リトバスSS 「パシリ」 |
「わりぃ、理樹。コーラを頼む」
「はるちんはオレンジジュースっ」
「……分った、行ってくるよ」
そしてパシリの僕、直枝理樹は自販機に向かう。
何故こんなことになったかと言うと、恭介の気まぐ
れでバトルランキングが再開されたせいだ。武器に恵
まれずに最下位となり、もらった称号が『パシリ』。
名は体をあらわすということで、こうしてこき使われ
ているのだ。
「理樹くん、サンドイッチお願い」
「さ、沙耶さんはバトルに参加していないじゃない
かー」
「いいじゃない。細かいことを気にするとハゲるわ
よ」
「分ったよ、行けばいいんでしょ、行けば」
僕だって、何とかこの状況を打破したいと思ってい
る。
「よしっ、勝った!」
何度目かの挑戦で、運良く『3D眼鏡』をひいた来ヶ谷さんを倒せた。
「じゃ、来ヶ谷さんの称号は『パシリ』で」
僕はようやく、地獄から抜け出せると思った。
「ブブー」
「どうしてさっ、恭介」
「称号の重複は、認められない」
「……」
「そういうわけで理樹、カツサンドを頼む」
「あーもー、分ったよ」
「理樹、プラスに考えろ。例えばほふく前進で向かうとか。パシリと筋トレの両立ができ
ちまうぜ」
だったら真人が代わってよ、と叫びたかった。
ならば、負けたときに別の称号をもらうしかない。でも、誰もがパシリという便利な存
在を失いたくないらしく、称号の継続を宣告される。
「恭介っ、これはありなの!?」
「あり、だ。勝者の権利だからな」
「ええー」
よし、頭を使おう。情に弱そうな相手なら、もしかして……
ストレルカとヴェルカに瞬殺されたあと、僕は仔犬のように瞳をうるませてクドを見つ
めた。
―― クドは僕を助けてくれるって信じてるよ ――
「し、称号ふぉーゆーとぅゆー、なのです」
そしてついに、『もう泣かない』の称号をもらった。
「やった! ありがとう、クド!」
さらに、次の勝負で鈴に破れた謙吾が、『パシリ』に指名されていた。
「くぁぁぁぁぁっ! この俺がパシリだと!?」
錯乱する謙吾を横目に、僕はガッツポーズを決めた。
しかし、その30分後……
調子に乗って謙吾に挑戦した僕は、あっさりと返り討ちにされていた。でも大丈夫だ、
称号の重複は認められないルールなのだから。
「おまえはこれから、こう呼ばれる」
「……」
「パシリのパシリ」
僕は目が点になった。
「き、恭介!」
「あり、だ。『パシリのパシリ』に指示できるのは『パシリ』だけなのだから、重複では
ない」
「うわぁぁぁっ」
「おう、謙吾。コーラを買ってこい」
「おねえさんには日本茶を頼む」
「理樹、そういうわけだ。よろしく」
「分ったよ……」
そして僕は、とぼとぼと自販機に向かうのだった。『パシリのパシリのパシリ』があら
われる頃には、バトルランキングが終わっているだろうと思いつつ……
説明 | ||
再開されたバトルランキングで『パシリ』の称号をつけられた理樹の悲哀 | ||
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コメント | ||
へぇ...面白いですね!(朝霞アドミ) | ||
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