしまうんですねww(流星軍) いつか来るとは思っていたが、とうとう医者王登場かぁ・・・・っつか虫垂炎治るってとんだけ万能なんだよ五斗米道wwwww(峠崎丈二) やばいこの状況だと朱然のもうそu・・・空想が大変なことに主に鼻血軍師のあの人が・・・・・・(どこか遠くで) ブーー!!!・・・・・・・(黄昏☆ハリマエ) 何やら、悪寒を感じたが・・・・気のせいでしょうね(本について)そして、最近の悩みはまさしく女装の時の話し。さて、この後どういった弄られるんでしょうかwww(ほわちゃーなマリア) はたして、雪蓮と冥琳の死亡フラグの前に医者王は一刀の知識とのファイナルフュージョンを承認されるのか!!?(緋炎桜) 誤字報告?_P.2 中頃 >・・・・・・・明命と再開出来たのもこの店だったな。>>再会ですよね。というか何を再開したのか逆に気になります。(青福) 華佗様参戦wwこれで冥琳の生存フラグが立つかな。でも華琳がまた狙うだろうなww(GLIDE) どんなけ熱き魂なんですかw ふう、やっと一刀がひどい目にw それにしても虫垂炎が五斗米道で治るとは… にたよーな道進んでるので習いたいですw さて、と…一刀×華佗か大喬(一刀)×華佗になるのかな?(よーぜふ) 武、文、医と全ての面において有能な人間が孫呉には揃いましたね。これは続きが気になります。(eni_meel) 華だ(だの字が出ない・・・)が仲間に入ったことはこれからのいくつかのイベントに深く係わってきますね。次回を楽しみにしています。(睦月 ひとし) あの漢がついに出てきましたか!! これで孫呉の気温は五度は上がりますね!!ww この漢の登場がどのような影響を及ぼすのか? 楽しみに待たせていただきます。(suisei) ついに、華佗が登場しましたか呉に留まることよってどのような展開になっていくのか楽しみです。(血染めの黒猫) 華佗・・・・・一刀の下にいると、翡翠にいじられそうな気が・・・(本的な意味で)(future) ここで華佗が呉の仲間になりましたか。これで雪蓮と冥琳の死亡フラグへし折って欲しいですね。(hokuhin) 一刀の知識と華佗のゴットヴェイドォーが融合するのでしょうか?(mokiti1976-2010) |
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