生命線
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私の生命線は普通より少し長いくらいだろうか…

昔やっていたテレビの事を思い出し自分の手を見る。

だからと言ってそれで自分の寿命がわかるわけでもないし、何をくだらない事をと手を

見るのをやめる。

「あなたが、もうすぐ死ぬですって?」

望は目を細めて前にいる笑顔の少女を見る。

「はい」

少女はこんな状況でも楽しそうに笑って言う。

だが笑顔の中に暗い表情をいつも浮かべている少女を見て望は言った。

「ちなみに聞きますが一体いつ死んでしまうのですか?」

「わかりません、明日かもしれないし今すぐにでも死んでしまうかもしれませんよ?」

望はそんな言葉を言いながらも笑顔でいる少女を見つめた。

とくにいつもと変わらないセーラー服にクロスのヘアピン、何も変わったところはない。

だが何かが違う、少女の顔を見つめて望は気付いた。

笑顔が違うのだ、彼女の笑顔はどこか暗いところを残しながらもはっきりとしていた。

だが今の笑顔はどうだろう、すぐにでも消えてしまいそうなそんな不安感さえ覚えてしまう

ような弱い笑顔。

そんな笑顔を見ていると望は何か気に食わないような感情が湧きあがった

「あなたは誰ですか?」

わかりきったような事を聞く望に少女は薄く微笑む。

「いやだなぁ、私は風浦 可符香ですよ」

「いや、違いますね!」

普段出したことがない大きな声をあげた望をみても少女の表情は笑ったままだった。

「じゃあ、私は誰なんですか?」

その質問に望は一拍置いて口を開いた。

「あなたは赤木 杏さんです…」

意外な答えに少女の笑顔が少し歪む。

そう彼女の名前は赤木 杏、普段名乗っている風浦 可符香はP.Nである。

「どうしてあなたはそんなに辛い表情で笑うのですか?」

望は杏の手を取った。

そこで望はある事に気付いた。

彼女の手には生命線がなかった。

望が驚いた隙に杏は手を振りほどいた。

「そう…私の寿命はとても短く設定されているのです」

(彼女は、そんな迷信も信じてしまうのだろうか…)

そう思い杏を見るとその体は震えていた。

「死ぬことが怖いんですね?」

「いやだなぁ、死んだら神様になれるかもしれないんですよ怖くなんかありませんよ」

聞き取るのが難しいくらいにその声は震えていた。

「いいえあなたは自分がいなくなるのが怖いんです」

望は少女を優しく抱きしめた。

「手の生命線なんてくだらないものです、人によって生命線はそれぞれですよ」

望は自分の手を少女の頭の上に置いた。

「私にとっての生命線は絶望でしょうかね、絶望して何度も死のうかと考えた…だが

死ねなかった」

「それはおそらく絶望そのものが私の生命線だったからなのでしょう」

望は少女を見つめた。

「あなたにとっての生命線と言うものが無いのなら…」

「あなたに私の絶望をすべてあげます」

望は優しい顔でそう言った。

少女は悲しそうにいった。

「それでは先生の生命線が無くなってしまいます」

「その時はあなたが私の生命線となるでしょう」

それは望が思う少女に死んでほしくないと言う気持ちが込められていた。

「あなたが死んだら私も死んでしまいます、勝手に死なないでください」

「…先生」

その言葉に少女はこくりと頷いて笑った。

「でも先生の絶望は先生が持っててください、その代わりに先生を私の生命線にさせてください」

可符香は顔を赤らめて望を見つめた。

「先生が死んだら私も死んじゃいますので死なないでくださいね?」

そう言った表情はとてもはっきりとした輝くような笑顔だった。

その顔を見て望は安心したように呟いた

「おかえりなさい…風浦さん」

ただいま…糸色先生

 

 

 

 

……『生命線』……

自分と愛しい人とをつなぐ赤い糸

あなたが死ぬなら共に死にましょう…

あなたが生きるなら共に生きましょう…

 

説明
掌の生命線って何の為にあるんでしょうか?
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さよなら絶望先生 糸色望 風浦可符香 

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