真・恋姫†無双  星と共に 第23章
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真・恋姫†無双  星と共に  第23章

 

 

街亭の戦いから数週間が経つ。魏では軍議が行われていた。

 

「そう。劉備は益州の周りを次々と取り込んでいるのね」

「はい。荊州も大半は我々が抑えていますし、益州の一部も先日の反撃で手に入れましたが、それが諸侯の反感を買ったようで、黄忠や厳顔、魏延といった主要な将は、劉備に降ったと」

「黄忠か……」

「黄忠がどうかしたの? 一刀」

「確かに黄忠は弓の名手として名高いが、他の厳顔達と比べて、殊に警戒すべき相手と言うわけでもないと思うぞ?」

「いや気にしないで、続けてくれ」

 

一刀は黄忠という聞いたことある名前に反応した。

 

(やはり紫苑も劉備の所に……)

(しかも厳顔と魏延と言った私の知らない人物達と一緒みたいですな)

(ああ、完全に蜀の面々が出来あがってるな)

「それで今劉備は? 私達に奪われた領を取り返そうとはしていないようだけれど…」

「南蛮の連中と戦っているとの事です。既に何度か大きな激突があり、そのたびに劉備の側が南蛮を打ち破っているとか」

 

劉備の話を終えて、次は孫策の話をすると孫策はこの前の合肥の戦い以降こちらに手を出さずに、周辺の袁家筋の豪族と戦っているとの事。

そして軍師達が自分達の意見を述べ、結果としては稟の意見が採用され、相手が同盟を組んで一緒に攻めるまで、力を蓄えて待機する方針になった。

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一刀と星は会議を終えるとすぐに街に出ていた。

 

「ふう……」

 

会議で聞いた事を一刀は空を眺めながら考えていると季衣がやってきた。

どうやら季衣は秋蘭と流琉が劉備軍が国境辺りで何かしているので偵察に行くことになり、流琉達が帰ってきたら肉料理を作るとの事で買い出しにきたのだ。

一刀が季衣が持っている荷物を少し持とうとする時、二人の前には興行から帰ってきた天和と地和がいた。

 

「おーい、天和、地和ー!」

「馬鹿! 何大きな声出してるのよ! 周りに気づかれちゃうでしょ!」

「わりいわりい、けどいつ帰ってきたんだ?」

「さっき帰ってきたばかりなんだよ」

「人和がいないみたいだが、報告か?」

「ええ、華琳様の所に行ってるわ。だから私達とは別行動」

「何か、頑張ってるみたいだね。軍への参加希望も凄いって聞いたし……」

「華琳様が頑張ってるおかげで、旅して回れる所も増えたしね。また明日からは来たに行くことになってるし、休む暇もないわ」

「そうか…、まあ体壊さないように無理せずに頑張るんだな」

 

そんな二人に励ましの言葉を送っていると今度は霞が来た。

霞は南で偵察をしていて帰りに天和達と会ったそうだ。

 

「そういえば、季衣、秋蘭と流琉はどこに行ったんだ?」

「ええっと、確か定軍山……かな」

 

その「定軍山」という言葉を聞いて一刀と星は青ざめた顔をする。

 

「季衣!」

「は、はいっ!?」

「今、どこと言ったのだ!?」

「て、定軍山だけど……」

「まずいぞ……星!」

「分かっております! 紫苑が秋蘭を殺してしまうことであろう!」

「ああ、すぐに華琳に……ぐわっ!?」

「!?」

 

一刀は突然頭が痛みだしかのように手で頭を抑える。

 

「兄ちゃん! どうしたの!?」

「一刀殿!?」

 

季衣と星が一刀に詰め寄る!

 

「な、……何だ急に………」

 

一刀はそのまま倒れる。

 

「一刀! どうしたの!?」

「一刀!」

「兄ちゃん!」

「一刀殿!」

(これはいったいどういうことだ………)

 

一刀の意識が途絶えそうになるが……。

 

「せ……い……」

「一刀殿!」

 

一刀が何か言いたそうになり星が倒れる一刀の顔に自分の顔を近づける。

 

「俺のことより……秋蘭を……か……りん……に」

「御意」

 

一刀の意識は完全に途絶える。

 

「兄ちゃん!」

「季衣、一刀殿も大事だがその前に……」

「な、何?」

「一刀殿は任せるぞ。霞は華琳に秋蘭達の出向停止を頼んでくれ」

「星はどうするんや?」

「私は秋蘭を止める。秋蘭や流琉はまだそう遠くへは行ってないはずだ」

 

そう言って星は急いで秋蘭達の後を追った。

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秋蘭や流琉達はまだ領土というか城下を出て行ってなかった。

 

「それでは行くぞ」

「ちょっと待った!」

 

秋蘭が出撃を言うとそこに割り込みの声が入る。

その声の主は星であり、星は何故か建物の屋根から飛び降りて秋蘭と流琉の前に出てきたのだ。

 

「星さん」

「どうしたのだ? お主は今回の偵察隊に入っていないはずだが……」

「見送りですか?」

「いや、お主らを止めに来た」

「え?」

「それはどういうことだ?」

「今、華琳にもその事を伝えるようにしてある。詳しい話はその時だな」

「? 何が言いたい?」

「行けば秋蘭……死ぬぞ」

「何だと?」

 

さすがにいつもは冷静な秋蘭もわずかながら動揺を見せた。

 

「だから私はお前を止めに来た」

「本当に……秋蘭様が……」

「何故お前はそんなことを知っている?」

「一刀殿のおかげだな……」

「秋蘭様……」

「……お主を信じた方がよいのか?」

「その方がよいだろうな」

「………」

「秋蘭様、どうした方が……」

「…………」

 

秋蘭は考える。

 

「……分かった。皆の者、済まないがしばらくこの場で待機してくれ」

『はっ!』

 

兵士達に留まるように指示する。

 

「で、どうすればいいのだ?」

「とりあえずは華琳の所に行こう」

 

そして秋蘭と流琉は星に連れられてひとまず華琳の所に向かった。

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華琳達魏の面々は、急遽玉座の間に集まっていた。

 

「華琳様……」

「来たわね秋蘭」

「はい。星に言われてきたのですが……」

「まさか皆来てるなんて……」

「季衣や霞から一応の事は聞いたわ。秋蘭が定軍山に行ったら秋蘭が死ぬって本当なの?」

「うむ。私や一刀殿知っている歴史ではな……」

「あなた達の歴史の話はするなと言ったはずよね」

「うむ。だが今の所私や一刀殿が知っている歴史に近い」

「近い?」

「順番が違うのだ。合肥での戦い、街亭の戦い。そしてこれから起こるであろう定軍山での戦いは街亭よりも前の戦いなのだ」

「戦いにも順番があるのか?」

「それが歴史と言うものだ。しかし私が元々居た世界は一刀殿が元々居た世界の歴史の戦いがほとんどなかったがな」

「だったらこの世界もそうなのじゃないのかしら?」

「可能性はないとは言えんが……、どうもな……」

「嫌な予感がするのね」

「うむ。一刀殿も同じような事を考えている。ならば私は一刀殿の考えを考慮する」

「………そう。では、誰を定軍山に向かわせればいいのかしら?」

「そうですな……。ここは春蘭や永琳や光琳が無難だと思われますな。恐らくあちらは華琳の近しい者を倒すための罠を張っているはず……。それで秋蘭はまずいとなると」

「私達か?」

「ふむ……どうしたものか……」

 

華琳が考えていると……。

 

「華琳様」

「どうしたの? 秋蘭」

「やはり私に行かせてください」

「え?」

「秋蘭様!?」

「秋蘭、お主人の話を聞いておったか?」

「ああ、聞いていた。その上で判断した。敵が罠を張っているのならこちらも罠を張ればよいとな」

「罠を張る?」

「どういう罠を張るつもりですか?」

 

稟が秋蘭に尋ねる。

 

「敵はこちらが偵察のみと考え、こちらの数が少数だと思っているはず。ならば、囮として私と流琉が敵をおびき寄せ……」

「それを見ていた他の部隊が叩くと言うことね」

 

咲が秋蘭の考えを読む。

 

「そう言うことだ」

「しかしそれで失敗したらどうするのだ?」

「そうね、失敗したら秋蘭は一刀達の知ってる歴史通りになるわね」

「大丈夫だ」

 

秋蘭は春蘭の方を見る。

 

「姉者が私を守ってくれるさ」

「秋蘭……」

「となると編成は……」

 

それからまた少し軍議が開かれ、結局秋蘭は流琉と共に定軍山へと向かった。

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二度目の軍議から2日が経った。

 

「ここは……」

 

一刀が目を覚ますと、そこは一刀の部屋の天井が見え、隣には桂花がいた。

 

「季衣達が運んだのよ」

「そうか……」

「いったいどうしたの? 体だけは丈夫だと思ってたけど……」

「だけはは余計だ。まあ理由は分からんが……、それより秋蘭達は……」

「行ったわよ。定軍山に」

「何だと!? 星は止めなかったのか?」

「止めたわよ。安心しなさい、罠だと知った上で皆出かけたから」

「皆?」

「ええ。皆と言っても全員じゃないわよ。あんた以外にここにいるのは私と澪と光琳よ。私だけだと妊娠しちゃうし……」

「(まだ言うか……)罠だと知った上ってどういうことだ?」

「……」

「私が説明するわ」

 

そこに澪が部屋に入って来て、一刀に二日前の事を全て話した。

 

「なるほどな……」

「それと何かあった時のためのこれ……」

 

澪は一刀にあるものを手渡す。それは無線機トランシーバーであった。

一刀はこの世界に来てからいざという時に遠くから連絡が取れるように無線機が欲しいと考え、真桜に無線機の大まかな構造を教え、なんとか魏に居たからくり好きの職人達をかき集め、作らせていてそれがようやく完成したのだ。

一番苦労したのは電波と電波を飛ばす電波塔とのことであった。

無線機の数は全部で五機あり、一つは華琳、一つは一刀、一つは星、残りの二つは予備として城の蔵に厳重保管しているのだが、今回の件で秋蘭に予備の一つを持たせたのだ。

 

「連絡してみたら?」

「そうする」

 

一刀はダイヤルを合わせて、秋蘭が持っていった無線機に連絡を取ろうとする。

 

「あーあー、こちら一刀どうぞ」

 

すると反応が返って来た。

 

「こちら流琉です。兄様ですか?」

「ああそうだ」

「兄様、体調どうですか?」

「起きたばっかりだからな。正直いいとは少し言い難いな。それより今どこだ?」

「あと少しで定軍山に着くところです」

「流琉、桂花や澪から事情は聞いたが、罠だと知った上で行ってるってことは華琳達は?」

「華琳様は少し遠いですが、後続で私達を追ってます。敵に悟られないようにですが……」

「そうか……」

「春蘭様達もいますから大丈夫ですよ」

「………分かった。無理だけはするな。何かあったら俺の方にも連絡してくれ」

「分かりました」

「じゃあ、俺は華琳の方にも連絡するわ」

 

一刀は一回通信を切って、華琳の持つ無線機の番号にダイヤルを合わせて華琳の無線機に連絡を入れる。

 

「華琳か?」

「その声、一刀ね」

「調子はどう?」

「さっき流琉の方にも同じ事を聞かれたよ。起きたばかりであんまりよくないって所だな」

「いったいどうしたの? そんなに無理な仕事はさせてないはずだけど……」

「分からない。前の世界とそんなに仕事量は変わらないはずだし、あれくらいで倒れるような特訓はしてないんだがな……。ところで華琳、今どのあたりにいる?」

「秋蘭と流琉からそんなに離れてないところで軍を進めているわよ。秋蘭達が囲まれてもすぐに助けられるようにね」

「……それはともかく、星からおよその事情は聞いただろ」

「ええ聞いたわ。でもね、これを言いだしのは秋蘭なのよ」

「秋蘭が?」

「ええ。春蘭が自分を守ってくれるから大丈夫だって……」

「秋蘭らしいな」

 

一刀は少し笑いながら答える。

 

「ええ、まったく」

「とにかく秋蘭を死なせないようにしてくれよな」

「あなたに言われるまでもないわ」

「そうだな」

「それじゃあ切るわよ」

「ああ」

 

そして華琳は一刀との無線を切った。

 

「さてと次は……」

 

一刀は次に星の無線機にダイヤルを合わせ、星に連絡を取る。

 

「おお一刀殿、お目覚めになられたか」

「おはよう、星」

「体調は?」

「まあさっき流琉や華琳にも言われた。起きたばっかりであんまり良くないだな」

「そうか……。お体を労わってくだされ」

「ああ。しかし珍しいな、俺と一緒じゃなくて出て行くなんて……」

「たまには……と言うより相手は紫苑の可能性が高いですからな」

「紫苑……そうか陣形か」

「うむ。私の知っている紫苑でしたら恐らく陣の癖も同じはず」

「それだったら一緒に戦ったことのある星が居た方が良いってことだな」

「しかし華琳がよく言うようにこの世界と前の世界とでは違いがありますからな。油断はできませぬ」

「確かにな……、油断するなよ」

「御意。済まないが、澪は近くにおられるでしょうか?」

「澪? 居るけど……」

「代わってくださらぬか?」

「ああ」

 

一刀は無線機を澪に手渡し、澪が星と会話する。

その際に澪は部屋を出て、廊下で話す。

 

(何話してるんだろうな?)

 

よく言う女同士の内緒話なのかと一刀は考える。

それからすぐに澪が部屋に入って来る。

 

「はい、一刀」

 

澪が無線機を手渡す。

 

「代わったぞ」

「うむ」

「ところで何を話してたんだ?」

「それはすぐに分かりますぞ。それでは……」

 

星は通信を切る。

 

「? どういう……」

「さてと……」

 

澪が一刀のベットに入って来る。

 

「ちょっと、澪!」

「一刀の看病よ」

 

そう言って澪は一刀の手を掴み、一刀の手を自分の胸に鷲掴みさせる。

 

「ちょっと澪! 妊娠しちゃうわよ!」

 

桂花が止めようとするが……。

 

「これくらいじゃ妊娠しないわよ。それに私は妊娠しても構わなくてよ」

「おいおい……」

 

そんなこんなが数十分続いた。

 

(華琳、星、頼んだぞ)

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翌日、定軍山では秋蘭と流琉が黄忠、馬超、馬岱の奇襲を受けてしまい、部隊が半分いるかいないかになっていた。

もっとも敵が罠を張っていることは重々承知の上なので一部はやられたり、散らばった振りをしていたりしてる。

 

「たった一晩でこのざまか……。だがこれも一応計算のうちと言うべきか……」

「敵がいなければ、探して回りたいですけど……」

「こういう時の訓練も受けさせている。敵に囚われたのでなければ、上手くやるだろうさ」

「……ですね」

「いたぞ! 夏侯淵だ!」

 

そうしているうちに劉備軍の兵達が秋蘭達を見つけてしまった。

 

「ちっ!」

 

秋蘭はひとまず叫んだ敵兵を倒し、皆に急ぐよう指示する。

 

「もはや森の中を逃げ回っても埒が開かんな…」

「なら、出ますか?」

「仕方あるまい!」

 

秋蘭達は森を出ようとするが、敵兵達の待ち伏せを受ける。

 

「総員、止まるな! 駆け抜けろ!」

「させないよ! でやあああああああああ!」

「きゃあ!」

 

馬岱がその道を阻み、流琉をひるませる。

 

「流琉! ちっ!」

 

秋蘭は自分に弓が向けられていることに気づき、急いで矢を回避。

お返しとばかり敵に向けるが、その矢は撃ち落とされた。

 

「私が外した? いや、撃ち落とされたか!」

「良い判断ね。止まっていたなら、私達が全員を射抜いていた所よ」

「その弓の腕……そうか。貴様が……」

 

秋蘭の前に秋蘭の鬼門とされる黄忠が現れる。

 

「ええ、初めまして、になるのかしら?」

「そうだな。だが名前は聞いているぞ……黄漢升」

「こちらこそ、弓の名手として名は聞いているわよ。夏侯妙才」

「ならば、どちらが大陸一か……」

「ええ。勝負………と言いたいところだけど、残念。今日は一番を競いに来たのではないの」

「やれやれ。時間稼ぎは無理か」

 

秋蘭の考えは黄忠に見破られていたのだ。

 

「あなたたちより、少しだけ経験を積んでるのよね。はっ!」

「くっ!」

 

二人の弓合戦が始まってしまった。しかも状況的には秋蘭が不利である。

 

「秋蘭様!」

 

流琉が秋蘭の身を案じる。

 

「流琉! 目の前の敵に集中しろ!」

「はい!」

「それは貴方も同じでしょう! 翠ちゃん!」

 

黄忠の声と共に伏せていた馬超が秋蘭の横から現れた。

 

「夏侯淵! はあああああああああああ!」

 

秋蘭は回避が間に合わない!

 

「なっ!」

「秋蘭様!」

「はああああああ!!」

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「!」

 

城壁から外を眺めていた一刀が突然崩れるように倒れそうになる。

 

「一刀!」

 

澪が何とか一刀を支える。

 

「どうしたの?」

「分からん…。力が……」

「馬鹿っ! あんたが死んだら、華琳様が悲しむでしょう! 死んでも死ぬんじゃないわよ!」

 

桂花がかなりの無理な事を言う。

 

(俺だってまだ死ぬ気はない……。だがこれは一体……)

 

一刀は考える。

 

(これは恐らくこの外史の影響だ)

 

しかし前の外史ではこんなことはなかった。

そのためきちんとした理由が思い当たらない。

 

(まさか奴らが俺に何かしたのか?)

 

奴らと言うのは以前から言っている白装束、左慈達の仲間のことである。

 

(だが仮にあいつらだとしても何故こんな周りくどい事を……)

 

左慈に命を狙われてた時は直接殺しにかかることしかなかった。

 

(くそ…不確定要素が多すぎる……)

 

一刀は考えながらも澪に運ばれて、ベッドに寝た。

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馬超の槍が秋蘭に届く一歩手前に影が馬超の前に現れ、馬超の槍を阻んだ!

 

「なっ!」

「え?」

「……来たか……」

 

蜀の面々は突然の事で驚く。

そこにいたのは……春蘭であった!

 

「なるほど、これが劉備の戦い方と言うものか……」

「翠ちゃん!」

「甘い!」

 

黄忠が馬超に気を取られている隙に秋蘭が矢を射る。

 

「くっ」

「まだまだ!」

 

秋蘭はさらに矢を射る。その精度は先ほどとは比べ物にならないほど上がっていた。

 

「さっきより、精度が…?」

「ふっ…姉者が前を固めてくれたのだ。今の私に、貴公に負ける理由は無いぞ? 黄漢升!」

 

その時華琳の軍が自分達が取り囲んできていることを報告する。

黄忠達は何とか馬超と馬岱を連れて撤退し、春蘭が追撃の命令を送る。

 

「ふぅ…」

「姉者」

「春蘭様! 季衣!」

「少し遅れたが、待たせたな…秋ら…」

「馬鹿者!」

 

秋蘭が言った言葉はお礼ではなく怒り。

 

「へっ!?」

「はぁっ!? それが、危機を救ってやった姉に言う言葉か、秋蘭!」

「当たり前だ馬鹿姉者! あんな無茶な突撃でせっかく澪が助けてくれた目に矢が当たったらどうするつもりだったのだ! 少しは己の身を省みろ!」

「その時は、お前が私の目になってくれれば良いではないか」

「……」

 

その言葉に秋蘭は返す言葉が無くなった。

 

「それでお前の命が救えるのなら、華琳様も喜んでくださるさ」

「え?」

 

春蘭の言葉と同時に華琳が来た。

 

「ええ、けれど、秋蘭の言うことももっともよ。もっと己の身を大事になさい、春蘭」

「か、華琳様……」

「お、二人とも無事やったんやな!」

 

今度は霞が来た。

 

「霞……なんとかな」

 

次に錫が来た。

 

「これで一刀の言ってたことは防げれたわね。……でも……」

 

錫は少し顔をふさぎこむ。

 

「どうしたんや?」

「霞……」

「?」

「翠や蒲公英……あっちにいたのね」

「そう言うことよ」

「……分かった」

「とりあえずはもう少し見まわってから帰りましょう」

 

そして華琳達は辺りを見まわることにした。

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その頃、黄忠達は……。

 

「おい、紫苑! 曹操達まで来るなんて、どうなってるんだ!?」

「私が聞きたいくらいだわ。途中までは朱里ちゃんや雛里ちゃんの予想通りに進んでいたのに。……どうして曹操の本隊が来たのかしら……?」

「情報が漏れてたとか?」

「あり得ないでしょうね。工作は完璧だった。…それに不意打ちで返すなら、昨日の段階でやり返せばよかったはずよ」

 

ところがそんな黄忠の考えとは裏腹にこれも華琳達の考えた策である。

昨日の段階でやり返したらそれはそれで警戒され、定軍山から追い出せなくなる可能性があると考え、わざとタイミングを遅らせたのだ。

 

「だよねぇ……。じゃ、誰か曹操を呼びに戻ったのかな?」

「私達と接敵した直後に使いを出したとしても、一晩しかないわ。たった一晩で、城からこの定軍山まで兵を運ぶ方法なんて……聞いたことが無い」

 

それもそうだ。最初っから一緒に来ていたのだから……。

 

「なら、あたし達が夏侯淵と接敵する前に、曹操達は城を出たってことか? どうやって!」

「それは私が知りたいくらいだわ……」

「占いか……後は、五胡の妖術でも使ったとしか思えないよね」

「曹操は妖術や占いの類には頼らないと聞いているけど……考えられるのは……」

「相手の軍師が朱里よりも優秀だったってことか?」

「そうとしか思えないわね……。それこそ、未来さえ見通せるほどの……」

 

黄忠の考えは当たらずとも遠からず。黄忠は今自分が口にした『未来を見通せる』でふと思ったことがあった。

 

「そう言えばさっき私達を襲った時……」

「どうしたの?」

「曹操達はあの陣形の穴の部分を的確に突いてきて……」

「何だって!?」

「私は用心のために後ろにも注意するように兵を配置させてたけど、兵士が一番少ないところを突いて夏侯淵を助けてた……」

 

そう。実は星が黄忠の取りそうな陣形を華琳達に教えており、その結果星の予想通りの陣形だったために春蘭達は簡単に包囲網の穴を抜けてきたのだ。

 

「それこそ絵空事ではないか」

 

そこにこの世界の星、趙雲が来た。

 

「星! お前、こんなところで何を……!」

「お主らが曹操にしてやられたと聞いてな。……近くに空いた城を見つけておいたから、そこに逃げ込むが良いだろう」

 

黄忠達は趙雲の言われるまま、その空いた城に入った。

その事は華琳達の耳にも入り、華琳達もひとまずその城に向かった。

その城の前には馬岱がおり、馬岱と話がしたいと錫が出て行く。

 

「そっちに降っちゃったんだね」

「ええ」

「こっちに来ない?」

「お誘いは嬉しいけど、私は今は魏の将。簡単には裏切れないわ」

「そうだよ……ね……」

「それより蒲公英」

「何?」

「あなた達のお母さんのお墓、きちんと作ったの。時間があったら翠と一緒に墓参りしてあげて……」

「え?」

「場所はあなた達のよく知ってる所よ。それじゃあ……」

 

そう言って錫は去り、とりあえずはよしとして華琳達も帰っていった。

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それからまた二日後、華琳達が城に帰って来た。

 

「無事だったようだな」

 

出迎えには桂花と澪、そして体調がよくなった一刀がいた。

 

「兄様!」

「北郷か。お前のお陰で助けられたよ。体調はどうだ?」

「何とかな……」

「桂花。私の留守中に、何か異変は?」

「……劉備が南蛮を平定したそうです」

 

その通りである。華琳達の目が定軍山に行っているうちに蜀の別部隊が南蛮を平定したのだ。

しかも史実通りの7回捕らえて、8回目での心服と……。

 

「そう。武力以外の力で従わせる……か。なかなか味な真似をする娘ね」

「それより流琉! 無事に戻って来たんだから、ちゃんと約束守ってよね!」

 

季衣が何やら流琉と約束をしていたようであった。

 

「約束? ああ……あれかぁ」

「? 流琉、何を約束してたんだ?」

「ああ、兄様実は、定軍山に行く前に季衣がおいしそうなお肉を持ってきてましてね、私が帰ってきたらそのお肉を調理するという約束を……。

……もしかして、今日の昼に妙に食べてなかったのって……」

「もっちろん!」

「あー。あれ、まだ駄目だから」

「えーーーーーっ! 何で! 遠征から帰ってきたら、食べごろだって言ってたじゃない!」

「それは予定通りに進めばの話だろう。色々あったが結局は予定の半分ほどの期間で済んでしまったからな……まだ食べごろにはなっていないだろうさ」

 

秋蘭が優しく季衣を説く。

 

「じゃ、まだ待つの……?」

「そうだよ。……ちゃんと料理長に預けてるんだよね?」

「…………え?」

「え、って……まさか!」

「ボクの部屋に置きっぱなし……」

「じゃないわよ」

 

そこに光琳がやって来た。

 

「光琳様、どういう……」

 

流琉は光琳の手に持っていた肉を見る。

 

「光琳様……」

「そのお肉……」

「ええ、留守中の間どうしようかなって思って、季衣の部屋にあったお肉半分のさらに半分だけど使わせてもらったわよ」

「そう言えば光琳も残ってるっ聞いていたが全然顔を見せなかったのは……」

「料理の練習。このお肉、まだ食べごろじゃないはずなのにおいしいわね」

 

光琳はおいしそうに焼けた肉を頬張る。

 

「光琳様ーーーーーーーー!」

「大丈夫、残った肉はちゃんと料理長に渡してあるから、季衣達はそのお肉が食べごろになったら食べればいいのよ」

 

と言いながら光琳はまた肉を頬張るのであった。

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とある山の祠では……。

 

「で、どうだったの?」

 

久々に祠の奥から出てきた普浄に潘臨が声をかける。

 

「ようやく成功だ。北郷一刀に呪いをかけれた」

「それはよかったわね」

「しかしその呪いが完全になるにはまだ時間がかかる。だが、呪いをかけられたこと事態は奴も気付くことはあるまい」

「だと良いわね」

「さてとではここからは高みの見物といくとしよう。北郷一刀、お前は私の掛けた呪いにどこまで抗えるかな!」

 

普浄は不気味に大声で笑い続けるのであった。

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おまけ

 

 

作者「第23章だ」

一刀「どうした? 更新ペースが遅くなったな」

作者「リアルで色々あると言えばあるが、一番の理由が書く時間がないだな」

一刀「どうしてだ?」

作者「色々動画を見てるからだ!」

一刀「書けよ!」

作者「動画見ながらは俺には難しいんだ!

ああ、それと新連載ネタとか一発ネタで話がある」

一刀「何だ?」

作者「諸々の事情で何とかアニメの最終回を見れたが、あれはWだけで充分だな」

一刀「そうなのか?」

作者「でも書くとなるとすごく書きにくい。だから出来ない可能性があるかもしれないといっておこう」

一刀「あらかじめご了承下さいって事だな」

作者「そうだ。それで新連載ネタだが、最近までやっていたゲームの世界観を使ってのものにしようと思う?」

一刀「どんなものだ?」

作者「クロスオーバー作品で恋姫はほとんどないな。ちなみに考えた人から許可は貰った」

一刀「許可?」

作者「まあそのゲームの事を知りたかったら二○二○動画の動画を調べるんだな。

もっとも紹介する際は『黒い』ものだと言っておいて欲しいといわれた」

一刀「『黒い』もの」

作者「主にそのゲームで使ってる素材だな。『黒い』と言うのは……。タイトルはいえないが、ローゼンメイデンやなのはシリーズやその他の作品のキャラが多数出ている作品だ」

一刀「ところで今回の話はオーバーテクノロジーすぎないか?」

作者「外史だから気にするな」

一刀「気にするわ!」

作者「だが私は謝らない!

この作品の一刀ならそれくらいの知識は持っていると思ってるし、一刀が安心する方法としてはこれが無難だと思ったからだ!

それでは!」

説明
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。
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コメント
澪が星と二人で一刀の誘惑だ(VVV計画の被験者)
トランシーバーとかどうかと思うけどま、そこまで開き直られちゃ仕方ないw(PON)
毎度更新楽しみにしてます。p2来たに行くこと 北、 どのまま倒れる そのまま、 ではありませんか?(lulu)
敵はサジがよかったな(ヒトヤ)
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真・恋姫†無双 一刀 真・恋姫無双  恋姫†夢想 第23章 

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