真・恋姫†無双 星と共に 第22章 |
真・恋姫†無双 星と共に 第22章
合肥の戦いから、数週間が経つ。
今度は蜀の方に動きが出てきた。
それは涼州の街亭で動きがあるとのことであった。
「今度は街亭か……、しかも蜀……」
一刀は思う。
(俺が知ってる歴史ととことんずれてるな……)
(ずれてると言うより発生時期が違うのでは?)
(そうだな……)
一刀と星はこっそり話す。
「街亭に向かわせる部隊を指揮してくれるのは……」
「私が行きましょう」
そこに黒美が名乗り出た。
「黒美……」
「黒美はあくまで軍師、なら将として私も同行します」
次に咲が名乗り出た。
(司馬懿に張コウ……本気で勝つ気の面々だな……)
「あら、私も行きますわよ」
「私も行くつもりです……姉さん」
澪と光琳も名乗りでてくる。
「………そうね……。分かったわ。それと一刀と星も一緒に行きなさい」
「俺達もか?」
「ええ、ただし……二人は後で私の所に来なさい」
「?」
「……ああ」
「今回の部隊の大将は咲、あなたに任せます」
「……承知しました」
「それでは黒美、作戦指揮は主にあなたに任せたいと思うわ。咲もいいわね」
「構いません」
「澪と光琳、それに一刀と星はそれに従うように」
『はっ!』
「では、解散!」
軍議は終わり、しばらくしてから一刀と星は華琳に呼び出され、華琳の部屋を訪ねる。
「華琳、一体何用で我らを呼びつけたのだ?」
「そうね……星、それに一刀。あなた達によく言い聞かせないといけないことがあるのよ」
「ほぅ……」
「俺はこの前聞いたと思うが……」
「ええ。一刀には言ったわね。でも敢えてもう一度言うわ。
私の許可なしにあなた達の知っている歴史や知識を振るわないで頂戴」
「……それは何故?」
「星、それはあなたもよく分かっているはずよ」
「……………」
星は言われて考える。本当は言われなくても分かっているのだ。
「ふむ、了解した」
「一刀は?」
「分かった。ただ俺も敢えて言わせてもらうぞ」
「何かしら?」
「街亭で黒美と咲、この二人を行かせるとは粋なことをするな」
「それってあの二人があなたの知ってる歴史と関わりがあるって事かしら」
「そう言うことだ。前の合肥の時に北郷隊を行かせてくれと言ったのは合肥の戦いで張遼と楽進が活躍するって知ってたからな。
今回の街亭は司馬懿と張コウが勝利のカギだな」
「そう……。だったら今回はその勝利のカギの二人の言う事をよく聞いてちょうだい。それとあまり助言は与えないように……」
「分かった」
「善処しよう」
「善処しなさい」
そして一刀と星は華琳の部屋を去る。
「あんなことを言われましたが……一刀殿」
「とりあえずは華琳の言う事を聞くさ。でも本当にヤバい時は助言でも何でもするさ」
それからしばらくして咲と黒美は一刀、星、澪、光琳と部隊を連れて街亭に向かった。
その頃蜀の部隊は既に街亭近くへと兵を進めていた。
「この辺りですね……」
「そうね……」
一人の変わった民族衣装(ゲームでエルフが着てそうな緑の服)を着た女性と朱里並みに小さい眼鏡をかけ、とても質素な服を着た女の子が部隊を率いていた。
女性の名は王平、そして少女の名は馬謖であった。
「あれ?」
「どうしたの? 茎(馬謖の真名)」
「地那(ちな)さん(王平の真名)、あれ……」
馬謖がある山を指差す。
「あら、山があるわね」
「あそこに陣を張りませんか?」
馬謖がそんなことを言いだす。
「何で? 朱里さんはあの山じゃなくて、山の周りに陣を張れって言ってなかったかしら?」
「確かそうだったと思いますけど……」
「じゃあ、何で山に陣を張るのかしら?」
「高い所に陣を張るのが兵法としての初歩ってあったので……」
「でも応用するのも兵法だと思うけど……」
「………」
馬謖はどうしても山の上に陣を張りたそうなのを王平は止めることが出来そうになかった。
「分かったわ。ただし、兵の大半はこちら……山の周りに配置させるわ。それでいいわね?」
「……ありがとうございます!」
そして馬謖はどれくらいかの兵を連れて山へと向かった。
その様子を黙って見る王平。
「茎は功を焦ってる……。私が何とか支えてあげるわ」
王平は影で馬謖を支えようと思った。
それから数日後、ようやく一刀達魏軍が街亭付近に到着したが……。
「既に街亭を蜀が押さえてるって?」
「はい」
伝令の報告を聞いた黒美は思わず頭を押さえる。
「やられた。これもあの諸葛亮の入れ知恵や……」
思わず関西弁になる黒美。
実は元々黒美は若干関西弁が入る人間だが、それはあくまで私のことであり、公では使わないようにしていたが、予想外な事が起こったりすると思わず関西弁が出てしまうのだ。
それと余談が、黒美は諸葛亮と鳳統と同じところで学んだ学士であるとのこと。
(朱里のはわわみたいなもんだな……)
(どちらかというふははが合うと思いますがな……)
(同感だな)
一刀と星がそう思っていると……。
「しかし街亭は抑えていると言いましてもその一部は山にいるようです」
「何やて?」
「どういうことかしら?」
咲がその伝令に詳しく尋ねる。
「はい。敵の半数は別の場所を抑えていますが、別の半数が山頂に陣取っているのです」
「それって……」
「その山頂の周りに兵は配置してるの?」
「配置はしてますが、そんなに数はおりませぬ」
「それって罠かしら?」
「完全に山の周りを囲んでくださいって言ってる様なものね」
「それで黒美、どうするんだ?」
一刀が黒美に尋ねる。
「そうですね……、すぐに兵を送り、その山を囲むよう指示を!」
「はっ!」
黒美は伝令に指示を出す。
「黒美」
一刀が黒美に声をかける。
「今度は何?」
「水路を断て」
「なんやそれ。最初っからそのつもりや。その役目は……咲、頼むで」
「ええ、分かったわ」
(最初っからそう考えてたか……)
「それと山を囲む部隊の指揮は……一刀さんに星さんに澪さんに行ってもらいますけど、いいですか?」
「……分かった」
「それじゃあ、行きましょうか」
そして一刀と星と澪は部隊を連れて街亭の山の麓へと向かった。
「ところで一刀」
「何だ?」
澪が一刀に声をかけてきた。
「何であんな進言をしたの?」
「あんな進言?」
「水路を断てってことよ。何かいつもの一刀が思いつくことじゃないかなって思ったから……」
「う〜ん……そんなに俺らしくない作戦か?」
「ええ、私から見たらね」
「そうか……」
「まあ確かに一刀殿らしくはなかったかな……」
「星まで……。まあ俺らしくはなかったかな…」
「あの策、最初っから考えてたみたいだけど、一刀の策じゃないわよね?」
「確かにあれは俺の策じゃないな……。ちょっとした戦いの歴史を参考にしたものだ」
「そう……」
「ところでもうすぐ山の麓だぞ」
「そうだな」
そして三人は山の麓までやって来た。
三人の前には蜀の軍勢がどのくらいか居た。
「さてと……」
「どうするのかしら?」
「このまま行って被害を出す……ってのはよくないな。となると……」
「我らはさらにあの部隊を囲むのですな」
「ああ。それも慎重に気付かれないようにな」
「それでいつ奇襲するのかしら?」
「囲む作業が完全に終わったらすぐにでもやる」
「分かったわ」
「それじゃあ、星は右から後ろに回ってくれ。澪は左から後ろに…俺は正面を囲む」
「御意」
「分かったわ」
「囲むのが終わり次第、すぐに伝令をそれぞれの場所に出してくれ。そして攻撃のタイミングはそれぞれに任せる」
そして一刀は星と澪達と分かれ、それぞれ部隊を率いて山の麓に滞在する蜀軍を囲みに向かった。
それからしばらくして一刀達は山の麓に居る蜀軍を完全包囲した。
その事はまだ蜀軍は気付いていない。
「伝令! 趙雲部隊の方は包囲完了です」
それと同時に澪が放った伝令も一刀のところにやって来た。
「徐晃部隊、包囲完了です」
「分かった……」
「それじゃあこっちも出来たと伝えてくれ」
「「はっ!!」」
二人の伝令はそれぞれの配置に戻った。
「さてと後五分くらいしたら……攻めるか」
それから五分ほど経つ。
「よし、全軍突撃!」
『応っ!』
そして一刀の部隊は突撃していく。一刀の部隊が突撃すると同時に星と澪の部隊も動き出した。
その動きは一刀の部隊を見て動いたような動きでは無く、最初っから同じタイミングで動こうとしていたような動きであった。
「タイミングばっちりだな。あの二人……」
そして三人の部隊は山の麓に滞在している蜀の部隊を攻撃する。
「さっさと去れ!」
一刀は黒と白と破偉派を抜いて、敵兵達を撃つ。当然撃っているのは氣弾。敵兵は死なない。
撃たれた兵はまだ無事だった兵達に抱えられ、その場を去っていった。
それからまたしばらくして一刀は星と澪と合流した。
「お疲れ……だけど何であんなにタイミングがばっちり合ったんだ?」
「なに、簡単な話ですぞ」
「簡単な話?」
「一刀はよく五分前集合と言うじゃない。だから私は伝令が来た五分後に攻めようと考えたのよ」
「……星もか?」
「うむ。私も伝令が来た時に五分後と決めておった」
「確かに五分前集合な事は言ってるけどな……」
まさかそれが合図になるとは思ってもみなかった。
実は星はともかく、澪には真桜に作ってもらった時計を渡しているので時間が分かっているのだ。
「それはともかく、早くこの山を囲みましょう」
「ああ、それと咲も連絡しないとな」
「そうね」
それから澪の部隊を中心に山の麓を囲み、連絡を受けた咲の部隊も山の周りの水路を完全に囲み、山頂は水のない状態へとなっていった。
澪や咲の部隊が山の周りを囲んでしばらくして、山頂に居た馬謖は自分達が完全に囲まれたことにようやく気付いた。
「これって……」
「大変です! 馬謖殿!」
「何?」
「水路が断たれています!」
「嘘!?」
「この状態が続けば我が部隊は深刻な水不足になります!」
馬謖の部隊の一人がとても重大な事を告げる。
「そうですか……」
「馬謖殿?」
「ここに残っている水をここに残っている兵士達皆に分けてください」
「馬謖殿は?」
「私の分は構いません。そして伝えてください。明日の朝にこの山を一気に駆け下り、下の魏軍に逆落としを仕掛けることを……」
「……分かりました」
伝令がすぐに馬謖に言われた通りの事をする。
「まさかこんなことになるなんて……朱里さんや地那さんの言う通りにすれば良かった……」
馬謖は今頃になって後悔した。
「私、この後どうなるんだろう……」
馬謖は考える。
この場を脱出できると考えた後、自分は一体どうなってしまうのだろうと。
馬謖は軍規違反を犯したのだ。軍規違反をした者は基本的に死罪。そう考えるとここで生き延びてもとは思うが……。
「でも死ぬのはきちんと朱里さんや地那さん達に謝ってから死ぬ!」
馬謖は決意した。
その頃山の麓では……。
「そろそろなのかしら?」
「多分ね……」
咲が黒美に尋ねる。
「相手が誰かは分からないけど、恐らく相手は水路を断たれたことに気付いてるはず。それならすぐに逆落としをかけるはず。そしてもっとも逆落とししやすい場所は……」
「ここってことね」
「そう。だから……逆逆落としをかけようと思う」
「逆逆落とし……それって普通に山を登るって事よね?」
「本来は下から上よりも上から下に降った方が戦いやすい……。だからそこを利用する」
「どういうことかしら?」
「これを使うのよ」
「……なるほどね」
そして黒美の言う通り、しばらくすると馬謖の部隊は上から逆落としをかけた。
「本当に来たわね。馬網柵用意!」
『はっ!』
咲の指示通り兵士達は馬網柵を用意する。
その馬網柵とは槍の束を蜀の兵士達に向けて立てた柵であり、その柵の数はかなり多く、しかも槍の向いてる方向が正面ややや上とかなりのバリエーションである。
馬がこの馬網柵を完全に越えるのは無理があるだろうと言うほどのものであった。
「うぉおおおおお!!」
「と、止まれ!」
蜀の兵士達が突然の馬網柵の出現に馬を止めようとするが、坂のせいで勢いが付いた馬は急には止まれず、そのまま槍の餌食、つまりは馬もろとも兵士は串刺しになったりした。
しかも上手く止まれたとしても下で待っている咲の部隊の弓兵達の矢の餌食であった。
「まずいわ……」
何とか部隊の一番後ろにいた馬謖はどうすればいいのか考える。馬謖のいる場所は矢が届かない位置であった。
このまま迂回路を取ろうとしても伏兵がいる可能性は高い。とは言ってもこのまま進んでも槍と矢の餌食になるだけである。
「ここまで……なの?」
馬謖は悲観し始める。
「……そんなの嫌だ!」
馬謖は泣き叫ぶように叫んだ!
するとその叫びが届いたのか突然咲の部隊が襲われたのだ。
「何事ですか?」
咲と黒美は突然の襲撃に少々戸惑うもすぐに冷静になり、突然の事態を兵に聞く。
「後ろから蜀の別働隊が……」
「別働隊……その部隊の指揮は?」
「分かりません。ですが、指揮官が居るのは確かです」
「でなければあれだけいい動きはしません」
「そうですね……。部隊の撤収をお願いします!」
「はっ!」
黒美は伝令にすぐに対処するように伝える。
「………黒美」
「これだけやったのならもういいと思う。それに一番の目的は蜀軍の殲滅じゃない。
それだったらこれくらいで良い……」
「そうね……ただ、一つだけ我がままを言っても良いかしら?」
「なんですか?」
「襲撃してきた部隊の将と少し手合わせをしたいのよ。それくらいならいいでしょ」
「……無理はしないようにお願いします」
「分かったわ」
そして咲は一人だけで先にその場を後にした。
それから魏軍が撤退した中、馬謖は魏軍を襲った部隊と合流した。
その部隊を率いていたのは馬謖と分かれていた王平であった。
「大丈夫? 茎さん」
「地那さん……ごめんなさい!」
馬謖はすぐに王平に頭を下げて詫びの言葉を言う。
「礼ならいいですよ。それに……まだ……」
王平がある方を見る。
するとそこにはいつの間にか一人で立っている咲の姿があった。
「あの人は……」
「あなた……張コウね」
「え?」
王平が咲の名を口にし、馬謖は少し驚く。
「あの人が張コウ……でも何で一人でこんなところに……」
「あなたが私達の包囲網を突破させた部隊の指揮官かしら?」
咲は鉤爪を王平に向ける。
「………ええ、そうです」
「少し手合わせをお願いしたいのですが……」
咲は構える。
「そのためだけにここに来たのですか?」
「ええ」
「……分かりました」
王平は馬から降り、自身の武器を構える。
王平の武器は弓の形をしたものだが、その弓型の武器は変形し、薙刀のような武器へと変わり、薙刀の刃が姿を現す。
「変わった武器ね」
「ええ。私の一族から伝わる武器製造法で作ったものよ」
「一族特有ね……」
咲と王平は構える。
「茎、あなたは残った兵を連れてすぐに帰りなさい」
「でも地那さんは……」
「私は大丈夫。だから早く帰りなさい」
「……地那さん、ご武運を!」
馬謖は王平に言われて兵をまとめてその場を去る。
「あんなことを言っていいの?」
「ええ。あなた私を倒す気……ないのですよね?」
「その通りよ。よく分かったわね」
「『少し手合わせ』って言葉を聞いてピンと来ましたわ」
「そう……。なかなかの洞察力ね。そのくらいの洞察力があるならあなたが指揮官になればよかったのに」
「今回はあの子の育成を踏まえてのことなのですよ。まあそれでも山の上の布陣は危険だと判断して私は残ったのですよ」
「そうだったの……。なら……なおさらあなたと手合わせをしたくなったわ」
二人は黙り込む。
そして沈黙がしばらく続き、ようやく沈黙が破られた。
「「はあっ!」」
咲が鉤爪を王平の薙刀に当てる。
「せぇいっ!」
王平が薙刀を振り、咲の鉤爪を払いのけると同時に咲の体を大きく後ろに吹き飛ばす。
「っ!」
咲は吹き飛ばされたものの何とか着地する。
「……思ったよりも凄い力ね」
「今のはあなたの力を利用しただけです。私自身の力はそんなにありませんよ」
「………そう……。ならこれならどうかしら?」
咲は先ほどとは別の構えを取り、そこから一気に突撃していく。
その突撃は普通の突撃ではなく、自身の体を回転させた突進であった。
「回転?」
「はあっ!」
咲は王平に当たる前に地面に鉤爪を当てて自身を上空に舞い上げる。
「これでどうかしら?」
咲は先ほどよりも回転力を高めた回転をし、一気に王平の所に向かって駆けるように落ちていく。
「はあああああああああっ!」
「あれだけの回転……力を利用するのは無理ですね」
王平は力を溜めるような構えを取る。
「はあああああああああああああっ!」
王平は駆け落ちてくる咲の鉤爪に上手く当てるように薙刀を振り下ろす。
その時にものすごい金属のぶつかる音が鳴り響く。
咲は何と薙刀に鉤爪を当てられた瞬間、回転を利用して薙刀の刃の横を滑るようにし、王平の所に降り、王平に鉤爪を突きつけようとする。
しかし……。
「!」
王平の薙刀は最初の弓型の形をして咲に突きつけていた。
「これは……」
「引き分けですよね?」
「…ええそうね」
咲は鉤爪を退き、王平も自身の武器を退かせる。
「まあ、初めからあなたを倒す気はなかったからね」
そう言って咲は王平に背中を向ける。
「行くのですか?」
「ええ。私は魏の将。そしてあなたは蜀の将。また戦場でね……」
「そうですね……」
そして咲はその場を去っていった。
「私も行くとしましょう」
王平は馬を呼び寄せて急いで馬謖と合流するのであった。
その後馬謖と王平は蜀の首都である成都へと戻り、今回の戦いのあり様を劉備や諸葛亮に報告した。
「今回の戦の敗因は私にあります。罰は私だけを!」
馬謖は頭を下げて罰は自分だけにと言うと……。
「茎ちゃん……」
諸葛亮が馬謖の所に近づく。
「いいんだよ。それに言ったよね? もしも現場で何かあったら指揮官である茎ちゃんの判断に任せるって。
だから茎ちゃんは悪いことなんてないよ」
「それに罰なんて与えたくないもん」
その言葉を発したのは劉備であった。
「皆が笑顔で居られる世界……。そんな世界を作るのには誰一人かけてもダメなの。だから茎ちゃん、そんな命を粗末にするようなことを言わないの」
「…桃香様……ごめんなさい」
「いいの、いいの。分かってくれればそれで♪」
馬謖の目には涙が流れていた。
「茎ちゃん……」
諸葛亮が近づき、馬謖の涙を拭こうかと思ったその時!
「……っ!」
突然諸葛亮が口から血を吐きだしたのだ!
「朱里ちゃん!?」
「朱里ちゃん、大丈夫!?」
「大丈……夫、ごふっ!」
また諸葛亮の口から血が吐かれる。
「朱里ちゃん! 誰か! お医者さん呼んで! 急いで!」
「はっ!」
急いで諸葛亮はベットに運ばれ、医者に診てもらったがどの医者も諸葛亮の突然の吐血及び病気の原因が分からないというのだ。
「どうして朱里ちゃんの病気の原因が分かないのかしら?」
「どのお医者さんも原因が分からないとか見たこと無い症状だとか言うので……」
「それでも医者なのか……まったく……」
「まあまあ愛紗、医者でも分からないことはあると思うのだ」
「鈴々の言う通りだな。しかし一人くらい原因が分かる医者が居てもよいと思うのだがな……」
「そう言えば最近、華陀って名前の医者が蜀に来てるって聞いたな」
「蒲公英も聞いたことある。確か五斗米道に通じてるとかで……」
「とりあえず医者ならば診てもらった方がよさそうですね」
「うむ。早速その華陀を探そう」
そして蜀の将が全員で華陀を探し、ようやく華陀を見つけだし華陀に諸葛亮を見てもらうと驚くべき答えが帰って来た。
「単刀直入に言おう。俺でも治せん」
「何だと!?」
関羽が華陀の襟を掴む!
「落ちつけ。治せないのはこの病魔が病魔ではないからだ」
「?」
「どういうことなのだ?」
「この病魔は……いやこれは呪いの一種だ」
「呪い?」
「正確には呪いの余波だ。前に張衡様に教わった。大がかりな呪いを使うとその呪いたい人間とは全く無関係の人間にも呪いたい人間にかける呪いとは別の呪いやよく分からないものが掛かるってな」
「そんな……」
「しかもこの病魔の呪い……恐らくは太平妖術だ」
「太平妖術?」
「色々な仙術があってな本もあるのだが、それは呪われた術。使った人間にもどんな影響を及ぼすか分からないものだ」
「一体誰がそんなことを?」
「分からない。だが一つ言えることがある。孔明のこの呪いの病魔を解くにはその呪いを発した人間をどうにかするかその発した人間が本当に呪いたい人間をどうにかするしかない」
「呪いたい人間をどうにかする?」
「そこまでは俺も分かってないんだ。とにかく呪いを発した人間を探した方がいいかもしれない。俺は医者だ。困ってる人間を見過ごすことはできないが、他にも病魔によって苦しめられてる人間がいる。俺はその人達を助けに行かねば……」
「そうか……。済まなかったな、華陀殿」
「いいさ。それと少しだがその呪いの病魔の侵攻を抑える薬の調合法を書いたのを渡しておく。孔明に飲ませておくようにな」
そして華陀はその場を去った。
「太平妖術の呪いか……」
どこかの山の祠の奥では普浄が何やらしゃがみながら祈祷のような事をしていた。
そこに潘臨がやって来る。
「いいかしら? 普浄」
「何だ?」
「少し大陸の方を見てきたのけれど、あなたのその呪いのせいで変な影響が出てるわよ」
「ほう? どんな影響だ?」
「そうね。孫権の記憶がどうも別の外史での記憶の引き継ぎが起きたり、諸葛亮が病に倒れたりしてるわね」
「ふん。それだけのことか」
「あなた、本当に何も思ってないわね」
「当たり前だ。元々それくらいの事は想定範囲内。この呪いは北郷一刀にかける呪いなのだ。別の外史とは言え奴と関わりがあった者にかかろうが私には関係ない」
「そう……。私はこれ以上とやかく言うつもりはないわ」
「そうしてくれ。まだこの呪いは完全ではないのでな……。悪いがもうしばらくは……」
「ええ、近づかないようにするわ」
そして潘臨は普浄から離れて行った。
「まだだ……まだ終わらんよ。北郷一刀!」
おまけ
作者「さてと第22話だ」
一刀「早いな」
作者「おまけで色々言いたいことがあるのさ」
一刀「それだったらいつもの小ネタでいいだろ」
作者「気分的なもんだ。しかし前回の話はイマイチ伸びが少ないな」
一刀「マンネリ化したみたいだからみんな飽きたんじゃないのか?」
作者「かもな。若干手抜きみたいな事もあったし…。
ああそれと前回のおまけで言い忘れたことがある」
一刀「何だ?」
作者「前回の話の分断作戦。知っているというか分かる人もいるだろうけど、あれは横山光輝の漫画であった場面を参考にしたものだ」
一刀「やはりそうなのか」
作者「投稿した後、それを書くのを忘れたけど、一刀が台詞の中で言ってるからいいかと思った」
一刀「いいのかよ。まあそれはともかく今回の話は少し展開がいってるな」
作者「ある意味グロ注意だ。それと今日ニ○ニ○動画を巡回してたら面白いものを見つけた」
一刀「何だ?」
作者「前回蓮華の記憶がなにやらおかしい状態になってただろ? それが同じような事になってる恋姫の作品があった」
一刀「なんだって!?」
作者「俺も驚いたよ。まさか似たような事が既にあったなんて」
一刀「既に?」
作者「投稿日時を見ると俺が考えるよりもずっと前だったからな。
いいわけとかじゃないけど本当に今日初めて知った」
一刀「まあ別に良いんじゃないのか? よほどまずい事をしなければ…」
作者「最近はある事件があったから少し敏感でな…。
それと余談だが、その動画で一刀の覚醒を見て諸に仮面ライダーディケイドを連想した」
一刀「なんじゃそりゃ?」
作者「まさにあれはコンプリートフォーム。まあ一つのコメントにも同じような事が書いてあるけどな。諸にディケイドを連想させたわ。
それでは!」
説明 | ||
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。 なお今回は極一部グロ表現が含まれています。 |
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