真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第八話 |
「五斗米道?」
「うむ。漢中を拠点にし、張魯という者を教祖とする、一種の宗教団体みたいな組織なんだが、彼らは医者の集団でもあるんだ」
華雄の言葉を静かに聴く、一同。
ななしが死んで、并州の乱を収めた一刀たちは、すぐに晋陽へと入城し、丁原を医者に見せた。
しかし、その医者の答えは絶望的なものであった。
ななしが使った薬はケシの一種と思しきものに、様々な薬草を混ぜ合わせた、新種の薬であるらしく、普通の医術では、延命が精一杯だということだった。
それを聞いた呂布の落胆は相当なものだった。
寝台に横になる母の手をしっかりと握り締め、涙を流すその姿に、皆言葉を失った。
そのとき、華雄がふと思い出した。
以前、華雄の主君である董卓の父親が重い病にかかったとき、それを助けた医者が話していたことを。
それが五斗米道である。
「彼らならば、もしかしたら丁原殿を救えるかもしれん」
「・・・おかあさん、助かる?」
母の手を握っていた呂布が、華雄の言葉に反応し、振り向く。
「・・・可能性、というだけだが。どうだろう、劉翔。よければ私が使者を務めようか。どのみち雍州へ向かうのだし、少し遠回りになるだけだしな」
「そうだね。・・・それなら、丁原さんを長安に連れて行ってくれないか?」
「長安に?わざわざ病人をか?」
「うん。ここでは満足に薬も手に入らないし、何より、漢中にも近いしね。あそこで太守をしている櫨植先生なら、良くしてくれる筈だよ」
「なるほど、櫨植先生なら、頼りになるはずだな」
一刀の言葉に同調する白蓮。
「うん。どうだろう、頼めるかな、華雄さん」
「むろんだ。私に任せておけ。無事に長安まで送り届けて見せよう」
胸を張る華雄。
「呂布さんも、もちろんお母さんについて行くだろ?」
こく、と。うなづく呂布。
そして、じ、と。一刀を見つめる。
「何?」
「・・・恋、でいい」
「え?それって・・・。いいの?真名だろ?それ」
「・・・ん。劉翔、おかあさんのこと、本気で悲しんでくれた。劉翔、いい人。だから、恋の真名、呼んで良い」
「そっか。・・・なら、俺のことも一刀って、呼んでくれて良いよ」
「・・・ん、一刀」
ぴこぴこと、なぜか動く頭の触覚?のような髪。そして、満面の笑顔。
(か、かわいい・・・///)
その場の全員が、一瞬で堕ちた瞬間だった。
その翌日、丁原と呂布を乗せた馬車とともに、華雄は旅立っていった。
一刀たちは、とりあえずの代理ということで、都から新しい太守が来るまでの間、白蓮の妹である公孫越、水蓮に晋陽を任せ、幽州へと帰還の途についた。
一刀たちが幽州に戻って来たその日。
「じゃあ、荊州に戻るんだ」
「うん。黙って出てきちゃったらちょっと怖いけど、今はあそこが私の家だもん」
輝里はにこやかに言う。
輝里の処遇については、晋陽にいた時にすでに決していた。つまり、
無罪放免。
実際に乱を仕切っていたのは、あのななしであるし、劉虞を斬ったのもななしだ。輝里自身は、結局何もしていないのである。
罪に問う理由がなかった。
これは全員が一致した見解であった。
ただし、それを言い渡したとき、喜びのあまり、輝里が一刀に思い切り抱きついたのだが、その瞬間、桃香と愛紗が凄い顔をしてはいたが。
輝里がそれを見て舌を出していたのは、さすがに誰も気づいていなかった。
「先生のところに帰ったら、もっともっと勉強して、いつか必ずカズくんの力になりに来るよ。だから、それまで待っててね」
「ああ、もちろん待ってるさ。次に会うときまで、元気でな」
「うん!!・・・で、カズくんにお願いなんだけど」
「なに?」
一刀の顔を見上げ、輝里の口から出た言葉は、
「今度会ったら、輝里をカズくんのお嫁さんにしてね」
爆弾発言。
さらに、一刀に近づいた輝里は一刀のほほに、
ちゅっ!
と、口付けをした。
「んな?!」
「ふえ?!」
「な!!」
「はにゃ!!」
「なんだと?!」
それぞれの反応。
「えへへ。約束だよ!じゃあね!!カズくん!!みんな!!元気でね!!」
そう言って、走り去る輝里。
後に残されたのは、呆然とする一刀、鈴々、白蓮、そして。
「・・・おにいちゃん」
「義兄上・・・・・」
背中に何かを背負った桃香と愛紗。
「ま、待てこら輝里!!おまえ!!なんて置き土産を!!」
はた、と一刀が背後の気配に気づく。
ぎぎぎぎぎぎ、と。首を後ろに回す一刀。そこにいたのは。
「グオンノスエッスオナシガーーーーーーーー!!!!!」
「ドゥウェンヂュウーーーーーーーーーーーー!!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!!!」
「・・・・一刀、ご愁傷様。安らかに眠れ」
走り去る一刀と桃香、愛紗を手を合わせて見送る、白蓮と鈴々であった。
それから、約半年後。
久々に北平に集まった一刀たちは、長安の恋から送られてきた手紙に目を通していた。
「よかった。丁原さん、少し持ち直したそうだよ」
「ほんとに?!よかったあ」
「呂布も元気でやってるようだな」
「また手合わせしたいのだ」
手紙の内容に、皆がほっと、胸をなでおろした、そのときだった。
「一刀!!桃香!!公孫賛殿!!大変です!!」
突然部屋に飛び込んでくる、女性。
「五月さん、どうしたんですか?楼桑村にいたんじゃあ」
それは、楼桑村で留守番をしているはずの五月、簡雍だった。
「それどころではありません!!都からの急使です!!」
それは、驚天動地の知らせだった。
漢、十二代皇帝・劉宏、崩御。
大陸は、動乱の時へと、確実に歩み出し始めていた。
説明 | ||
刀香譚、第八話です。 少し短いですが。 恋と輝里のその後のお話です。 そして、あの事件が・・・。 ではどうぞ。 |
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コメント | ||
反董卓連合って…恋も華雄もいるのに……(車窓) 更新お疲れ様です。ゴッドヴェイドーの教国ならば大丈夫でしょう。そして心を許せば小動物チックの魅力を持つ恋。オチない人はいないでしょう。更に徐庶からの置き土産に阿吽の嫉妬神降臨・・・、ご愁傷様(笑)。さて時代は、反董卓連合へと動き出した模様。この外史では如何なる結末を迎えるか。次回更新を楽しみにしています。(gem) zeroさま、そんな感じですww今後もさらなるオンドゥルに期待してください!!(え?)(狭乃 狼) 砂のお城さま、その二人は最近影が薄いですけどww(狭乃 狼) 睦月 ひとしさま、しばらく出番はなくなりますが、蒲公英なみのトラブルメーカーになる予定ですww(狭乃 狼) 田仁志さま、よーく読んだらわかりますよww(狭乃 狼) 一刀「(0w0)<アイジャサン!?ドウガサン!?ナズェムガッデクルンディス!?オンドゥルルラギッタンディスカー!!!」てなかんじですねwwwわかりますwww(zero) もし、ななしが生きていたらみんなでしばきに行こうとしましたが・・・。丁原さんが持ち直したのはうれしい限りです・・・。しかし徐庶、とんでもない置き見上げを残すなんて恐ろしい娘!次回を楽しみにしています。(睦月 ひとし) もはや私には嫉妬神たちのセリフが解読できないwww(ペンギン) hokuhinさま、ご期待に応えれると良いんですが。あ、丁原を診たのは違う人ですよ^^。(狭乃 狼) 丁原さんは華佗に見てもらえたのかな。これから反董卓連合だが、またいい意味で期待を裏切る話を楽しみにしてます。(hokuhin) 紫電さま、まあ、反董卓連合まではいじり様が無いですから。その後ですね。どう歴史改変しようかな〜ww(狭乃 狼) はりまえさま、確かにそうですね。副作用については、まあ、発動する人は限定されますが。(狭乃 狼) よく考えたらあれですね、一刀は、あるいみインキュバスな能力を持っているから淡々と堕ちて行くんだろうね。そして一方的だからジェラスィーをもらうという副作用付き。(黄昏☆ハリマエ) 村主さま、なぜ解ったんですか!?・・・って嘘です。そんなことはありません(断言)(狭乃 狼) ゴッドヴェイドー・・・流石ですなw何はともあれ丁原さん助かって恋にも笑顔が 後前話読み直して脳裏に 「木陰から恋の行為を見つめる一人の男の姿が ななし「あれ俺の影武者なのに 簡単に引っ掛かってざまぁw」」な展開が 流石にそれは無いですよね 失礼w(村主7) |
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