METALGEARCROSS〜OUTERHEAVEN〜 第4話 |
スネークアームで縦横無尽に戦場を駆け回る一刀は圧巻だった。
スネークアームがもたらしたのは第三、第四の腕はもちろんだが、突出すべきは機動力だ。
地面を掴みそこを支点に急速な移動を見せ、はたまた二脚兵器を掴みそれを支点にあたりを攻撃する。
その予想しにくい機動力をもって、二脚兵器に対策を練らせる前に数を減らしていく。
しかし見かけ上減っただけで絶対数は減っていない。
それを感じた一刀はさも飽きたと言わんばかりに高周波ブレードを地面に投げ捨てる。
「一気に相手をするのも面倒だ」
左首の端末をいじる。
『Cast Off』
Hydraから音声が流れ装甲が浮き上がる。
「バーサーカーで付き合ってやる」
全身の血流と血圧が上がる感覚を覚え、全身から気と雷を発する。その圧に圧され二脚兵器の動きが悪くなる。
同時に目が紅く染まり、蛇が竜となる。
「俺はずっとみんなに助けられた。だから・・・」
後ろを振り返る。意志を同じくし心を通わせたみんながそこにいる。
自分が戦う理由はそこにあった。
「今度は俺がみんなを守る番だ」
ファンデルワールス力で繋ぎ止められていた装甲がはじき出され、スネークアームを残し身軽な姿となる。
肩から雷がほとばしる。
『Rising』
全身の気を発するように咆吼する。
その音圧と発気、そして電磁波によって周囲に電磁パルスが発生し二脚兵器の動きを鈍らせる。
二脚兵器のセンサーが僅かな時間フリーズする。その隙を見逃さず、紅い目の蛇は投げ捨てた高周波ブレードを持ち跳躍する。
体をきりもみさせて二脚兵器の群れの一番後ろに着地する。
二脚兵器の旋回速度は、既存兵器のそれを遙かに上回るが、さすがに人間には敵わない。
旋回する隙に一機の両足を、高周波ブレードで切り落とす。
だるま落としの要領で頭部が丁度良い高さに落ちてくる。そう蹴りやすい高さに。ならば次はドミノ倒しだと言わんばかりに、群れにその頭部をけり込んだ。
倒し損ねた数機はやっと旋回が終わるが、既に蛇は再び空中に。一機の頭部に飛び乗りそれを貫く。今の彼にはただ単調な作業だった。
最後に残った一機はその獣の姿を探していた。見つけたのは上空。こちらを今にも蹴ろうとしている体勢で。
「ヒーローは蹴りが得意技らしいぞ」
雷がほとばしる足は目標を完全に捉えた。
どこかのヒーロー宜しくの一撃は二脚兵器を吹っ飛ばし、彼は恋姫達の前に着地した。
四話・外 奔走 〜Checkmate〜
「旦那、一刀のほうも片付いたみたいだ。電波妨害が晴れ始めた」
「そうか。じゃあ俺たちはこのまま避難者が多い北門に向かおう」
成都は南に成都城、北と東にそれぞれ門、そして中央には広場がある造りになっている。
東門に降り立ったジェームスとケインは中央広場で殲滅していた。
一方の一刀は北門に降り立ち、中央広場で二人と合流。その後は成都城に向けて突撃していた。
二脚兵器もかなりの数が減り、身動きが取りやすくなったところだった。
「ジェームス。この数の減りよう、どう見る」
「そうだな・・・。一つは正史側、米軍の反撃のおかげでこっちまで手が回らない。もう一つは被害を最小限に抑える為に制圧用の何かを投入する準備だ」
「今はどっちが厄介なの?」
正史側の事情に関しては雪蓮は何も知らない。どっちが悪手なのかは難しいはずだ。
「この場合は後者だ。俺の予想ではメタルギアを投入してくると思う」
「メタルギアか。まさかと思うが・・・」
メタルギア。
様々な状況と地形から核ミサイルを発射できる二脚歩行戦車を総じてそう言われている。
蹂躙兵器としては十二分だが、そのもっともたる脅威は間違いなく・・・。
「核」
「ああ、アレを撃たれる。俺たちはそれを想定しなければならない」
『それはないと思うぞ』
突如、ジェームスの戦術バイクWolfから音声が流れる。一刀の声だ。
「一刀か、そっちはどうだ?」
『今、厄介ごとが終了したところだ』
「なんだ?あっちこっちに抱きつかれて通信に手間取ったか?」
『・・・切るぞ』
「悪かったって、悪かったって。まあなんだ。一刀はなぜ核を打たれないと思う?」
『まず一つに核の入手が困難になったことだ。1974年以降、核の管理には絶対の制約がある。もう一つは連中の目的だ。PMCUはこの世界の生産力を狙っている。わざわざ放射能汚染までさせたものを欲しがるとは思えない』
「ってことは?」
『蹂躙。奴らがこの世界に求めているのは調和ではない。服従だ』
『服従ねぇ』
「ずいぶんと素っ気ない返事だな?」
成都城前は一刀により二脚兵器は一掃されていた。
つい先程まで恋姫たちが一刀の周りに集まっていたが今は情報収集と状況判断で動き回っている。
『前にも言ったように、連中は案外体制が気に入らないとかそういう理由だと思うぜ?』
『それはどういうことだ?ジェームス』
今度はケインの声だ。
一刀もケインも戦士だ。他のものよりも広い視野を持っているだろうが、ジェームスはもっと大局を見ている。
その彼の言葉が理解できない。そんな口ぶりだ。
『ちょっと無茶な考えだが、米国は戦争でしか国を維持できなかった。しかし戦争ではない一つの目標に向かって技術や資金を投入している』
「宇宙開発か?」
『そうだ。この十数年で米国は戦争に飽き飽きしている。リキッド・オセロット蹶起事件以降、極力紛争や戦争を起こすことを躊躇っている。中東紛争はおろかアジアの火種である朝鮮半島ですらノータッチなんだぜ?』
『やつらは戦争を欲しがっていると・・・?』
『連中から見て、外史は物資の宝庫だ。なにせ地球がもう一個あるようなものだからな。各国はこぞって飛びつき、それは戦争の火種になる』
「そうすれば戦争の需要が増えると・・・戦争屋風情が」
一刀が呟いたその時だった。
ジェームスの戦術バイクWolfから警告音が鳴り響く。
『問答は終了だ。結構デカイのが転送されてくるみたいだ』
Wolfのコンソールに表示されたのは正史から巨大なものが送られてくる時に観測される衝撃波だ。
衝撃波の大小で転送されてくる物体の質量は計測できるが、今回のはかなり大きい。
『さすが人口の多い成都。これで大阪なみに怪物への耐性がつくんじゃないのか?』
「お前・・・本当にアメリカ人か?」
『はっ?』
「・・・気にするな。転送位置は北門付近でいいのか?」
一刀はWolfに搭乗しエンジンを吹かせる。
『ああ、こっちはすでに北門に着いている。早くこないと見せ場はなくなるぞ?』
「それはいい、仕事せずに金がもらえる」
そう軽口を叩いたその時だった。
通信の向こうからケインの掛け声が聞こえる。それが聞こえると通信障害が発生しノイズが生じる。
「行くのですか?ご主人様?」
出発しようとする一刀を愛紗が呼び止め、周りに再び恋姫たちが集まってくる。
「ああ、別に死にいいくわけじゃない。死んでやるつもりもない」
全員の顔を見回す。そこで初めて桃香がいないことに気づく。
だが事は急ぐ。決意を込めハンドルを強く握る。
「ご主人様!!」
その時後ろから桃香の声が響く。その声に振り返り、桃香を視界に入れる。走ってきた彼女の手には・・・。
「高周波ブレード・・・」
どうやら外史に置き忘れたものらしい。柄の部分には新たに桃香の髪飾りが設えられていた。
一刀はそれに無意識に手を伸ばすが、急に手を止め思いとどまる。
「私がみんなのもとに帰るときにかえしてもらうよ」
離れて、とつぶやきスロットルを全開まで入れる。
蛇は走り出した。再び自分の居場所に帰るために。
おまけ:
ケイン「ふと思ったんだが」
一刀「自分がやっと変質者ということがわかったか?」
ケイン「バーサーカー発動させても勝てないよな、お前」
ジェームス「呂布戦−、長坂×、呉防衛戦×、楽成攻略戦−、成都奇襲戦×○、赤壁陽動戦×、赤壁決戦○、新野決戦○」
ケイン「三勝四敗二引き分け」
一刀「負け越し・・・だと」
(読み返して気づきました。切り札じゃねえな、これは)
説明 | ||
この作品について ・MGSと真・恋姫†無双のクロスオーバー作品です。 ・続きものですので前作一話からどうぞ。ttp://www.tinami.com/view/99622 執筆について。 ・絵ができました。 ttp://www.tinami.com/view/151575 |
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コメント | ||
>毛布さん、ケイン、一刀くんは一気に弱点を付ける機動力、ジェームスは通常はヘリに搭載されるガトリング砲をぶっぱなしているので、やはりスネークとは勝手が違いますね。狭い路地を通れる、銃による中距離戦闘と防御力の無効化、三次元的な運動力、などを考慮に入れると防衛戦ではヘイヴン兵のほうが厄介と考察します。(しがない書き手) 追いついた更新乙、自分月光にはやたら苦戦したのに一刀達相手じゃカエル兵以下って・・・(機構の拳を突き上げる) >jackryさん、一般兵よりかは強いけど、将には勝てないって感じですね。自分に有利な状況を作り上げて、ひたすら待つのが彼の戦法です。(しがない書き手) >よーぜふさん、MGS4時代よりも強化骨格の性能も上がってますし、チャフも舞っていますからねぇ。(しがない書き手) うわあ、こうみると月光が弱くみえる・・・w まぁケインが強すぎるだけなんでしょうが(よーぜふ) |
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