愛しきのぞむ
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あの人は誰?

夢の中で私と手を繋いでいる…

なにか大切な人だった気がする…

「楽しいね、***お兄ちゃん」

でもどうしても名前が思い出せない。

「僕も楽しいですよ」

でもどこかで見た事のある顔。

「あのね…***お兄ちゃん」

何か大切な約束を忘れている気がする。

「何ですか?」

「私を、…………………さい!」

思い出せない…

「いいですよ、………………………」

「約束ですよ!」

だがその約束は果たせられなかった…

私の頭をなでる優しい人。

あの人は…

 

 

「おや?目が覚めたんですね」

望は目を開いた可符香に声をかける。

「どうしたんですか?」

望は寝ぼけている可符香を見つめる。

「…お兄ちゃん?」

「えっ!?」

可符香の言葉に望は目を見開く。

ふと、言ってしまった言葉に可符香は顔を赤くする。

「あっ!違うんです、私ったら寝ぼけてて!」

まったくの不意打ちの言葉に望は硬直していた。

それが治るのはそれから30分後の事だった。

 

 

落ち着いた望は可符香に聞く。

「身上調査書にはお兄さんがいた事なんて書いてませんでしたけどねぇ」

「いませんよ、お兄さんなんて」

「では、何故?」

「小さい頃、私と一緒に遊んでくれていた人がいるんですよ」

「ほう、それで…」

思い出して望は顔を赤くする。

(…完璧不意打ちでした、ですがお兄ちゃんですか…何か懐かしい感じがしますね)

(四男である私に弟はいない、妹の倫も私を呼ぶ時はお兄様だし、おかしいですね…)

「先生?」

真剣な顔で何も言わない望に可符香は首をかしげる。

「いえ、何でもありません、話を続けてください」

「はい、…でもですね、何も言わずにその人とはお別れしてしまったんです」

今思えば、なんでなにも言わなかったんだろうか、お別れを言うのが辛かったからなのか…

「その人と何か約束をしたはずなんです」

「そうなんですか…ですがそれを果たせぬまま別れてしまったんですね…」

「…はい」

そうですか…と望は小さく呟く。

なにか彼女の気を紛らわすものがないか考える。

「そうだ、風浦さん今日はあなたの家に泊まります」

「へっ?」

「今あなたを一人で返すのは、とても心配です」

「ちょっと、先生!」

可符香の言葉に耳を傾けずに、これからの予定を考え始める望。

(先生にそんな気持ちはさらさらないはわかっているのだけど…)

どこまでも鈍感な望に可符香は顔を赤くしながらため息をついた。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

午前5時…

(なんでこんな事になったのだろう…)

私は普通に寝ていたはずだ…

そう、ちゃんとしていたはずだ

だが腕の中には隣の部屋で寝ていたはずの少女が安らかな寝息を立てている。

(何故こんな状況に陥ってるんですかぁーーーー!)

 

…その数時間前…

 

そこにあったのは大きな段ボール箱。

「先生、この箱はなんですか?」

「ああ、それは、あなたの家に行く準備をしていたら出てきたものでしてね」

「昔から大切なものはそこに入れて保管していたんですよ…懐かしくなってしまいましてね、持って来たのは

よかったんですが見る暇がなかったので明日にしようかと…」

「そうなんですか…」

それを聞いた可符香はその箱を見て望に気づかれないように悪戯な笑みを浮かべた。

「では、私は隣の部屋で寝ますので…」

そう言って望は隣の部屋に行ってしまった。

「はい、先生おやすみなさい」

可符香は望が寝たのを確認して段ボールの蓋を開けた。

「わあ…先生、色々なもの入れているんですね」

箱の中の数々の望の宝物を見ていく可符香。

「あれ?これは…」

箱の奥から出てきたのは一つのアルバムだった。

遠慮無しにそれを開く。

小さい頃の望が写真に写っている。

本人が知ったら大騒ぎするだろうと思いながらアルバムをめくっていく。

(これは高校生の時のでしょうか)

部活の仲間と一緒に写っている写真。

彼らの後ろにはネガティ部の文字が書かれていた。

(そろそろ、眠くなってきましたね…)

目をこすりながらアルバムを見続ける。

最後のページには写真が一枚しか貼っていなかった。

可符香はその写真に目を移した。

(あれ、私?)

その写真には小さい頃の自分が望と一緒に写っていた。

写真の下には『杏ちゃんと…』と書かれていた。

「のぞむ…お兄ちゃん…?」

その言葉を引き金に可符香はあの時の事を思い出した。

「そうか…あれは先生だったんだ…」

昔に約束した思い出が蘇り可符香はほんのりと顔を赤らめる。

「先生…」

小さく呟いた後に可符香は面白い事を考え付いた子供のように笑って隣の部屋に入っていった…

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

望が混乱していると、腕の中の可符香が目を覚ました。

「風浦さん!これは一体どういう事ですか」

「あっ、おはようございます、のぞむお兄ちゃん」

可符香はわざとらしく望をそう呼ぶ。

「ま、また寝ぼけてますね!」

一瞬固まりそうになったがなんとか堪える。

「いやだなぁ、寝ぼけてなんかいませんよ」

可符香はあれを見てくださいと近くにある写真を指さす。

「こ、これは!?」

自分の隣に小さい可符香がいる。

(杏ちゃんと?……確か風浦さんの本名は…)

『赤木 杏』

点と点がつながった。

そんな望を見て可符香は笑った。

「いやぁ、先生はやっぱり素晴らしい人です!」

「へっ?」

「あの時の約束を今ここで果たしてくれるなんて…」

「いや、あれはですね…」

「あら先生…約束を破るんですか?」

可符香は楽しそうに言う

「ひどい…先生は私の体だけが目当てだったんですね…」

「わかりました!、わかりましたから、誤解を招くような事を言わないでください!」

それを聞いた可符香は満面の笑みを見せて言った

「それじゃあ先生、その誓いになにかしてください」

「わかりましたよ…」

真剣な眼差しを可符香に向ける。

「あなたを愛す事を誓います」

望はその言葉の後に可符香にキスをした。

 

 

 

 

 

……『愛しきのぞむ』……

「あのね…のぞむお兄ちゃん」

「何ですか?」

「私を、お嫁さんにして下さい!」

「いいですよ、君がもっと大きくなったらね」

「約束ですよ!」

 

それは少女と少年が交わした大切な約束…

運命が生んだ大きな奇跡…

 

 

説明
幸せすぎた教師と不幸せ過ぎた少女の続きです。
可符香と手を繋いでいたある人との話です。
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さよなら絶望先生 糸色望 風浦可符香 望カフ 

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