真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第九話
[全6ページ]
-1ページ-

 後漢十二代皇帝劉宏が崩御した洛陽では、次期皇帝をめぐり、二つの勢力が対立していた。

 

 長子である劉弁を推す、大将軍何進派と、次子劉協を推す十常待派である。

 

 互いに相容れない両者であったが、その思惑だけは一致していた。

 

 自らが朝廷を牛耳る。

 

 故に、劉弁にも、劉協にも、皇帝としての器量があるかどうかは、何進も十常待も考えていなかった。

 

 いや、興味すら無かった。

 

 そして、ついに十常待が強硬手段に出た。

 

 何進の妹である何太后の名を使い、何進を宮中に呼び出して殺害したのである。

 

 ところが、それを聞きつけた何進派の将軍であり、長安の太守を務める櫨植の手引きで、劉弁・劉協の二人は洛陽を脱出。長安へと逃れたのである。

 

 二人を保護した櫨植は、旧来の付き合いである涼州の董卓、馬騰の二人に援兵を以来。

 

 これを受けた董卓と馬騰はすぐさま、長安に入り、二人の皇子を伴って、洛陽へと兵を進めた。

 

 十常待とその一派のものたちはほとんどが、彼らによって粛清されたが、十常待の筆頭である張譲はその行方をくらませていた。

 

 その後、十三代皇帝に即位した劉弁は、先帝である父に霊帝の号をおくり、董卓を相国、馬騰を大将軍に任じた。また、櫨植は車騎将軍に封じられた。

 

 こうして、大陸の情勢は落ち着いた。

 

 かに見えたのだが。

 

-2ページ-

 

 劉弁が皇帝に即位して半月ほどした頃、大陸にある噂が流れ始めた。

 

 曰く、

 

 「相国たる董卓と、大将軍馬騰は、皇帝を傀儡とし、洛陽にて暴政をおこなっている」

 

 と。

 

 この噂にすぐさま反応したのが、冀州の袁紹だった。?州の曹操とともに各地に檄文を飛ばし、董卓、および馬騰討伐を諸侯に呼びかけたのである。

 

 そしてその檄文は、一刀たち幽州勢にも届けられた。

 

 「さて、と。麗羽からの檄文だが、これにどう対応するか、みなの意見を聞きたい」

 

 北平の会議の間にて、幽州の牧に就任した白蓮が、同席する一刀たちを見渡す。

 

 并州の乱後、朝廷から死亡した劉虞に変わって、白蓮を牧に任じるとの通達があった。

 

 しかし、白蓮は一刀の方こそその位にふさわしいと、一度は辞退した。

 

 だが、その一刀本人が、

 

 「おれはそんな器じゃないよ。それにこれは勅命だろ?・・・素直に拝命しときなよ」

 

 と、笑顔で言ったのである。

 

 その笑顔に、逆らえるものなし。

 

 こうして、白蓮が幽州の牧に就任した。

 

 「・・・正直、俺も迷ってる。噂を確認するために放った細作も帰ってこないしな」

 

 一刀が白連に言う。

 

 「各地の諸侯の反応は?」

 

 「南陽の袁術に、呉の孫堅、徐州の陶謙、青州の孔融といったところが、参画を決めたそうです」

 

 そう答えるのは愛紗。

 

 「・・・つまり、洛陽の情勢だけが、掴めないということか」

 

 腕組みをする白蓮。

 

 「どうするの、白蓮ちゃん」

 

 「そうだな・・・」

 

 

-3ページ-

 

 「なあ、白蓮。董卓さんのところには華雄さんが居たよな?」

 

 「ああ。・・・けど、それだけで判断するのもな・・・」

 

 「華雄どのを信じて西涼勢に付くのは、私心でしかないと思いますが」

 

 五月が言う。

 

 「簡雍の言う通りだと思うが?」

 

 「いや、ここはあえて私心優先でいいかもしれない」

 

 「義兄上?」

 

 「確かに私心で動くのは、将としてはあまり褒められたものじゃない。けど、それはあくまで、『普通の場合』ならだ」

 

 「どーいうことなのだ?」

 

 鈴々が首をかしげる。

 

 「二つほど気になることがあるんだ。ひとつは、例の噂が流れ始めた時期と、それが大陸中に行き渡るまでの時間。・・・あまりにも早過ぎる」

 

 「誰かが意図的に流したってこと?」

 

 一刀の言葉に桃香が反応する。

 

 こくりと頷く一刀。

 

 「もう一つは?」

 

 「・・・華琳だ」

 

 

-4ページ-

 

 「華琳?なんでそこで華琳の名が出てくるんだ?」

 

 突然、一刀の口から出てきた友人の名に、困惑する白蓮。

 

 「確かに、麗羽なら噂の真偽なんて気にもせず、自分が名声を得られると考えたら、すぐに飛びつくのは納得できる。けど」

 

 「華琳ちゃんなら、そんなに短絡的じゃあない、ってこと?」

 

 「ああ。・・・何か知ってるのかもな」

 

 「噂を流した本人だったりとか?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 水蓮の一言に無言になる一同。

 

 「あ、あれ?なに?あたい、もしかして的を射ちゃった、とか?」

 

 自身の発言の意外な結果に戸惑う水蓮。

 

 「ごほん!!まあ、それはともかくとして、だ。白連、今回は親友を信じてみたらどうかな?」

 

 「そうだな。・・・よし!私たちは西涼勢に付く!!兵三万でもって明朝出発。留守は水蓮と簡雍に任せる」

 

 「あいよ」

 

 「は。御武運を」

 

 そろって拱手する水蓮と五月。

 

 「一刀、桃香、愛紗と鈴々は私とともに洛陽へ。期待してるぞ、四人とも」

 

 「了解だ」

 

 「まっかせといて!」

 

 「ご期待に応えましょう」

 

 「鈴々に任せるのだ!!」

 

 

-5ページ-

 

 それから数日後。

 

 水関近くに陣を張る、反西涼連合の本陣。

 

 「おーほっほっほっほ!!それでは不詳この私が、連合の総大将を務めさせていただきますわ!!」

 

 (おーおー、嬉しそうに)

 

 赤い髪に褐色の肌の女性、孫堅が、周りに聞こえない程度の声でぽつりと言う。

 

 「ところで華琳さん?一刀さんと白連さんはまだ到着しませんの?」

 

 長い縦ロールの髪に、無駄に豪華な鎧の女性、この連合の発起者である袁紹が、金髪の少女、曹操に問いかける。

 

 「・・・まだよ。そろそろだとは思うんだけど」

 

 「本当に来るのかね?その劉翔とやらは」

 

 水色の装束の男が曹操に問う。

 

 「・・・来るわ、必ず、ね」

 

 (そう、一刀は必ず来る。あの正義感の塊のような兄妹なら、民が悪政に苦しんでいると聞けば、それを捨て置く筈が無い)

 

 曹操はそう確信していた。

 

 (子供の頃から、あの二人はそうだった。ちょっとでも困っているものが居れば放っておけない。それで何度、人助けに付き合わされたことか)

 

 「しかしだ。幽州の田舎軍など、居ても居なくても大して変わるまいに。とっとと水関攻めを開始すべきでは?」

 

 その場に居る最後の一人、緑色の装束の男がそう意見する。

 

 そこへ。

 

 

-6ページ-

 

 「申し上げます!!」

 

 天幕の外から、兵士の声が聞こえてきた。

 

 「何事ですの?今は軍議の最中ですわよ?」

 

 (軍議だったのか、これ)

 

 と、袁紹以外のものたちが思う中、兵士が報告を続ける。

 

 そしてその報告を聞いた途端、袁紹と曹操は愕然とした。

 

 「水関に新たな旗が揚がりました!!蒼地に劉の牙門旗です!!」

 

 「・・・なんですって?」

 

 「ど・・・どういうことですの?!」

 

 「なんじゃ、待ち人は敵方に付いたか。・・・振られたようだな、ふたりとも」

 

 かっかっかと、大声で笑う孫堅。

 

 (・・・一刀。そう、そうまでして私を拒むの。・・・あの時のように)

 

 肩を震わせる曹操。

 

 (・・・いいわ。なら力ずくで手に入れてあげる。この曹孟徳。欲しいものは必ず手に入れて見せる。・・・必ず、ね)

 

説明
刀香譚九話をお送りします。

霊帝の死と、そこから始まる事件。

連合編の開幕です。

では、駄文ワールドへどうぞ。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
28493 23583 136
コメント
おーこちらの一刀は月の陣営に就きましたか。麗羽の軽さや華琳の執念が今後どのような道へと誘うか楽しみです!(深緑)
更新お疲れ様です。月陣営につきましたか、これも徳の差でしょうね。文台ママ存命とはまた楽しみな展開。蓮華に再会する際に一刀が喰われないことを願うばかり(笑)。ここの華琳がどうにも計算高いヤンデレに見えてしまいます・・・(汗)。ともあれ次回更新を楽しみにしています。(gem)
ナックさま、偉そうなのが自称名門。普通なのが普通なのですwww(狭乃 狼)
パプア大佐、いずれは書く予定です。(狭乃 狼)
うむむ、まさか、徐州の陶謙&青州の孔融が出てくるとは。普通そうな水色と偉そうな緑色、どちらに当てはまるのか、楽しみにしています。(ナック)
お疲れ様です〜^^ これはいつか華琳や麗羽の過去編みたいのをやるのかな?もしやるとしたら楽しみです^^(パプア大佐)
けいわさま、ワクワクして待っててくださいね^^。(狭乃 狼)
村主さま、緑色も一応、自称名門です。雑魚ですが^^。(狭乃 狼)
hokuhinさま、そうです、騎馬軍団がメインですよねえ?くす。(狭乃 狼)
はりまえさま、障害あってこそ燃える、と。(狭乃 狼)
睦月 ひとしさま、水色と緑、名前だけは作中に出てますよ。(狭乃 狼)
リョウ流さま、さあ、どうなるんでしょうか?!(狭乃 狼)
たすくさま、ヤン、とは少し違うと・・・。(狭乃 狼)
砂のお城様、まあ、確かにですね。(狭乃 狼)
一刀が董卓西涼連合につきましたか、次回をワクワクしながら待ってます。(朱月 ケイワ)
新キャラの緑色装束・・・見下してる時点で雑魚臭が漂ってる感がwまだ分かりませんが(村主7)
反董卓連合がこんな風になるとは思いませんでした。しかも董卓軍側は異民族退治が得意な軍勢が集まった気がする・・・(hokuhin)
恋に障害はつきもの、たとえ敵同士だとしても(28282828・・・・・)(黄昏☆ハリマエ)
お・も・し・ろ・く・な・っ・て・き・ま・し・たー!!私としては水色と緑の服の人物が気になりますが・・・。十常侍の手の者かな?次回を期待しています。(睦月 ひとし)
ヤンデレ華琳さま・・・(たすく@蒼き新星)
sink6さま、ストーリーの踏み台ぐらいには役に立ちましたね。ななしのくせに^^。(狭乃 狼)
これはまた面白い展開ですねwあのナナシのごんべいがグチャグチャになった後コンナ風になるとは続きが楽しみでスw(sink6)
紫電さま、予想裏切り大成功!!って感じで嬉しいです。今後の展開をお楽しみに^^。(狭乃 狼)
ベレーボーさま、お初コメ、ありがとうございます。今後ともよろしくです。(狭乃 狼)
いやいやここはテンション上がりますよ!!あっ失礼しました。初コメですが毎回楽しく読ませていただいているベレーボーです。(ベレーボー)
カズトさま、落ち着いてください。いまから興奮してたら次回は持ちませんよ?(狭乃 狼)
やっべww興奮してきたwww(スーシャン)
タグ
恋姫 一刀 桃香 白蓮 愛紗 鈴々 華琳 

狭乃 狼さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com