夜から朝に |
暗い暗い夜の闇。それは妖怪たちが跋扈するために必要な動力となる。
明るい明るい月の光。それは人間たちが安らかな時を経るために必要な効果をもたらす。
一人の少女が空に浮かぶ。ふよふよぐらぐらとしながらも、決して重力にとらわれず直線すら描かない。前が見えない。後ろも見ることはできない。
暗い暗い心の闇。それは人間たちが持つ平面では否定している一部分。
明るい明るい太陽の光。それは妖怪たちの活動を妨げる邪魔なもの。
きれいな心を持っている、闇を纏いし妖怪が今日も空を飛ぶ。尤も目隠し飛行なのではあるが。
相見えぬ二つの要因を持つ少女。それは小さな矛盾。軋轢が生じていく小さな心。
黒のカーテンが空に下りる。いつも通り視界には何もない。黒しかない。「何も見えていないのならどこを進んでもいっしょでしょう?」少女は言った。
カーテンが下りている時は闇を周りに張る必要はない。どちらにせよ見ることができないのだから。
そんな少女も闇を張らない日中がある。それは新月の日。新月の日は友達とゆっくり話したりしている。
そのはずだった。紅い霧が辺りを覆う。遊んでいたのに、皆急に帰って行った。
その夜、人間と会った。その人間は食べてもよかった。
食べることができるならばの話だが。
もちろん完膚なきまでに叩きのめされた。もう闇を張る必要もなかった。
暗いけど紅い空を見上げて心に打たれたものがあった。
「だって、闇で隠したらもったいないじゃない。月がこんなにも綺麗で紅いんだから」
その次の朝。もう闇は少女を覆っていなかった。
周りを見ると世界が変わっていた。無意識で押さえていた重石もどこかへ消えてしまった。
リボンが風に乗って空を踊る。金色の髪が太陽の光に映える。
今日は友達に会いに行こう。隠すものは何もないんだから。
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明けない夜はない。必ず朝は来る。 | ||
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