雲の向こう、君に会いに-魏伝- 三章
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爽やかな朝

 

日の光をいっぱいに、体に浴びる

 

 

温かな朝の太陽の光

それはまるで隊長のようで・・・私は自然と緩むその頬をおさえることができなかった

 

 

「隊長」

 

 

天の御遣いで、私達の隊長で

 

そして・・・本当に大切な人

 

 

「隊長・・・か、一刀様」

 

 

ふと、口にしてみたその名前

瞬間、顔が一気に熱くなった

 

 

見ないでもわかる

 

私の顔はきっと、真っ赤になっているだろう

 

 

 

「い、いかん! しっかりするんだ楽文謙!」

 

 

 

パンッと、音が響いた

自分で、自分の頬を叩いた音

 

ジンとする痛みが、私の心を落ち着かせてくれる

 

 

「ふぅ・・・よし!!」

 

 

これで大丈夫

さぁ、早く支度をしなくては

 

 

 

 

 

 

今日は・・・久しぶりの、隊長との警邏なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》

三章 三羽の鳥は、日を目指して

 

 

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賑わう街の中

 

待ち合わせの場所に向け、私は歩いていた

 

 

その後ろに、二人の『供』を引き連れて

 

 

 

 

 

 

「・・・で、何で二人までいるんだ?」

 

「ええやん、そんな細かいこと気にせんでも〜」

 

「そうなの、凪ちゃんだけ良い思いしようなんてそうは問屋が下ろさないの〜」

 

「な!? わ、私は別にそんなつもりじゃ・・・」

 

 

・・・なかったような、少しはあったような

 

 

 

「あかん、バレバレやで凪」

 

「凪ちゃんってば、わかりやすいの〜」

 

歩きながら、私は二人の言葉に下を向く

多分・・・いや絶対に、私の顔は真っ赤になっているだろうなぁ

その証拠に、さっきから二人が私を見てニヤニヤしてるし

 

まったく・・・仕方ないな

 

 

「三人でいこう・・・」

 

「よっしゃぁ! さっすが凪やで♪」

 

「やった、久しぶりに隊長と一緒なの〜♪」

 

 

二人の笑顔を見て、ふと思う

私はきっと、こんなことにならなくとも・・・二人を誘っていただろう、と

 

 

私達は、隊長と・・・そして私達三人揃って【北郷隊】なのだから

 

 

 

「それではいくぞ、隊長が待っている」

 

「「おー!」」

 

 

言って、私達は駆け出す

頬を撫でる風が、今日のこの一日が・・・とても良い日になると

 

 

そう、教えてくれた気がした

 

 

 

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「隊長ー!」

 

しばらく走って、ついた約束の場所

そこにはすでに、隊長のお姿があった

 

私は緩む頬に気づくことなく、手を振りながら隊長に向かって声をあげる

 

 

だが・・・

 

 

 

「・・・」

 

 

 

その声はどうやら、隊長には聞こえなかったらしい

隊長は空を見上げながら、ただじっと・・・その場に立ち尽くしていた

 

 

「・・・よ」

 

「?」

 

 

ふいに、隊長の口が微かに動いた

何かを呟いていたようだが・・・聞こえなかった

 

ただその表情が、普段からは想像がつかないほどに悲しげで・・・今にも目の前から、消えてしまいそうに見えて

 

 

「っ・・・隊長ーー!」

 

 

堪えきれず、私は再度叫んでいた

 

すると今度は聞こえたのか、視線が空からすっと・・・私へと向けられる

 

 

 

そこには、いつもの・・・太陽のように暖かな笑顔があった

 

 

「やぁ凪、おはよう」

 

「おはようございます、隊長

随分とお早いですね」

 

「ああ、ちょっと・・・早くに目が覚めてね」

 

 

『まいったよ』と、隊長は笑う

それから私の後ろにいる二人を見て、軽く溜め息をついていた

 

 

「で・・・二人はどうしたんだ?

確か二人とも、別に仕事があったはずだけど」

 

「へへへ、ウチらをなめたらあかんで隊長」

 

「そうなの! 沙和たちが本気を出せば、あれくらい朝めし前なの!」

 

「その本気とやらを、普段から出せっての」

 

 

そう言って、また溜め息をつく隊長

だがその表情は、楽しげに笑っている

 

 

「はは・・・ま、やっぱこっちのが俺達らしいよな」

 

「隊長?」

 

「ああ、なんでもない

ただの独り言だよ

それじゃ仕方ないから、今日は三人で警邏するか」

 

「やったの♪」

 

「よっしゃ♪」

 

「はい!」

 

 

笑顔で頷く私達の顔を見つめ、隊長は満足げに頷く

 

それから笑顔で、ゆっくりと足を進める

 

 

「さ、いくぞ」

 

 

その後ろを、私たちがついて歩く

 

 

温かな日の下、私達の警邏は始まりを告げた・・・

 

 

 

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「御遣い様、これ貰ってってくれよ」

 

「ああ、御遣いのお兄ちゃんだ〜」

 

 

街を歩けば、相変わらず隊長は人々に声をかけられていた

隊長もそれに笑顔で、一人一人に返事を返していく

 

本当に、隊長は人気がある

 

 

 

 

「あ〜、また違う女の人連れてる〜!」

 

 

「って、ちょっと!? そんな誤解を生みそうなこと言わないで!?」

 

 

 

 

・・・一部、聞き捨てならないことも聞こえたが

 

まぁとにかく、隊長の人気はすごい

 

乱世を終えてからは、その人気はさらに凄まじいものとなった

 

 

だからだろう

 

たまに、隊長がとても遠くに行ってしまったような・・・そんな気がしてしまうのは

 

 

だけどすぐに、それは間違いなんだって気づく

 

だって、ほら・・

 

 

 

「どうしたんだ凪、なんかボ〜っとしてるけど」

 

「あ・・・」

 

 

隊長は、いつだって隊長のままだ

 

いつだって私を、私達のことを見ていてくれる

 

想ってくれている

 

 

そんな人だから・・・私達は、好きになったんだ

 

 

「凪、本当に大丈夫か?」

 

「は、はい! まったく問題ありません!!

  なぁ二人とも!?」

 

「え、そこでウチらにふるん?」

 

「凪ちゃん、ほんとわかりやすいの・・・」

 

 

「ん、凪がどうかしたのか?」

 

 

「ほんでこの人はホンマ、鈍感やなぁ・・・」

 

「なの〜」

 

「・・・?」

 

 

隊長・・・すいません

 

私もそう思います

 

隊長は、本当に鈍感です

 

 

そう思いながら、見上げた空

太陽はすでに、私達の真上にあった

 

 

「隊長、もう丁度いい時間ですしお昼にしませんか?」

 

「ん・・・そっか、もうそんな時間か

二人もいいかい?」

 

「「隊長のおごり?」」

 

「こ、こら二人とも!」

 

「ああ、いいよ別に」

 

「隊長!?」

 

「はは、気にしないで

久しぶりに三人で来たんだし、これくらいさせてくれよ」

 

 

『ね?』と、隊長が笑う

 

ずるい・・・そんな笑顔見せられたら、駄目などとは言えないではないですか

 

 

結局そのまま、隊長のおごりということで

私達は昼食をとるべく移動を開始したのだった

 

 

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というわけで、着いたのはいつかの料理店

 

注文するのは、勿論マーボー

 

 

 

・・・唐辛子ビタビタで

 

 

 

真桜と沙和が若干引いているが、もはや見慣れたことなので気にしない

 

ちなみに、二人は普通のマーボーを頼んでいた

 

 

ふと、隊長の方へと目をやる

そこには料理は置かれておらず、一杯の水だけが置いてあった

 

 

「隊長? どうかしたのですか?」

 

「ん・・・あ、ああ実はちょっとお腹の調子が悪くてね

別にお金がないとかじゃないから、三人は気にせずにたべてくれよ」

 

 

そうは言うが、どうしても気になってしまう

 

どうかしたのだろうか?

もしかして、体調が良くないのだろうか?

 

そういえば・・・前よりも少し、痩せたようにも見える

 

 

と、とにかく!

なにか少しでも口にしたほうがいいはずだ!

 

何か・・・何かないか!?

 

 

「あ・・・」

 

 

あった・・・あるじゃないか!

 

 

 

「隊長!!」

 

「ん、どうしたんだ凪」

 

 

私の声に、優しく微笑む隊長

その微笑にしたばかりの『決意』が崩れそうになるが、私は負けじと己に気合を入れる

 

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

「あ、あ〜ん・・・」

 

 

「「「!!!??」」」

 

 

自らの料理をすくい、それを隊長にむけ差し出した

 

楽文謙・・・一世一代の大勝負だ

 

 

 

そんな私のことを隊長は驚いたように

真桜と沙和は真っ青な表情で・・・それぞれ私のことを見つめていた

 

 

「真桜ちゃん、あれって・・・」

 

「ああ、わかっとる・・・凪! それはアカン! やめとくんや!」

 

「心配するな真桜、覚悟はとうに出来ている

あとはただ・・・前進するのみ!」

 

「ちゃうわっ!! そういう意味ちゃうねん!?」

 

「凪ちゃん、正気に戻るの!!」

 

 

 

 

 

(それ、唐辛子ビタビタのやつやで!?)

(それ、唐辛子ビタビタなの!!)

 

 

 

 

口をパクパクとさせながら、二人は私を見つめている

 

『頑張れ』と

 

そう言ってくれた気がした

 

 

 

 

これなら・・・いける!!

 

 

 

「さぁ隊長! さぁ、さぁ!!」

 

「な、凪さん・・・なんか怖いんですが」

 

「さぁ!!!」

 

「ひぃ!?」

 

 

ザッと、後ろへと下がる隊長

一瞬だけ、開かれた口

 

 

今しかない・・・!!

 

 

 

「楽進、いきます!!

あ〜〜〜〜〜〜ん!!」

 

「ちょ、待って凪!

違う、なんか違うんだってばぐふおおおぉぉぉ!!!!??」

 

 

「「た、隊長ーーーーー!!!??」」

 

 

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隊長の口に吸い込まれる、差し出した料理

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げほっ・・・がはっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

苦しそうに、その場に膝をつき咳き込む隊長の姿

 

口元をおさえ、本当に苦しそうに・・・

 

 

「うっ・・・がは!!」

 

「た、隊長!!??」

 

「ちょ、どないしたんや!」

 

「隊長!!」

 

 

すぐさま、私達三人が隊長のもとへと駆け寄る

隊長は・・・まだ少し苦しそうな表情のまま、苦笑いを浮かべていた

 

 

「あ・・・はは、ちょっとむせた」

 

「あ、もう・・・あんまし心配させんといてや」

 

「そうなの、本当にびっくりしたの」

 

「ごめんごめん」

 

 

笑い、立ち上がる隊長

その口元に、光る・・・赤い雫

 

 

「ああ、隊長口元に唐辛子のお汁がついてるの〜」

 

「え・・・っ、ほんとだ

あはは、恥ずかしいな」

 

 

そう言って、口元を拭う隊長

あれは・・・唐辛子の汁?

 

私は・・・あんなに赤くなるまでいれていたか?

 

 

いや、きっとそうなのだろう

だから隊長も、あんな苦しそうにむせていたのだ

 

 

私は・・・

 

 

 

 

 

「凪?」

 

「え、あ・・・」

 

 

考えごとの最中、聞こえた声

大好きな声

 

「気にしないでいいからな

むしろ、また今度落ち着いたとこで・・・あ〜んってしてくれよ」

 

「は、はい!!」

 

 

 

一瞬・・・本当に一瞬だ

 

暗い私の心を隊長は、一瞬にして明るくしてくれた

 

 

 

「よかったやん凪」

 

「ほんと、羨ましいの」

 

「その時は、また二人を誘うさ」

 

「やった」

 

「ほんまやな?」

 

「勿論だ」

 

 

三人で笑いあう

二人はそれからすぐに隊長のもとへと駆け寄り

 

 

私は・・・

 

 

 

「ん・・・?」

 

 

 

足元に落ちていた・・・千切れた紙切れのようなものに、足を止めた

拾い上げ、眺める

 

 

「これは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『味× 嗅△ 触△ 視○ 聴△』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乱暴な字

だけどどこかで見たことがあるような字で、そこにはこんな意味のわからないことが書かれていた

 

誰かが落としたんだろうか

 

しかし・・・紙をこのように粗末に扱うなど、おかしな話だが

 

 

まぁ、いいか

そう思い私はその紙を懐へとしまい、視線をうつした

 

 

「隊長〜、ウチもあ〜んしたるわ」

 

「ああ、ずるいの真桜ちゃん

沙和もするの〜〜」

 

「ちょ、こら二人とも!?

そんな引っ付くなってば!!」

 

 

 

まったく・・・本当に騒がしい

 

 

騒がしくて、だけど落ち着く

 

 

 

そんな私達の・・・北郷隊の居場所が、そこにはあった

 

 

「さて、隊長を助けなければ」

 

 

言って、私は走り出す

この幸せを、胸いっぱいに噛み締めながら

 

 

隊長と・・・大好きな人とのこれからに、頬を緩ませながら

 

 

 

隊長

 

私は、いつまでも貴方と共にあります

 

 

 

 

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これが・・・私たちが『四人』で警邏をした最後の日

 

 

 

 

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あとがき

 

凪のターンww

今後の予定は

 

季衣、流流

軍師三人組

張三姉妹

 

となっております

まぁ、あくまで予定では・・・ですが

 

 

とりあえず、時間を見つけ投稿してみました

 

それでは、また会う日までw

 

 

説明
なんか最近、このお話ばかり浮かびます
いえ結構前から考えてはいたんですが、書く前になんか鬱になってしまいましてw
こういう話は自分でも、かなり珍しい部類に入りますね
基本、明るいお話ばっか書いてたんで

ではでは、お楽しみください
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コメント
これは・・・涙なしではやっぱり読めないな!!(心は永遠の中学二年生)
胸がぁ〜胸がぁ〜〜胸がぁ〜〜〜張り裂けそうだ(泣)(タカキ)
少しずつ消えていくのか…(TT)(咲実)
じわじわと進んで行く恐怖(透月)
一刀…(readman )
これ、やばいよ。(アルトアイゼン)
日々の騒がしくも楽しい日常。されど確実に削られていく感覚・・・きつい;(深緑)
じわじわ来る悲しさ・・・(btbam)
ボディーブローのように着実にダメージが溜まってます。(BX2)
様々なコメント、ありがとうございますw今までなら一人一人にコメを返していたんですが・・・こんなたくさんのコメントを貰ったのは初めてなんで、すっごく嬉しいですw(月千一夜)
・・・すでに涙腺が決壊しているのですが。どうしたらおさまりますかね?(水上桜花)
くそう!まだまだなのに涙腺が緩くなっていく、一刀〜〜〜(サイト)
一刀の体の異常は読んでいて悲しくなります。(aruto)
次はどの感覚が削られていくのだろう・・・・もうハラハラしそう。(kirby)
久しぶりにゾクゾクする作品に出会えました。かなりツボです、頑張って下さい。(ユダ)
徐々に感覚が削られてるのか・・・・視覚以外も既に異常になり始めて、少しずつ自分が無くなっていく。怖いだろうなぁ・・・・気付けずにいる皆が悲しいわ辛いわで・・・・(峠崎丈二)
とうとう、味覚が・・・それに吐血はさすがにマズイだろ(シュレディンガーの猫)
また一つ弱くなったか…五感がすべて無くなったら…そして第六感さえも無くなり存在が消えようとしてるところでセブンセンシズに目覚めて大復かt y=ー( ゚д゚)・∵. ターン(闇羽)
いい話のはずなのに‥。画面がゆがんでてよく見えないなぁ〜。(つд`)(t-chan)
また一段階削られていきましたな。 少しずつ思い出を残していこうとしてるんです、よね?  (よーぜふ)
微笑ましい話なのに・・・素直に笑って読めない(TT)もしその時が訪れて、メモを拾ってその意味に気づいてしまったらと思うと切なすぎます><;(kurei)
ああ、色々と危なくなってるのね。第六感や小宇宙に目覚めたら笑えますがw(KU−)
聴覚までダメになってきてるのか・・・(poyy)
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真・恋姫†無双  北郷一刀  真桜 沙和 

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