真・恋姫†無双 董卓軍√ 幕間第六話前編 |
孫呉との戦を終え、俺達は長安へと帰還した
長安には既に北伐を終えた華琳達が帰ってきており、その報告によると異民族連合戦は恋達の活躍により北伐軍が圧勝したらしかった
「飛将軍呂布の武、しかと見せて貰ったわ」
「…恋、頑張った」
華琳の報告に心なしか誇らしげに恋が言う
「よしよし。良く頑張ったな、恋」
そんな恋の頭を撫でつつ俺が答える…撫でられて顔を綻ばせる恋と報告で聞く鬼のような恋が全く一致しないけど
そうやって恋を愛でていると二つの冷たい言葉が俺の背後から聞こえる
「…ウチも頑張ったんやけど、そんな事されんかったなぁ〜」
「…私もだ。不公平にもほどがある」
みると霞と華雄の二人がジト目でこちらを睨んでいた
「霞たちが頑張ったのは分かってるって!でも…」
恋はこんな感じだから自然と撫でることができるが、二人はそんなキャラじゃない
二人の頭を撫でている俺を想像してみるが…うん、全く想像がつかない
「はいはい、いちゃつくのは後にしてくれるかしら?まだ報告があるんだけど」
横道に逸れ始めていた俺達に向かい、嘆息しつつ華琳が言う
「報告?」
「そうよ。かなり重大な、ね」
「何があったんですか?華琳さん」
重大な報告と聞き、月が問いかける
「貴方達が戦っている最中に、劉備が蜀を落としたわ。更にその勢いで漢中も落とした劉備たちは、現在南蛮平定の準備をしているらしいわ」
「劉備たちが…」
史実でも劉備は各地を放浪の末、蜀の地を落としたのだがこの世界の劉備たちも史実どうりに進んでいるようだった
「まあ、蜀を落としたといっても領地としては大陸の四分の一も無い程だし、桃香相手なら話し合い次第で戦わなくても降伏って展開も期待できるわ」
俺達の話し合いに雪蓮が割って入る…その姿を見て、華琳は呆然としていた
「孫策?…孫呉が破れたのは知ってるけど、なんで貴女がここに?」
「ああ、それはね」
俺は華琳に孫呉の処遇の話を伝える
孫呉は蓮華さんたちが継ぎ、雪蓮と冥琳さん達が俺達に降ったところまで話すと華琳は大きな溜息を吐きつつ月に言う
「月。敵国の元王を自分の警護に付けるなんて何を考えているの?」
嘆息しつついう華琳に笑顔で答える月
「雪蓮さん達の才能を買ったまでですよ。才能を愛する華琳さんなら分かっていただけると思ったんですが」
「何言ったって無駄よ曹操。月ったら私達がそういったって聞かなかったんだから」
雪蓮がそういうと華琳は更に大きな溜息を吐く
「はぁ〜…。貴女に降った私が言うのもおかしいけれど貴女、甘すぎるわよ」
「甘くなんてありませんよ。でも、ただ人の首をとるのが責任のとり方ではないと思っただけです」
「…ふぅ。確かに孫策が言う通り、何を言っても無駄みたいね。私もそんな貴女だからこそ降ったのだから、当然ではあるのだけれどね。…いいわ、好きになさい」
「はい、好きにさせてもらいますね」
そういって月は皆に向き直っていう
「これより私たちは孫呉との戦の傷を癒しつつ、劉備さんと交渉、降伏してもらえるよう働きかける方針で行こうと思います。何か異論はありますか?」
そうして皆を見渡す…特に誰も反論はないようだった
「では今後はその方向で進めますが…とりあえずは皆さん、お疲れ様でした。今日は皆ゆっくり体を休めて下さい」
「「「「「応!」」」」」
そうして俺達の当面の動きは獲得した孫呉の領地の統治、戦によって滞っていた政務をこなしつつ、劉備達と和平を組む為に働きかける事に決まったのだった…
月 幕間
「街もかなり発展してきたな」
「そうですね。長安に来たばかりの頃とは見違えるようです」
俺と月は街を歩きつつ話す
今俺達は仕事の合間を縫い、街の視察も兼ねた散策をしているところだった
まだ来て少しばかりしか見回っていないが街は活気にあふれていた
「ようやくここまで来た、ってところかな」
残る大国は蜀だけとなり、大陸の趨勢は最早大きく俺達に傾いていた
蜀と戦いになるにせよ、和平を結ぶにせよ天下の統一まで後一歩の所まで来ている
「そうですね…」
そんな中、月から返ってきた返事はあまり浮かないものだった
「どうしたんだ?月」
その態度が気になって俺は月を窺う
月は真っ直ぐ前を見つめていて、その先には…
「あ…」
俺達の前方、少し離れた民家で葬儀が行われていた
見送る遺族を見るに、それは恐らく前の戦で戦死した兵のものだと気付く
「…平和の為に、戦いは避けられません。戦を否定するわけじゃないんですが…。時々ふと思うんです。高慢な考えですが、もし私がいなければあの人たちは死ななかったんじゃないかって」
そういって悲しそうな顔をする月
俺は、そんな事無い、月のせいなんかじゃないと思いそれを口にしようとする
だが、彼女にそんな慰めは逆効果だと思い直し態度で示す事にした
「きゃ、か、一刀さん!?」
驚く月のことをしっかりと抱きしめた
そうして俺は彼女に囁く
「確かに月がいなければあの人は死ななかったかもしれない。でも、俺は月が居てくれて本当に良かったと思ってるよ」
「え…?」
「俺だけじゃない。詠も、恋も、ねねも霞も…兵達も、ここに暮らす民すべてに至るまで、月が居てくれる事に感謝してるさ」
彼女をしっかりと抱きしめつつ続ける
「その証拠に、街の皆の顔を見てみなよ。みんな、笑顔で溢れてるじゃないか」
街に行きかう人達は皆活気に溢れ、皆零れんばかりの笑顔をしていて今が乱世だという事を忘れてしまいそうなほどの光景がそこには広がっていた
「月が悩むのは解るよ。でもあの時、俺の初陣が終わった後に言っただろう?辛くても、守るもののために頑張るといった君を支えたいって。だから月。辛い時は一人で抱え込まないで、俺をもっと頼って欲しい。君を支えるのが俺の本望なんだから」
「…ありがとうございます、一刀さん…」
俺の胸に顔を埋め、泣き出してしまう月
俺はそんな彼女の背を優しく撫でるのだった
「ごめんなさい、一刀さん。突然泣いたりして」
申し訳なさそうに謝る月に俺は答える
「何言ってんだよ。さっきもいっただろ?もっと頼ってくれって」
「…いつも、これ以上無いほどに頼りにさせてもらってますよ」
ボソッと何かを呟く月
「え?何かいった?」
「いえ、別に…一刀さん」
そういって俺に向き直る月
「私は弱いから、また思い悩む事もあると思います。その時は、今みたいに傍に居てくれますか?」
「…もちろん。これからだってずっと月の傍にいるよ」
「ありがとうございます、一刀さん。約束ですよ?」
そういってやっと笑顔になってくれる月
その笑顔は、初陣のあの時見た彼女の笑顔より更に輝いていて
(ああ、俺はあの時この笑顔に惹かれて、この優しすぎる子を守ると誓ったんだったな)
そんな思いを再確認しつつ答える
「ああ、約束だ」
その答えに更に笑顔になってくれる彼女をこれからも支え続けていこう
そんなことを考えながら、俺は彼女と共に街の視察に戻っていくのだった…
詠 幕間
「詠、こっちの案件終わったんだけど…って何だこれ!?」
ある日、自分の仕事を終えその報告のために詠の部屋を訪れたのだが、扉を開けて目に入ってきたのは物凄い数の書簡の山だった
「あ〜、一刀…。それはこっちに置いておいてもらえる…?」
その山の中から詠がひょっこりと顔を出す…その顔にはクマがはっきりと浮かんでおり、傍から見てもお疲れモードだった
「どうしたんだ詠!?顔色わるいぞ!?」
「あ〜、荊州とか、領地が増えたし、戦中に滞ってた政務もたくさんあってね…」
そう答える詠だが受け答えにも全く生気が感じられなかった
「だからって無茶しすぎだろう…」
「私もそういっているのだがな。詠は全く聞き入れてくれんのだよ」
「冥琳さん」
俺の呟きに答えてくれたのは詠の手伝いをしてくれていた冥琳さんだった
「私も、もっと仕事を手伝うといっているのだがな」
「うっさい!!筆頭軍師である僕が任された仕事なんだから、あんたの手は借りないわよ!!」
「…という具合でな。こちらもどうしたものかと」
さっきとは打って変わって大声を上げ威嚇する詠とそれにその態度に嘆息する冥琳さん
「…もしかして、冥琳さんに対抗心燃やしてんのか?」
「ぼ、僕はそんな器小さくないわよ!!ただ新参者に任せて置けないだけ!!」
俺の言葉に向きになって反論する詠…明らかに対抗心バリバリじゃないか
「それに月の、僕たちの悲願まであと少しなんだもの。僕だって頑張らないと…っと!!」
そういって仕事を再開しようと再開しようとする詠だが、疲れからか手元もおぼつかなくなってきているようだった
(全く、頑固って言うか…頑張りすぎなんだよな、詠は)
そんな彼女を見てられなくなった俺は、未だに机に齧り付いて仕事を続ける詠を後ろから抱き抱える
「え!?ちょ、何するのよ一刀!?」
そういって暴れる詠だったが俺はその抗議を無視しつつ詠を寝台へと運ぶ
「体調管理も仕事の内、筆頭軍師様ならそれくらい承知の上だろう?」
なおも抵抗する詠をやんわり押しとどめつつ俺が言う
「でも!!」
「でもじゃない。大陸の平和や俺達の悲願も大事だけど、俺にとってはそれ以上に詠が大事なんだからな」
「なっ…!!」
駄々をこねる子供をあやすように詠の頭を撫でる…心なしか詠の顔が赤くなっていた
「大丈夫か?熱でもあるんじゃ…」
「だ、大丈夫よ!!分かったわよ、休めばいいんでしょ!!」
そういって強引にまぶたを閉じる詠…よほど疲れていたのか少しもしないうちに安らかな寝息をたてはじめた
「まったく、本当に頑張りすぎなんだよなぁ」
全く素直じゃない我等の軍師様の頭をやさしく撫でる
その寝顔はいつもの毅然とした様子からは想像できないような、歳相応のあどけないものだった
「さて、この頑張り屋さんが休んでる間に、少しでも仕事を片付けるか。…冥琳さん、手伝ってもらえるかな?」
「もちろんだ。初めから私はそのつもりだったのだからな。…ふふっ」
そういって突然笑う冥琳さん
「何?」
「いやなに、あの詠でも北郷の言う事なら素直に聞くのだなと思ってな。…しかし、今のやり取りを見ているとお前が信頼されるのも分かる気がするよ」
「信頼されてるのかなぁ…」
「まあ、そのあたりは自分で自覚せねばな。周りからとやかく言っても伝わるまい。…さて、仕事を済ませてしまうか」
そういって書簡を次々と片付けていく冥琳さん
俺もそれに習って、詠の寝顔を見つつ仕事を片付けていくのだった…
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董卓IF√幕間六話です 時間的な意味で大変遅い投稿となりました 今回は月さん、詠さんです 誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告頂けるとありがたいです |
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コメント | ||
フェイト様 コメントありがとうございます!! ですねw彼女達には頑張って欲しい所ですw(アボリア) 一刀だから仕方ないですが、鈍感ですねぇ……まあ取り敢えず、皆頑張れとしか言えませんねw(フェイト) kitarou様 次回は幕間の続きですのでその次の二十七話をお楽しみに!(アボリア) まだ、桃香達、降伏するとは、思えないな・・朱里と雛里が秘策あるかも・・・(kitarou) 長くなったので続きです 一刀君の考えの書き方で驕っているように見えてしまいますが決して楽観視しているわけではありません ただ、目前に迫った天下統一に浮き足立っている感はあります 次回以降の本編でそのあたりが明らかにできるかと思います(アボリア) cena様 不可侵条約や友好同盟も考えたのですが誤解とはいえ一回諸侯連合で戦をしているのでお互い印象がよくないでしょうしし、国力の差から見ても同盟の線は無いかなと思い二択になっています。しかし降伏といっても董卓陣営ですから友好同盟と一緒の扱いぐらいになるかなぁ、っとおもいます(アボリア) suisei様 董卓√のなかでもメインクラスの二人ですからw(アボリア) samidare様 ツン子ちゃんならではの表現方法ですねw(アボリア) ほわちゃーなマリア様 最終章ではその絆がキーになってくる部分がありますのでそれが伝わっていれば幸いです(アボリア) 弐異吐様 優しいがゆえに些細な事で思い悩み、傷つく弱さみたいな部分もある そんな彼女が表現したかったので上手く伝わっていれば幸いです(アボリア) リョウ流様 月の器は大きいですが、それでも一人の女の子でもある そんな感じが伝わればと思い今回のお話となりました(アボリア) moki68k様 確かにそう思っていても口には出さないでしょうしねw なんにせよ可愛いですw(アボリア) ジョージ様 次回の幕間が終われば物語は終結に向かっていきます お楽しみに!(アボリア) うたまる様 華琳さんたちは魏国で自分達の政務に励んでいますw でも確かに出てこないと不安な人たちではありますねw(アボリア) hokuhin様 最後の幕間なので二人とも癒し方面の話にしてみました 次回は華雄さん達のこりのメンバーのお話です(アボリア) この幼馴染コンビかわいすぎる・・・ww(suisei) moki68kさんに同意wwきっと対抗心も燃やしてるけど、その影には頭を撫でて欲しいという願いがあるのかもww(samidare) 物語りもいよいよ、終章に向かいつつありますね。これを見て、改めて一刀たちの絆を垣間見れた気がします。(ほわちゃーなマリア) 月の器のでかさって華琳以上じゃね(弐異吐) もしかしたら詠もがんばったご褒美に頭なでてもらいたかったのかも…(moki68k) 更新乙でした〜♪ そろそろ終幕でしょうか・・・・桃香達とどのような結末を迎えるのか、楽しみにしております。二人は相変わらず可愛かったですよ〜♪(峠崎丈二) 更新お疲れさまです。 最後に華琳や桂花がいないのが気になったけど、何かたくらんでいそうだなぁ 面白い事を(w(うたまる) 最終章の前の憩いのひと時・・・ 月と詠二人とも可愛かったです。(hokuhin) |
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